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2026年2月2日

企業の社会的責任とは?「社会責任論」の授業でJFEテクノスによる特別講義が行われました。 

12月18日の「社会責任論」(担当:生活科学部 現代生活学科 倉持一准教授)の授業で、JFEテクノス株式会社による特別講義が行われました。企業の社会的責任についてどのようなことをしているのか、実例を挙げながら語っていただきました。学生たちは企業のCSRやCSVの考えについて学びを深めるきっかけとなりました。

JFEテクノスはなんの会社?

登壇されたのは木村満氏と村田雄介氏です。
村田氏は「少し難しい言葉も出てきますが、リラックスして聞いてください」と語り、講義が始まりました。
最初に会社紹介を行ったのは木村氏です。
1990年にJFEの前身である日本鋼管株式会社へ入社。
「30年以上働いてきましたが、企業の社会的責任について深く考える機会は少なく、今回は私にとっても良い機会です」と話しました。
「JFEは鉄を主軸とした会社です」と木村氏。
日本鋼管と川崎製鉄が2002年に経営統合してJFEHDが発足し、現在は鉄鋼、エンジニアリング、商社の3事業を展開しています。そのうちJFEエンジニアリングのグループ会社の1社がJFEテクノスです。
「ルーツは造船業」と木村氏は説明し、船体製造の技術を応用して橋や線路、工場やプラントなど社会インフラを築いてきたと紹介しました。

JFEテクノスは主にそれらのメンテナンスを担っています。太陽光・風力発電設備、コンテナクレーン、高速道路の橋脚、焼却炉、立体駐車場など多岐にわたるものの保守を行います。
「脱炭素の観点からも、今あるものを長く使うことが重要です。劣化を防ぐためには定期的な点検や補修が欠かせません」と語りました。

インフラを守ることで社会貢献

JFEのパーパスは「くらしの礎(もと)を技術で創り担い、すべての人を笑顔にする」。
木村氏は「すべての人とは顧客だけでなく、社員も仕事を通して含まれます」と説明しました。
「そのためにも、すべてのステークホルダーから信頼を得ることが必要です」。
社会の一員として認めてもらう取り組みの一つとして、事業を通じたSDGsへの貢献を重視しています。

JFEテクノスの社会的責任は、インフラを守ること。これは社会の維持に大きく貢献しています。
「ただし、CSRは事業以外にもあります」と木村氏が挙げたのが地域社会との交流です。交流によって認知度が高まり雇用が生まれ、雇用の拡大は企業の成長とさらなる社会貢献につながります。
「社会貢献を通じて社会的価値が生まれ、自分たちも成長していく。企業・消費者・社会の好循環を生み出すことが価値の創造、つまりCSV経営の軸になるのです」と語りました。

技術開発を行うためにも成長は大事

続いて村田氏が登壇。
大学生の頃はアウトドアに関わる仕事を目指していましたが、怪我で断念。自分を見つめ直すため海外を巡る中で、どの国でも日本の製品やサービスが活躍していることに気付いたといいます。日本にいては分からなかった製品のすごさを実感し、自動車会社に入社。
その後、車以外でも多くの人の役に立ちたいと考え2013年にJFEへ転職しました。
「学生時代はこんな業界があるとは知りませんでした」と、車業界をきっかけにエンジニアリング業界と出会ったと話しました。

JFEグループのパーパスは「世界最高の技術で社会に貢献する」こと。
社員の約6割が技術者で、日本だけでなく世界で戦える技術力に誇りを持っています。
その技術力を強みに、カーボンニュートラル分野のトップランカーを目指しています。

環境問題の解決は会社の使命

「カーボンニュートラルの技術開発には、利益がなければ研究費を確保できません」と村田氏。
「だからこそ成長が必要です。企業の利益追求も、何のために利益を増やすのかという目的がなければ社会に認められません」と語ります。気候変動は世界的な課題であり、限られた資源を守りエネルギーを効率的に使うには高い技術力が不可欠です。

「これほど環境を重視するのは、私たちの事業が大量の二酸化炭素を排出するからです」と村田氏。
日本のCO₂排出量は世界5位で2.9%。一見少なく思えますが、6位以下は1%程度で「相対的に見ると多い」と指摘します。
排出量が最も多いのは発電や石油精製などのエネルギー変換分野で約4割、次いで鉄鋼や建設・製造などの産業分野です。
「JFEグループはどちらも深くかかわる分野です。鉄を扱う会社の使命として、二酸化炭素削減に取り組む必要があのんです」と強調しました。
さらに「インフラは一度整備すると数十年使われます。建設や設置時にもCO₂が出るため設計段階で省エネを考え、長く使い最後はリサイクルできるよう取り組んでいます」と説明しました。

CSRは地域とつながってこそ

最後にJFEグループのCSRの取り組み事例として紹介されたのが、ごみ問題への対応です。
公道の清掃活動やごみ拾い大会を定期的に実施。社内での分別は18種類と細かく分けられているといいます。
「本社近くの池では、近隣の小学生を招き、虫取りなど自然と触れ合う交流会も行っています」と紹介されました。

また、社員が働きやすい環境づくりにも注力しています。
「福利厚生は社員へのCSRです」と語り、家賃補助や取得しやすい年休制度、育休など、ライフイベントを支える制度を整えています。
企業の成長を目指すことで社会のサステナビリティに循環していくことがCSRだということを、学生たちも学んだ講義でした。

担当教員からのメッセージ

企業は単なる経済の担い手ではなく、私たちのよりよい未来をつくる大きな主人公の一人だという認識が当然視される中、企業経営において欠かせないのが「企業の社会的責任(CSR)」の考え方です。
この「社会責任論」の授業では、CSRを歴史的な理論変遷を主軸に考察しながら、その時代において何が論点とされ、かつ、どのような影響が企業活動に生じたのかを学びます。これまで、経営者個人の倫理観を重要視する議論もあれば、企業という営利追求組織だからこそ幅広い社会責任論は認めるべきではないという議論もあれば、いや、経済的価値と社会的価値の双方を創出することが重要だという議論も登場するなど、CSRに関する議論はまさに百花繚乱です。
これらの議論を体系的に学び、現代の企業経営のあるべき姿を自らの価値観と照らし合わせながら考えている学生にとって、今回のJFEテクノス株式会社の特別講義は、よりリアルなCSRを感じ取る良い機会になったと考えています。利益追求を旨とする企業という組織がいかに社会貢献に取り組み、自社と社会の2つのサステナビリティを実現していくのか。これは非常に難易度の高い経営課題ですが、それでも真摯にチャレンジし続けるJFEテクノスの各種施策を目の当たりにしたことで、学生たちの企業観も変化したのではないでしょうか。

2026年1月29日

国文学科実践キャリアプランニングの授業にて、株式会社KDDIチャレンジド代表取締役社長の間瀬英世氏による特別講演が行われました。

2025年11月21日(金)実践キャリアプランニング(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)にて、株式会社KDDIチャレンジド(以下KDDIチャレンジド)代表取締役社長の間瀬英世氏をお招きし、キャリアに関する講演が行われました。

授業と企業連携について

「実践キャリアプランニング」は、文学部国文学科の1年生を対象としたキャリア科目です。学生は、企業から招くゲスト講師や在学生の先輩によるキャリア講演、企業と連携したPBL型課題などを通して、社会人基礎力を養い、多様化する女性のキャリアへの理解を深めていきます。

今回の授業には、携帯通信サービスのauを運営するKDDI株式会社の特例子会社であるKDDIチャレンジドから、代表取締役社長の間瀬英世氏をゲスト講師として招き、特別講演が行われました。間瀬氏は、中学校から短期大学までを実践女子学園で過ごした本学園の卒業生であり、学生たちにとっては同窓生にあたります。講演では、ご自身が歩んできたキャリアと価値観の変遷、そして業務として取り組んできたDE&Iや障害者雇用についてお話いただきました。

間瀬氏の自己紹介

間瀬氏は冒頭で、「新卒で入社した会社を転職し、入社した先がKDDIの子会社でした。在職中に親会社と合併し、CSR推進室に配属されました。その後、人事部ダイバーシティ推進室に異動し、2021年にKDDIチャレンジドへ出向、現在は代表取締役社長を務めています」と自身のキャリアを紹介しました。また、「『間瀬』はワーキングネームで、本名は『逢坂』といいます」と補足し、スライドに映し出された愛犬についても紹介しました。最後に「将来の夢は、愛犬がのびのびと暮らせる場所へ移住することです」と語り、会場を和ませました。

キャリアのターニングポイント

間瀬氏は自身のキャリアの転機として「転職後にCSR推進室へ配属され、『DE&I(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)』の推進に取り組んできたこと」を説明しました。

DE&Iとは、ダイバーシティ(Diversity/多様性)、エクイティ(Equity/公平性)、インクルージョン(Inclusion/包摂性)の頭文字をとった言葉で、「性別・人種・能力などの違いに関わらず、全員が同じスタートラインに立てるように必要な配慮を行い、それぞれが安心して自分らしく活躍できる状態をつくること」を指します。

とくに重要なのが「エクイティ」だと間瀬氏は強調しました。「壁の向こうを見ようとする二人の子どものために踏み台を用意する」という例を挙げ、身長の違う子どもに同じ台を渡しても、どちらも壁の向こうを見られるとは限らないと説明。「同じ高さの台を配る“平等”ではなく、それぞれに合った高さの台を用意する“公平”の考え方が大切です」と述べました。

講演ではミニワーク「ある夫婦の相談」も実施されました。
共有された内容は「私は保育士です。パートナーはトラック運転手です。家事と育児は半分ずつ負担する約束でしたが、相手の仕事が忙しく、結局すべて自分に負担がかかっており、離婚を考えています」という相談です。間瀬氏は「あなたならどうアドバイスしますか?」と問いかけ、学生はリアルタイム共有システムを使って回答しました。多くの回答は「まず話し合いをする」といったものでした。

間瀬氏は回答を踏まえて「実はこの相談、保育士が男性で、トラック運転手が女性という設定です」と種明かしをしました。上の世代では、保育士=女性と決めつけた回答が多かったことを紹介し、「無意識の思い込みによるジェンダーバイアスが生まれている」と解説。「皆さんが対話を重視していることがよく伝わりました」と感想を述べました。

最後に企業がダイバーシティ推進に取り組む理由として、「人口減少による労働人口の減少」という社会背景と、「多様なバックグラウンドを持つ人材がいる職場のほうが、生産性が高い」という調査結果を紹介しました。特に、人口減少の社会課題について「日本という国の存続にかかわってくる重要な課題」と述べ、日本社会を形作る企業のトップの一人として推進の理由を話しました。

障害者雇用と多様性

間瀬氏が代表取締役社長を務める KDDIチャレンジドは、KDDIの特例子会社(障害のある人の雇用を積極的に進めるために設立された企業)です。従業員の約7割が身体や精神に障害を抱えており、それぞれの得意や特性を生かし、プログラミングや事務作業、携帯電話の解体など、さまざまな仕事に取り組んでいます。間瀬氏は活躍する社員の例を「発達障害を持ちながらエンジニアとして活躍し、現在は本社に出向している社員もいます。業績もとても良いようです」と紹介しました。

続いて間瀬氏は、障害の捉え方には「医学モデル」と「社会モデル」という2つの考え方があると説明しました。医学モデルは「人が障害を抱えている」と考えるのに対し、社会モデルは「社会の側が障害を生んでいる」という視点を持ちます。たとえば「車いすの人が超えられない段差が公園にある」状況を、社会モデルでは「段差がなければ行動は制限されないはず」と捉え、社会の側を変えることで障害を取り除こうとする考え方です。ダイバーシティ推進の捉え方は後者で、間瀬氏は「環境を変えることで多様な人の就労を可能にしようとしている」と話しました。

また、障害者が何かを成し遂げた姿を感動的に描き、それを消費する現象として「感動ポルノ」という概念も紹介しました。テレビ番組などで涙を誘う演出に障害者が利用されるケースを挙げ、「健常者と障害者を区別して扱うのではなく、まずフラットな視点で見てもらいたい」と強調しました。

間瀬氏のキャリアと価値観の変遷

間瀬氏は、女子校時代から現在に至るまでの価値観やキャリアの変化について、モチベーショーングラフを用いながら振り返りました。

女子校で過ごした学生時代、間瀬氏の中には「良妻賢母」という価値観が強くあり、「就職したら社内婚をして寿退社し、子どもを産んで家庭に入る」という将来像を自然に描いていたといいます。

社会人として働き始めた頃には男女雇用機会均等法が施行されましたが、「法律はできても、自分にはまだ遠い世界の話だった」と回想。当時は社内結婚が一般的で、社外の人と出会う機会が少なかったこと、また「25歳までに結婚できないと“売れ残ったクリスマスケーキ”と例えられていたため、結婚のために転職することも珍しくなかった」と、その時代に普通とされていた環境について語りました。

そのような空気の中、20代後半で「なんとなく転職をした」と話す間瀬氏。しかし転職先で出会った広報の仕事は「天職」と感じられるほど魅力的で、初めて女性の上司を持ったこともあり、「30代前半で仕事の楽しさややりがいを強く感じるようになった」と述べました。

その後、広報からCSR(企業の社会的責任)推進室へ異動。そこでは「新しい取り組みを会社に導入する役割を担い、関係部署との調整や準備がとても大変だった」と振り返ります。その中で、忙しい毎日の中で出会った「面白おかしく」という言葉が心に残っているといい、「ミスやつらい出来事も“面白おかしく”捉えることで、前を向いて行動できる」と紹介しました。

さらに、特例子会社の社長に就任してからは組織改革に力を注いできたと話し、多様性のある職場でのマネジメントに試行錯誤しながら取り組んできたと述べました。社外で出会った人にマネジメントについて相談した際、「愛のシャワーを浴びせる」というアドバイスをされたことが印象的だったといいます。「感謝を伝える、褒める。積極的に言葉で伝えることで『ここにいていいんだ』という安心感を持ってもらえる。この言葉をもらってから、意識して行動しています」と語りました。

講演のまとめ

講演の最後に間瀬氏は、「世界には本当に多様な人がいる。自分と違う相手をどう受け入れるかが大切で、そのためには対話力が不可欠」と強調しました。多様性を受け入れることによって、生活も仕事も、そして人生も豊かで楽しくなると述べました。

自身の体験として、女子校という共通点が多い人が集まった環境から、多様な年齢・価値観を持つ人がいる社会に出たとき、「環境に慣れるまでがとにかく大変だった」と振り返り、「変化や違いを受け入れられるキャパシティを身につけてほしい」と学生に呼びかけました。

また、多様性の時代における女子校については、「女子がマジョリティでいられる唯一の空間」であり、「誰かに忖度することなく、さまざまな経験ができる環境」と述べました。学生には「自分のパーパス(存在意義・志)を考えてほしい」と語り、そのためには外に目を向け、自分自身を知る行動が必要だとしました。さらに、偏ったバイアスを持たないことは生きやすさにもつながるとし、見聞を広げることの重要性も伝えました。

最後に、建学の精神である「女性が社会を変える、世界を変える」という言葉を引用し、学生にエールを送って講演を締めくくりました。

質疑応答

講演の後には、質疑応答の時間が設けられました。学生はグループで感想を共有したのち、間瀬氏に質問したいことをまとめてリアルタイム共有システムに投稿。間瀬氏はPCを通じてスクリーンに投影された質問に、順番に回答されました。

Q.ワーキングネームを使っている理由と、そのメリットについて

間瀬氏は、ワーキングネームを使う理由について次のように説明しました。

「戸籍の名字が変わったのは広報の仕事をしていた時期でした。広報は、メディア担当者に名前を覚えてもらえるかが重要な仕事だったため、旧姓である間瀬をそのまま名乗り続け、現在に至っています。間瀬という名字は珍しいため、覚えてもらいやすいことがメリットでした。」

Q.企業における多様性による問題と、その解決方法について

多様性に伴う課題について問われた際には、時短勤務を例に挙げながら次のように話されました。

「たとえば産休明けで時短勤務の人がいる場合、短い勤務時間では担当業務がこなしきれず、周囲に仕事が回ることがあります。仕事を引き受ける側にとっては通常業務に加えて負担が増えるため、不和が生じやすい状況になります。しかし時短勤務側の話を聞くと、育児と仕事の両立で手いっぱいだったり、仕事を任せてしまう申し訳なさを抱えていたりします。私も以前、時短勤務の人をサポートする立場を経験しましたが、相手の話を聞いて初めてその大変さが理解できました。お互いの状況を知ることで、納得して業務に取り組むことができます。対話はとても大切です」

Q.ジェンダー差別を受けた経験と、女性に関する価値観の変化について

ジェンダー差別を受けた経験については、次のような回答がありました。

「ジェンダー差別を受けたことはあります。管理職になった際に『女性だからなれたよね』と言われたり、社長となった現在でも『女性だから』と言われることがあります。女性に関する価値観の変化については、良い方向に変わったと感じています。実際、男性社員が『夕飯の当番なので早く帰ります』と退勤していく姿をよく見かけており、家事負担の平等化という変化を現場で感じています」

Q.障害者の方の働き方について

障害者の方の働き方について問われた際には、次のような説明がありました。

「障害の程度は人によって異なるため、それぞれできる業務を担当してもらっています。業務内容は一般的な事務作業から携帯電話の解体までさまざまです。特に精神障害のある方は日によって体調の変動が大きいため、日々状態を把握しながら働き方を調整しています。」

授業時間ぎりぎりまで学生の質問に丁寧に回答してくださった間瀬氏。
学生にとっては、女子校から社会へと踏み出した一人の先輩によるリアルな体験談と、キャリア形成に関するお話を伺える貴重な時間となりました。

担当教員からのメッセージ

卒業生である間瀬様にご講演をいただきました。
私自身も「多様性」ということを安易に発言する機会が多いことを
反省するお話しでありました。やはり企業での様々なご経験をお持ちであり、
しかも、現在、特例子会社のトップをお務めになっている間瀬様のお話しには
本当に説得力がありました。
また、女子大に学ぶ意義についても、経験に基づく貴重なアドバイスをいただきました。
この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

2025年12月18日

「スマドリ」をZ世代に広げよう!人間社会学科社会学概論の授業にて、スマドリに関連した特別講演が行われました。

2025年10月22日(水)社会学概論(担当:人間社会学部人間社会学科 原田 謙教授)にて、スマドリ株式会社 野溝氏、スマートドリンキングプロジェクトメンバー新藤氏をお招きし、お酒にまつわるあらたなライフスタイルである「スマートドリンキング」に関する講演と、マーケティングのセミナーが行われました。

授業と企業連携について

「社会学概論」は、人間社会学部の1年生を対象に開講されている専門必修科目です。学生は授業を通して社会学の基礎を学び、社会学的な発想を身につけながら、現代社会の仕組みや課題を正しく理解する力を養っていきます。

本学では「スマートドリンキング」に関するプロジェクトをテーマに、原田教授のゼミや講演などを通して3年間にわたりスマドリ社との連携を行っています。今回のコラボレーションでは、スマドリ社が提案するライフスタイルや飲酒に対する意識の変化についての講義に加え、マーケティングに関する解説やミニワークも実施されました。学生にとって、社会の動向を学び、自らの専門領域への理解をさらに深める貴重な機会となりました。

スマドリについて

講演の冒頭で、野溝氏から「スマートドリンキング(スマドリ)」について詳しい説明がありました。「スマドリ」とは、アルコールを「飲む」「飲まない」という選択の多様性を尊重し、体質や気分に合わせて“自分らしい飲み方”を提案する考え方です。テレビCMなどを通じて認知が広がっており、学生アンケートでは約50%がその名を知っていると回答。教室内では、二人に一人が「スマドリ」を認知していることが分かりました。

さらに、「スマドリ」の推進を目的として「スマドリ株式会社」が設立されたことも紹介されました。同社は「飲む人も飲まない人も共に楽しめる社会」を目指すマーケティング会社であり、飲酒にまつわる楽しみ方の多様性を広げる取り組みを行っています。

大学との産学連携プロジェクトにも積極的に取り組んでおり、スマドリ普及の主要ターゲットである大学生と共に、普及に向けたアイデア創出を行っています。これまでの連携授業では、学生の企画が実際にイベントとして実現したり、大学内でコラボブースを出店したりするなど、学びを出発点に社会へ広がる活動へと発展した事例が紹介されました。さらに、渋谷区主催のイベントでの社会提案型発表など、学生の発想をきっかけに企業や地域と連動した実践的な活動も生まれています。

お酒の適切な楽しみ方を知ろう!

適切な飲酒のための正しい知識を得ることを目的に、学生たちはアルコール体質を確認する「パッチテスト」を体験しました。これは、手の内側にシールを貼り、20分後の色の変化によって「アルコールを分解できる体質かどうか」を判断するものです。

新藤氏は、「アルコールを分解できるかどうかは、特定の分解酵素の働きによって決まります。分解酵素の働きが弱い人は、お酒に弱い体質ということになります」と説明。「日本人の約半数は、この分解酵素の働きが弱い、または働かない体質であるとされています。自分の体質を知ることは、安全にお酒を楽しむための第一歩です」と述べました。

このほかにも、飲酒によって引き起こされる健康被害や、不適切な飲酒によるさまざまなリスクについて解説があり、学生たちは適切にお酒を楽しむための正しい知識を学びました。

マーケティングセミナー

学科の学びと関連づけながら、マーケティングに関する講演も行われました。企業のマーケティングについて、「SNSの普及により、口コミを通じた購買行動が増加しています。消費者同士の交流によって評判が広がり、その結果メガヒット商品が生まれるケースも見られるようになりました」と紹介。さらに、「企業がマーケティング戦略を考える際には、受け手となるターゲットを深く理解することが非常に重要です」と述べ、実際の分析手法についても解説しました。

続いて、マーケティングのアイデアを具体的な施策へと落とし込む際のポイントを紹介。過去の事例をもとに、フレームワークの活用方法や施策立案の流れをわかりやすく解説し、学生たちは真剣な表情で耳を傾けていました。

 実践!企画を考えよう

授業の最後にはワークが行われ、「世の中のZ世代にスマドリを広げるには?」または「渋谷区のZ世代にスマドリしてもらうには?」のいずれかをテーマに、学生たちはアイデアを考えました。

ワーク後は、野溝氏、新藤氏、原田教授の3名によるフィードバックが実施されました。特に「世の中のZ世代にスマドリを広げるには?」の提案に対しては、「スマートフォンを見る機会が増える中、『学食などで食事中によく見る』という大学生の日常動作をもとにスマドリの普及策を考えていた点が非常に参考になった」「提案の中で“推し”やキャラクターといった観点が多かった。身近に感じている存在と組み合わせることで、スマドリもより親しみやすく感じてもらえるのではと気づかされた」といったコメントが寄せられました。

質疑応答

「マーケティング的な商品開発を行ううえで、大学時代に勉強しておくとよいことはありますか?」という質問に対し、「業界に興味を持ったきっかけは、大学時代に履修した授業でした。履修登録の段階で気になる授業を選び、日常で触れるメディアや広告の中から『これを仕事にしたい』という興味の種を見つけることが大切です。そこから逆算して必要な学びを進めていくとよいと思います」と回答しました。

また、「数年前と比べてスマドリの認知度が高まっていますが、広報活動の方向性に変化はありますか?」という質問には、「TVCMによって40~50代の認知度が上昇しました。現在は、認知度をさらに高めたいターゲット層が若年層にシフトしており、SNSプロモーションやポップアップショップの開催など、若者のコミュニケーションスタイルに合わせたプロモーションを展開していきたいと考えています」と回答。今後の展望についても語られました。

今回の特別講義を通じて、学生たちはスマドリが提案する新たなライフスタイルや、マーケティングの考え方について理解を深めました。学びを通して社会とのつながりを意識し、今後の専門的な探究につながる貴重な時間となりました。

担当教員からのメッセージ

渋谷スマートドリンキングプロジェクトの皆様には、これまでも3年ゼミでのワークショップの実施などでお世話になってきました。今年度は、1年生向けに渋谷発のイノベーションである「スマドリ」をご紹介いただきました。前週にちょうど講義していたライフスタイル、ダイバーシティ、アンコンシャス・バイアスといったキーワードとも響き合うお話でした。
ご多忙の中ご講義頂いた野溝様、新藤様、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年12月12日

未来の自分を想像する!〈データ時代の女性キャリア開発〉の授業にて、株式会社マクロミルの特別講演が開催

11月18日(火)人間社会学部の学生を対象とした授業〈データ時代の女性キャリア開発〉にて、株式会社マクロミル(以下マクロミル)人事本部の井出美南氏をお招きし、特別講演が行われました。

授業と企業連携について

〈データ時代の女性キャリア開発〉は、人間社会学部の学生を対象に開講されている専門教育科目です。この授業では、データを扱う企業で働く女性をゲスト講師としてお招きし、業務内容やキャリアについてご講演いただき、学生は、データサイエンスに限らず、データを活用した現代日本におけると女性のキャリアについて理解を深めていきます。

今回の授業では、マクロミル人事本部の井出美南氏をお招きし、データを活用したマーケティングの工程についてご講演いただきました。講演では、実際の仕事に近いミニワークも行われ、学生たちはデータを使ったリサーチ業務を体験的に学びました。今回の授業は学生にとって、情報を活用する仕事に対してより深く考える貴重な機会となりました。

講演に先立ち、竹内教授からは「実際に自分が調査担当となった気持ちで取り組んでみましょう」と声がけがありました。

講演の初めに

井出氏はまず、自身について「2019年に新卒でマクロミルへ入社し、現在は7年目になります」と紹介。現在の採用業務を担当する前は、日用品の対面調査や生体データの分析など、データ収集と解析の現場で経験を積んできたことを説明しました。

また、マクロミルがBtoB(企業間取引)の企業であり、BtoC(企業対一般消費者)ではないため、表に出る機会は少ないと前置きしつつ、この時間を通じてマーケティングリサーチの企業がどのような仕事をしているのかを理解してほしいと語りました。

マクロミルの業務内容に見るデータと仕事

井出氏は、マクロミルの業務内容を「あらゆる生活者データを収集・分析し、ビジネスの成功を支援するマーケティングパートナー」と紹介し、マーケティングリサーチを通じて企業の課題解決を支えることが主な業務であると述べました。

また、マーケティングリサーチについては「消費者の実態を解き明かし、企業のマーケティング課題を解決すること」と説明しました。具体的には、企業から寄せられる「より良い製品やサービスを提供したい」という課題に対し、消費者へのリサーチを実施し、その結果をレポートとしてまとめて納品するという流れであると紹介しました。さらに、多様な調査手法を用いてデータを収集し、集まった情報を分析する仕事であると補足しました。

データとマーケティング

井出氏は、マーケティングリサーチの実際をイメージしてもらうために、会社で扱った代表的な事例として、有名飲料メーカーのビールシリーズの新商品開発を紹介しました。コロナ禍で外食が減少し、「宅飲みの拡大によって若者のビール離れが進んでいる」という課題に対し、性別を問わず若者をターゲットに商品開発が進められたと説明します。まずアンケートによる定量調査を行い、新商品の手がかりとなる意見を収集。その後、小規模な定性調査でアイデアの受容性を検証していく、という一連の流れが紹介されました。

定性調査の結果、ポジティブな評価が集まったことで前例のない発想が商品化へと結びついたと紹介し、名称やパッケージ、缶の塗料など、発売に至るまでのさまざまな検討が行われたことにも触れました。井出氏は、こうしたプロセスを例に挙げながら、身近な商品の裏側にも多くの調査が存在する点を強調し、「この商品はどんな人をターゲットにしているのか」と視点を持ってみることの面白さを学生に伝えました。

さらに井出氏は、自社のデータ活用の幅広さを示す別の事例として、ホラーゲームのマーケティングリサーチも紹介しました。企業から「より確実に選ばれるゲームにしたい」という依頼を受けたこのプロジェクトでは、テストプレイ後に面白さや恐怖を感じた場面をアンケートで把握する調査手法が用いられたと説明します。また、ユーザーの深層心理をとらえるために生体データの調査も行われ、プレイヤーにセンサーを装着して心拍数や手汗の変化を測定し、興奮や警戒が高まるタイミングを特定したことを紹介しました。こうしたデータを基に、音や驚かせる演出の調整が行われた経緯も説明しました。

実践!ミニワーク

井出氏は「皆さんも実際にリサーチのプロセスを体験してみましょう」と述べ、ミニワークの内容を説明しました。テーマは、「人気キャラクターを好む人はどのような特徴や行動特性を持っているのか」をリサーチするというもの。まず、井出氏から学生に対して膨大なアンケートデータが共有されました。

井出氏は、「まず『このキャラクターを好きな人はどんな人か』という仮説を立ててください。その仮説を裏付けるデータをアンケートから探して引用してみましょう」と話し、「データから読み取れる事実を紙に書き出してまとめてください」とワークの手順を丁寧に説明しました。

また、「このデータは、私たちが実際の業務で扱っているものと全く同じです」と述べ、現場で用いられる“リアルなデータ”であることも紹介しました。学生たちは2〜3人のグループに分かれ、約30分かけてワークに取り組み、終了後には数名の学生が結果を発表しました。

ミニワークの最後には、井出氏から模範例として、実際に企業へ納品する形式でまとめられた〈プロファイルサマリー〉の資料が紹介されました。学生たちは提示された資料を自分の解析結果と見比べながら、井出氏の明瞭な解説に真剣に聞き入っていました。

質疑応答

講演の最後に質疑応答の時間が設けられました。

学生が仕事のやりがいについて尋ねると、井出氏はこう答えました。「試飲調査やパッケージ調査の結果など、自分が携わったデータが実際の商品開発に生かされ、スーパーなどで店頭に並び、ターゲット層の方々に手に取ってもらえるのを見たときに、大きなやりがいを感じます。」

続いて、新卒でマーケティング業界を選んだ理由について質問がありました。「就職活動の軸に“商品開発に携わりたい”という思いがあり、さらに『1年目からマーケティングに関わりたい』という強い気持ちもありました。メーカーの場合、多くは営業経験を積んだ後に商品開発部へ異動します。私は早くから携わりたかったため、マーケティング業界を選びました。」

さらに、学生が印象に残った業務について尋ねると、井出氏はアイトラッキングを用いた視線調査を挙げました。「新商品開発を支援するため、コンビニやスーパーの陳列棚を会場内に再現し、消費者の方に普段と同じように商品を取って購入していただく対面調査を行いました。そこで、視線がパッケージのどこに集まるのか、手に取ったときどの部分を最初に見るのかを計測し、デザイン改善に役立てました。」

今回の授業は、学科での学びが社会でどのように生かされるのかを知り、将来のイメージを具体的に持つことができる貴重な時間となりました。

担当教員からのメッセージ

今年度から始まったこの授業では、毎回、企業で活躍されている方々をお招きし、各業界におけるデータの活用や、女性がどのようにキャリアを築いているのかについて、ご自身の経験を交えながら「リアル」なお話をしていただいています。

学生にとっては、教科書だけでは知ることのできない企業の実際の取り組みや、普段は意識することの少ない仕事の裏側に触れる機会となっており、毎回興味深く授業に参加しています。

これからの社会では、DX やデータの活用は、理系・文系を問わず、ほとんどの仕事に関わってきます。「得意でないから」「よく分からないから」と不安になる前に、まずは知ること、触れてみることが大切です。

この授業を通じて、将来の進路がまだ決まっていない人でも、「自分にもできることがある」と感じ、一歩踏み出すきっかけになってほしいと考えています。

2025年11月19日

文化と共に歩みつづける!日本文化論bの授業にて、株式会社叶匠寿庵の特別講演が行われました

2025年10月30日(木)に日本文化論b(担当:国際学部国際学科 コルネーエヴァ スヴェトラーナ准教授)にて、株式会社叶匠壽庵(以下叶匠壽庵)人事部部長の角田徹氏をお招きし、特別講演が行われました。

授業と企業連携について

「日本文化論b」は国際学部国際学科の専門教育科目です。この授業では、日本人の行動様式や様々な慣習について、住まいや冠婚葬祭などをテーマに学んでいます。授業を通して日本の文化への理解を深め、自国の文化を出発点に、世界を多角的にとらえる国際的な視野を養うことが目的となっています。

今回の授業のテーマは「和菓子」。叶匠壽庵(かのう しょうじゅあん)から人事部長 角田徹氏をお招きし、日本文化の一つである和菓子作りのために、一貫した理念で行っている多様な取り組みを特別にご講演いただきました。

叶匠壽庵について

叶匠壽庵は、1958年に創業した和菓子の製造・販売を行う企業です。角田氏は、「京都の老舗和菓子店には、創業から1000年を超える店もある。それと比べると当社はまだ若い企業です」と紹介しました。

また、「和菓子という概念は、西洋から伝わった洋菓子と区別するために生まれた言葉であること」についても説明がありました。角田氏は、日本文化の特徴として「海外から入ってきた文化を、日本人が感性や好みに合わせて編集し、独自のものへと変化させていく傾向がある」と述べ、和菓子の世界においても同様に、「砂糖の輸入が和菓子に大きな影響を与えた」と紹介しました。

企業が大切にしている理念

菓子作りの原点は農業であるという考えから、「農工一つの和菓子作り」を掲げています。
本社兼製造工場である『寿長生(すない)の郷』では、一部の原材料となる農産物を自社で栽培するなど、ものづくりの源流から関わる姿勢が息づいています。

この姿勢は多様な形で商品に表れており、その事例の一つとしてパッケージなどのデザインについて説明しました。
角田氏は「パッケージのデザインについて、以前は他社に依頼していましたが、それでは会社の学びにならないという想いから社内にデザインを行う部署を設立しました。以降はすべて自社で行っています」と学生の手元に配布されたリーフレットをさしながら述べ、「皆さんのお手元にある和菓子のパッケージも社員がデザインしました」と紹介されました。

寿長生の郷について

寿長生の郷は、滋賀県大津市にある本社兼製造工場で、自然と人が共存する里山です。
1985年に、「五感で四季を感じ、和菓子で表現する最良の地」として里山を開墾し、街の中心部から移転。
角田氏は、「季節を表す和菓子を、四季を感じられる場所で、自分たちが収穫した素材でつくる。農工一つの和菓子作りの理念を体現している場所」だと紹介しました。

標野(画面左)

この理念を象徴する商品が、〈標野(しめの)〉という和菓子です。〈標野〉は、かつて近江(現在の滋賀県)で額田王が詠んだ和歌

「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」 を

テーマとしたものです。夕日を思わせる穏やかな赤色のゼリーで、梅を使用した爽やかで芳醇な味わいが特徴です。

角田氏は、「〈標野〉に使う梅は、寿長生の郷で収穫されたものです。梅の木は移転時に植えた約1000本の苗木が成長したもので、剪定や受粉など、年間を通じて管理しています」と説明しました。収穫した梅はすぐ使用せず、一年間熟成させてから〈標野〉に加工されます。さらに、「以前は着色料を使っていましたが、すべて梅で再現したいという思いから、赤い梅の品種『露茜』の栽培を新たに始め、現在は素材の色だけで表現しています」と述べました。

叶匠壽庵HP 商品一覧「標野(しめの)」https://kanou.com/gnaviplus/item/shimeno/

和菓子作りのこだわり

角田氏は、和菓子作りの中で大切にしている点として、「あんこを毎朝職人の手で炊くこと」を紹介しました。小豆の収穫は年に一度であること、また収穫後は品質が日々変化していくことに触れ、「一日ごとに変わる原材料の状態を見極め、その日ごとに最高の状態へ仕上げるため、炊く作業は職人さんに任せています」と話しました。

続いて、あんこを使用した叶匠寿庵の看板商品〈あも〉について紹介がありました。
「〈あも〉は、あんこと餅でつくられた細長い和菓子です。『あも』とは宮中に仕える女房言葉で、『餅』を意味します」と説明しました。
好調な売れ行きの一方で、「一口サイズがほしい」という声もよく寄せられていると紹介。
しかし、「小分けにすると〈あも〉ではなくなる」と述べ、「新しい食べ方の提案をして親しんでもらおうと、商品を開発しました」と、最中に百人一首をプリントした〈あも歌留多〉を紹介しました。

角田氏は〈あも歌留多〉の図版を、本社と同じく滋賀に所在し『かるたの聖地』である近江神宮所蔵のものから引用していること、滋賀に訪れた皇室関係者に夕食後のデザートとしてふるまわれたエピソードも共有され、地域に根差し地域を代表する和菓子作りを行っていることを紹介されました。

叶匠壽庵HP 商品一覧「あも歌留多」https://kanou.com/gnaviplus/item/amokaruta/

寿長生の郷の持続可能性

寿長生の郷は、環境省が指定する「自然共生サイト」(民間の取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域)に認定されています。和菓子製造で排出される生ごみや伐採木の破片を活用した堆肥づくり、絶滅危惧種の保護活動、工場排水の浄化など、自然豊かな里山の環境を維持するため、多様な取り組みが行われていることが紹介されました。

木々は、樹木医の資格を持つ社員によって計画的に管理されており、角田氏は、「担当の社員が、100年後の寿長生の郷の風景を私たちにプレゼンしてくれるんです」と話しました。続けて、「認定を目指して環境整備をしたのではなく、できることに取り組み続けた結果、認定をいただけた、という感覚です」と述べ、自給自足を大切にする企業方針が、環境面でも高く評価されていることを紹介しました。

質疑応答

リアルタイムアンケート機能を使用し、学生からの質問に角田氏が回答する時間が設けられました。
画面にずらりと表示された質問からピックアップして回答していき、採用された学生には角田氏から叶匠壽庵の和菓子がプレゼントされました。

学生への豪華なプレゼント

最初の質問は、「和菓子界で今、一番困っていることは何ですか?」です。

角田氏は「原材料である米の調達」と答えました。全国的なコメ不足という背景を挙げ、「米農家が、もち米の生産リソースをうるち米へ回してしまっている」と説明しました。さらに、日本の食料自給率が約40%にとどまっている状況を踏まえ、「つくれるものは自分たちでつくる意識を持っています」と述べ、企業として持続可能な体制を追求している姿勢を示しました。

学生から一番多かった質問が「一番好きな商品は何ですか?」という質問です。角田氏は「〈紅白薯蕷(じょうよう)饅頭〉の白い方が一番好きです。予約限定商品なので手軽に手に入るわけではないのですが、食べたら違いがわかります」と紹介しました。
叶匠壽庵HP 商品一覧「紅白薯蕷饅頭」https://kanou.com/gnaviplus/item/kouhakujouyomanjyu/

あも歌留多を調べる学生

講演中に紹介された銘菓〈あも〉について、「一口大にすると食感が変わると言っていたが、具体的にどう変わるのか」という質問が挙がり、角田氏は「〈あも〉はもちをあんで包んだ細長い和菓子ですが、あの長さがあるからこそ、もちとあんこの水分バランスが保たれ、独特の食感が生まれます。短くするとそのバランスが崩れ、食感も変わってしまう。つくり手からすると、それはもう〈あも〉とは呼べないんです」と説明しました。
叶匠壽庵HP 商品一覧「あも」https://kanou.com/gnaviplus/item/amo/

「和菓子づくりで一番大切なことは何ですか」という質問に対し、角田氏は「ストーリーです」と回答しました。続けて具体例として〈匠寿庵大石最中〉を紹介。本社のある滋賀県大石は、赤穂浪士で知られる大石内蔵助の祖先ゆかりの地であり、その歴史になぞらえて商品化されたと説明しました。最中に刻まれた山と川の模様は、討ち入りの際の集合の合言葉に由来するものだと補足し、「なぜこの和菓子なのか。土地と結びついたストーリーを持たせることが重要です」と強調しました。
叶匠壽庵HP 商品一覧「匠寿庵大石最中」https://kanou.com/gnaviplus/item/ooisimonaka/

講演の最後に

授業の最後に、三笠宮家当主 彬子女王が雑誌に寄稿した文章を引用しながら「日本の将来を担う若い世代や子供たちが、生け花や畳、床の間など、日本文化を『いいものだね』と親しんでもらわなければ、文化は過去の遺物になってしまう」ことを伝え、講演を締めました。


担当教員からのメッセージ

今回のご講演では、和菓子づくりに込められた叶匠壽庵の理念や地域文化とのつながりだけでなく、企業として大切にしている姿勢についても多くの示唆をいただきました。
特に、人事採用の場で重視される「基本的な姿勢」や「挨拶の重要性」についてのお話は、これから社会へ踏み出す学生にとって大きな学びとなったはずです。
専門知識だけでなく、相手を敬い、自ら成長しようとする姿勢が評価の基盤であるという実践的なご助言は、学生にとって特に心に残る示唆となり、たいへん有り難く感じています。
和菓子づくりにおける一貫した理念や地域への深い理解、素材に向き合う誠実さは、そのまま社会人として求められる姿勢にも通じます。
今回のご講演を、文化への理解を深めるだけでなく、自らの行動や将来像を見つめ直す貴重な機会として、生かして欲しいと願っています。

2025年11月6日

まつ育ファン化計画!実践キャリアプランニングの授業にて、アンファー株式会社とコラボした課題の発表が行われました。

2025年10月24日(金)実践キャリアプランニング(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)にて、アンファー株式会社(以下アンファー)から中溝幸生氏、堀川瑞希氏をお招きし、課題の発表が行われました。アンファーはスカルプDで広く知られている化粧品・健康食品メーカーです。

授業と企業連携について

「実践キャリアプランニング」は、1年生を対象とした必修の共通教育科目です。学生は、企業からのゲスト講師や在学生の先輩によるキャリア講演、企業と連携したPBL型課題などを通して、社会人基礎力を養い、多様化する女性のキャリアへの理解を深めていきます。

国文学科クラスでは、企業から提示される課題に学生がグループワークで取り組み、解決策を導き出す「課題解決型授業」として、アンファーとの連携を行っています。

当日はゲストとして、元アンファー株式会社常務取締役であり、現在もアンファー系列会社で相談役を務める中溝幸生氏と、アンファーグループグループ経営統括局 人事部の堀川瑞希氏が登壇しました。講演に先立ち、堀川氏は「学生の皆さんが将来の就職活動の際に、アンファーグループを選択肢の一つとして考えてもらえたら嬉しい。また、今日の課題にはぜひ一生懸命取り組んでほしい」とエールを送りました。

堀川氏

スピーカーの紹介

今回ご講演いただいたのは、中溝幸生氏です。中溝氏は元資生堂勤務で、深澤教授からは「私の先輩で、一緒に働いていました。机が隣だった時期もあるんですよ」との紹介がありました。

中溝氏のキャリアは営業職からスタート。「新卒で入社後、初めての配属先は、九州の長崎市でした。その5年の在籍期間中のうち、2年間は五島列島福江市に住みながら営業活動を行いました。」と振り返りました。その後、東京本社へ異動し、長くマーケティング業務に携わります。特に男性化粧品のマーケティングや商品企画を担当し、当時の企画書の写真を交えながら具体的な取り組みを紹介しました。赤字だった子会社の業績を大幅な黒字へと転換した事例についても触れ、「このときは社内表彰で社長賞をいただきました」と語りました。

また、上海駐在時の経験として、2010年の上海万博で協賛企業となるための企画提案に尽力したことを紹介。国際的なビジネスの現場で活躍された経験も語られました。

資生堂退社後はアンファーに入社し、これまでの経験を活かして商品開発や海外販路拡大などの業務に携わってきました。
人事部に在籍していた際には、「役職敬称の撤廃(社長を“社長”ではなく“◯◯さん”と呼ぶ)」や「服装規定の見直し」など、組織改革にも取り組まれました。

商品企画や販売促進の施策立案、企画提案など、学生たちがこれから取り組む「課題に対する解決策の提案」と通じる業務を数多く経験してきた中溝氏。
講演は、アンファーという企業の紹介へと続きました。

アンファーについて

中溝氏は「アンファーは、医学を中心に“美と健康”の領域で包括的なソリューションを提供するメディカルヘルスケアカンパニーです」と紹介しました。〈スカルプD〉をはじめ、スカルプケア・スキンケア商品の展開に加え、男性、女性の薄毛治療専門のクリニック、睡眠サポート、オンライン診療など、健康に寄与する多様な事業を展開しています。

アンファーは企業理念として「自分をより『美しく』『健やかに』することを通じ、人生をより『愉しく』したい人を増やすこと」を掲げており、中溝氏は「“愉しむ”という言葉が含まれているのがアンファーらしいところです」と語りました。さらに企業ミッションとして「医学に基づく、最適なソリューションの提供」を掲げ、医療機関との連携体制を強化している点も大きな特徴だと説明しました。医師や専門家の監修のもと、医療知見に基づいた商品開発や診療事業を行っています。

また、アンファーグループ内の企業構成についても詳しく説明があり、「皆さんがドラッグストアで目にする〈スカルプD〉や<まつげ美容液>の販売を行う企業と、クリニック事業の両輪で活動しています。」と紹介。「お客さんの悩みの深さに対応して、日常的の使う商品提供や治療を行う自由診療クリニックを運営し、すべてのお客様に満足いただける企業を目指しています」と述べました。

課題の発表

今回、学生が取り組む課題は「〈スカルプDまつ毛美容液〉のリピート対策の提案」です。中溝氏はシリーズの中でも〈スカルプDまつ毛美容液プレミアム〉を取り上げ、全15班に商品のサンプルを配布しました。

〈スカルプDまつ毛美容液〉シリーズは、2012年に誕生し、「毎日の目元ケアでご機嫌なわたしへ」というメッセージを発信する国内売上NO1のまつげ美容液ブランドです。まつ毛美容液のほか、マスカラやアイライナーなど、目元に特化したメイクアップ商品も展開しています。ブランド誕生のきっかけは「お客様の声」であり、アンファーが頭髪研究で培った知見をもとに、気軽で安心して使えるまつ毛美容液が開発されました。

中溝氏は課題設定の背景として、「美容液は、効果を実感するまでに少し時間がかかる商品」と説明。そのため、継続して使いたくなる工夫がないとリピートにはつながりにくいとし、サポートメールの配信や定期購入者に特典を付与するなどの対策を取り入れていることを紹介しました。さらに、企画提案の条件として「具体的なアプローチの背景を明確に説明すること」や「文字・図表・音声など表現方法は自由であること」を提示。「特に背景の部分をしっかり考えてほしい」と学生に呼びかけました。

講演の最後に中溝氏は「競合商品と比較しながら考えを深めてもらえたら」とライバル商品を紹介しながら助言し、学生の分析と提案に期待を寄せました。

授業の終わりに

中溝氏の講演に続いて、深澤教授から今後のスケジュールと具体的な取り組み方について説明があり、「皆さんにとって初めてのキャリア科目であり、初めての企業連携提案です。協働力と計画力を高めるプロセスを経験し、成長の一つの機会にしてほしい」と学生にエールを送りました。

学生は講義の残りの時間を使って早速グループワークに取り組みました。
今後、2回のグループワークを通して企画をまとめ、その成果をアンファーの皆様に向けて発表する予定です。

担当教員からのメッセージ

今から約30年前、私が企業でマーケティングの業務に携わっていた頃に大変お世話になったのが、
今回、ゲストでお越しいただいた中溝様です。
こうして再び出会えるご縁の深さを感じています。
今回は、学生にも身近な化粧品のマーケティングに関するお題をいただきました。
学生たちの柔軟な発想から、どういった提案がなされるか、とても楽しみです。
この場を借りて、中溝様には心から感謝申し上げます。

2025年10月24日

共働き世帯が住みやすい住宅を作る!人間社会学科の授業で旭化成ホームズとのコラボ授業が行われました。 

9月29日に人間社会学科 原田謙教授の授業で、旭化成ホームズ株式会社の河合慎一郎氏による特別講義が行われました。社会の価値観の変化や、生活者に合わせた住宅の例を示しつつ、「LONGLIFE」な暮らしについてお話されました。学生たちには課題も提示。学生たちは11月にプレゼンテーションに臨みます。

いつまでもしあわせに暮らすためには?

旭化成ホームズは「住宅」を商品にしている会社です。
戸建て住宅商品名である「ヘーベルハウス」は学生たちも聞き覚えがある様子。住まいを通して、安心で豊かな暮らしを実現することを理念としています。
「つまり家だけではなく、最高な人生を提供したいという会社です」と河合氏が紹介されました。

河合氏は住宅設計士として旭化成ホームズに入社。
これまで約450軒のマンションや戸建ての家を設計されてきました。
現在はLONGLIFE総合研究所で、住んでいる人の価値観や時代の変化をとらえた新しい暮らしを研究されています。
「LONGLIFEとは、長持ちするという意味ですが、単に家が長持ちすることだけを目指しているのではありません。住んでいる人の暮らしが、いかにハッピーな状態で長く続くかが重要です」と河合氏。

防犯防災、環境配慮についてはもちろん、子育てや働き方、ペットの有無などによって暮らし方は変わります。
ミドルライフやシニアライフの研究も行っており、「今では浸透した二世帯住宅という言葉を作ったのは、HEBEL HAUSなんですよ」と話しました。

変わって行く社会に価値観

「今日は主に共働き世帯に注目して、価値観の変化と住宅商品開発の歩みをみていきます」と、河合氏はさまざまなグラフや表を提示しました。
日本では1980年代以前は専業主婦世帯が当たり前で共働きはほとんどいませんでした。1986年に男女雇用機会均等法が成立。1990年代ころから共働きが徐々に増えていき、2000年代頃に拮抗。
その後専業主婦世帯は急速に減少していきました。いまでは7,8割が共働き世帯です。

河合氏は30年前と現在の女性誌を比べて、価値観の変化についても話します。
「昔は主婦を応援するようなおかずの作り方などがメイン。家事や育児を上手にこなすことを求められていました。いまは仕事も子育ても両立し、自分自身が輝ける行き方を求めるようになっています」。

答えは生活者のなかにある

旭化成ホームズは世の中の変化に合わせて住宅を開発してきました。1989年には、「共働き家族研究会」を発足させ、フルタイムで働く夫婦をターゲットに家事の省力化を提案しました。
ダブルボール洗面台や買いだめ可能な収納庫などを備え付けに。今でこそ当たり前なオープンキッチンも開発しました。
しかし、当時は時代がその発想に追いついていませんでした。開放的なキッチンは、あまりにも先進的だったのです。

河合氏自身も共働き世帯。
まだ子どもが小さかった2010年代、息子を抱っこして娘の手を引いて買い物していた際の思い出を話してくださいました。レジの女性から「お父さん大変ね、大丈夫?奥さんに逃げられたの?」と聞かれたと言うのです。
当時も調査では共働き世帯は増えているデータを示していましたが、まだまだ浸透するのは難しい。それを痛感したといいます。
「いつの時代も研究開発の出発点は生活現場です。今の時代もAIや新しい技術が出ていますが、正解は生活している人の現場にしか答えはないと思っています」と話しました。

2010年代に提供していた住宅は、家事に関心はあるものの、うまく取り組めない男性層を主なターゲットとしていました。
家族全員が使いやすいキッチンはどんなものかを考え、空間の真ん中に作業台を設置。子どもも手伝いができるようにし、調理時間もシェアすることで思い出作りにもなる場所を提供しています。

これからの時代に求められる住宅とは?

ここで河合氏から改めて課題の発表がありました。
テーマは「新しい住宅のサービス・商品の企画を行う」というもの。「皆さんの思う、こんな住宅やアイデアがあったら面白いなという考えを考えて見てください」と河合氏は話します。
そして「このときに使えるのが5W1Hのフレームワークです」。5W1Hは、いつ・どこで・なにを・どうして、といった要素を考えることで課題解決や企画発案を考えるフレームワークです。

課題の発表の際にはどんな住宅の提案か、どんな人がターゲット向けか、どんな工夫があるかをポイントに考えることを伝えました。
また「この企画が世の中や使用者にどんな役に立つのかを考えましょう。自分たちが楽しいだけで終わらないものを提案してください」と話します。

「皆さんに問いたいのは、今の世の中にどういった商品、住宅を提供するのか。ユーザーはどんなことに困っている?いまはどんな社会変化があるかを考えてみてください。そのためにはターゲット層を具体的に決め、実際に話を聞いてみましょう。検索では出てこないオリジナルな情報を使ってみてください」。

4班に分かれ、学生たちはグループワークを開始。
高齢化に着目する班や、30代の独身女性をターゲットする班など着眼点もさまざま。11月のプレゼンテーションに向かって資料作成に努力していきます。

担当教員からのメッセージ

3、4年のゼミ生は「都市と地域の社会学」と「ライフスタイルの社会学」というテーマに基づいてオリジナル報告を実施してきました。今回の講義は、家庭生活や働き方の変化をふまえた企業活動のお話だったので、学生もこれまでの社会学系の講義で学んできた事柄とのつながりを理解することができたようです。11月の発表に向けて、ヘーベルハウス/へーベルメゾンの取り組みをふまえながら、学生らしい提案ができるように奮闘中です!

ご多忙の中ご講義頂いた河合様、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年10月23日

企業の美意識を知る!国文学マーケティングプロジェクトの授業で、資生堂企業資料館館長大畑昌弘氏による講演が行われました。

10月2日(月)に国文学マーケティングプロジェクト(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)にて、株式会社資生堂(以下資生堂)資生堂企業資料館館長の大畑昌弘氏をお招きし、企業の歴史と理念についてご講演をいただきました。国文学マーケティングプロジェクトは、文学部国文学科を対象に開講されている専門教育科目です。日本文学とかかわりの深い企業を主体的に調査研究することで、マーケティングと文学の関連性を意識し、学科で学ぶ意義をより深めていくことを目的としています。

講演のはじめに大畑氏は、「資生堂は『変わらないために変わり続けてきた会社』」と紹介し、「『世のためにという思い』『いつの時代も〈本物〉を造り出そうとしたこと』『創り出した〈本物〉の価値をきちんと届けること』この3つのこだわりを大切にしてきました。今回の講演で、それを感じていただけたら」と述べました。

資生堂企業資料館について

静岡県掛川市にある資生堂企業資料館。1992年に設立され、創業当時から今につたわる貴重な資料の保存・収集・展示を行っています。
設立のきっかけは、1972年に社史である「資生堂百年史」を編纂したこと。
資料収集を行う中で、統一された収集ルールと保管システムが求められ、企業資料の長期保存を目的に資料館が企画されました。

「資生堂企業資料館」公式サイト
https://corp.shiseido.com/corporate-museum/jp/

「資生堂企業資料館オンラインツアー」
https://corp.shiseido.com/jp/company/museum/

資生堂の創業

資生堂は1872年、福原有信が日本初の民間洋風調剤薬局として創業しました。1888年には、日本初の練歯磨〈福原衛生歯磨石鹸〉を発売。当時としては高価格でしたが、科学的な機能性や高級感を打ち出し、大きな成功を収めました。大畑氏はこれを「資生堂の本物志向や高品質へのこだわりが表れた商品」と紹介しました。

1897年には、資生堂初の化粧品〈オイデルミン〉を発売。赤い化粧水をガラス瓶に詰めたこの商品も高品質を追求したもので、「資生堂の赤い水」として評判を呼び、資生堂を象徴する存在となりました。

資生堂パーラーについて

資生堂のDNAである「先進性・高品質・本物志向・西洋風」を象徴する事業が、化粧品会社が飲食店を経営するというすこしかわったビジネスである、資生堂パーラーです。1900年、創業者・福原有信はパリ万博視察の帰路にアメリカを訪れ、ドラッグストアで人気を博していたソーダ水に着目。日本でも導入を決断し、機材だけでなくグラスなどの食器もすべて本場から輸入しました。本物へのこだわりが「まるでアメリカにいるよう」と評判を呼び、休日には遠方からも人が訪れる一大名物となりました。

これが発展し、1928年に薬局から独立したレストラン〈資生堂アイスクリームパーラー〉が開業。西洋料理の草分けとして人気を集め、高級志向と本物感を追求する場は文化人のサロンとしても機能しました。当時の小説に「資生堂」や「パーラー」が登場するほど文化的存在感をもち、その洗練されたイメージは資生堂全体のブランド形成に大きく寄与したと紹介されました。

「美と文化の発信者」という企業文化の確立

資生堂の美の提案意識を確立したのは、創業者の理念を継承した初代社長・福原信三でした。画家志望から家業を継ぎ、アメリカで薬学を学んだ信三は、1916年に意匠部と試験室を設立。パッケージや店舗設計、研究開発の体制を整え、現在の研究拠点の礎を築きました。また、鷹の図柄を廃し〈花椿マーク〉を考案、1927年には「資生堂書体」を制定するなど、時代に先駆け企業ブランディングを実施。資生堂のイメージの定着を図りました。

さらに、〈資生堂ギャラリー〉を開設して若手芸術家を支援し、美容科や子供服科を通じて総合的な美容文化を提案。文化情報誌〈花椿〉では、最先端の生活文化の発信と共に、時代の波によって刷新されていく新しい女性像を発信しました。大畑氏は「資生堂は単なる化粧品会社ではなく、文化を創造し生活に彩りを与えてきた」とまとめました。

資生堂の発展

二代目社長・松本昇は、震災や戦争の動乱期に資生堂の価値伝達の仕組みを経営的な側面から確立しました。大畑氏はその具体例として、「品質本位主義」など社員の精神を示す〈五大主義〉や、社員が本物の価値を届ける〈ミス・シセイドウ〉などの取り組みを紹介。

特に重要と話すのが、1923年導入の〈資生堂連鎖店(チェインストア)制度〉です。これは「お客さま・小売店・資生堂が共に栄える」という〈共存共栄主義〉の実践であり、乱売(大変安く売ること)されがちだった化粧品を契約小売店で正規価格のみ販売する仕組みでした。震災で販売網が打撃を受けた中、新しい販売経路を築く狙いもありましたが、資生堂の高級志向のブランドイメージが信頼を呼び、業界の冷笑をよそに契約は年間目標200件に対して1700件を突破。ピンチをチャンスに変え、資生堂の価値を世に広く伝える契機となりました。

時代に合わせた変化

資生堂は戦争で化粧品が奢侈品に指定され生産販売ができなくなった時代も、形を変えて存続しました。戦後では日本初となるカラーポスターを発表し人々に希望を届け、1960年代には特色ある販売キャンペーンを展開。その中で生まれた広告では「上品で清廉な資生堂スタイル」に対抗し、女性自身が求める新しい女性像を提示する「反資生堂スタイル」が登場しました(「太陽に愛されよう」ポスター)。さらに1980年代には「サクセスフルエイジング」を掲げ、老いを前向きにとらえる視点を社会に広めます。近年も、2011年の東日本大震災支援や、2020年のコロナ禍で手に優しい消毒液を開発し売上の一部を寄付するなど、社会の困難に寄り添う取り組みを実施。資生堂は災害や疫病の時代にも「できること」を模索し続け、常に時代に応じた価値を発信し続けています。

本物の価値を創造し、それらを伝えるため、時代や社会に合わせて様々な変化に挑んできた資生堂。大畑氏は「私も『今の私にできることを精一杯やろう』という気持ちで常に活動している。その中で何かしら皆さんや社会に寄与する会社でありたい」と、社員としての在り方を述べ、講演を終了しました。

鑑賞と質疑応答

講演の最後には、資料館から持参された貴重な品々を間近で鑑賞する時間が設けられました。会場では、大畑氏の解説を受けながら、1897年に販売が始まった化粧水「オイデルミン」のレプリカや、シーンに合わせたメイク方法を紹介する「ビューティーチャート」などが紹介されました。なかでも注目を集めたのは、日本で初めて女性ホルモンを配合したクリーム「ホルモリン」です。容器には、繊細な装飾と資生堂の花椿のロゴが施されており、大畑氏は学生に「率直な感想を聞きたい」と問いかけました。学生からは「小さくてかわいい」「ロゴのワンポイントが素敵」などの声があがり、大畑氏は「今の感覚を知りたかったのですが、やはり“かわいい”と感じてもらえるのですね」と満足そうに話しました。

ビューティーチャートを説明する大畑氏
オイデルミンのレプリカを撮る学生
ホルモリンを近くで鑑賞する学生たち

その後の質疑応答の時間でも活発な意見交換が行われました。

学生から「働いている人の男女比率はどのくらいですか?」という質問が出ると、大畑氏は「美容部員を含めると女性が8割。含めなくても5:5か4:6くらいで女性が多いと思います」と回答。学生たちは、その割合が予想以上だったのか、驚いた様子を見せていた。

また「館長の仕事はどのようなことをしているのですか?」という質問には、「開館日・閉館日にかかわらず、見学案内や問い合わせの対応、資料整理や資料の貸出など、資料館ならでの仕事をしています。同時に複数の業務を並行して行うことも少なくないので、メンバーやアシスタントさんたちに対応いただくタスクの優先順位を決めたり、館内における基本的な決裁も私の仕事ですね。」と説明しました。

今回の講演は、文化にも寄与する企業の意識に触れる貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

国文学の学びと企業活動を結び付けて考えることをコンセプトにした本講座も6年目を迎えました。
本講座には、資生堂と叶匠寿庵の2社にご協力をいただいて授業が進行していきます。
まずは、資生堂企業資料館の大畑館長からの講話をいただきました。150年を超える長い歴史を持つ資生堂、常に時代の先導者として、「美」へのこだわりを繋ぎ続けてきた社員たちの深い思いがあります。
そして、近代文学の中にも数多く登場する資生堂パーラーなど、国文学の学びが、企業の歴史の中に散りばめられていることを改めて学びました。大畑館長には、この場を借りて心から感謝申し上げます。

2025年10月23日

生成AIを制作パートナーに!サイバーエージェントとのコラボ授業が始まりました。

2025年10月14日(火)演習Ⅱb (担当:人間社会学部人間社会学科 粟津 俊二教授)にて、株式会社サイバーエージェント(以下サイバーエージェント)から川越寛之氏による特別授業が行われました。

授業と企業連携について

「演習Ⅱb」は、人間社会学部の2年生を対象に開講されている専門必修科目です。学科での学びをさらに深めるための基礎知識を身につけることを目的としています。粟津教授が担当するIクラスでは、「生成AIを活用し、社会連携プログラムの紹介物を製作しよう!」という課題に取り組んでいます。授業では、Web広告事業でAIを用いたクリエイティブを行っている株式会社サイバーエージェントと連携し、生成AIの活用方法を実践的に学んでいます。

今回の授業では、Geminiを使用し、さまざまな生成機能やAIのカスタマイズについて実践的な演習を行いました。

授業の初めに

川越氏はまず、サイバーエージェントについて紹介しました。
同社は東京都渋谷区に本社を置き、インターネット広告・メディア・ゲームの3事業を主軸としています。川越氏はその中の「インターネット広告事業本部 AIクリエイティブ部門」の統括を担当しており、「生成AIの進化によって、数年前と比較し数倍の業務量をこなせるようになった」と述べました。

続いて「この授業で使用するAIは、Google社のGeminiとNoteBook LMです。コンテンツ制作の過程でどうしても作業量が増える、資料の読み込みや内容の抽出、構成の決定といった工程をAIに任せていきます」と説明し、「出力された結果のうち、どれを選び、どう活かすかは皆さん自身の判断と責任によるものです」と呼びかけました。

実践!Geminiに親しもう

川越氏は8月下旬にリリースされた画像生成機能「Gemini 2.5 Flash Image(Nano Banana)」を紹介しました。「この機能では、AI画像生成において革新的な“キャラクターや被写体の同一性を保持する技術”が実装されています」と説明。続けて「人物の写真を使って“○○風アート”を生成してみましょう」と呼びかけ、ワークが始まりました。

学生たちはそれぞれ自分の画像を使い、ステッカー風の加工など、簡単な指示を入力して画像を生成・変換する体験を行いました。川越氏は「同様の技術は、ファッションECサイトなどで“モデルの写真をAIで差し替え、服だけを変更して見せる”といったかたちで実用化が進んでいます」と述べ、現場での活用例を紹介しました。

続いて、OpenAI社が2024年12月に公開した動画生成AI「Sora2」についても触れました。「動画生成AIも急速に進化しており、短く簡単なプロンプト(指示文)を入力するだけで、質の高い動画を生成できるようになっています」と説明。また、Geminiにも動画生成機能は備わっていて、日々アップデートされて精度が高まっていると補足しました。

川越氏は、「サイトとの連動予約など、昨年AIにはできなかったことが今年は可能になっています。一年で技術が大きく進化している」と語り、AI技術の成長スピードの速さを強調しました。

生成AIのしくみ

川越氏はまず、AIの技術的背景について簡単に解説しました。

AIの研究分野の一覧を示しながら、「生成AIは、機械学習の一分野であるニューラルネットワーク(人間の脳の仕組みを模した情報処理のしくみ)と、その技術を応用したディープラーニング(コンピューターが大量のデータから自動的に特徴を学習する技術)を基盤としている」と説明しました。

さらに、「AIが考えて回答しているのではなく、AIが予測した候補の中から最も適切だと思われるものを選んで出力している」と、その仕組みを紹介しました。

ハルシネーションとその対策

続いて川越氏は、生成AIがあたかも事実のような誤情報を生成する現象(ハルシネーション)と、その防止策について紹介しました。

具体的な対策として、
① 信頼できる情報源をAIに読み込ませること、
② 回答に根拠や出典の提示を求めること
③ Geminiの「Deep Research」など外部検索を活用することの3点を挙げました。

これらにより、AIが回答を生成する際の情報源を明確にすることが、より適切な生成につながると説明しました。また、Deep Research機能については、「投げかけたテーマに関する情報を、根拠を示しながらレポート形式でまとめる機能」と補足しました。

プロンプトとメタプロンプト

さらに川越氏は、「良いプロンプト」の書き方についても解説し、「誰に向けて」「何文字以内で」「どのように説明するか」を明確に指定することで、期待に近い回答を得られると紹介しました。

続けて「これを毎回行うのは大変です。そのため、このプロンプト自体をAIに作ってもらおうと思います」と述べ、AIの動作指示を定義する“根本の設計文”ともいえるメタプロンプトを紹介しました。「これから皆さんには、このメタプロンプト(=プロンプトを書くためのプロンプト)を作成する準備を行ってもらいます」と述べました。

実践!Geminiをカスタマイズ

川越氏の指導のもと、学生たちはDeep Research機能を活用して出力された結果をもとに、Gem(特定の役割・話し方・回答形式などをあらかじめ設定できる機能)を設定し、メタプロンプトを生成するための環境を作成しました。

さらに川越氏は「AIの性格を考えて、自分の好きなように設定してみましょう」と呼びかけ、やり取りのスタイルを自由にカスタマイズするよう促しました。学生たちは考えた性格を設定に読み込ませ、自分専用のGemを作成。

この設定を行うことで、「抽象的な指示から的確なプロンプトを自動で生成できるため、自分でプロンプトを考える必要がなくなる」と説明しました。

また、AIの人格形成について川越氏は「特に指示や設定を行わなくても、やり取りを重ねる中で自然に形成されていく」と述べ、「これから何度もやり取りを行うため、チャットしやすい人格を設定することが大切」と話しました。

学生たちは、今回作成した自分専用のカスタマイズ設定を用い、今後の制作に取り組んでいきます。

担当教員からのメッセージ

生成AIを制作パートナーとするこの挑戦は、人間社会学部の学生にとって、社会で通用する実践力を養う貴重な機会になります。生成AIを使いこなして、社会連携の意義を伝える魅力的なコンテンツができることを期待しています。

2025年10月22日

Z世代に刺さる商品の提案!生活環境学セミナーにて、金吾堂製菓とのコラボ授業が始まりました

10月9日(木)生活環境学セミナー(担当:環境デザイン学科 安齋 利典教授)にて、株式会社金吾堂製菓(以下金吾堂)から常務取締役 碓田憲司氏、商品企画室 小谷真理子氏、株式会社ロッケン(以下ロッケン)から小笠原真一氏をお招きし、コラボプロジェクトが行われました。

授業について

生活環境学セミナーは、環境デザイン学科の3年生を対象とした専門科目です。

意見交換や討論を通じて学生同士が学び合うゼミナール形式で実施されており、安齋先生のもと、計12名の学生がプロダクトデザイン(工業製品のデザイン)について日々学びを深めています。

連携企業の紹介~株式会社金吾堂製菓~

金吾堂について碓田氏から説明がありました。

金吾堂は、米を原材料とした菓子を製造・販売する米菓メーカーです。
50年以上にわたり愛され続けるロングセラー商品「厚焼」をはじめ、現代の食感トレンドに合わせた「ほろほろ焼」や「パリッと煎」、「おすきなひとくち」など、60品目を超えるせんべいを展開しています。

なかでも主力商品である「厚焼」は、「一日で焼き上げる厚焼を縦に積むと、富士山の約8倍の高さになる」といわれるほどの人気商品。「どこかで一度は見たことがあるはず」と話しながら、実物が紹介されました。

販売成績は好調に推移している一方で、主な購買層が50代以降に偏っているという“販売層の高齢化”が課題とされています。さらに、近年の原材料価格の高騰や米の調達難の影響を受けており、新たな購買層の開拓が必要であることが説明されました。

連携企業の紹介~株式会社ロッケン~

金吾堂のパッケージデザインを担当しているのが、ロッケンの小笠原氏。

他にも、様々なパッケージデザインやブランディング(総合的なデザインを通じて製品の価値を高める戦略設計)を手がけています。また音楽業界でインハウスデザイナー(企業専属のデザイナー)としての経歴を持つ小笠原氏は、デザイン事例としてミュージシャンのCDジャケットや映画のポスタービジュアルなども織り交ぜながら実績を紹介しました。

ブランディングの事例として、金吾堂の「おすきなひとくち」シリーズを取り上げ、「シリーズ化を戦略に入れたパッケージデザインの提案だった」と述べながら画像と実際の商品を提示。統一されたデザイン様式と、一目で味がわかるパッケージ構成について説明しました。

「中身は変えていないのに、一時的に販売休止になるほど売れた。デザインの力で購買意欲を変えることができた」と語り、パッケージデザインが持つ影響力の大きさを強調しました。

課題の発表

企業の説明が終わった後、碓田氏から、「Z世代をターゲットに、厚焼のセカンドラインとして若年層に響く商品の企画立案」という課題が発表されました。

具体的に検討すべき要素として「パッケージデザイン」「味のバリエーション」「せんべいの形」「ライフスタイルに合った商品展開」の4点が示され、それぞれに「面白くカジュアルに」「Z世代にうけそうな新たなフレーバー」などの方向性が明示されました。碓田氏は「参考として、Z世代が好む味を分析した資料を紹介します」と述べ、資料を共有。ユニークでバリエーション豊かな味付けが好まれる傾向にあることがわかりました。

さらに、小谷氏からは課題の参考として、Z世代の嗜好傾向の分析と、金吾堂が実際に行っているパッケージ戦略の紹介がありました。小谷氏は「①カラフルでモダン」「②SNS映え」「③キャラクター活用と環境配慮」の3点を挙げ、「カラフルで差別化された、思わずSNSに投稿したくなるパッケージ」や「環境配慮素材を用い、その点を明示して社会的責任にも訴求する」戦略を紹介しました。

学生はこれらの点を踏まえ、商品企画とパッケージのデザインを進めていきます。

意見交換

机を囲んで、金吾堂のせんべいを味わいながら意見交換が行われました。
学生が食べているせんべいのパッケージに関する質問では「音のなるパッケージが好みではなく、その時点で選択肢から外れる」「持ち運びにはチャック付きが便利でありがたい」「ながら食べをするので、せんべい自体が一口サイズなのはいい」と学生から素直な感想が寄せられました。

SNSのシェアに関する話題では、「パッケージをシェアすることはありますか」という質問に対し、「面白いものは共有します」との回答がありました。
さらに、「大人数とつながっているアカウントでは“映えたい”気持ちが強く、率直な感想は親しい友人だけでつながっているアカウントで投稿する。パッケージやお菓子の感想を載せるのは、ほとんどが後者です」と、リアルなSNS利用の実態にも言及しました。学生の中には、「『おすきなひとくち』の写真に『これ大好き』というコメントを添えて投稿していました」と語る、すでに金吾堂のせんべいをシェアしていた人もいました。お菓子の投稿について、学生は「友達の投稿は信頼度が高く、自分も食べてみようというきっかけになります」と話し、企業担当者の三名は興味深そうにうなずいていました。

その後も、環境意識やお菓子の食べ心地など、さまざまな話題で活発に意見交換が続きました。

学生は最終提案に向けて、準備を進めていきます。

担当教員からのメッセージ

金吾堂の常務取締役、碓田憲司様、商品企画室 小谷真理子様、ロッケンの小笠原真一様、
お忙しい中、遠いところお越しいただき誠にありがとうございます。
学生にとってのお煎餅はどのような位置づけかと思っておりましたが、ゼミ生間のSNSで金吾堂様のお煎餅が話題になっていたり、おばあちゃんの家あったであるとか、別の授業でこのコラボレーションを紹介したところ、
 「この金吾堂の厚焼煎餅は私が好きでよく食べているため、特に興味が湧いた。」
というような内容がレポート書かれたり、意外と身近な存在であることが分かりました。
つまり、学生にとっては馴染みがある、あるいは馴染みやすい存在なのかもしれません。
であれば、かなり面白いことになりそうだという気がしてまいりました。
意見交換でも、学生のスナック菓子の購買チャネルや食べ方が話題となり、その果てにはパッケージの袋の音まで話が及び、敏感かつ繊細な学生の感性に触れることもで来ました。
まさに、「Z世代に刺さる商品の提案!」に近づきつつある予感を持てたミーティングでした。