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2026年6月8日

「知っている」と「言語化できる」は違う?サイバーエージェントによる、AI活用の最前線とAI時代に求められる力を学ぶ特別講演が行われました。

5月15日、実践女子大学人間社会学部の授業「社会科学におけるソフトウェア設計(担当:社会デザイン学科 今田 一希専任講師)」にて、株式会社サイバーエージェント(以下サイバーエージェント) インターネット広告事業本部 AIクリエイティブ部門の川越寛之氏をお招きし特別講演が行われました。学生は、広告制作やデータ分析などの実例を通してAI活用の最前線を学ぶとともに、『知っていること』と『言語化できること』の違いや、AI時代に求められる力について理解を深めました。

授業と連携企業について

「社会科学におけるソフトウェア設計」は、人間社会学部の3年生を対象に開講されている専門科目です。現代社会でさまざまな場面で活用されているデジタル技術の中でも、ソフトウェアによる課題解決に注目。特に、生成AIを活用した実際の課題解決をテーマの中心に据え、学生たちはソフトウェア設計に挑戦します。

今回の授業では、Abemaなどの動画配信サービスを始め多様なクリエイティブ事業を行っているサイバーエージェントから、インターネット広告事業本部 AIクリエイティブ部門の川越寛之氏をお招きし、インターネット広告の現場で活用されているAIについて、そしてAIを活用するために必要な力について、体験型のワークを交えながらご講演いただきました。

川越氏は「サイバーエージェントではインターネット広告の作成にAIを活用しています。AIの導入や技術的なアップデートの結果、広告を制作する人員の大幅なスリム化が行われました」と説明。どうしてインターネット広告でAIが活用されているか、業界の特徴や傾向のお話から講演がスタートしました。

インターネット広告の仕組みとAIの需要

川越氏は、「広告業界の中心はインターネットです」と説明。インターネット広告では、広告がどれだけ多くのユーザーに見られたり、クリックされたりしているかといった〈品質評価〉が、広告掲載において重要な指標になると話しました。

また、広告の効果は掲載直後に高まるものの、その後は徐々に低下していく傾向があることを紹介。「広告効果が下がると品質評価も低下するため、良い広告を維持するには継続的な更新が必要です」と説明しました。

さらに、品質評価を高めるためには、ターゲットに合わせてさまざまなパターンの広告を作成する必要があると解説。「効果的な広告運用のために100本程度の広告パターンが必要な場合もあり、人の手による制作だけでは対応しきれない量になっています」と話しました。

加えて、AIは広告の制作だけでなく、広告効果の予測にも活用されていることを紹介。「判断をAIに任せることで、データに基づいた客観的な分析が可能になりました。その結果、広告効果は導入前と比べて2倍以上に向上しています」と説明しました。

“AIっぽくない”正体は言語化にあり

実際に川越氏がAIで生成した動画を学生に披露しました。動画では、女性が画面に向かって「実践女子大学の皆さん、こんにちは」と語りかけます。この女性の映像だけでなく、音声もAIによって生成されたものだといいます。自然で“AIらしさ”を感じさせない動画に、学生たちからは驚きのリアクションが上がりました。

違和感のない生成動画について、川越氏は「つくるためには言語化が大切です」と説明。生成AIは、プロンプトと呼ばれるユーザーからの指示文をもとに、文章や画像、動画などを生成する仕組みです。

「例えば、この動画の『ピントがぼけている状態から徐々に合っていく』という演出も、プロンプトによって指示しています」と紹介。映像の状況や動きを正確に言葉で表現し、プロンプトとして入力することで、より自然な動画を生成できると述べました。

さらに川越氏は、「生成AIは人間が入力したプロンプトによって出力結果が決まります。100本のバリエーションもプロンプトによって作り出されており、“AIで手作り”されているんです」と説明。動画素材そのものはAIが生成していても、どのような動画をつくるのかを考え、指示を与えているのは人間であることを紹介しました。

AIと並走する制作作業と言語化

川越氏は「AIを活用するにあたって言語化は非常に重要ですが、プロンプトとして入力できるほど自分でははっきりと言語化できていない要素も活用していくことが、今後重要になってくるのではと感じています」と話し、学生に「自分の理想の服」を生成してみるワークを提示しました。

ワークでは、「自分の理想の服」をテーマに生成AIを活用。学生は理想に近い服の画像をAIに提示し、画像に含まれる特徴やデザイン要素を言語化しました。続いて、生成された文章をもとに、画像生成用のプロンプトを生成。完成したプロンプトを用いて画像生成を行いました。

学生たちは、画像の言語化からプロンプト作成までのプロセスにAIを活用することで、自分の中にあるイメージを具体的な形として表現する体験をしました。

講演の終わりに

川越氏は最後に、「“知っていること”と“言語化できること”はイコールではありません」と話します。ワークで体験したように、言葉にできないイメージであっても、AIを活用することで表現につなげることができると説明しました。

また、自身が好きなゾンビ映画を例に挙げ、「好きな作品であれば、どのシーンが魅力的で、何がどのように動くのかを具体的にイメージできます。しかし、そのイメージは自分が持っているものであり、AIは持っていません。AIに再現させるためには、自分のイメージを伝える必要があります」と解説。

さらに、学生がワークを通じて体験した“知っていること”と“言語化できること”の関係性に再び触れ、「“知っていること”を増やし、自分の引き出しを豊かにすることで、AIを十分に活用できる力を身に付けることができます。大学生活の中で、自分の好きなことや興味のあることについて知識を深めてほしい」と学生へ呼びかけ、講演を締めくくりました。

担当教員からのメッセージ

この講義は、AIの利活用についてをテーマとしています。

「AIの利活用」に限らず、データサイエンスなど私が講義で担当しているテーマは須らく、座学で理屈を知っても有用性や利便性に気づくことは難しく、実際に自分で使ってみたり、学生自身の身近で利用されている実例を実際に見聞きすることで、初めて価値を感じられるのではないかと考えています。

今回、川越様にはSNSなど学生の身近なことに対してAI技術が利活用されている実例をお話しいただき、演習を交えて実際に使ってみることを体験させていただきました。

心より御礼申し上げます。

受講生たちには、ご講演や講義を通じて「AIというよくわからないけど凄いっぽい新技術」から「AIという自分をサポートし、アイデアを具体化するツール」へ昇華させ、今後社会で求められるであろうスキルを持った人材への成長の一助としてほしいなと思います。

2024年11月20日

生成AIを使ってみよう!ゼミ「演習ⅡB」でサイバーエージェントとのコラボ授業が行われました。 

10月1日に「演習ⅡB」(担当:人間社会学部人間社会学科 粟津 俊二教授)のゼミで、株式会社サイバーエージェントの川越寛之氏による特別授業が行われました。広告事業に生成AIの利用を積極的に取り入れている企業の方から、生成AIの使い方を学びます。学生たちは実際に動かしてみながら、仕組みや注意点を確認しました。

広告はAIで作る時代

サイバーエージェントは、100以上の関連子会社を持つ企業。
主にインターネット広告・メディア・ゲームの3つの事業を主にビジネスとしています。メディアやゲーム事業ではインターネットテレビ局「ABEMA」や人気ゲームが次々にヒット。
川越氏はもう1つの柱であるインターネット広告事業に携わっています。
「ゲームなどと比べあまり身近ではないかもしれませんが、広告代理店の仕事です。皆さんのSNSに流れているような広告などを作っている」と話しました。

サイバーエージェントでは広告事業部のなかに「AIクリエイティブ部門」があり、川越氏はその統括をされています。
「7、8年前からすべてAIで製作しています」と、デザインや映像製作にとどまらず、広告の効果の予測や、広告文の作成などに至るまでさまざまな場面でAIを活用していると話しました。

AIはこれからどんどん身近に

いまは「毎日AIのニュースが流れてくる」時代と川越氏。技術の進歩は特に目覚ましく、この前までできなかったことがどんどん出来るようになっています。
川越氏はサイバーエージェントのアルバイトの大学生の作った動画を紹介。「バイトをはじめて2ヶ月くらいの学生でも、AIを使って動画やアニメーションが作成できる」と話しました。
そして、今後スマートフォンなどに次々に搭載され「これから皆さんAIを知らない間に使うようになる」と、どんどん身近な存在になると語りました。

「ただ、AIは危険なんじゃないの?と考える人もいると思います」と、安易にAIを利用することの危険性にも言及。
著作権や肖像権の問題などは、あいまいだったり未解決な部分、規制が進んでいないことが理由のひとつ。
「AIは便利ですが、きれいなものだけで出来ているわけではない」と語りかけました。

AIを使って画像を作ろう

「‎Gemini」と「話して」みることに。
チャットスタイルで文字を打ち込むと、すぐに文章が返ってきました。
知りたいことやただの雑談、旅行計画の相談など、学生たちはそれぞれAIと会話をしていきます。「渋谷でおすすめのランチを教えて」と聞いた学生は、いくつかお店が出てきて役に立ったようですが、「お菓子が食べたい」と話しかけた学生は「甘いものを食べたいときの対処法」など少し見当違いな回答も。

まだ的確な回答をするのは難しい場合もありますが、コツとして、文章で条件を細かく指定していくことを教えてくださいました。数字を指定したり具体例を出してもらうようにしたりすると、より正確に出てくる確率が高まります。
「会話をしてだんだん慣れていくと、思い通りのものが出てくるようになります」と話しました。

次に「Image FX」を使って、画像を作ってみることに。
テーマは「昭和と令和を掛け合わせたおもちゃ」です。かわいいブリキ人形や、近未来的なコマなどユニークな画像が、10分ほどで生成されました。学生たちは互いに見せ合い、感想を言い合っていました。

AIとの付き合い方は?

半導体などの技術が進み、普段使っている自然な言語で、AIと会話できることを実感した学生たち。
「では、生成AIは考えることはできるんでしょうか」と川越氏は問いかけます。
答えは「今はできない」です。
生成AIは学習した大量のテキストデータをもとに予測をして、確率が高い返答をしています。
このため、AIは「嘘をつく」ことも。AIは絶対的な事実を聞くには向いていません。
間違った情報をもっともらしく生成してしまうことをハルシネーションと言い、「これはものすごくよく起きる。」と川越氏。
「ハルシネーションは当面はなくならない。気を付けて使うしかないんです」と語りました。

最後に川越氏はAIのメリットを話しました。
「AIを使う一番の良さはスピードです」と、読むのが大変な大量の資料を読み込ませて要約させる使い方や検索方法を紹介。
「AIは何度聞いても怒らないし疲れない。便利に使うことで努力のしどころが変わってくる」と語り、「ぜひたくさん使ってみて、慣れていってください」と講義を終えられました。
最初はAIを難しく考えていた学生たちも、実際に使うことで身近に感じられるようになる授業となりました。

担当教員よりメッセージ

生成AIは急速に普及し、その生成物を見聞きする機会も増えてきています。様々なデバイスやサービスに組み込まれて行っていますので、今は使ったことのない学生も、遠からず、どこかで使うことになるでしょう。今だからこそ、長所も短所も、問題点も将来性も、積極的に体験して欲しいと思っています。今回は川越様に、最先端の使い方の一端をご紹介頂けました。生成AIについて、知識だけでなく実際の使い方も知ることができ、貴重な学びの機会が得られたのではないかと思います。川越様には、この場を借りて、心より御礼申し上げます。