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2025年8月6日

これからの時代に必要な企業の存在意義とは?「社会学概論」の授業で花王の小泉篤氏による特別講義が行われました。 

7月9日に「社会学概論」(担当:人間社会学部人間社会学科 原田謙教授)の授業で、花王株式会社特命フェローの小泉篤氏による特別講義が行われました。学生たちにとっても身近な製品を数多く作っている花王。長く愛されている企業ですが、その経営戦略は時代によって変わっています。これからの時代に必要な企業の在り方を、さまざまな観点から教えていただきました。

日本人の清潔文化を作った花王

小泉氏は入社から花王一筋。
執行役員を経て、現在は社内の課題解決などを担当する特命フェローを担っています。
インドネシア駐在の経験もある小泉氏は「グローバル潮流の変化に挑むイノベーションとは」というテーマで講演を始められました。

まずは花王の歴史から。
1887年創業で、今年で138年を誇る老舗企業です。
「清潔な国民は栄える」という理念のもと石けんを販売したのが始まり。日本人の清潔文化に大きく寄与してきました。
小泉氏は「インドネシアに駐在した際、この理念を実感しました」と話します。
発展途上国の一部では、川などで洗濯したり体を洗ったりすることがふつうで、衛生状態が悪いところも。地域の清潔と国の発展はつながっていると感じたと話しました。

花王は生活者が直接使うBtoCの製品を多く製造しています。洗剤やスキンケア、ヘアケアから化粧品まで幅広く、なんと61ものブランドがあるそうです。
授業の冒頭では、花王と聞いて思い浮かべるブランドのアンケートも。
スキンケア製品の「ビオレ」や洗剤の「アタック」、生理用品の「ロリエ」などが学生たちにも広く認知されていました。

利益を求めるより企業の存在意義を考える

ここからは経営の話です。
現在、花王をはじめ多くの日本企業は「ESG経営」を行っています。
ESGとは環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視する言葉。環境や社会に対して企業として責任ある経営を行うことです。
「日本の多くの企業はESG経営に舵を切る前は株主資本主義経営だった」と小泉氏。
「株主の利益を最大化させるために会社を運営することが最優先されていた」と話します

グローバルで転機が訪れたのは2008年。リーマンショックが起こり企業の株価は急落。
「そこで企業は株主資本主義経営に対して反省したのです」と小泉氏。
短期的な利益よりも、なぜ企業が存在するのかという長期的な会社の価値を求めるようになっていきました。
2020年にはダボス会議で「企業は収益の最大化だけでなく、社会課題の解決のために取り組むべき」とマニフェストが改訂され、世界的にESG経営の機運が高まりました。

ブランドにもパーパスはある!

花王も2019年から本格的にESG戦略を取るように。
花王の原点である清浄観から「きれいをこころに、未来に」をスローガンに、きれいな世界を作ることで社会に貢献する企業を目指しています。
こういった企業の社会的意義を表す言葉は「パーパス」と呼ばれます。「その企業は何のために存在するのかを表す言葉」と小泉氏は説明しました。
花王はパーパスにのっとり、コロナ禍では「プロテクトJAPAN」というプロジェクトを展開。消毒液の増産に対応したり、感染予防の情報やエッセンシャルワーカーの支援も行ったりしました。

「パーパスは企業ブランドの花王だけでなく製品のブランドにもある。61のブランド全部にパーパスがあります」と小泉氏。
例えば生理用品の「ロリエ」は「生理現象をとりまく環境をより良くしていく」がパーパス。生理の考え方や仕事中の女性の居心地の悪さを変えるため、職場のトイレに生理用品を無料で提供する「職場のロリエ」という活動も行っています。

イノベーションを起こすことの大切さ

「コロナ禍以降、世の中はより変化が激しくなり、想定外のことが起きるのが当たり前になってきている」と小泉氏。
またECやSNSの発達で海外市場は拡大し、カネもヒトもボーダレス化しています。
そこで必要なのが社会やビジネスに新しい価値を生み出す「イノベーション」です。

イノベーションの一つとして有効なのが「役に立つ」ものから「意味がある」ものはなにか考えること。(ライプニッツ代表山口周氏の「ニュータイプの時代」から)
例えばフロア用掃除道具として人気の高い「クイックルワイパー」は、掃除機が重くてかけられない妊婦や障がい者にとって「意味がある」製品。
ターゲットとなる層は狭くても、「意味が有る」必要とされているものを作ることで企業としての価値を高めています。

ガラパゴス化しないために行動しよう!

これから就職活動をする学生に向け、小泉氏は企業のパーパスを見て自分に合ったところを探すことを勧めました。
また、もうひとつ「相手の意見を聞く」ことも大事なこととして伝えます。
「10年後には皆さん海外の仕事に携わるのがふつうのことになります」と小泉氏。直接海外に行かずとも、取引をしたり一緒に仕事をしたりという機会は必ずあると話します。そのために「自分をガラパゴス化させないように行動しましょう」と話しました。
「海外旅行やショートステイなど、文化的な背景が違う人と出会い、現地の人と少しでも触れ合ってほしい。何か違うなと感じることがグローバルマーケットの最初だと思います」と語り掛けました。

授業後のアンケートには学生たちからの質問がたくさん寄せられました。
これから就活を迎える学生たちにとって、企業の見方を学ぶ貴重な講演となりました。

担当教員からのメッセージ

人間社会学部の1年生には、社会学・心理学からビジネス、そして社会デザイン/イノベーションをめぐる基礎を幅広く学んでもらいます。「社会学概論」の授業では、家族や仕事にかんするライフスタイルの変化について学習してきました。
今回の特別講義は、洗剤やスキンケア、そして化粧品といった学生にとっても非常に身近な花王ブランドの具体的なトピックから、ESG経営、イノベーションを起こす大切さまで、とても充実した内容でした。学生にとって、まさに「人を知り、社会を知り、ビジネスを学んで、よりよい未来をデザインする」とても良い機会になりました。
ご多忙の中ご講演頂いた小泉様、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年7月25日

自分の強みを伸ばしていこう!「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員の関根近子氏による特別講義が行われました。 

さまざまなゲストをお迎えして貴重なお話を伺える、毎年人気の「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業。6月19日には株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された関根近子氏をお迎えしての特別講義が行われました。自分の強みを知り、前向きに仕事を楽しむ大切さを教えていただきました。

役員になるなんて思いもよらなかった入社時

学生たちはこの講演に向け、「自分の強みを10個書き出す」という事前課題に取り組んでいます。
進行担当の学生から紹介を受け、登壇された関根氏は「課題は難しかったですか?」と問いかけました。「なかなか自分の強みは分からないものです。この授業を通し、強みを見つけていきましょう」と講義を始められました。

関根氏は18歳で資生堂に入社し、当初は地方の美容部員として働き始めました。
「人にお化粧するのが好きだったの?と聞かれるのですが、そんなことない。生活のために入社したんです」と関根氏。ご家族が突然の事故に遭い働かざるを得ない状況になり、一番初任給が高かった資生堂を選んだのだと話します。
「当初は結婚したら辞めると思ってました。女性管理職、ましてや役員なんてなるぞと思ってなかったんです」。
しかし「私の長所は明るくて元気、そして向上心があること。今でも勉強したいことがたくさんある」と語り、チャレンジ精神をもってキャリアを積み重ねてきたのだと実感をもって語りました。

同じ仕事でもやりがいに変える方法

関根氏は入社当初のことを振り返って自身の強みをみつけたきっかけを語ってくださいました。
それは美容部員から、プロモーションチームに異動したときのこと。
百貨店の食品売り場などに特設ブースを設置し、推奨品を販売する仕事でした。推奨品には高いノルマが課され、嫌がられてもしつこく声をかける日々。
「自分の仕事は人から嫌がられる仕事なんだろうか」と悩んだ関根氏は先輩に相談にいきました。

すると先輩から「そんなに嫌なら辞めていい。でも辞めるまでは、あなたの強みをしっかり使って接客しなさい」と言われたのです。
「そうか、私の強みは美容の知識だ、私は美容のプロなんだからと気付いたんです」と関根氏。そこから一人ひとりに合わせたカウンセリングをし、美容知識をお伝えする接客方法に転換しました。
すると、徐々にファンが付き、商品も売れていくようになったのです。さらにお客様から「ありがとう」という言葉をもらった関根氏は「商品を買ってくれたお客様に言う言葉だと思っていたので、とても嬉しかった。店に立つのが楽しくなったんです」。
そして「心も折れなくなった。お客様に断られても、きれいになるチャンスを逃したわね、と思うようになった」と笑いを交えて語りました。
「同じ仕事なのに、ちょっと目線ややり方を変えただけで喜びを得るようになり、やりがいを見出すことができたんです」と話しました。

失敗を恐れずチャンスを活かす

ではどうしたら自分の「強み」が分かるのでしょうか。
関根氏は「資生堂で役員をやっているとき、一番重要視したのは自分の成長」と話します。コツは「一年前に比べてどのくらい成長したのかを知る。それを定量的に測ること」と関根氏。
例えば本が好きな人の場合、去年50冊の本を読んでいたら今年は60冊読むようにするなど、記録を取って目に見えて分かるようにすることが大事だと言います。去年より上がっているということで自信もつき、何を学んだかも具体的に伝えられるように。
「グローバル人材に必要なことは、自分の意見をきちんと言えること。強みを人前で堂々と言えるようになれば自己効力感も生まれます」と話しました。

もうひとつ大事なことはチャレンジ精神だと関根氏は語りました。
どちらかというと女性は一度居心地がいい環境に入ると外に出たくなくなる傾向にあると話します。
しかし、新しい環境に飛び込むことを躊躇しないでほしいと伝えました。異動や単身赴任、昇進や役員になるなど、仕事にはたくさんの変化がつきまといます。
「CHANCE(チャンス)がきたらCHANGE(チェンジ)することを怖がらない。自分には無理だと思わず、失敗を恐れずチャレンジしてください」と語りました。

強みを伸ばせば自分は変わる

ここで関根氏は一冊のノートを見せてくれました。
当時、義理の母との関係がうまくいかず悩んでいたと言います。
「それまでは人の悪口や義母の愚痴ばかり言っていて、自分でもいやでした」と告白されました。そのとき会社で、ポジティブ思考について講義を受け感動し、自身の考えや思いをまとめたのがこのノート。
「ポジティブ思考とは苦しい状況のなかでも希望や解決策を探すこと。ポジティブに考えることで辛い現状にどうやって付き合っていくか考えられました」と体験を話されました。

そして関根氏は「他人を変えようとしても難しい。でも、自分は変えられる」と力強く言います。
「他人と比べず、過去の自分からどう成長しているかを考えること。短所は誰にでもあります。箱で例えると長所は辺、角が短所。長所を伸ばせば器が大きくなる。だから強みを伸ばしていきましょう」と学生たちをエンパワーメントしました。

どうやって強みを見つける?

講義のあと、学生たちからの質問の時間が取られ次々に手が上がりました。
「自分の長所をみつけるコツは?」という質問には、「打ち込むことが出来る好きなことがなにか考えること。また、何か周りの人からほめられたことがないか考えてみましょう」とアドバイス。

次の学生は「自分の考えや思考を押し付けにならないように伝えるときの注意点は?」と質問しました。
「傲慢に取られないように。自分の伝えたいことを言うことよりも、相手を尊重するという気持ちを少し多く持つこと」と回答されました。

最後に代表の学生からお礼の言葉がありました。
「自分の強み、理想のキャリアはなにかを考えるきっかけになりました」という言葉通り、学生にとって学びに繋がる講演となりました。

担当教員からのメッセージ

私が資生堂の人事部に勤務していた時から色々とご指導いただいた関根さん、いつお会いしても凛とされた佇まいは、毎年その輝きが増していると感じています。関根さんとお会いすると、どんな時も、決して後ろを向かず、ポジティブに前に進むことの大切さを思い出します。
今年の事前研究では、一人ひとりの魅力を探り、強みを引き出す内容でしたが、とても盛り上がったのが印象的でした。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年7月22日

子どものスタートラインは同じじゃない?「女性とキャリア形成」の授業で認定NPO法人「カタリバ」代表の今村久美氏が特別講義を行いました。 

7月3日に女性とキャリア形成(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)「カタリバ」代表理事の今村久美氏による特別講義が行われました。今村氏は大学生のときに団体を設立しています。その後、なぜNPO法人という形を選んだのか、いま子どもたちにどんな支援が必要なのかを、ご自身の体験を交えて詳しく話してくださいました。

お互いに「語り合う」ことで自分を知る

まずはアイスブレイク。
今村氏は「この授業のクラスメイト同士について詳しく知っていますか?」と尋ねました。
どういう経緯でどんな選択をして本学に進学することを選んだのか、今後どんな人生を歩んでいきたいと思っているのか、3~5人のグループに分かれディスカッションを行いました。

いつも授業で顔を合わせていてもなかなか深い話はしないもの。改めてお互いを知る機会になりました。
「私のNPO法人の名前はカタリバと言います」と今村氏。
「学校生活って、教えられることはたくさんあるけどお互いのことを話すことは意外とない」と言い、「自分の現在地を知るためには、語り合うことが大事じゃないかと思って」、団体にこの名をつけたと語りました。

スタートラインの位置は公平じゃない?

今村氏は続いて学生たちの家庭環境について質問を投げました。
「自分の条件に当てはまる数を数えていってください」と8つの項目を伝えます。
離婚していない家庭である、携帯電話を止められる心配をしたことがない、家計を助けなくてはという心配をしたことがない、大学の学費の心配をしなくてもいい……。
6つ以上当てはまった人がクラスの多数を占めています。

ここで今村氏は、同じ質問を行ったアメリカの子どもたちの動画を見せました。条件に当てはまったら先に進めるルールで、どんどん進んでいく子も、一歩も進めない子もいます。
動画を見終わったあと、今村氏は「自分の回答も含め、この動画を見てどう思ったかをまたグループで話し合ってみてください」と再度ディスカッションを促しました。
ディスカッションのあと、学生たちからは「今の時代みんな学校に行けてスタートラインは同じように見えるけれど、家庭環境などでスタートラインが違うのだと実感した」「自分で選んだわけではなく、もともとその位置で決まっていたと知った」などの感想が出ました。

地元の閉塞感が設立のきっかけ

今村氏は岐阜県出身。
実家は飛騨高山で土産物屋を営んでおり、両親も親戚も大学に行ったことがない家庭だったといいます。
特に女性は高校を卒業したら就職し、結婚し子どもを産むことが良いとされ「女性が意見を持つなんていけないことのような雰囲気」があったと言います。今村氏はそんな環境に閉塞感を覚え、どうしても地元を出たいと大学進学を志します。

晴れて神奈川の私立大学に進学した今村氏は驚きました。
同級生はみんな良い服を着ています。車で通っている人も、海外留学をしたことがある人もたくさんいました。「自分が高校で常識だと思っていたことと、世の中はこんなにも違うのだと実感した」と言います。
充実した大学生活を過ごしていた今村氏は、成人式のために地元に戻ります。
すると、昔の友人にあったとたん同調圧力のようなものを感じ、大学生活が楽しいということを言えなくなってしまったのです。この差はなんなんだろう、と怒りや悔しさを感じた今村氏。
その後、大学の授業で少年法を学んだこともきっかけとなり、家庭環境などにより、スタートラインに立てない子どもの支援をしたいと「カタリバ」を設立することを決意したのです。

悩みごとは「発見のアンテナ」!

そもそもNPO法人とはなんでしょうか。学生からは「ボランティアのイメージ」との声が。
今村氏は頷いて、「寄付金を集めて、そのお金で行政の支援が届かない人たちを助ける活動を行っている」と話しました。
「ビジネスの領域や行政では解決できない、取り残された課題がNPO法人の領域です」と今村氏。
カタリバでは、シングルマザーの家庭の子たちなどに向けて、無料でご飯が食べられて勉強も見てもらえる拠点の運営などを行っています。行政と連携し、支援が必要な人に届くように活動を広げています。

「大学生活で感じたもの、地元から得たものがたくさんあります」と今村氏。地元から首都圏に出たことで、違いについて気付けたと話します。
そして「悩みごとは発見のアンテナ」と語りました。
「劣っているのではなくて、それは自分の強み。自信のある人には気付けないことに気付ける」と言い、「皆さんはこれからなんでもチャレンジしていける。これからの人生も頑張ってください」とエールを送りました。

小さな課題を「みんなの課題」にしていこう

講演後は学生たちからの質問タイム。
「NPOが取り組む課題で一番大変な問題はなんですか」という質問に、今村氏は「ニュースやテレビで報道されない課題。例えば子どもの貧困についても2016年頃からようやく取り上げられて表面化していった。それまでは家庭の問題と切り捨てられてしまう。メディアが取り上げることでみんなの課題になる」と話し、「皆さんもぜひ、皆さんの感性で捉えた小さな課題をSNSなどで知らせてください」と話しました。

最後にクラスを代表した学生がお礼の言葉を述べました。
「NPO法人の活動について初めて知りました。今後自分もどのような活動が出来るかと考える機会になりました」と感想を語り、新しい学びに繋がったことを自身の体験を交えて語りました。
学生たちにとって多くの気付きのあった授業でした。

担当教員からのメッセージ

女性とキャリア形成の最後のゲストに、カタリバの代表理事である今村久美様にお越しいただきました。
以前から存じ上げていた方ですが、直近では、東京2020オリンピックパラリンピック
競技大会組織委員会の文化教育委員会の委員としてご一緒させていただきました。
どんなことがあっても、こどもたちの居場所づくりを真っ先に考え、奔走されている姿には、
いつも感動していました。
今回、改めてご講演をお聞かせいただき、真の意味で将来の日本を考えておられる先導者であることを
改めて感じました。
大変ご多忙の中お越しいただいたことに心から感謝申し上げます。

2025年7月22日

SNSのトラブルから身を守るには?「情報セキュリティ」の授業でデジタルアーツとの特別コラボ授業が始まりました。 

「情報セキュリティ」(担当:人間社会学部社会デザイン学科 板倉文彦教授)の授業で、6月25日にデジタルアーツ株式会社による特別講義が行われました。SNSが当たり前の現代、情報とどう付き合っていくかは学生にとっても身近な問題です。情報セキュリティの大切さを改めて学びました。

有害サイトから子どもを守る

登壇されたのは関萌緑氏。関氏は本学の卒業生です。
「今日は、”セキュリティ女子会”をしようと思います」と明るく学生たちに話しかけ、ざっくばらんに意見を出してほしいと授業が始まりました。

デジタルアーツは今年設立30周年を迎える、インターネットセキュリティ製品を製造・販売する情報セキュリティメーカーです。
ウェブはもちろん、ファイルの送信、メールなどインターネットを介して行われる情報のやりとりを守る国産のセキュリティソフトを提供しています。主な取引先は企業や役所、学校です。
「i-FILTERという製品は、みんなも使ったことがあるかもしれません」と関氏。
子どもたちが学校教育のなかでインターネットを使う際に、犯罪やアダルトなどの有害な情報に触れないよう、それらのウェブサイトをブロックする設計です。その他、インターネットの安全利用のための活動や利用の実態調査など、幅広く情報セキュリティに関する活動を行われています。

SNSのトラブルはすぐそばにある

関氏はまず「SNSやウェブ上でのトラブルってどういうものが思い浮かびますか?」と問いかけました。
「有名人へ誹謗中傷」「覚えのないメールが来る」と学生たちが回答すると、関氏も頷いて「みなさんにとっても身近な問題ですよね」と話しました。

SNSのトラブルはさまざま。いわゆるバイトテロと言われるような不適切投稿、プライベート情報の漏洩、誹謗中傷、闇バイト……。
関氏はそれぞれを詳しく解説しながら「気軽な気持ちでやってしまうと人生が大きく変わってしまいます。一度インターネット上に書いたものは消しても残ります。匿名のアカウントも特定される。マイナスの書き込みはしないようにしましょう」と注意喚起。

関氏は現在問題になっている、いわゆる闇バイトにも言及。
運転だけ、荷物を運ぶだけなど簡単な仕事で求人し犯罪に巻き込みます。実際、学生が車の送迎のリゾートバイトと思って応募したところ、闇バイトだったという例も。
関氏は「SNSでうかつな投稿は被害者にも加害者にもなる。知らなかった、悪気がなかったでは済まされない。身を守るために知識や意識、対策が必要です」と話しました。

どんな年代にもセキュリティは必要!

ここからは事前に行っていたアンケート結果をみながら進みます。
「ネガティブなことをSNSに書いたことがある」という質問の回答は29%。愚痴などを言いたくなったら親や友人に聞いてもらう学生が多数でした。なかにはchatGPTなどに書き込む学生も。
関氏は「今時ですね」と驚きつつ、「SNSを健全に使っているなという印象です」と感心されました。

「偽メールや詐欺などを自分で選別できるか」という質問には36%が「はい」と回答。約1/3の学生が自分で偽物を選別できると思っているようす。
しかし関氏は「いまの偽サイトなどは本当に精巧。セキュリティのプロでも引っ掛かることも。それぐらいいろいろな手口があります」と注意を促しました。

関氏はインターネット利用するにあたって、年代別に必要なセキュリティについての一覧を示しました。
高校生までは親が管理したり、学校側で対策をしたりなど有害情報からこどもを守るような対策が取られています。
「しかし大学生以上は誰かが守ったりしてくれない」と関氏。「脅威が多様化、巧妙化しているなか、前年代にセキュリティは必要です」と話しました。
ではどうしたら大学生から高齢者まで、大人たちにセキュリティを使ってもらえるでしょうか。

どうしたら大人たちにセキュリティを使ってもらえる?

いよいよ学生たちへの課題が発表されました。
テーマは「大人にセキュリティを使ってもらうための仕掛けを考えよう」。学生たちは、それぞれ班に分かれテーマにあった施策を考えます。
大学生・社会人・高齢者の3パターンを班ごとに企画することが課題です。

まずは現状分析として、全ての大人にセキュリティを使ってもらえていない理由を整理していきます。
そもそもセキュリティは大人にも必要だと認識していない層が一定数いるという現状があります。
セキュリティは子どもを守るもの、という認識で自分は大丈夫だと思っているひとたちが多いというのです。
また子供時代にセキュリティを入れた携帯などを使っていた記憶から、セキュリティを入れると自由度が下がったり制限されたりすると思っている人たちもいます。
こういったマイナスイメージと向き合い、幅広く付き合ってもらえるようにするためにはどうするべきか考えるのです。

1か月後にプレゼンテーション!

学生たちはさっそく班ごとにグループディスカッションを開始。
どうするべきか、今の自分たちの認識について話し合いました。
大学生向けの班では「製品について詳しくないのでセキュリティ製品を選ぶハードルが高い」という意見が。「セキュリティ製品は高いので選べない」という意見もありました。

社会人向けの班では「スマートフォンを多く使う層とパソコンを使う層では違うので、ターゲットをしぼったほうがいいかも」という観点で話し合い。
高齢者向けの施策を考える班では「高齢者に新しい知識を受け入れてもらうのは難しいのでは」と懸念を話していました。

学生たちはグループワークを通し、企画を作成。1か月後に発表を行います。
話し合いの段階で、たくさんの良い視点が出ていることに関氏や企業の皆さんは感心。発表を楽しみにしていました。

担当教員からのメッセージ

「情報セキュリティ」は基本的に座学中心の授業形態ですが、学んだ知識・スキルを生かすこととその定着を目的として、授業後半にPBLが組み込まれています。
PBLでは企業から課題が与えられ、それに対して学生達がプレゼンテーションを行うことが予定されています。
企業からのリアルな課題にいきなり取り組むことは困難ですが、今回は企業の方がファシリテーターとして学生の輪に加わっていただけたことで学生からも活発な意見が出ていました。
学生達の真剣な取り組み姿勢を見て、今から発表が楽しみです。
学生の皆さんには、授業で学んだ基礎的な知識・スキルが、実際の製品・サービスに転用されていくプロセスを実感することを期待しています。

2025年7月18日

金融リテラシーを高めてよい暮らしを実現しよう!「家庭経営学」の授業でJ-FLECによるお金についての特別講義が行われました。 

生活文化学科「家庭経営学」(担当:生活科学部生活文化学科 高橋桂子教授)の授業で6月9日に金融経済教育推進機構(J-FLEC)による特別講義が行われました。「社会人として知っておきたいお金の話」と題し金融リテラシーを高める大切さと、トラブルに巻き込まれないための心構えなどを詳しく教えていただきました。

お金の知識を身に付けるとどんな良いことがある?

登壇されたのは種村隆行氏。銀行に約30年勤め、保険代理店などを経て、現在は民間企業の社外監査を担っています。
種村氏はJ-FLECの認定アドバイザー。J-FLECは、幅広い年齢層に金融の知識を高めてもらうために政府、日銀、全国銀行協会などが出資し2024年に設立された認可法人です。
「日本はアメリカに比べ金融教育が遅れていると言われています。皆さんも今回を機会に金融リテラシーを高めていってほしいと思います」とお話しされたあと、

「そもそも金融リテラシーとはなんでしょう」という問いかけから講義は始まりました。
種村氏は「お金に関する知識と判断力のこと」といいます。日々の生活でのお金に関する悩みから、将来のこと、資産形成に至るまで幅広くお金に関わる知識のことで、
「リテラシーがあれば、家計の管理ができ、計画を立ててお金を準備できるので将来やりたいことができるようになる」と種村氏。
そのほか詐欺などのトラブルに遭うことも減り、突然の災害などに備えられる利点も。「つまり経済的に自立して、よい暮らしを実現できるのです」
そして「税制は毎年変わる。金融リテラシーは一度勉強して終わりではなく、常に勉強を続けることが大事」と話されました。

人生のプラン、考えてる?

また、種村氏は「生活設計」の大切さを伝えます。
生活設計とは将来どんな人生を送りたいかの構想を描くこと。
何歳まで働くか、実現したいことは何か、なにがほしいか……。「まだ学生ですべてを考えるのは難しいかもしれませんが、頭の片隅に置いておくといい」とのこと。
なぜかと言えば、ライフイベントにはお金がかかるからです。
例えば結婚する場合には、式や新婚旅行で約300~500万円ほどの支出があるようです。また郊外の一戸建ての場合、家を買おうとすれば2,000-5,000万円かかります。これは都内のマンションであれば1億円以上かかることもあるようです。
「自分の実現したいライフイベントにはいくらかかるのかイメージすること。これらを考えて生涯年収、支出のイメージをつかむことが大事です」と話されていました。

「収入と支出のバランスを考え、家計を管理することが大事」とのこと。
大学生の支出には、通信費、洋服代、家賃、食費、友達と遊ぶお金など支出はさまざまです。
「家計の見直しのポイントは、必ず使うお金と、ほしいものややりたいことに使うお金に分けること。優先順位をつけ支出を減らす工夫をしましょう」とアドバイスされました。

ローンを借りるときは慎重に

講義のメインテーマは「借りる」でした。まずローンについてのクイズです。
海外旅行のため30万円を金利18%で借りた場合、毎月5,000円ずつ返済すると返済額や期間はどれくらいかかるかというもので、毎月定額返済のリボルビング払いの問題になります。
答えは返済し終わるまでに13年かかり、2倍以上、約77万円になるそうです。「みなさんのイメージしていた額とは違うと思います」
「お金の貸し借りには利子や金利がかかる。借りたら返さなくてはいけない。車や家など大きな買い物のときは利用するのもいいですが、安易にローンは使わない方がいいと思います」と話されました。

学生のうちに気を付けておきたいものにはクレジットカードの支払い方法もあります。
一括払い、リボ払いや分割払いなどさまざまありますが、特にリボ払いは金利が高く返済総額が増えてしまいます。
「必ず支払い方法を確認すること。私も以前知らずにリボ払い設定になってしまっていたことがありました」と注意を促されていました。

お金のトラブルに巻き込まれないために

最後に、お金によるトラブルについて説明されました。
借金を返せずにさらに借りてしまう多重債務や、違法な金利で貸し付けをしてくるヤミ金融、マルチ商法や詐欺被害。
種村氏は、「ローリスクハイリターンのおいしい話はありません」ときっぱり。「今だけ、あなただけに」と向こうから近づかれても怪しいと思ったらはっきり断ること、テレビ、SNSなどで広告出ていても安易に信用しないことなどを繰り返し注意喚起されました。
「相手はプロです。プロの詐欺にかかったら銀行の人でも騙される。接触しないことが大事」ですが、万が一、トラブルに巻き込まれてしまったら必ず周りに相談するようにと勧めていました。親や友人のほか、消費者ホットライン(188)や警察といった具体的な方法を教えてくださいました。

講義のあとには、学生からの質疑応答の時間も取られました。
「世間的に投資を勧める流れになっていると思うが、若いうちは余裕がないのですがどうすればいいでしょう」という質問には、「余ったお金があれば、で良いと思う。お金に余裕がないうちはFPの資格を取るなど、お金の知識を付けるといい。将来の自分に絶対役に立ちます」と回答されていました。

なかなか学ぶことのない「お金の授業」を受け、学生たちのお金に対する意識も変わった貴重な講義でした。

2025年7月11日

たくさん達成感を得て自信を付けよう!「女性とキャリア形成」の授業でJFEテクノス社長による特別講義が行われました。

「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で6月5日に、JFEテクノス株式会社の能登隆代表取締役社長をお招きしての特別講義が行われました。仕事との向き合い方や自信を持つことの大切さなど、実体験を交えてお話してくださった能登氏。上に立つものとしての心構えなども含め、なかなか聞くことのできない「社長業」について学生たちが触れる機会となりました。

仕事は金銭的に自立する手段?

JFEテクノスは一言で言えば「街のあらゆるインフラのメンテナンスを行う会社です」と能登氏。
「皆さんの就職希望先とは少し遠いかもしれませんが、一人の社会人のサンプルとして気軽に話を聞いてほしい」と講義を始められました。

学生時代は火を燃やす「燃焼」に関わる勉強をしていた能登氏。
いまでも星空の下で焚火をたいて、コーヒーを飲むのが癒しのひとときだと話します。ただ、「私はこだわりがないんです」と自己分析。
「信念というものがないよな、と言われたこともある」と告白されました。そのためこれといってやりたい仕事があったわけでもなく、仕事は「金銭的に自立するための手段と思っていた」と言います。
ただ、地図に残るような大きなものを作れる会社に行きたかったことと、専攻した燃焼に関する仕事をしたいと思い、現在のJFEの前身である日本鋼管へ入社されました。

偉くなるとやりたくない仕事も増える

社会人になって最初の1年は、大学のころと同じように燃焼の研究を行い「学生時代と近いことをしてお金ももらえるなんて嬉しいと思っていた」と話しました。
しかし年が経つにつれ、自分の仕事に責任がのしかかってくるようになり、徐々にストレスに。

特に、より高いポストに就くようになるとそれは顕著でした。
会社で偉くなるとは部下が増え、権限が増え、責任も増えるということ。
能登氏は「偉くなるとは、自分の知らない領域の仕事を担当することです。自分のやりたい仕事以外のことをやることになる」と語りました。ときには意見の合わない人と一緒に仕事をすることも。
能登氏にとって仕事とはだんだんと、ただ試練を乗り越えうまくやり遂げるものになっていったと言います。
「心に蓋をして、自分に厳しく、人にも厳しくなっていってしまったんです」。

天狗になっていた自分を猛省

仕事がうまくいくと達成感が得られます。
「仕事にはトラブルはつきもの。トラブルがあってもみんなで協力しあって乗り越えることで自信が生まれる。客に感謝され、上司や仲間からも褒められることは、仕事を続けるモチベーションになります」と話しました。

ただ、能登氏は「自信を持ちすぎて、天狗になってしまった」と語りました。
人の話を最後まで聞かずさえぎっては切り捨てる。人として傲慢な態度を取っていたと告白されました。だんだんと部下の力が融合せずうまくいかなくなっていったと言います。
そんなある日、信頼していた女性の部下から「上から目線で皆を見てますよね」ときつい一言が。
能登氏はそれまでコミュニケーションがうまく出来ていると思っており「自分の態度が人を傷つけているとは分からなかった」ため、その一言に大きなショックを受けます。
未熟さを猛省し、そこから話すときはゆっくりと、人の話をしっかり聞くように。徐々にまた空気が良くなり、多くの人たちに受け入れられ、仕事が上手になっていったと話しました。
「社長というのはあくまで社長業なんです。営業などと同じ、一つの仕事」とかみしめるように語りました。

仕事は自信を持たせてくれる手段!

能登氏は「たくさんの達成感を自分に与えましょう」と学生に語りかけました。
人から褒められる経験を増やすことで自信を付けることの大切さを伝えました。
ただ、自信を付けすぎると傲慢になる危険も。けれど「天狗になってもいいんです」と能登氏。
「周りや友人など、おかしいよと言ってくれる人がいるはず。そのときに軌道修正すればいい」と話し、周囲に耳を傾けることも伝えました。

いまの能登氏にとって仕事とは、金銭的に自立する手段だけでなく、自信をつける手段であり自分をポジティブにしてくれるものになったと話しました。
そして学生のうちに「異人コミュ力」を付けてほしいと伝えます。
「異人コミュ力とは私の造語で、自分と異なる考えの人と話す力。社会人になると本当にさまざまな人と仕事をする。自分の考えと違う人の話を聞くことに慣れておくといいでしょう」とアドバイスしました。

自分が変われば周りも変わる

講演後には質疑応答の時間が取られ、学生が次々と手を挙げました。

「部下から指摘されて改善したあと、部下や周りの反応に変化はありましたか?」という質問には「数か月後に同じ部下から、やればできますねと言われました」と笑いを交えて回答。
「徐々に周りからアイデアや企画も出てくるようになり、雰囲気が良くなっていきました。自分が変われば周りも変わることが分かった」と話されました。

最後に、司会進行をした班の学生が代表しお礼の言葉を述べました。
「当初は社長と聞いて、難しい話をされるかと思っていましたが、等身大の話をしてもらえ社会人に対しての解像度が上がりました」と話しました。
「就活に自信がなかったですが、仕事は自信をつけてくれる手段と聞き、自分の人生を豊かにしてくれるものなのだと気づきました」と話し、今回のお話が身になったと伝えました。

担当教員からのメッセージ

能登社長は、今年初めてお迎えいたしました。歴史ある企業のトップを務められる能登さんですが、語りがとてもソフトで、しかも、学生の視点を意識いただいた内容に、学生が真剣に聞き入る姿勢が印象的でした。様々な部下の方とのやりとりには驚くこともありましたが、それだけ社員一人ひとりとの絶対的な信頼関係を築かれている能登社長でなければあり得なかったエピソードも沢山聞かせていただきました。能登様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年6月27日

自分らしく生きるヒントとは?「国際理解とキャリア形成」でフィジーの文化を学ぶ特別授業が行われました。

「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月3日に株式会社アールイーカンパニーとの特別コラボ講義が行われました。「フィジー留学カラーズ」の運営を手掛ける皆さんが南の島を舞台にしたディズニー映画をベースに、南太平洋の文化を解説。和気あいあいとしたムードのなか、異文化を知る機会となりました。

学生のうちに海外に行ってみよう

教室にはアールイーカンパニーの多田祐樹氏が登壇し、ビデオ通話もつないで授業が始まりました。
植林氏は大阪から、長瀬氏はフィジーからの参加です。
「私だけが話していてもつまらないので、皆さんにも参加してもらいながら話していきたいと思います」と多田氏。
リアルタイムの掲示版を使って、学生たちも随時感想を伝えながら進めていきます。

多田氏は貿易業を経て、2018年よりフィジー共和国にて、主に日本人を対象とした英語学校「カラーズ」を創業。現地で日本語学校も開講し、フィジーの人が日本で働ける機会を増やすプロジェクトも行っています。
多田氏はまず画面に「17%」という数字を示し「なんの数字でしょうか?」と問いかけました。これは日本人のパスポート保有率です。
ただし、18~22歳の大学生の年齢に限ると40%と高い数字です。
多田氏は「しかし、65歳までの労働人口で見る割合だと20%強と減ってしまう」と話し、学生のうちに海外含めさまざまなところに行ってほしいと伝えました。

フィジーの歴史や文化とは?

学生たちは事前準備として、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」を視聴してきています。
この映画の主人公モアナが南の島から船に乗り冒険をするという物語。この映画をベースに「南太平洋に息づく文化と”自分らしく生きる”ヒント」と題しての講義が始まりました。
多田氏はまず南太平洋の島々にすむ民族の歴史から説明。
約6000年前、オーストロネシア語族が大陸から海を渡ります。
優れた航海術で広大な領域に分布し、南太平洋の島々であるフィジーやサモア、トンガなどにも到達しました。

次に植林氏が3人の男性の写真を見せました。南太平洋には3種の族があり、外見も違います。
それがポリネシアン、メラネシアン、ミクロネシアンの3つ。
ポリネシアンはアジア人の肌色に近かったり、メラネシアンは髪の毛がアフロのようにきついカールがかかっていたり。
フィジーはメラネシアンとポリネシアンが混在する島です。ラグビーが強いことで有名ですが、それは遠い昔、厳しい航海を生き抜いた、強い体を持った先祖の血を受け継いでいるからとも言われています。

多田氏は「KAVA(カヴァ)」という伝統的な飲み物を紹介。
儀式や祝い事に欠かせない飲み物です。現在は観光客も飲むことが出来るものですが「私は大好きです」と多田氏。
「カヴァは歓迎してくれている証。海外の人に自分の国の文化を受け入れてもらうのは嬉しいですよね。私は現地で出されたものは全部食べるのがポリシー。皆さんもフィジーに行くことがあったら是非試してみてください」と語りました。

やりたいことを宣言しよう!

続いて長瀬氏が、映画のストーリーにベースに「主人公たちはどんな失敗や不安を抱えていたか考えてみましょう」と語り掛けました。
「皆さんも過去の失敗や不安を振り返ってみましょう。うまくいかなかったこと、恥ずかしかったことなど小さいことでもいいので教えてください」と長瀬氏が言うと、学生たちは掲示板に次々と書き込み始めます。「受験のときもっと勉強を頑張ればよかった」「留学が不安」などの意見が書き込まれました。

意見が集まったところで、長瀬氏は映画のある台詞を紹介。
それは「先のことは分からない。でもどんな自分になるかは決められる」というもの。
長瀬氏は「みなさんも、これからどんなことがやりたいか、どんな自分になりたいか、宣言してみましょう」と促します。学生たちはグループで話し合いながら宣言を書き込みました。
「フィリピンで短期留学をしたので今度は長期で行ってみたい」「去年留学をしなかったけれど今年こそ行く」など、たくさんの決意が集まりました。

衝動に従って人生が開かれる

最後に、多田氏から「偶発性と衝動性が人生を切り開く」という話がありました。
アールイーカンパニーも最初からやろうと思っていたわけではなく、たまたまだといいます。
「しかしたまたまのことを努力すると意味のあることに変わってくる」と話します。
「好きなことで生きていくことはすごく素晴らしい。しかしとても大変。好きなことをすることと、好き勝手することは違います。一人ではできません」と話し、「今やりたいことがなくとも大丈夫です。好きなことを一生懸命にやって行ってください」と話しました。
長瀬氏も「私も海外に行くことなんてないと思っていましたが、いまフィジーに住んで仕事している。次々にチャレンジしていくことで人生が開いていきます」と語られました。

学生たちは遠い島の異文化を知ると同時に、自身の人生を考える貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

国際理解とキャリア形成の授業のゲストとして、今年度初めてお迎えしたのが、カラーズ様です。
そして、ディズニー映画の「モアナと海の伝説」と結び付けて学ぼうという、全く新しい試みでした。
当日は、多田様、長瀬様、植林様のお三方が、教室と大阪、そして実際にフィジーからオンラインで
参加して下さいました。
メラネシアンおよびポリネシアン文化の歴史や、映画に登場するシーンのことなど、
フィジーという国の魅力を沢山伝えていただきました。
近い将来、フィジーへの留学に出かけてくれる学生さんも生まれることと思います。
とても楽しいプログラムを構築いただきました多田様、長瀬様、植林様に心から感謝申し上げます。

2024年11月5日

企業格を考えよう!「グローバル・キャリアデザイン」の授業で元資生堂の山田氏による講義が行われました。 

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月18日に元株式会社資生堂の山田正人氏による講義が行われました。企業にも人格のような「格」がある、というお話のもと、さまざまな企業の企業格を調べてみるケーススタディを行いました。それぞれの企業の特徴をつかむヒントになる、就職活動にも応用できる実践的な授業となりました。

企業にも「格」がある

現在山田氏は、エフクリエイション株式会社に所属しています。
企業広告や商品パッケージやデザインなどをつくる広告制作会社です。エフクリエイションは、資生堂の創業家である福原グループのひとつ。
資生堂とはいまも深い縁があります。
今回は資生堂の現状や歴史や社風などを通して、「企業格」について考えていきます。
「私がしゃべるばかりでなく、皆さんがどう考えどう活かすかを大切にしていきたいです」と話され、講義は始まりました。

まず、前提となる人格とはなにか、というお話から。
人格とは「能力、性格、気質」からなるもの。性格と気質は似たような概念ですが、「性格は成長するにつれあとからできるもの、気質は遺伝的・先天的なもののことです」と山田氏。
この考えを企業にあてはめたのが、企業格です。企業でいう「能力」は、売上利益・ブランド・商品など。「性格」は理念。
また広告や社長の発言など、時代によって移り変わるものです。
そして「気質」は企業の歴史や社風。長年にわたって蓄積されてきた風土だと話しました。

資生堂の作り上げた企業格とは

ここで資生堂を例に企業格を見ていくことに。
資生堂は化粧品業界ではNo.1の業績です。
「能力という目に見える企業格では日本のトップです」と山田氏。
性格にあたる理念では、美を創る、提供することで世の中を良くするという「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を掲げています。
150周年のCMでは、世代を超えて自分らしく活躍する女性たちの姿を表現し、好評を得ました。

気質として、創業者の福原家のことを紹介しました。
資生堂は1872年日本初の洋風薬局として銀座に開業。化粧水や歯磨き粉がヒットし、大きくなっていきました。
2代目の時代に本物やデザインにこだわる「資生堂スタイル」が徐々に確立していきます。
特に資生堂を象徴するモチーフになった「花椿」は2代目自らが描いたスケッチを元にデザインされました。
「ブランドイメージという概念もなかった時代に作り上げていったんです」と、山田氏は2代目の持つ先見性とアートの精神を伝えました。同時期に試験室を開設し、最先端の技術を化粧品に応用することを目指していきます。
山田氏は「このアートとサイエンスの理念は今なお続いています」と話されました。

人に温かい社風はいまも

企業格の気質には社風も含まれます。
資生堂は、人に温かく、社員一人ひとりが互いを尊重し合う社風です。
「私も学生の際の企業面接のときに、エレベーターのボタンを社員の方が開けてくれ、いい会社だなと感じたことがあります。小さなことですが、人に温かいというのは資生堂の持っている気質で、それが周りの人を幸せにするのだなと思います」と山田氏。
社外や世間からのイメージも、信頼性が高く安心感がある、という評価を受けています。

最後に山田氏が資生堂の企業格をまとめられました。
能力は日本を代表する化粧品会社であること、性格は品質や安全性の高い製品を作り美で世界を豊かにすることを目指していること、気質は創造性を大事にしてチームワーク良く仕事に取り組んでいること、を表にして示されました。
「これを例にして、みなさんにも企業格を考えてもらいたいと思います」とケーススタディが始まりました。

身近な企業はどんな企業格?

ケーススタディで示されたのはアパレル企業のユニクロ、飲食業のスターバックスコーヒー、生活雑貨の無印良品、日清食品の4つ。
学生は10つの班に分かれ、それぞれ担当の企業について企業格を調べていきます。学生たちは協力し合いながら各企業について調べていきました。

20分ほどワークの時間が取られたあと、最後に各班から調べた企業格について発表がありました。
ユニクロについて調べた学生は、性格として企業理念のほか、「CMにさまざまな人種や年代の人を採用している」ことに着目。
山田氏も「ダイバーシティを推進している企業ということが分かりますね」と感心されました。
日清食品を調べた班からは企業サイトに合った文言から「ハッピーやユニークであることを重視している」という点を挙げました。
山田氏は日清食品の企業ミュージアムがあることを紹介し、「商品を使うだけでなくミュージアムで体験することでより企業を知ることにつながります」と話しました。

企業格を考え就活に役立てよう

最後に山田氏は「今日で実践女子大学の、真面目で熱心だという大学格が分かった気がします」とあいさつ。
「企業格を考えることは、その企業がどんな会社であってほしいかを考えることにつながります。就職活動のときにもぜひ考えてみてください」とアドバイスを送りました。
学生たちにとって就職活動の企業研究のヒントとなる授業となりました。

担当教員のメッセージ

本授業には、初めてお越しいただきました。
海外の事業所での経験を含めて、グローバルキャリアを築かれてこられた山田さんのお話しは、
大変興味深い内容でした。そして「会社の格」という視点での見方は、学生にとっても
私にとっても新鮮な切り口でありました。
時代とともに会社の姿は変化していきますが、やはり150年の歴史を刻む資生堂ならではの
語り継がれたミームは、永遠に変わらないと思います。
これから就職活動に臨む学生に対する企業研究の新たな視点は、大変参考になる示唆に富んだ
内容を構築いただきました。この場を借りて山田正人様には心から感謝申し上げます。