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2024年7月22日

男女格差をなくすには?「実践キャリアプランニング」の授業で連合のジェンダー平等・多様性推進局長による講演が行われました。

5月17日に「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本労働組合総連合会(以下、連合)のジェンダー平等・多様性推進局長である菅村裕子氏による講演が行われました。社会で女性として活躍する上で知っておくべき法律やルールについて分かりやすく解説され、学生たちにとって学びの多い授業となりました。

法律で女性の地位向上を

菅村氏は神戸大学の大学院へ進学。
卒業前の就職活動において、とある企業の面接で「女性が大学院に行ってなにがいいの?」と言われたと話します。
女性というだけで、学びの機会を得ることを否定されるのかと憤った経験を話されました。

法的トラブルに対する支援を行う法テラスを経て、女性の地位向上の仕事がしたいと青年海外協力隊に参加し、シリアなどに派遣。活動に尽力されました。
中東における女性の人権問題はよくニュースになりますが、「日本の女性も本当に大変」と菅村氏。現在は連合に勤務しています。

連合とは各企業・業界の労働組合が加盟しているナショナルセンター(中央組織)です。労働者は労働基準法を含む労働関係法令で守られてはいますが、「法律で守られている部分は必要最低限」と菅村氏。
連合は労働者の権利を守るために活動しています。

法律だけでは男女平等には不十分?

労働条件の最低基準を定める労働基準法は1947年に制定され、第4条において「男女同一賃金の原則」が明記されました。女性であることを理由として賃金の差別的取扱いはしてはいけないというこの条文は一見男女平等のように思えます。
「しかし、募集や採用、配置、教育訓練、昇進や定年等における、男女の差別的取り扱いは禁止されませんでした。」と菅村氏は指摘しました。
性別による差別をなくすことが必要と、1986年に「男女雇用機会均等法」が制定。
2007年改正により、女性だけでなく男女双方に適用される法律となりました。

しかし、長時間労働の慣行が引き続き残った結果、均等法には、男性と同様に長時間働けることを前提とした「男性並み平等」の課題があります。家事や育児などの家族的責任と男性並み平等との葛藤による仕事と家事・育児・介護の両立の困難から、少なくない女性がパートや有期、派遣雇用という形で雇用形態を変えて働いてきました。こうした労働者を保護するため、派遣法やパートタイム・有期雇用労働法が制定されています。
少しずつ改善していますが、完全な平等を実現するにはまだ課題も残っています。

育休は労組が勝ち取った!

菅村氏は育児休暇についても言及。
育児休暇も労組の取組から始まりました。当時は、女性が結婚したり子どもを産んだりしたら退職を迫られることが横行していました。電電公社の組合が働きたい女性たちからの要望を会社に要求。育児休暇が導入されたのです。

今では浸透してきた「育休」ですが、それでも男性の取得率はなかなか上がらない現実があります。休暇を取りたくても言い出せない人はまだ多くいます。
さらに、育休を取得できたとしても数か月の空白期間や、時短勤務はキャリアに響き昇進が叶わない女性も多くいます。結果として、男女間の賃金の差異は大きくなっています。
「これでは子どもを持つ人が少なくなっているのは、当たり前のことです」とさみしそうな口調で菅村氏は付け加えました。

もちろん国や企業も性別の格差をなくし、育休取得率を上げようと取組をしています。「女性の活躍推進企業データベース」では、女性の活躍認定「えるぼし」や子育てサポート認定「くるみん」などを取得している企業を確認することができます。
菅村氏はただ認定があるかを調べるだけではなく、その企業の賃金格差の内訳や、差異を是正するために取り組んでいるかをきちんと確認することが重要と伝えました。
「まだ格差がある中で、どうやって縮めていこうとしているのか、その企業の姿勢を確認できます。しっかり見て自分の働き方に合うかを知りましょう」

立ち止まらず少しずつ良くしていこう

講演の終わりに、学生はグループごとで話し合い、意見や感想をリアルタイムで掲示板に投稿。
深澤教授が読み上げる形で質疑応答が行われました。
「日本の賃金の男女格差を減らすには?」という質問には、菅村氏は「日本の企業では休みに対するネガティブな考えがある。性別関係なく、同じように休めるように変えていくべき」と回答されました。

「男女格差は根深い問題だと知りました。法律を改正しても変わらないのでは?」と危惧する質問には、「結婚退職、女性の定年は35歳という時代から比べると、先輩たちの頑張りによって、特にこの10年ほどで女性の正規雇用率は上がり、良くなっている。自分たちも頑張って次に続けていきたい」と菅村氏。
そして、「北欧では男女の賃金格差が少ないと言われますが、女性の多くは保育士などの公務員。ドイツもジェンダーギャップが少ない国ですが、女性に偏った短時間勤務など、性別により働き方に違いがあると聞いており、日本だけではない問題です。しかし難しいことだと思考停止にならず、少しずつよくしていきたいと思います」と力強く話され、授業を締めくくりました。
知っておくべき法律や少しずつ変わっている現状を学び、女性として社会に出ていく上で厳しい現実を知り学生たちには指針となる授業となりました。

2024年7月22日

ワークルールを知って働く!「実践キャリアプランニング」の授業で連合のフェアワーク推進局長による講演が行われました。

5月10日に「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本労働組合総連合会(以下、連合)のフェアワーク推進局長である小林妙氏による講演が行われました。「働くことを考える」をテーマに、働く上で守るべきワークルールを教えていただきます。アルバイト中や就職活動中の学生にとって、安心安全に働くための基礎知識を知る機会となりました。

連合は働く人を守る組織

小林氏は教師を目指し教育学部を専攻するも、企業への就職に興味が湧き、証券会社へ入社。
その後転職した先が倒産の憂き目に遭うも、縁あって産業別労働組合(JAM)の仕事に関わるようになり、連合へ出向されました。

フェアワーク推進局では、非正規雇用などで働く人たちの声を集め、実態を把握し、課題解決につなげていく活動をしています。
その対象は非正規雇用者、パートやアルバイト、フリーランスや外国人労働者などさまざま。
またLGBTQといった性的少数者などの方々も対象です。性別・年齢・国籍・障がいの有無などに関わらず、一人ひとりが尊重され、公平で働きやすい職場環境を実現するために活動されています。

労働組合は、憲法28条で認められた「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」といった3つの労働者の権利を実行し、労働者を守るためにあります。また、労働基準法という法律も含め労働者が働く安全、安心は守られているのです。これらが守られていない場合や改善して欲しい場合は、労働組合は企業側と対話し、要望をすることができます。
労働組合は企業と対等の立場であり、企業側は対話を断ることはできません。労働組合と対話をすることも法律で決められているためです。

労働組合って必要?

連合は、各企業・業界の労働組合が加盟するナショナルセンター(中央組織)です。労働組合とは働く人たちが自主的に組織するもの。職場の環境は安全か、法律違反はないか、ハラスメントはないかなど相談を受け、意見を取りまとめる窓口です。
労組は二人以上で作ることができ、現在連合には690万人以上が加入。非正規雇用者やパートなど正社員以外も加入でき、現在加入者の約2割が正社員以外の方です

「憲法や労働基準法があるなら、労働組合って必要?と思われる人もいるかもしれません」と小林氏。
「私も勤めている時は、労働組合のことをよくわかっておらず、時間外に色んなことを聞かれて正直邪魔だなと思っていました」と告白。
しかし、「今は必要だと思っています」と言います。

例えば週休2日が常識になっていることも労働組合の活動の結果。
労働基準法には「少なくとも毎週1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日」としか決められておらず、週6日働くことは違法ではありません。
これでは労働者が大変だと労働組合が活動を行い、週2日の休みを勝ち取ったのです。
小林氏は「労働基準法以上の環境や働きやすさをきちんと獲得するために、労働組合や連合は必要です」と話します。「皆さんもこれから就職の際、労働組合がある企業に勤めてほしいと思います」と、就職先を決める基準のひとつにして欲しいと話しました。

ワークルールを知ろう!

ここで小林氏は「ワークルール」についての問題を出しました。
ワークルールとは、簡単に言えば企業側が労働者に対して、してはいけないことです。「知ってるつもりで実は知らないルールです」と小林氏は問題を出していきました。

例えば「学生アルバイトでも法律で守ってもらえるか?」という問題。答えは「もちろん守られます。年齢によっては深夜に働くことは法律違反ですが、知らずに働かされることもある」と小林氏は注意を促しました。
また意外な問題では「採用面接で尊敬する人は?と聞くのは良い?」というもの。「働く能力とは関係ない思想に関わることは、個人の自由であるべき」と小林氏。
好きな言葉や宗教なども聞くことはよくないと言います。「ただ、まだあまり浸透しておらずエントリーシートなどに項目があるといった現状です。そういった会社があったら、疑問を持つことも大事」と小林氏は話しました。
その他にも「インターンシップは無給が当たり前ではない」「時給は1分単位で支払われるべき」などのワークルールが紹介され、学生たちも興味深く聞いていました。

働くこと上で必要な知識を身に付ける

講演後、学生たちは質問をリアルタイムで掲示板に投稿し、深澤教授が読み上げる形で質疑応答が行われました。
「最低賃金を上げるように国に言ってください」という投稿に小林氏が「了解しました。連合など労働組合も最低賃金を決める会議に参画しているので、その担当に伝えます」と答えると、笑い声が起きました。
「国としても最低賃金を上げようという動きがありますので頑張っていきたいですね」と話されました。

「アルバイトでも有給休暇があると知らなかった」という感想には「一定期間・一定時間を働いているなど条件はありますが取れますので、社員の方にアルバイトも有休が取れると法律で決まっていると話してみましょう」と助言されました。
その他にもアルバイトやお金のことなど、働くことへの身近な質問が多数投稿されました。
学生たちは働く上で知っておくべき知識を得た大切な講演となりました。

2024年7月22日

「実践キャリアプランニング」の授業で連合の前事務局長の相原康伸氏が「公益」についての講演を行いました。

大学共通教育科目である「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、4月26日に現公益社団法人教育文化協会(ILEC)理事長の相原康伸氏が講演を行いました

「公益」とは何か?

相原氏の話は「公益とはなにか」というところから始まりました。
公益とは自分のみならず、他者や社会全体の利益を考え、行動することです。
「今日一番のメッセージは、公益に対してどう行動を変容していくか」。
私たちが直面する様々な社会課題に対し、日々の行動をわずかにでも変えることが重要だと最初に語られました。

連合の役割とは

約700万人の加盟組合員を擁する連合は、日本の労働組合の中央組織として、職場の声をまとめ、企業との対話を通じて、労働条件の改善や待遇向上に貢献しています。

相原氏は、「働くということは、いつもピカピカな状態じゃないんです」と力強く語ります。仕事で精神的に追い詰められたり、人間関係で悩んだり、労働条件に不満を感じたり。こうした困りごとこそ、連合が解決に向けて共に歩む重要な役割を担っているのです。年間1万5千件から2万件寄せられる相談内容は、コロナ禍以降、特に女性、フリーランス、非正規雇用労働者からの声が目立つようになりました。相原氏は、「弱い立場の人たちにさらに負担がかかっている」とお話しされました。

国際社会の抱える問題をどのように変容させるか

社会に出る今の学生に求められるのは、単なる知識やスキルだけではありません。創造性、固定観念にとらわれない斬新な視点、そして多様な価値観を持つ人々と協働する能力こそが、これからの時代を生き抜く鍵となります。

「異なる文化を持つ人々への普遍的な敬愛の精神が持てるかどうか。」
国際社会が貧困と分断という深刻な課題に直面している今、日本も例外ではありません。世界の中でもいち早く労働力人口が減少していく中で、多様性やジェンダーの問題も浮き彫りになっています。それらをどのように変容させるべきか、相原氏は課題を改めて確認していきました。

行動変容するために

相原氏は「主要国の中でも、日本は若者世代の投票率が著しく低い。」と語られました。 政治は高齢者向けのものという「シルバー民主主義」と呼ばれ、投票率の高い高齢者に向けたものになります。しかし、相原氏は若者たちへの期待も忘れません。「皆さんこそが、未来を創造する力を持っているのです。政治に参加し、声を上げることによって、より良い社会を実現することができるのです。」

未来は不確実ですが、未来を形作るのは私たち自身の行動です。「私たち一人一人が、どのような行動を選択するかによって、社会全体の利益に貢献できるのです。」 相原氏は、若者たちが主体的に社会と関わり、未来を担っていくことを強く訴えます。

深澤教授の話

相原様には、毎年本学にお越しいただいていますが。本年からは4回シリーズの講座を企画いただき、本日から連合の方にご講演をいただきます。
トップバッターの相原様からは、労働組合の役割のみならず、高い視座広い視点から世の中を見つめることの大切さを教えていただいています。
激動の21世紀を生きる大学生の今後のキャリア形成に重要になると考えます。
今年も、大変に貴重なお話しをいただきありがとうございました。心から感謝申し上げます。

2024年7月18日

ハピネスの循環で世界一のホスピタリティを!「女性とキャリア形成」の授業で株式会社オリエンタルランドの元執行役員をお迎えし講演が行われました。 

6月6日に大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の元執行役員の永嶋悦子氏が講演を行いました。夢の世界を運営するスタッフのホスピタリティの高さはどう養われているのか、その秘訣は「ハピネスの循環」にあると語ってくださいました。

開園当初はキャストとして活躍

この日はまさに東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のオープン当日。記念すべき日に講演いただくことになりました。永嶋氏は1982年にオリエンタルランドに入社。
最初はアトラクションのキャスト(スタッフ)としてコスチュームを着て活躍し、その後役員になりました。

開園当初の日本はまだコンビニエンスストアが出てきたばかりの時代。
ディズニーランドも遊園地という認識が強く、飲食物を持ち込むゲスト(来園者)も多かったと言います。
「今では考えられないですが、アトラクションにバナナを持ち込んで食べてる方もいたくらい、当時の日本人もマナーは悪かったんですよ」と話し、笑顔どころか、眉間にしわを寄せてゲストに飲食物の注意をしては謝っていたと、笑いを交えて話されました。

ハピネスを届けるためにはコミュニケーションが大事

開園当初からどのようにディズニーランドが成長していったかを語られる中で、キャストのホスピタリティが上がっていったことが大きいと永嶋氏は話します。
世界に6つあるディズニーリゾートのなかで一番のホスピタリティ高さと言われるようになり、本場アメリカからも視察にくるように。
「ホスピタリティとは人間力のことだと私は思います」と永嶋氏は語りました。

「キャストが目指すべきゴール、それはゲストにハピネスをお届けすることです」と永嶋氏。
「驚かれるかもしれませんが、キャストには接客マニュアルがないんです」と話します。
キャストが心掛けていることはあいさつだと言い、「ゲストと会話をするために、まずあいさつするんです」と話します。いかにゲストとコミュニケーションを取るか、どうやってゲストを喜ばせるかをそれぞれのキャストが考えて行動します。
今では有名になった水たまりや落ち葉でディズニーキャラクターを描く「カストーディアルアート」もキャスト発案です。

永嶋氏は印象的な出来事として東日本大震災のことを話されました。
約1か月パークが閉園している間に、どのようにゲストとコミュニケーションを取るか、どうサプライズを提供するか定期的に集まってディスカッションを繰り返したと語りました。

インクルージョンを広めていくために

永嶋氏は「接客のためのマニュアルはないですが行動基準がある」と話します。
安全・礼儀正しさ・ショー・効率、の4つの基準がこれまでありましたが、「そのなかに最近インクルージョン(多様性)が入りました」と紹介しました。

しかし、オリエンタルランドも昔は男社会で、ジェンダー問題への理解も十分ではなかったという永嶋氏が役員時代、キャストのリーダー育成プログラムに手を挙げたキャストに性別違和をカミングアウトされた人がいたのですが、広報の男性役員からその人をリーダーから落とすよう指示があったと語りました。
永嶋氏はこの決定に反対し猛抗議しましたが、結局その人は落選。
翌年再度プログラムを受け、ようやく合格されました。
「ディズニーは進歩的だとイメージされていましたが、内部の状況は大きく遅れていた」と、永嶋氏は当時の苦い経験を話されました。

キャスト同士でお互いを高め合う

キャストのホスピタリティの高さの秘訣は「キャストのコミュニケーション活動」にあると永嶋氏は言います。
開園前に各アトラクション対抗のカヌーレースを行ったり、年に一度のサンクスデーで役員たちがキャストをもてなしたり。
永嶋氏が「一番効果がある報奨活動」と言うのは、キャスト同士で褒めてたたえ合うスピリットオブ東京ディズニーリゾートの取組です。
お互いにサンクスカードを送り、カードの一番多いキャストは大々的に表彰されます。

なぜそこまでキャストをねぎらうのかと言えば、「キャストに、実際に感情を持ってハピネスを体感してもらい、同じようにゲストにハピネスをお届けしてほしいからです」と永嶋氏は話しました。
ハピネスをもらったキャストはパフォーマンスが向上し、その分ゲストにさらにハピネスを提供できる、という「ハピネスの循環」が行われるのです。
「ぜひパークに遊びにきてください」と永嶋氏は講演を締めくくりました。

管理職の試験を受けたときの気持ちは?

講演後には質疑応答が行われました。
はじめに「男社会のなかで、なぜ管理職の試験を受けたのですか」という質問がありました。
永嶋氏は「差別というよりは、女性は弱いものだから守ってあげようという考えが当時はありました」と話しました。
初めて管理職の試験を受けたとき、永嶋氏は落ちてしまったのですが、自分よりもあまり仕事ができない男性が合格したのを見て「自分より仕事ができない人が上司になることが許せなかった」と笑いを交えて答えました。
また、「今までできなかった仕事にチャレンジできることは面白いことです」と管理職にチャレンジした気持ちも語りました。

「永嶋さんが思うインクルージョンを向上させるコツや考えを教えてください」という質問には、「いろんな身分、年齢の方が働けるということ。
これから定年という考えもなくなってくると思います。そういうこともひとつのインクルージョン」と回答されました。
「オリエンタルランドで働いたことで得た財産は?」という質問には「人。さまざまなつながりになったり、長い付き合いになったり、助けられています」と答えられました。

ディズニーリゾートに通底するホスピタリティの高さの秘訣に触れ、学生たちにも刺激になった講演でした。

担当教員からのメッセージ

永嶋様と初めてお会いしてから、もう20年以上になります。
いつもアグレッシブな永嶋様から色々なことを学ばせていただいています。
とりわけ確固たる信念をお持ちになり、メンバー一人ひとりのことに気を配りながら、先頭に立って組織を牽引されるリーダーシップについては、私の目標でもありました。
今回も、テーマパークのオープン当時のこと、管理職としてのご苦労など、
学生にとっては、極めて貴重な時間になったと思います。
この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

2024年4月3日

障がいのある方たちが活躍するには?「福祉社会学」の授業でアイエスエフネット社長によるダイバーイン雇用についての講演が行われました。

11月9日に「福祉社会学」(担当:人間社会学科 山根純佳教授)の授業で、株式会社アイエスエフネット(以下、アイエスエフネット)代表取締役の渡邉幸義氏による「ダイバーイン雇用」についての特別講義が行われました。多様化する社会において、すべての人が働けるとはどういうことか、実際の取組紹介などを通して学ぶ貴重な機会となりました。

20歳の時に起業を決意

アイエスエフネットは2000年に創設。
クラウドサービスやネットワークを整備するITインフラ企業です。渡邉氏は「20歳のときに2000年に起業するぞと決めました」と言います。そこから逆算して計画を立て、宣言通りに起業したのです。
「自分は何もできないと考えている人がいるかもしれませんが、一歩踏み出さないと何も起こりません」と行動することの大切さを、まず学生たちに伝えました。

渡邉氏は「『タイパ(タイムパフォーマンス)』と言う言葉が流行っていますが、考えていただきたい言葉です」と言います。
なぜなら、時間で管理していると効率が優先されてしまうのでダイバーイン雇用の推進が進まないのではないか、と講演が始まりました。

マイノリティは本当に少ない?

日本の障がい者の割合は7.6%。およそ15人に1人が何らかの障がいを有している計算です。
そして「その障がい者には親や家族がいます」と渡邉氏。
単純計算で全人口の5人に1人は障がいと共に生活している人たちなのです。
またセクシュアリティマイノリティを意味する「LGBTQIA」の当事者層は9.7%。ここ数年でセクシュアリティマイノリティの存在は急速に認知されていますが、企業では依然男性・女性の考えしかなく、知らずに相手を傷つけてしまうことも多くあります。

こういったマイノリティの人々と共に働くというひとつの形が、アイエスエフネットでの「ダイバーイン雇用」です。
ダイバーインとは、多様性を意味するダイバーシティと、受け入れるという意味のインクルージョンを掛け合わせた造語とのこと。多様な個性を受け入れることを目指した言葉です。

なぜダイバーイン雇用をするの?

ダイバーイン雇用を始めたきっかけは、会社を立ち上げたときに「無知識・未経験者の採用から始めたこと」と言います。
IT知識がなくても応募できるため、多くの応募があり人柄で選ぶことが出来たと話します。
しかし、採用した社員が決まった時間通りに出勤をしなかったり、勤務中にずっと寝ていたり…人柄は真面目で良い人ばかりなのに何故だろう、と渡邉氏は不思議に思い、根気強くヒアリングをしたり病院に通うよう促したそうです。
すると問題行動のあった人たちの9割に病気など何らかの原因が判明したと言います。
その人自身の意識の問題ではなかったのです。

障がいのある人たちに配慮し、働きやすい環境を整えることは簡単ではありません。
しかし「そういった方々は環境を整えたら、上手くパフォーマンスを発揮することができる」と渡邉氏は言います。
「人材」から「人財」へ変わったのです。
現在では、場合によっては専門医師と協力し、原因を突き止める体制が取られていることを紹介されました。

さらにアイエスエフネットでは、多くの女性社員も活躍しており幹部クラスもたくさんいます。
女性は、家庭と仕事の両立が難しく、出産や介護などのライフイベントにより仕事を辞めパートになる方が多いです。
「(学生たちに)就活をするにあたって、育休制度などは必ず確認してください」と渡邉氏は言います。
一定の基準を満たした子育てサポートに取り組んでいる企業に対して、国が認定した「くるみん」マークがあるかなどを調べたり、採用担当の人事に聞いてみるのもよいとコツを伝えました。「給料の良い企業に入社しても、辞めてしまっては意味がない」と生涯年収を考えることの大切さを伝えました。

渡邉氏は「根気強く傾聴し相手を知れば、どんな方でも問題なく仕事ができます」と力強く言い、「皆さんがこれから社会人として経験される中で、マイノリティとマジョリティという壁を取っ払って色んな方に目を向けていくことが大事です」と学生たちに語り掛けました。

学生たちによる質疑応答

講演後には、質疑応答の時間があり、学生たちから手が挙がりました。
「会社の施設で合理的配慮をしている例を教えてください」という問いには、渡邉氏が「群馬県沼津市では身体障害者用の車を3台購入し、トイレをバリアフリーにしました。東京では配慮されているところも多いですが、地方ではまだであることが多いです」と回答されました。
マイノリティとマジョリティ、障がいがある方との付き合い方など学生たちにも気付きの多い講演となりました。

2023年12月4日

なんとなく就職しないために!「グローバルキャリアデザイン」の授業で資生堂人事担当者による自分自身を考える講演が行われました。

10月27日に、3年生対象の共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社資生堂(以下、資生堂)の真名垣喬氏による講演が行われました。アグレッシブにキャリアを積み重ねている真名垣氏のお話は、学生たちにとって「自分」について考えるまたとない機会となりました。

自分自身について考える

はじめに「今日は私の話を聞く時間ではありません」と、真名垣氏。
「皆さんが自分自身について考えられる、メリットのある時間にしたいと思います。話を聞いて終わりでなく、自分でどう活かすか行動するかが大事です。」と語り、講演を始められました。

まず真名垣氏は「皆さんは卒業後何をしますか?」と問いかけました。
就職の他にも留学など様々な道があります。「その道は、自分自身で選んでいますか」と、さらに重ねて問います。
「なぜ就職するのですか?」。周りが就職するからと自分もなんとなく就活しようとしていないか、確認しました。どうして就職したいのか、自分にとってどんな意味があるのかを考え、自分自身の言葉で語れるようにしようと促します。
しかし「とはいえ私自身、皆が就職したから就職したうちの一人です」と言い、今すぐに言語化できなくても大丈夫だと語りました。

仕事に答えはない

真名垣氏は新卒で資生堂に入社。最初は名古屋で営業の仕事を経験しました。
その後人事部に移ります。人事部では若い社員を育成し仕事を教える機会があり「彼らが成長し変化していくのが嬉しかった」と人事の面白さに目覚めます。
そこから今まで資生堂一筋…というわけではなく実は37歳のとき、人事としての専門性を深めることを目的に、高級ブランドを扱う外資系企業に転職をされています。
今までと違う環境で数年を過ごし、新しい価値観に触れ、経験の幅を広げた後「今の自分だったら以前とは違う形で楽しめるかもしれない」と考え、資生堂に再就職したと話しました。

「社会人になると何が変わるでしょう?」という真名垣氏の問いかけに、学生たちからは「環境が変わる」「自分以外のことも考えなくてはいけない」「責任」「お金がもらえる」などという回答が。
真名垣氏は頷き、社会人になると組織の一員になることや、給料をもらう以上成果を出さなくてはならないことなどを説明。また、学生の頃は答えのあるものが多くあり、卒業というゴールがありますが、仕事には答えがなく常に成長し続けなくてはなりません。
そのため「自分がどう考えてどう行動するかが大事になります」と話しました。

企業が出している情報の見方は?

「皆さんはどんな仕事がしたいですか」と再度問いかけ、企業を選ぶヒントを伝えていきました。
まずは企業が行っているビジネスや業界に興味があるか。そして企業が出しているステートメントに共感できるか。
「掲げている宣言は企業が目指している方向や大事にしている価値観なので、そこに共感できなければ働いていて違和感を覚えてしまうと思います」と、企業理念を確認することの大事さを伝えました。

次は「数字」です。
企業はさまざまな数字を公表していますが「その数字を良いと思うか悪いと思うかは、見る人の価値観によります」と真名垣氏。
例えば資生堂は1872年創業ですが、長く続いている企業で安心と思うか、古い体制かもと不安になるかはその人次第。数字を自分なりの価値観で解釈することが大事だと話しました。

人生の時間をどう使う?

では就職先は何を基準に選択するのが良いでしょうか。
「場所」「やりがい」「休みの取りやすさ」などが学生たちから挙がりました。「繰り返しになりますが、こうでなくてはならないという正解はないので、皆さんがどう考えるかです」と真名垣氏。
すぐに答えを出さなくてもいいと強調します。「ただ、ぜひ考える努力をしていただき、アップデートをしていって欲しいなと思います」と語りました。

その際おすすめの方法として、いきなり何をやりたいかを考えるよりも「なぜやりたいか、何を大切にしているのか(Why)」を考えることを紹介。
「就活の面接では、何が出来るかより、どんな価値観でどんな考えを持っている人かを見ています」と話し、「社会人になると多くの時間を仕事に費やします。自分の人生の時間をどのように過ごしていきたいか、それを実現するための手段としてどのようなことをしたいのかを考えていこう」と促しました。

いろんなことを吸収して軸を作っていこう

学生たちはグループで感想を話し合い、最後に質疑応答の時間が持たれました。
「自分の軸を見つけた背景やきっかけは何ですか」という質問に、真名垣氏は「就活のときには全然なかったです」と答え、「沢山勉強をして、いろんな人に会い人生経験を聞いて価値観を作っていきました。
最初は完全オリジナルじゃなくてもいい」と吸収していくうちに自分の軸が出来ていくとアドバイスしました。

学生たちは企業選びの考え方や、自分のやりたいことに関して向き合うきっかけになった講演でした。

担当教員からのメッセージ

真名垣さんと一緒に資生堂の新入社員研修を担当していた頃から15年が経過したことになります。しかし、真名垣さんのアグレッシブなスタイルは、全く色褪せることはありません。むしろ、彼らしさに磨きがかかっていると感じるほどでした。仕事にもプライベートにも全力投球、こうした先輩たちが企業で活躍することで、きっと会社は変わっていくのだということを学びました。この場を借りて心から感謝申し上げたいと思います。

2023年11月27日

自己紹介は3秒で!「自己表現法」の授業でアパホテル専務による自己アピールの大切さの講演が行われました。

10月25日に「自己表現法」(担当:日本語コミュニケーション学科 髙瀬真理子教授)の授業で、アパホテル株式会社(以下、アパホテル)の代表取締役専務である元谷拓氏による特別講演が行われました。印象に残る自己紹介の仕方や、自己ブランディングの大切さについて語られ、学生たちは楽しく自己表現の大切さについて知る講演となりました。

アパホテルって知ってる?

元谷氏は「皆さんが就職活動やアルバイトの面接など、人と会う中でチャンスを増やせるような話ができればと思っています」と始められました。

元谷氏はアパホテルの創業者と社長の次男であり、現在は専務として多くの企業とコラボ商品を生み出しヒットさせています。元谷氏は学生たちに「アパホテルって聞いたことがありますか」と問いかけます。
学生の多くは利用したことはなくとも知っている名前。
ホテルは予約をする時に、まず検索エンジンで地名と共に検索されます。「そのとき表示されても、聞いたことがないホテルだと怪しいと思われて選択肢に入らないんです」と話し、名前を覚えてもらうことの大切さを伝えました。  

元谷氏の仕事の功績として特に大きなものがホテルにあるプールの底に、企業や商品のロゴを大々的に描くなどを行うネーミングライツ事業です。
ポカリスエットやコカコーラ、タリーズなどの大企業や、味ぽんやバスロマンなど一風変わった商品ともコラボ。
それによりホテルの宿泊者がSNSに写真を上げ、その投稿により話題にしてくれるようになります。ネットニュースに取り上げられさらに広がっていくことも。

宣伝ということに触れ、「皆さんも自分をブランディングしていくというのが大事だと思います」と話しました。

コロナ禍にもめげない

コロナ禍では旅行・観光業界は大きな打撃を受けました。
ホテル業界も同じく大変な状況でしたが、その中でアパホテルは国の依頼を受け、新型コロナウイルス感染者(軽症者)を受け入れる「ホテル療養」の場所として全面協力しました。業界大手のアパホテルが協力したことで、その後他社ホテルもホテル療養に協力する流れができていったのです。

アパホテルは女性の応募が多いことも特徴。
女性社員が多く活躍しています。ホテルの仕事の主業務は接客です。
ただ、その他にも売上や予約の管理、清掃などのほか、フランチャイズ事業やIT、グローバル事業など様々な仕事があります。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)には力を入れていて、アプリでワンステップ予約やチェックインができるシステムを構築しています。
 アパホテルで大切にしているのは「TIME IS LIFE」。
お客様の大事な時間をいただいているという考えの元、貴重な時間にやすらぎを与えることを理念としています。

自分の強みを知り工夫しよう

元谷氏は活躍し続ける人の特徴を3つにまとめました。
 1つ目は困難があってもリカバリーが素早くできること
 2つ目は時流を読む力や情報収集能力があること
 3つ目は常に学び続ける姿勢 です。
「現状維持は衰退です」と元谷氏。好奇心を持って行動することが大切と語りました。
また、工夫とは常に「工夫ズ」という複数形であると話します。
1回の工夫は自己満足に過ぎず、「チャンスは工夫した直後にもうひと工夫するところから生まれます」と語りました。

ここで元谷氏は、学生たちに近くの席同士でその人の良い所を伝え合うワークを行わせました。
「優しい」「笑顔がいい」など言葉が飛び交います。
元谷氏は「自分の思っている自分と相手の見ている自分は違います」と話し、「自分の知らなかった自分も含めて、自分の魅力に磨きをかけておくことが大事です」と伝えました。

爪痕をのこす自己紹介とは?

「人間は生涯で2万回自己紹介をする」と話します。
多い人では10万回に上るといいます。覚えてもらうためには「自己紹介は3秒でする」ことをアドバイスしました。
キャッチフレーズなど短い言葉で印象付け、また会いたいと思ってもらえることが大事だと話しました。「恥ずかしがっていたらもったいない。工夫して戦略的にすることでチャンスに恵まれます」と語りました。

最後に元谷氏は「応援される人になりましょう」と話します。
「応援される人は実力以上にチャンスが増えます」と言い、相手から応援したくなる人物になっているかという目線で自己プレゼンをすることをアドバイスしました。
そして「皆さんのこれからを応援しています」と講演を締めくくられました。

授業の最後に、元谷氏は沢山のお土産を学生たちに配ってくださいました。
面白いコラボ商品などもあり、学生たちも笑顔に。

また会いたくなる自己紹介をしよう

アパホテルに就職した本学卒業生の菅澤優花さんからも挨拶をいただき、
「今回は母校での講演に来られて良かった」と話されました。

学生たちは最後に感想を発表し、「自己紹介を3秒でというのが印象に残りました」というものや「時は命という考えが印象的で、時間はお金に変えられない貴重なものだと感じました」と話しました。

改めて自己アピールの大切さを知る機会となりました。

2023年11月24日

「実践キャリアプランニング」の授業で実践女子大学短期大学部OGのSurpass石原社長による女性のキャリアについて講演が行われました。

共通教育科目「実践キャリアプランニング」の合同授業(担当:深澤晶久教授、髙橋裕樹特任教授)で、株式会社Surpass(以下、Surpass)社長の石原亮子氏による「日本に於ける女性のキャリア形成」についての講演が行われました。自身の経験を交えて、自分を知ることの大切さやキャリアデザインについて語られました。石原氏は実践女子大学短期大学部の卒業生。社会の第一線で活躍している先輩の話を伺い、学生たちも女性のキャリアについて知る機会になりました。

実践女子大学卒業の先輩!

OGでもある石原氏は「実践女子大学の卒業生は企業でも評判がよく、しっかりキャリアを築き活躍している方が多いです」と社会に出ても実践女子大学のDNAを感じる、と話を始められました。

学生時代は勉強熱心な方ではなかったという石原氏。
しかし、社会に出てから「正解がないことに挑戦をすることが向いていた」と言います。
生命保険やベンチャー企業、複数の会社の営業の経験を経て、2008年に28歳で起業しました。

Surpassは法人相手に営業DXの支援などを行っており、女性をメインとした営業アウトソーシング会社です。
企業における女性役員・管理職の数はまだまだ日本では少ないのが現状です。そこでSurpassでは「女性活躍という言葉がなくなる日」を目指し、「女性活躍推進総研」という女性のリーダーを育成する事業も行っています。
Surpass自体も従業員の8割が女性。福利厚生に低用量ピルの支給を行うなど、女性の働きやすい環境作りに力を入れています。
そのような取り組みを行なっているため若い世代からの注目度も高く、SNS上でのアンケート「Z世代の注目企業2022」にもランクインしました。

女性が自分らしく活躍するために

学生時代は、起業するなんて夢にも思っていなかったと言う石原氏。
起業しようと思ったきっかけは、友人たちでした。友人の多くは勉強もでき性格も良い尊敬できる人物なのに、就職してから「私なんか」と自分を過小評価し、楽しそうに働いていなかったと言います。
そんな友人たちをみて、自分らしく働き活躍して自信を持って欲しいという気持ちが沸き上がり、起業をしたと語りました。

現在日本の男女間での雇用形態や収入の格差はまだまだ大きく、女性活躍にはほど遠いのが現状です。特に年収は、男女で全く同じ仕事をしていても3割違うと言われており、「社会に出るとこれが当たり前になってしまい、違和感を持つことを忘れてしまいます。これを変えるには、皆さんの視点が非常に重要になってきます」と語りかけました。

迷ったときにブレないためには?

「今は情報に溢れ、選択肢も多く、どう生きるかを決めることが難しい時代です」と石原氏。
そんな、何を基準に物事を決めればいいか迷った時に、一つの軸となる考え方を教えてくださいました。
ゴールデンサークル理論と呼ばれる考え方です。「Why(なぜ)」→「How(どうやって)」→「What(何を)」の順で物事を考えるやり方で、「何をするのか」ではなく「なぜするのか」を中心に考えます。
石原氏は「この方法を覚えていると、今後何かに迷ったときに、何のためにやるのかということに立ち返れると思います」と、ブレずに選択できるようになると話しました。

自分を知ろう

ここで、石原氏は学生たちに一つのワークを行いました。
それは「あなたの中にあるエレファントシンドロームは何ですか」というもの。エレファントシンドロームとは、自分を縛り付けている見えない鎖のこと。
「どうせできない」と諦めていることは何か、それはどんな経験が原因か、断ち切るには何をするかを書き出してみるワークです。
時間が与えられ、学生たちは真剣にシートに書き出していきました。

しっかり書けた学生もいれば、言語化することが難しかった学生も。
日本の教育では自分自身について知らずに社会に出ることが多いと言い「なぜ自分の足が止まるのか、自分がなぜ嫌だと思うのか分からないままでは他人をマネージメントしたり説得したりすることはできない。これは自分を知るためのワークです。」と語りました。

これからの時代のキャリアを考える

最後に石原氏は、未来に向けたキャリアデザインについて話されました。
そこで「事務職を希望する女性は多いですが、もう事務職はなくなる前提で考えましょう」と衝撃の発言が。AIの発展もあり事務職はすでに人が余っているため、それを見据えた職探しをするべきとアドバイスをされました。その中で「営業職はキャリアの土台になります。
営業で身に付いたコミュニケーション力、ヒアリング力、プレゼンテーション力、プランニング力や仕事の得方は、フリーランスになったりキャリアアップしたりした時にも使えるスキルです。」と話しました。

「皆さんが思っているよりも、自分に眠っている能力は本当に沢山あります」と石原氏は語りかけました。
社会に出るとやりたくない仕事も沢山ありますが、一生懸命に取り組むことで新しい自分や可能性に出会え、「それが仕事の一番の報酬ではないかなと思います。これからの皆さんのご活躍を祈念しています」と講演を締めくくられました。

担当教員からのメッセージ

キャリア教育の授業に初めてご登壇いただいた石原様、本学のOGでもあり、学生の表情はいつも以上に真剣であったと感じました。石原様のお話しにあった、「もっと自信を持って、一歩前へ踏み出して欲しい」このお言葉は、私も日々感じていることでした。実践女子大学の学生のポテンシャルは計り知れないものがあります。とにかく行動してみる、このことから必ず違う景色が見えてきて、それが大きな自信につながると思います。その意味からも、素晴らしいロールモデルである石原様のご講演をお聞き出来たことは、大変に貴重でありました。この場を借りて、石原様には心から感謝申し上げたいと思います。

2023年11月24日

大学生の今、考えよう!「グローバルキャリアデザイン」の授業でマイナビ顧問による「なぜ働くのか」を問う講演が行われました。

共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月13日に株式会社マイナビ(以下、マイナビ)顧問の浜田憲尚氏による講演が行われました。就職活動で利用必須のサービスを提供している企業の方のお話に学生たちも興味津々です。就職活動を前にした学生たちは改めて「働くとは何か」「なぜ働くのか」を考えるきっかけとなりました。

「働く」を考えるには今しかない!

浜田氏による講演はこの授業でも恒例となってきつつありますが「学生の皆さんの前で話すことはめったにないので、毎回緊張します」と、前置きをして話し始められました。
コロナ禍も終息しつつある現在、企業の採用意欲は急激に回復しつつあります。それは新卒に限らず、中途採用やアルバイトなどすべての雇用形態に言えること。どの業界も人手不足です。
そんな中、まさに就活を目の前にした学生たちに改めて考え直してもらいたいのが「なぜ働くのか」ということ。今働かなくてはならないのか、どこで、どんな仕事をするのか。
浜田氏は「それらについて深く考えるタイミングとしては今がとてもよい」と話し、「そのタイミングを活かさない手はない」と言います。
なぜなら日本は依然として新卒一括採用が主流のため、たくさんの企業が情報を提供し就活生たちを受け入れようとしているから。改めて働くとは何かを考える講演が始まりました。

企業と人をつなぐ仕事

マイナビは1973年創業。今年で50周年を迎える人材系の広告企業です。
主にインターネットなどのメディアを通して人と企業を繋ぐ事業をメインに行なっています。就活生はもちろん、アルバイトや転職、アスリートなどさまざまな人材と企業とのマッチングを行なっています。
マイナビの企業理念は「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」。ユーザーの人生に寄り添い、日常生活のあらゆる場面で使ってもらい、それによって前向きに人生が進んでいけるように支援することが目的です。

現在は海外展開事業のサポートを行なっている浜田氏ですが、なんと就職活動をせずにマイナビに入社したと言います。
面接の時間を間違えて行った会場で、当時の人事部長に声を掛けられ、とんとん拍子で最終面接まで進みそのまま入社されたそうです。そのため最初は「アルバイト感覚だった」と話します。
ただ「会社は楽しく、仕事も向いていると感じ打ち込めた」ため、こんなに長く勤められたと言います。この経験から、浜田氏は「深刻に考えすぎないこと」をアドバイスしました。
「一生懸命就活しても、一生勤められる企業かは分かりません。入ってからが勝負です。自分に合わないと感じたら、あるいはさらに新しいビジネスに挑戦したいと思ったら転職も考えていい」。
希望する企業が見つからないからと言って悩みすぎないようにと語りました。

たくさんの情報から何を目的に働くかを考える

就職活動を目前にした学生たちは不安も多いもの。ただ、ここで浜田氏はひとつのアンケート結果を見せました。
2023年8月に現4年生に行った「就職活動を漢字一文字で表すと?」の結果は、1位が「楽」。夢や将来が広がると前向きにとらえている学生も多いのです。
ただ2位は「苦」。「苦労したからこそ頑張れるという面もあります」と浜田氏。
「就職先を見つけることが目的になってはいけない。親や周りに言われたからと流されてしまわずに、自分の判断で見つけることも大事です」とアドバイスしました。

ではベストな就職とは何か。
何がベストなのかは人によって異なります。その答えを見つけるために働く目的を考えることが重要です。
「働く目的は人それぞれでいいと思います」、しかし仕事は糧(かて)を得るための手段であることは、誰にとっても共通しています。その「糧」を得る上で自分にとって何が重要か、自分の価値観や何にやりがいを感じるかを掘り下げ、それを企業が持つ理念やビジョンと照らし合わせる中で共感できる部分があるかどうかを確かめることが就職活動の第一歩として重要だと浜田氏はお話されました。

学生にとってベスト就職を実現するために、マイナビでは自己分析をサポートする機能や、インターンシップ情報、そして求人情報を質量の面から充実させています。できるだけ多くの選択肢からベストな1社を選んで頂くために、掲載企業数やその情報の質にこだわってサービス提供をしています。
浜田氏は「マイナビをフルに活用してぜひ悔いのない就職活動就活をしてください」と講義を締めくくりました。

OGからも貴重なアドバイス

実はこの授業を受講したことがきっかけで、2名の本学卒業生がマイナビに入社しています。
この日はOGである中嶋さんと渡辺さんも駆けつけてくれました。

授業の最後には質疑応答の時間が設けられ、浜田氏や先輩たちへたくさんの質問が飛び交いました。
「長く働き続けられたのは何が要因?」という質問に、浜田氏は「自分の成長と会社の成長を重ね合わせられたのが良かった。頑張ったらきちんと報われたのも大きい」と話しました。

先輩たちにも「就職活動前の今、やるべきことを教えてください」という質問が。
渡辺さんは「普段生活の中で目にする会社は本当にほんの一部。セミナーやインターンにたくさん参加してください。私も色んな会社を見たからこそ、いろんな会社に関われるマイナビに入社しました」と回答。
「就活の軸を決めたきっかけは?」という問いには、中嶋さんは「男女差のない仕事をしてしっかり稼ぎたいと思ったので、営業職を選びました。将来は転職することも視野に入れて自分の市場価値がさらに高まる会社を見つけていこうと思った、だからこそ、今の仕事に注力したい」と回答されました。

これから就職活動を行う学生たちにとってより就職活動について身近に、深く考えられるきっかけとなる授業でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代に、採用業務を全面的にサポートいただいたマイナビ様、その時に浜田様と出会ってもう20年の歳月が流れます。こうして毎年、ゲストしてお招き出来ていることに、とても大切なご縁を感じています。

就職活動、採用活動も時代とともに様々な変化があることは肌で感じています。しかしながら、毎年、この時期に浜田様のお話しをお聞きして感じること、それは、「人と人とのご縁」だと思います。一期一会を大切にすることで、きっと素晴らしい会社が見つかり、長く長くお付き合いできる方との出会いが生まれると思います。学生たちの就職活動での健闘を祈り、改めて浜田様に心から感謝申し上げたいと思います。

2023年7月3日

「国際理解とキャリア形成」の授業で資生堂のブランド担当者が人生のテーマを考えるきっかけになる講演を行いました。

5月23日に共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に株式会社資生堂(以下、資生堂)の林順子氏をお招きし、グローバルキャリア形成についての講演が行われました。『BAUM』というグローバルブランドの担当者として活躍されている林氏。これまでの軌跡と、人生のテーマについて貴重な経験をお話頂きました。

幅広いマーケティングの仕事

講演は、林氏が手掛けるブランド「BAUM」のルームフレグランスやオーデコロンをグループごとに回し、学生たちは実際に香りを体験しながら、リラックスしたムードで始まりました。

林氏は関西出身。ドラマで見た英語を使う仕事に憧れて関西外国語大学に入学しました。在学中イギリスに短期留学を経験し、2007年に資生堂に入社します。このときの人事部の採用責任者が深澤教授でした。

初めての配属先は行ったこともなかった北海道。3年間営業職を経験しました。2011年、中国へ1年間出向。中国語もまったく話せない状態だったと言い「発音などは気にせずとにかく話して覚えていきました」と言います。
その後日本に戻ってからは中国の専用ブランドの開発に携わり、2020年からはグローバルブランド『BAUM』のローンチから関わっています。

マーケティングの仕事は幅広く、商品開発や、広告素材の開発のみならず、ストアデザイン等ブランドに係る様々な要素があると言います。
「市場の状況やコンシューマーのニーズ、ブランドイメージ等を総合的に考え、コンシューマーにとってより豊かなライフスタイルや価値を届けることが仕事です」と話しました。

あなたの人生のテーマは?

林氏は「人生のテーマを決めている人はいますか?」と問いかけました。

何人かの学生が手を挙げるのを見て、
「テーマがあると人生に深みが出ると思っているので、今回の話を単純に聞くだけではなく、考えるきっかけにしてもらえたらと思います」と語りました。例えば将来について考えるとき「漠然と○○になりたいと思うのではなく、5年後10年後にどうなっていたいのかを考え、書いたり話したり言語化することが大事」と話しました。

林氏自身は、
「やらない後悔よりやる後悔の方が、その後の成長につながる」が信念と話します。
大学時代、堂々と自分を表現できている人たちを目の当たりにし、挫折を味わったと言います。しかし、このままだと後悔だけが残ると思い直し、一念発起。経験ではなく努力でカバーできると思った新しい言語(アラビア語)を授業選択し、絶対にトップの成績を取るという目標を立てました。その結果やればやるほど楽しいと思うようになり、長所を伸ばせば個性になると思うようになったと言います。
「挫折と挑戦を繰り返す、自分の人生の礎になった経験だと思います」と話しました。

「グローバル」とは多様な価値観や文化が形成される世界

BAUMは日本以外の中国でも展開されているブランドです。そのため日本人だけでなく、日々さまざまな国の人とコミュニケーションを取ると言います。
「日本語以外でのコミュニケーションの時には、できる限りシンプルにわかりやすく伝えていくことを心掛けるようにしています」と林氏。

「グローバルというとかっこいいイメージがあるかもしれませんが、多様な価値観や文化が交差するところなんです」と林氏。多種多様な人々とコミュニケーションをとるため、1つのことを説明するにも伝え方に工夫が必要です。これまでの思考プロセスでは通用せず、そこでも理想と現実のギャップを感じたと言います。

まずはやってみる!そのあと内省し言語化する

ただ、「できないこと」が山ほどある中で「半歩先にあるできること」を積み重ねていくことによって、少しずつ変わっていったと話します。
「私自身は高いスキルを持っているわけではなかったですが、できることを少しずつ積み重ねていった結果、振り返ったらキャリアができていました」と話しました。いま自分にスキルが足りないと思っている学生にも、目の前のことを積み重ねることで活躍できる方法もあると語り掛けました。

「自分の短所をカバーするためにどうするのかを、自分自身と対話しながら考えることで、長所を個性に昇華できる」と林氏。
自分の好きなことや興味のあることを見つけてまずはやってみること、見つけられなかったら目の前のことに誰よりも取り組むことの大切さを語りました。そして「取り組んだらそれで終わらせず、言語化することが大事です」と話し、「皆さんの人生が、より豊かにより深くなるお手伝いになる授業になっていればと思います」と講演を終えました。

学生たちも将来を考えるきっかけになった講演

講演後、学生たちはグループで感想を話し合い、林氏に伝えました。
「自分は挫折も挑戦もまだ数が少なく未熟だと思いました。思いを言語化して、自分の軸を持っていきたい」と語った学生には、
「自分の考えを人前で発言することはとても難しいことです。言語化していくことを頑張ってやっていってください」とエールを送りました。

まだどんな仕事がしたいか決まっていないけれど、海外に興味があるという学生は「怖がらずに踏み込んでいきたいと思います」と宣言。林氏は「夢を実現するためには今日から何が出来るか、明日はどうするかアクションプランを考えてみると良いですよ」と具体的なアドバイスをされました。

学生たちにとって、これからの人生を良くしていくためのテーマを考えてみる授業となりました。

担当教員からのメッセージ

林さんに初めてお会いしたのは、彼女がまだ大学生の頃でした。以来15年の歳月が流れたことになりますが、毎年お会いするたびにその輝きを増しているお姿には、感動します。目の前のことに精一杯挑戦してきたそのキャリアが物語っています。ご自身の軸をしっかりと持ち、卓越した行動力をいかんなく発揮されて、さらなるご活躍を心から期待したいと思います。人生のテーマを有し、とにかく恐れることなく行動することの大切さは、学生にとって、本当に大切なメッセージとなりました。来年も、楽しみにお待ちしています。ありがとうございました。