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2025年9月24日

「食産業演習」の授業で太陽化学株式会社による特別講義が行われました(8/5)

 生活科学部食生活科学科の松岡康浩教授が担当する「食産業演習」の授業の中で、太陽化学株式会社 おいしさ科学館理事 山口裕章氏が8月5日(火)、講演を行いました。タイトルは、「マーケット視点から見たおいしさの可視化~客観的評価を手掛かりに~」。食品の「おいしさ」を客観的に評価するための考え方と機器分析によるアプローチに焦点を当て、人間の五感と「おいしさ」の関係性を解明する多様な分析技術とその応用例を紹介し、学生たちに食産業の多様性を示しました。

――「おいしさ」の真実に感性と科学の両面からアプローチ

この日のスピーカーは、食品メーカーのパートナーとして、おいしく健康に良い食品づくりのための素材を提供し、共同開発を通じて貢献している太陽化学の山口裕章氏。始めに「おいしさ」の構成要素や「おいしさ」と五感の関係、味覚やにおいの仕組みと特性など「おいしさの感覚」について説明し、食感を表す日本語の特徴に触れました。また、人の五感すべてで感じる複雑な「おいしさ」の感覚を科学的な手法を用いて客観的に捉え、データやグラフで分かりやすく示す「おいしさの可視化」の考え方について解説しました。

さらに、機器分析による「味覚分析」「におい分析」など、「おいしさ」を可視化するための具体的な分析方法も紹介。

講義の途中には、鼻をつまんでいるかいないかでアメの味がどう変わるか検証し、2種類のチョコレートの硬さと口溶けの感覚を評価する時間も設けられました。学生たちは五感をフル稼働し、おいしさの判断には味だけでなくにおいも重要であること、食品には食感の時間軸が存在することなどを学びました。

 最後に山口氏は、「食品の分析、特に人の感覚を可視化する需要は今後高まっていくと考えられる。食品業界にはこのような分野に取り組んでいる会社があると知った上で、新たなキャリアパスの可能性を探ってほしい」と締めくくりました。

太陽化学株式会社おいしさ科学館理事 山口裕章氏のコメント

今回の授業で私が最も大切にしたのは、何よりも「食のおいしさに興味を持ってもらう」ことです。これから未来を描いていく若い皆さんだからこそ、何かを食べて「おいしい」と感じるその感覚や、「おいしさ」が生まれる背景に、純粋な好奇心を持ってほしいと考えました。

 我々は自分たちを「単なる食品の分析屋」とは思っていません。我々は「食品メーカー」であり「食をつくり出す者」だと考えています。その根底にあるのが、「自分の家族に食べさせても、心から安心できるものをつくる」という信念です。このことも、学生の皆さんにご理解いただけたらありがたく思います。

 「食品業界って面白そう」と少しでも感じてもらえたなら、これ以上うれしいことはありません。「食」という壮大で面白い世界で、皆さんをお待ちしています。

担当教員のコメント

「食産業演習」で目指しているのは、食という大きな流れを「川上」から「川中」、そして「川下」まですべて体感し、その現場で働く方々の「生の声」を直接聞くことにあります。机上では決して得られないリアルな学びを追求することが最大の目的です。

 今回の講義のように座学ももちろん行いますが、夏休み期間中の8月から9月にかけては、「川上」や「川中」を体験するために食品工場や牧場、専門的な研究所に足を運びます。生産や加工の最前線で何が行われているのか。その営みにはどのような想いが込められているのか――。それをぜひ学生たちに実感してもらいたいと考えています。

 さらに「川下」にあたる消費の現場を体験すべく、教員の引率のもと、本格的な懐石料理店やフランス料理店を訪れる予定です。ただ食事をするだけではなく、そこで腕を振るうシェフ本人から、料理に注がれた哲学やこだわりを直接お伺いします。普段の授業では到底実現できない、貴重な経験が得られることでしょう。

 これら一連の体験は、いわば「実践」であり「実体験」そのものです。さまざまな切り口から食産業にアプローチすることで、その奥深さとそこで働く人々の情熱が、学生たちに伝わることを願っています。

2025年9月8日

キユーピー株式会社を招いた講義で本学の卒業生が登壇しました(8/5)

生活科学部食生活科学科食物科学専攻3年生を対象とした授業「食産業演習」(担当:中川裕子准教授)の学内講義に8月5日(火)、本学の卒業生でキユーピー株式会社研究開発本部グループR&D推進部の伊藤裕子氏が登壇。キユーピーの食と健康の取り組みについて講演し、食品メーカーの視点で食産業の現状と今後の可能性を展望しました。

――講演のテーマは「食と健康の取り組み」

この日の講義に登壇したのは、本学の卒業生で管理栄養士の資格を持つ、キユーピー株式会社研究開発本部グループR&D推進部の伊藤裕子氏。
「キユーピーの食と健康の取り組みについて」というタイトルでお話をいただきました。

伊藤氏はまず、キユーピーの歴史と、1925年に日本初のマヨネーズを発売した創業者の想いや企業理念「楽業偕悦」を紹介。市販用・業務用、内食・中食・外食を網羅する「食のエキスパート」としてのキユーピーの強みを紹介しました。

続いて、マヨネーズ100周年を迎えた現在の多様な商品展開や使いやすさへの工夫、研究開発と商品企画の連携、社内外との協業など、食を創造する仕事の内容を解説。本題の食と健康戦略では、「サラダファースト」(野菜摂取促進)、「朝食摂取率向上」(欠食改善)、「適塩」(塩分過多対策)、「フレイル予防」(健康寿命延伸)の4つの社会課題解決に向けた具体的な取り組みを挙げ、国や他団体と連携しながら推進している点を強調しました。

最後に伊藤氏は、「思い切り『食』を楽しみながら、学業を通じて可能性を広げてください」と学生たちにメッセージを送り、講演を締めくくりました。

 講演の後には質疑応答の時間も設けられ、多岐にわたる質問が飛び交いました。中川裕子准教授の「就職活動中の学生に求める人物像は?」という問いに対し伊藤氏は、「食が好きで、コミュニケーション意欲がある人。仕事は人と人との関わりなので、それを大切にできる人を求めている」と述べ、これから就職活動が本格化する3年生に向けて貴重な助言を送りました。

キユーピー株式会社研究開発本部グループR&D推進部 伊藤裕子氏のコメント

実践女子大学の卒業生として後輩の皆さんにお伝えしたかったのは、キユーピーは食品を製造するだけでなく、「食と健康への取り組み」を通じて社会に貢献している企業であるということです。若い学生の皆さんは、健康の課題を身近に感じる機会がまだ少ないかもしれませんが、「おいしさ」という食の楽しみを生涯にわたって味わうためにも、今から食習慣に気を配ることが欠かせません。講義で紹介した「たんぱく質診断」や「野菜の摂取量チェック」「10食品群チェック」などのツールは、自分の食生活の傾向を客観的に把握するのに役立ちます。これらを活用し、ご自身だけでなくご家族や身近な人たちの食生活改善にぜひつなげてください。

 また、食の世界を楽しみながら学ぶための姿勢についてもお話ししましたが、これからは商品の変化にぜひ注目いただきたいと思います。現代は商品のサイクルが驚くほど速く、新しいものが次々と登場します。街の店舗の移り変わり、そこに並ぶ商品の変化に意識を向けることで、きっと新たな発見があるはずです。

 学業を通じて可能性を広げ、何より「食」を心から楽しんでほしいと願っています。

担当教員からのメッセージ

「食産業演習」では、食品の生産から消費までを包含する、フードシステム全体に関わる仕事への理解を深めることを目的としています。そこで今回は、本学の卒業生の伊藤氏をお招きし、日本にマヨネーズを広めた老舗食品メーカー、キユーピーの食と健康の取り組みについて伺いました。商品開発といった仕事内容に加えて、製品製造にとどまらないSDGsなど社会的課題への取り組みについてもお話をお聞かせいただき、学生たちは仕事の幅の広さや食品メーカーとしての社会的責任の重さを実感したようです。質疑応答では、業務内容に加えロゴの扱いなど多彩な質問も飛び交い、非常に有意義な時間となりました。

 この「食産業演習」は、これから就職活動を本格化させる3年生にとって貴重な業界研究の場でもあります。キユーピーという企業への理解により、食品関連業全体への興味関心が高まることを期待します。