タグ: 食品衛生学

2026年3月17日

法律の最前線!食品衛生学の授業で、消費者庁食品表示課による特別講義が行われました。

2025年10月24日(金)、食品衛生学a(担当:食生活科学科 白尾美佳教授)にて、消費者庁食品表示課(以下消費者庁)の正木陽子氏、森川健佑氏をお招きし、食品表示法に関する特別講義が行われました。

授業と社会連携について

食生活科学科健康栄養専攻で開講されている専門教育科目「食品衛生学a」において、消費者庁食品表示課の方々をお招きし、食品表示に関する特別講義を実施しました。

健康栄養専攻では、栄養士資格の取得を目指し、人体の仕組みや食品の栄養、給食経営管理など、食と健康に関する専門知識を体系的に学びます。「食品衛生学a」は、食品の安全性を確保するための基礎知識を学ぶ科目であり、栄養士として食品を適切に取り扱うための重要な基盤となる授業です。

今回は、消費者庁食品表示課 企画第一係長 正木陽子氏、法令係 森川健佑氏にご来校いただき、食品表示制度の概要や最新の制度動向について講義を行っていただきました。食品表示法の運用に実際に携わっている方々から直接話を伺うことができ、学生にとって大変貴重な学びの機会となりました。

身近な食品表示のルール「食品表示法」

食品表示法は、すべての食品に共通する「表示のルール」を定めた法律です。食品パッケージの裏面に記載されている原材料名、内容量、原産地などの情報は、この法律に基づいて表示されています。

この法律は、消費者が商品を選ぶ際に、食品の内容や産地などについて正しい情報を得たうえで判断できるようにすることを目的としています。そのため、食品を製造・販売する事業者には、必要な情報を適切に表示する義務が課されています。

食品表示法では、表示項目の内容だけでなく、表示の順序や記載方法などについても細かく定められており、食品に関わる仕事に携わるうえで理解しておくべき重要な制度です。

消費者庁の役割

講義では、食品表示制度を所管する消費者庁の役割についても紹介されました。

森川氏は、消費者庁について「消費者に直接関わる政策を、消費者の視点に立って進める役割を担う行政機関です」と説明されました。主な業務として、消費者の安全な暮らしのための対策、公正な取引の推進、消費者教育などがあり、表示ルールに違反する事業者に対して指導を行う役割も担っています。

食品表示についても、以前は複数の法律や省庁によって管理されていましたが、食品の異物混入を含む消費者事故など、消費者に関わる深刻な社会問題が相次いだことを背景に、消費者庁が設立されました。この設立を契機に制度が整理され、「食品の表示」という観点から統合されたものが現在の食品表示法であることが紹介されました。

食品表示法の基本「義務表示」

食品表示には、消費者が適切に商品を選択できるよう、必ず表示しなければならない「義務表示」があります。

生鮮食品では、名称や原産地などを容器や包装の見やすい場所に表示する必要があります。一方、加工食品では表示項目が多く、「一括表示」と呼ばれる形式で原材料名や内容量、製造者などの情報がまとめて記載されています。

講義では、一括表示の項目の内容や、それぞれの表示が設けられている理由について、具体的な食品表示を例に挙げながら解説が行われました。

「消費期限」と「賞味期限」の違い

食品の期限表示には、「消費期限」と「賞味期限」の2種類があります。

消費期限は、比較的傷みやすい食品に表示されるもので、「期限を過ぎると安全性が低下する可能性があるため食べない方がよい期限」を示しています。一方、賞味期限は日持ちする食品に表示され、「おいしく食べることができる期限」を示すものです。

森川氏は、「賞味期限が過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありません。状態を確認しながら食品ロスの削減にもつなげていただければと思います」と説明され、食品ロスの問題にも触れられました。

アレルギー表示と制度の見直し

食物アレルギーを引き起こす可能性のある原材料については、症例数や重篤度を踏まえて表示制度が定められています。

現在、義務表示の対象となる特定原材料は8品目、推奨表示の対象は20品目となっています。

講義では、2023年にくるみが新たに義務表示の対象となったことや、現在、カシューナッツを義務表示に、ピスタチオを推奨表示に追加する検討が進められていることなど、制度の最新動向についても紹介されました。

これらの制度は、約3年ごとに実施される国の調査結果をもとに見直されており、症例数の変化に合わせて制度も更新されていることが説明されました。

栄養成分表示について

栄養成分表示は、食品に含まれる栄養素の量を示すもので、2020年からすべての加工食品で表示が義務化されています。

表示が義務付けられているのは、熱量(カロリー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目です。

管理栄養士の資格を持つ正木氏は、「栄養成分表示では『100gあたり』や『1食分あたり』など表示の単位が異なるため、食品を比較する際には注意が必要です。将来、栄養指導を行う際にも、ぜひその点を伝えてください」と学生に呼びかけました。

また、近年の取り組みとして、パッケージ前面に栄養情報を分かりやすく表示する「包装前面栄養表示」についても紹介され、日本でもガイドラインの整備が進められていることが説明されました。

今回取り上げた内容のほかに、食品添加物の種類や指定の流れ、原料原産地表示についてなど、制度に関する詳細な解説が行われました。

学生からの質問も活発に

講義の最後には質疑応答の時間が設けられ、学生からは食品添加物や遺伝子組換え食品の表示制度などについて質問が寄せられました。

正木氏と森川氏は、制度の仕組みや実際の運用について丁寧に説明され、学生にとって理解を深める貴重な機会となりました。

今回の特別講義を通して、学生たちは食品表示制度を「生活に密接に関わる実践的な知識」として学ぶことができました。

質問をする学生

担当教員からのメッセージ

今回の講義では、食品表示制度の基礎だけでなく、包装前面栄養表示の取り組みやアレルギー表示の見直しなど、最新の制度動向についても学ぶことができました。

食品表示制度の運用に携わる行政担当の方々から直接お話を伺うことができ、学生にとって大変有意義な学びの機会となりました。

この場をお借りして、消費者庁食品表示課の正木様、森川様に心より御礼申し上げます。

2025年10月16日

食品衛生学bの授業で、サントリーブレンダー室長の明星嘉夫氏の特別講演が行われました。

9月29日(月)に食品衛生学b(担当:食生活科学科 大道 公秀 准教授)にて、サントリー株式会社(以下サントリー)スピリッツ・ワイン開発生産本部、ブレンダー室長の明星嘉夫氏をお招きし、サントリーの品質管理と、明星氏ご自身の経験から得たキャリア観についてご講演をいただきました。

明星氏はサントリーのウイスキーの生産と管理を担うブレンダー室長です。技術開発部で蒸溜などの商品技術開発に長く携わり、ブレンダー室に異動後はスコットランドでウイスキーの研究を経験されました。現在、山崎蒸溜所に勤務されている明星氏。山崎蒸溜所は、サントリーがウイスキーを蒸溜開始した1924年から稼働する、100年以上の歴史がある拠点です。

ブレンダーとは

明星氏はブレンダー室について「簡単にいうと、原料を組み合わせ、樽に眠る原酒をよりおいしくしていく部署」と紹介し、ウイスキーの製造や商品開発を担当していると述べました。そして、「ブレンダー」とは、ウイスキー製造の要である「ブレンド」という工程を担う社員のことを指します。五感を駆使して品質を管理するプロフェッショナルです。さらに「サントリーには約160万丁の樽があり、それぞれ熟成の状態が異なる。その一つひとつを社員が手作業でテイスティングし、原酒の状態を確認している」と説明しました。

「山崎」ブランドページ〈ブレンダーの仕事とは〉:https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/yamazaki_club/006/

サントリーの品質管理について

明星氏は、品質方針である「All for the Quality」を説明しました。質を最優先する管理体制を強調し、法律の基準のほかに独自の自社基準を設定していることを説明。両者をクリアした商品が世に送り出されていることを紹介しました。また、商品の製造プロセスの中でも、調達と製造が特に重要であると述べ、実際に行っている品質管理の取り組みについて説明しました。

具体例として、ウイスキーの製造プロセスの一つである発酵を取り上げました。明星氏は、ウイスキーの発酵中に酵母の数と微生物の数のバランスが崩れてしまう状態を「汚染」と呼ぶことを紹介し、品質を守るためには汚染を避ける必要があることを説明。「汚染状態になると酸っぱくなったり、腐敗した匂いを発することもある」と変化によって引き起こされる味の変化について述べ、「数値を測定するとその変化がわかるため、定期的に検査を実施している」と実際行われている品質管理の体制を紹介しました。

キャリアについて

明星氏は、就職活動について自身の経験を踏まえた考えを共有しました。「環境変化の早い業界では将来を見通すことが難しい」「業界ごとに傾向が異なるため、自分に合った選択が必要」「自分の価値を高めるには、自分がユニークな存在になれる場所を選ぶことが大切」と、身を置く場所によって自分の価値も変わることを示しました。

続いて、仕事への価値観について触れ、「どんな企業でも暗闇は迎えるもの。明けない夜はないと考え、社会のために自分ができることを選択してきた」と述べました。ウイスキー販売の低迷期に入社した経験に触れながら、先行きが不透明な中でもウイスキーのために働き続けたことを紹介。「なんのため働くか目標は変わっても、本質的な姿勢は変わっていない」と振り返りました。

明星氏はキャリアを重ねる中で「価値の軸」が変化した経験も共有しました。かつては技術開発のスキルや専門性を重視し、「人と関わることは苦手で、マネジメントの技術も重要視していなかった」と回想。しかし海外勤務の経験と、帰国後にマネジメント業務に携わるようになると、価値観は大きく変わりました。「苦手だと感じていた業務が仕事の中心となり、当時は大変だったが、確実な自己の成長を実感できた。それまでは自分のことを第一に考えていたが、次第に周囲を第一に考えるようになった」と述べ、さらに「自分のためではなく、人のため、集団のために行動することに価値を感じる新しい自分と出会うことができた。人が働く理由は自己実現だけではない」と語りました。

講演の最後に

最後に学生へのメッセージとして、「人として魅力ある社会人であることは、結果的に幸せな人生につながる」と述べました。具体例として、挨拶や誠実さといった基本的な行動を挙げ、「当たり前のように思えるかもしれないが、実は大切なこと」と強調しました。さらに「社会人としての姿勢を支えるのは、人間としてのあり方であり、その積み重ねが最終的に人生の幸福につながる」と呼びかけ、学生に向けて「この視点をもって今後の進路を考えてほしい」と結びました。

担当教員からのメッセージ

今回、明星様には食物科学専攻3年生の「食品衛生学b」の授業内での講演をお願いしました。食物科学専攻の学生は食産業に係るフードシステムや食品企業で商品開発に興味をもつ学生も多いため、明星様の講演を私たちはとても楽しみにしていました。明星様には、ウィスキーを例に挙げて、サントリー株式会社における品質保証や商品開発の取り組み事例をご紹介いただきながら、サントリーにおける食に関わるビジネスの展開について語っていただきました。産業界における品質保証の具体的事例を学ぶことは、「食品衛生学」の一環としても意義があったと考えています。また明星様にお話しいただいたウィスキーを例にした商品開発のアプローチは、食品ビジネスに関わる仕事がどのようなものかを知る機会になったと考えています。これらは食物科学専攻の学びとして大変意義深いものでした。授業の後半では、明星様にはキャリア形成についても語っていただきました。就職活動をこれから本格化していくような学生には大変参考になったと思っています。

教室では、熱心にメモをとり、うなずきながら聴講する学生の姿も見受けられ、担当教員として嬉しく思いました。 

明星様には、お忙しい中、貴重な講演の機会を設けていただきました。本当にありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。