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2026年3月6日

制度が支える女性活躍!経営学概論の授業にて、ダイドードリンコ株式会社による連携授業が行われました。

2026年1月7日(水)、経営学概論(担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)にて、ダイドードリンコ株式会社(以下ダイドードリンコ)の連携授業が行われました。

授業と連携企業について

経営学概論は、人間社会学部1年生を対象に開講されている専門科目です。経営学の基礎を学習することを通して、企業の仕組みや活動についての理解を深めます。また、消費者、労働者やパートナー企業など多様な視点から企業との関わり方を考え、課題を通じて情報収集、分析などの行動力を養っていきます。

今回の授業ではダイドードリンコから大植あかね氏、奥川美優氏にご登壇いただき、「働く女性の本音〜理想の働き方と福利厚生を知る〜」というタイトルで、ダイドードリンコの経営、制度、女性活躍についてご講演をいただきました。また、講義の後半には事前学習として学生が取り組んだ課題「こんな自販機があったら」の内容共有と、ゲストからのフィードバックが行われました。

人材重視のマインド

奥川氏からはじめに、ダイドードリンコの企業概要が紹介されました。ダイドードリンコは、1950年代にドリンク剤を販売していた大同薬品工業を起源とし、現在はダイドーグループホールディングスの中で清涼飲料事業を担う企業です。本社は大阪府にあり、売上の約90%を自動販売機が占めていること、コーヒー飲料に強みを持つこと、そして自社工場を持たないファブレス経営であることの三点が、事業の特徴として説明されました。

奥川氏は、工場を持たないという事業特性から、「ダイドードリンコにとって最大の資源は人材です」と話し、働く人にかかわる福利厚生や制度の充実に力を入れていると説明しました。また、優秀な人材に自分の意思でこの会社で働きたいと感じてもらうこと、そして人と人との組み合わせによって組織力を高めていくことを目指していると語られました。こういった考え方は、働く人をコストではなく価値を生み出す存在として捉える「人的資本経営」という考え方にもつながっています。

人を尊重する制度

続いて、ダイドードリンコで実際に導入されている制度や福利厚生について、具体的な説明が行われました。とくに、労働時間に関する制度として、時短勤務制度とスーパーフレックス制度を紹介しました。奥川氏は「時短勤務は、子どもが小学校を卒業するまで利用できる点が特徴です。また、スーパーフレックス制度では、所定の時間内で自ら勤務時間を調整することが可能です。病院や家族に時間を使うことはもちろん、『推し活』に使う人もいます。働く時間を柔軟に活用できることで、日々の過ごし方の幅が広がります」と、労働時間の多様性によって、多様な働き方につながっていることを話しました。

また、週4回までテレワークが可能であることが紹介され、会社の制度が一人ひとりの意思や状況に寄り添った働き方を支えていることが伝えられました。

社内制度と社員

休暇制度の紹介として、〈D休暇〉と呼ばれる独自の休暇制度についても説明がありました。D休暇とは、生理や更年期、不妊治療など、公にしにくい身体的・個人的な事情で休暇を希望する際、理由を申請せずに取得ができる制度です。休暇を取得する際の心理的な負担を軽減し、気兼ねなく休暇を取得できるよう配慮された制度であることが伝えられました。

このD休暇は、社員が年に一度、ビジネスプランや施策を提案できる〈チャレンジアワード〉を通じて生まれた制度であること、奥川氏自身が人事総務部の同僚とともに企画・提案を行い、実際に制度として採用されたと紹介がありました。社員の声が制度として形になる社内風土から、人材への意識の高さが感じられ、学生たちは、制度を「使うもの」として捉えるだけでなく、働く人の声によってつくられていくものとして考える視点を得ました。

女性の社会進出と企業の取り組み

大植氏は、女性活躍推進の背景には、男女格差是正のための法改正の歴史だけでなく、日本の人口減少に伴う労働力不足という社会的課題があることを紹介しました。

2010年のダイドードリンコでは女性管理職の不在や、社員の男女比率の大きな偏りなど、「働きにくいと感じる女性が多くいらした」と話し、2016年の女性活躍推進法をきっかけに、改善の動きが進み始めたといいます。大植氏は「営業職が社員の約6割を占めていたことや、女性総合職の採用が2010年から始まったため、女性社員を育成できるマネジメント層が十分にいなかったこと、さらに柔軟な働き方に対する理解が進んでいなかったことなどから、当初は女性が働きやすい環境が整っていませんでした。」と当時の社内状況を説明しました。

女性が働き続ける環境づくりのため、初めに育児・介護を目的として在宅勤務制度を導入。段階的にその利用を拡大するとともに、フレックスタイム制度を導入し、制度整備により、多様な働き方が可能な環境が整えられていきました。さらに、女性が働きやすい環境を整えるため内勤の営業職部署である〈インサイドセールス部門〉を設立。女性社員が営業職として積極的に配属されており、実際に所属されている大植氏は「プライベートや子育てと仕事が両立しやすく、非常に働きやすいと感じています。また、制度を使って子どもの学校の行事に参加したり、自分の習い事に時間をつかったりすることができています」と話しました。

さらに、女性営業職の成長支援の活動として、〈BLOOM〉が紹介されました。〈BLOOM〉は、営業職として働く女性が勤務地を超えて集い、交流会や研修を通じてスキルアップと横のつながりを深める取り組みです。大植氏は「〈BLOOM〉には全国の女性営業職30人弱が所属しています。女性の営業職は、営業職全体人数の10%ほどですが、片手で数えることができた過去から比較すると急増しているんです。」と話しました。社内で女性が活躍できる環境が整えられた結果、実際に仕事で力を発揮する女性が増えてきていることが紹介されました。

また、組織的な意識改革として、社内に〈ダイバーシティ推進グループ〉が設置されていることが紹介されました。専門家を招いてSDGsやダイバーシティに関する研修を行う他、グループの働きの一つに「女性にとって働きやすい環境づくりがある」と話し、グループから企画として提案された『女性ヘルスケア応援自販機』を紹介しました。大植氏は「『女性ヘルスケア応援自販機』は、飲料と共に生理用品も販売する自販機です」と概要を紹介し、本学渋谷キャンパス9Fにも設置されていることを話しました。事業を通じて多様性を包み込む姿勢が表れていることが語られました。

こうした制度によって実現されている多様な働き方は、近年注目されている「人的資本経営」という考え方とも重なっています。奥川氏は、「従業員一人ひとりを企業の価値を生み出す存在と捉え、その力が発揮される環境を整えることが、企業全体の成長につながる」と説明しました。また、企業には利益の追求だけでなく、社会や関係者全体の幸せを考える姿勢が求められていると話しました。

学生の考える「自動販売機の新たな活用例」

授業の後半では、学生が事前課題として提出していた「自動販売機の新たな活用例」について、東京営業部の松本英康氏からのフィードバックと意見交換の時間が設けられ、学生が提出した課題に対してみんなで考えを深めていきました。ここでは2例紹介します。

スタディサポート自販機

学生は「図書館の設置を想定し、ラムネのお菓子やカフェイン飲料を販売し、目的買いを狙います」と発表。松本氏は「学生向けという視点はありませんでした。勉強の気分転換で自販機に向かったとき、何を買うか品ぞろえから選びやすいと思いました」とコメント。篠崎教授は「冬は受験を控えた学生が勉強に力を入れる時期。塾などに設置するのはいかがでしょうか」と話しました。

味変飲料の販売

学生は「購入者が自分で時間とシーンに合わせて味の変化ができる缶を自販機で販売します」と提案。松本氏は「気分転換に使用できそうですね。自分好みに変化を加えるという発想もとてもいいと思います」と話し、篠崎教授は「組み合わせによるカスタマイズで味を作っていくシステムが、女子にうけそうだなと思いました。コーヒー缶の購入者層を増やすことができそうです」と意見を寄せました。

今回の講演は、学生にとって福利厚生や社内制度を活用する人の目線で捉える視点を学び、働く社員と企業の関係性をより自分事として考えるきっかけとなりました。また、課題のフィードバックの時間では、自販機の企画を担当している社員と直接意見交換が行われる貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

今回の連携授業は、
①「働きやすさ」を意識して企業内制度について考えること
②「あったらいいな、こんな自販機」を提案すること
の二本立てで実施しました。

せっかくダイドードリンコの皆さまにお越しいただく機会ですので、履修者が「働く」ということを具体的にイメージできるお話を伺えればと考えておりました。また、ダイドードリンコ社の自動販売機は柔軟性が高く、履修者から生まれるであろう斬新なアイデアとの親和性も高いのではないかと想定しておりました。

100分の授業でこの二点をやり遂げるため、年末の授業ではビジネスモデルや戦略に関するトピックスを扱い、それ以前の授業でも「働く」というテーマを折に触れて取り上げてきました。

当日は、奥川様、大植様よりダイドードリンコ社の制度や職場環境について詳しくお話を伺い、後半は、特にユニークな自動販売機のアイデアをもつ履修者の代表が発表を行いました。その後、松本様とのQ&Aおよび講評をいただく時間を設けていただきました。

なかでも「誰かと分け合える商品が自動販売機から出てきたら面白いのではないか」という提案については、履修者全員で具体化を試みました。将来的には、学生のアイデアが実際に自動販売機を通じて形になる可能性も感じられる貴重な機会となりました。

本授業の履修者は主に1年生ですが、数年後にはその中からダイドードリンコ社で活躍する学生が生まれるかもしれません。

お忙しい中、大阪本社ならびに東京営業所よりお越しいただき、誠にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

2026年2月27日

社会にいきるデータ活用!〈データ時代の女性キャリア開発〉の授業にて、トランスコスモス株式会社の特別講演が行われました

2025年12月9日(火)〈データ時代の女性キャリア開発〉にて、トランスコスモス株式会社(以下トランスコスモス)から、人事採用統括部の坂本祥平氏をお招きし、特別講演が行われました。

授業と企業連携について

データ時代の女性キャリア開発は、人間社会学部の学生を対象に開講されている専門科目です。この授業は、さまざまなデータを扱う企業で働く女性やその活動を知っている方をゲスト講師としてお招きし、データを活用した業務内容やキャリアについてご講演いただき、学生は、データサイエンスに限らず、データを活用した現代日本におけると女性のキャリアについて理解を深めていきます。

今回の授業では、坂本氏からビジネスとデータについて、トランスコスモスの具体的な業務内容の紹介を交えながらご講演をいただきました。学生たちは講演を通じ、データ活用の例が身近に存在していること、データの活用によってビジネスシーンにおいて日々多様で新しい価値が生まれていることへの理解を深めました。

社会とデータ

坂本氏ははじめに、「データ時代」を「データが新しい価値を生み出す時代」と定義し、現代の日本では、さまざまなビジネスシーンにおいてデータが活用されていることを述べました。そして、身近なデータ活用の具体例として、アプリや通販、店舗の在庫管理などにデータが活用されていることを紹介しました。

最も身近な例として挙げられたのが、SNSです。SNSの多くは、個人の閲覧データを収集し、投稿のクリック数などから、どのような投稿に関心が高いのかを分析しています。そして、分析したデータを活用することで、その人の関心に沿ったコンテンツを表示しています。

また、商品購入時にデータが活用されている事例として、ファッション通販サイトの「着回し機能」が紹介されました。この機能は、選んだアイテムに対して、AIがデータを分析し、コーディネートを提案するものです。購入者が身長などの身体データを登録することで、AIが着丈などを計算し、実際のスケールに近い着用イメージ画像やコーディネートを提示します。これにより、通販で起こりがちな「思っていたものと違う」という購入後のミスマッチを防ぐことができます。さらに、着回し機能で提案されたアイテムは、そのまま購入することも可能で、坂本氏は「データによって、購入の意思決定の精度を高めることができる」と話しました。

さらに、ファッションブランドがデータを活用することで、廃棄される衣服の量を減らした事例も紹介されました。店舗ごとの販売履歴を分析し、それぞれの店舗で求められている商品の傾向を把握することで、適切な在庫量を見極めることができたといいます。坂本氏は、データは売上の向上だけでなく、環境負荷の軽減にもつながっていると述べました。

これらの事例はいずれも、データを活用することで「よりよい判断を行う」「無駄な作業を減らす」「利用者のニーズを的確に捉える」といった価値が生まれていることを示しています。

このような、さまざまな場面でデータが活用されている状況を踏まえ、坂本氏は「データをもとに判断や改善を行える人材が、さまざまな業務で求められており、データを活用できる人材の需要は今後さらに高まっていく」と話しました。さらに、「『データを活用できること=数字に強いこと』ではありません。データの傾向や特徴をいかに把握し、そこから考えることができるかが重要です」と述べ、データ活用において大切な視点を強調しました。

トランスコスモスの業務とデータ

ここからは、実際に企業がどのようにデータをビジネスに活かしているのかについて、トランスコスモスの業務内容を通して具体的に学びました。坂本氏は、トランスコスモスについて「企業のビジネスを支援する総合情報サービス」を手がける企業であると説明しました。

あわせて、同社はIT業界において、インターネットや情報処理サービスを担う企業であることも紹介しました。同社の特徴として、サービス領域が非常に幅広い点を挙げ、業務内容を①BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、②デジタルマーケティング、③コールセンター業務の三つに分類。それぞれの業務において、どのようにデータが活用されているのかを解説しました。

データ活用の現場

BPOとは、企業が行っている業務の一部を、専門知識を持つ外部企業に委託する仕組みを指します。専門性の高い業務を、企画から運営まで一括して担う点が特徴です。坂本氏は、「企業の業務の一部分を担う特性上、さまざまな業界や業務に携わることができる」と、その特徴を説明しました。

BPOの具体例として坂本氏が紹介したのは、ある企業から経理業務のサポートを委託された事例です。クライアント企業では、経理担当者一人あたりの業務負担が大きいことが課題となっていました。そこでトランスコスモスは、企業が導入した経理システムの運用支援に入り、経理システムに関する問い合わせ対応や、利用方法のマニュアル作成を、企業担当者に代わって実施しました。業務の効率化を進めた結果、クライアント企業の担当者の業務工数を約8割削減することに成功したそうです。

デジタルマーケティング業務については、消費者データの分析が重要であると説明しました。ウェブサイトの改善を行う際には、文字や写真の配置、購入ボタンなどの導線設計を見直します。その際「サイトの訪問数や滞在時間、流入経路といったさまざまなデータの分析を行う」と坂本氏は説明しました。分析結果のデータから利用者のニーズを把握し、より効果的な改善につなげていると話しました。

坂本氏はコールセンター業務について、「消費者からの問い合わせに対応する窓口であり、質の高いサービスを提供することで、企業の信頼性や評判を高める重要な役割を担っている」と説明し、人々の暮らしを支える不可欠なサービスであることも紹介しました。また、「この業務では消費者のリアルな声を『明確な思いや考えが含まれた貴重なデータ』として扱っています」と話し、このデータも活用。問い合わせ内容を分析し、まとめたデータをクライアントに提供することで、クライアント企業はそのデータを商品改善やマーケティング施策に活かしていることを紹介しました。

坂本氏は説明の中で、トランスコスモスでは多様な業務の中で、データをもとに課題を発見し、改善につなげていること、「データ活用」という言葉の中には、説明にあったような幅広い業務と、データをもとに考え改善していく具体的な行動が詰まっていると説明しました。

授業の終わりに

講演終了後には、質疑応答の時間が設けられました。

「将来、データを活かす業種に就くことも選択肢として考えています。採用担当者の目線で、学生のうちに取り組んでおいた方がよいことはありますか?」という質問が寄せられました。これに対し坂本氏は、「特別な知識や経験が必ずしも必要というわけではありませんが、いかにその分野に興味があることを示せるかは重要です」と前置きした上で、次のように回答しました。

「例えば、ウェブデザインに興味があるのであれば、同じ業種の企業サイトを比較し、どのようなデザインの工夫や意図があるのかを自分なりに考察してみることが大切です。日頃から自分で考える習慣を身につけておくとよいと思います。」

続いて、「機密情報を取り扱う場面について」という質問も出ました。坂本氏は、「機密情報を扱うにあたっては、専門の研修が用意されています。また、その研修を受けた人しか立ち入ることのできない部屋もあります」と説明しました。加えて、「企業として業務支援を行う以上、機密保持に関する契約をきちんと結んだうえで業務に取り組んでいます」と、情報管理体制についても言及しました。

今回の講演を通して学生は、何をデータとして捉え、それをどのように位置づけ、活用するかによって、社会に多様な価値を生み出せることを実感しました。また、データを扱う仕事は特定の職種や業界に限られたものではなく、さまざまな分野のビジネスを支える基盤となっていることを改めて学びました。データの仕事を一つひとつの「点」としてではなく、社会全体に広がる「面」として理解するきっかけとなる講演となりました。

担当教員からのメッセージ

今回の講義では、本授業の講演者の中で唯一の男性講師としてご登壇いただき、企業の現場におけるデータ活用の実例を分かりやすく紹介していただきました。学生たちは講演を通じ、データ活用の例が自分たちの身近なところにも数多く存在していること、そしてデータの活用によってビジネスの現場で日々多様で新しい価値が生み出されていることへの理解を深めることができました。

講義の中では、さまざまな場面でデータが活用されている現状を踏まえ、「データをもとに判断や改善を行える人材が、さまざまな業務で求められており、その需要は今後さらに高まっていく」とのお話もありました。また、「データを活用できることは、単に数字に強いということではなく、データの傾向や特徴を把握し、そこから考えることが重要である」と強調され、データ活用の本質について学生にとって理解を深める機会となりました。

さらに今回の講演は、データの仕事を個々の業務という「点」としてではなく、社会全体の中で価値を生み出していく「面」として捉えるきっかけにもなったと感じています。

生成AIや自動化が進む時代においても、課題を見つけ、意味を考え、新しい価値を生み出していくのは人の役割です。本授業での学びが、学生一人ひとりが社会とデータのつながりを実感し、自らの進路や将来の可能性を考える一助となれば幸いです。

2026年2月26日

音声メディアのリアル!キャリア・オープン講座の授業で、放送作家の高山佑子氏の特別講演が行われました。

2025年11月11日(火)キャリア・オープン講座(担当:文学部英文学科 鹿島千穂専任講師)にて、放送作家の高山佑子氏をお招きし、メディアを仕事にする女性から見た「リアルな音声メディア業界」についてご講演いただきました。

授業と企業連携について

「キャリア・オープン講座」は、文学部の学生を対象とした文学部キャリア科目です。学生は、「メディア」と「ことば」をキーワードにした講義と実践を通じ、キャリアを拓く力として必要不可欠なコミュニケーション能力を培っていきます。学生は講義を通じてメディアとそこで働く人たちがどのような方法で情報と言葉に向き合っているか理解を深め、授業の後半で行われるディベートの実践によって、論理的思考力や発信力を身に着けていきます。

今回の授業では、特別講演として放送作家の高山佑子氏が登壇。「メディアを仕事にする女性」としての経験を中心に、放送作家の業務についての説明と家庭と仕事の両立についてご講演いただきました。

キャリアの歩み

高山氏は自身のキャリアについて、「番組制作会社のAD(アシスタントディレクター)から始まりました」と紹介し、「TBSラジオを中心に、さまざまな番組制作を担当していました」と振り返りました。

その後、夫の九州転勤をきっかけに一度退職し、引っ越し先では子育てを中心にしながらWebライターとしての仕事を経験。再び夫の転勤で東京に戻った際、「番組制作時代にお世話になった方の紹介で、作家事務所に所属することになりました」と述べ、放送作家として再出発した経緯を語りました。

続いて、現在担当している番組と、これまで制作に携わってきたラジオ番組について紹介があり、一覧には学生にも馴染みのある番組名も並びました。中には学生が「両親が番組のファンで、私も聞いたことがあります」というものも。

「この番組には立ち上げ担当として参加し、初代ディレクターを務めました」「これはニュース番組の原稿を書く仕事です」「ドラマのポッドキャストの仕事にも携わりました」とそれぞれ説明し、多様な番組に携わってきたことを紹介しました。

放送作家のお仕事について

高山氏は放送作家の仕事について、「番組の中身を面白おかしくするためにアイディアを出すアイディアマン」であると説明し、放送作家には特定の決まりや資格がないこと、アイディアを出す過程で原稿や台本を書くこともあるが必ず行うわけではないことなど、業界外からは分かりにくい側面を紹介しました。また、働き方についても触れ、「放送作家はフリーランスの働き方が一般的で、企業に勤めるサラリーマンとは異なり、収入や仕事量は案件によって変わります。」と述べました。

続いて、現在担当している番組の映画紹介コーナーを例に、実際の業務内容を「放送前日までにやること」「放送当日にやること」「放送後にやること」「放送以外の日にやること」の4つに分けて説明されました。

放送前日までの業務では、「出演者との打ち合わせ」と「台本の制作」を挙げ、打ち合わせでは出演者が紹介する映画の名称や話したい内容を聞き出してメモに残すと説明。コーナーで扱う映画の配給会社への連絡など、細かな作業も一人で担当していると述べました。その後、打ち合わせ内容を整理し台本を執筆します。「台本は外せない要素を言語化したもので、すべての内容を書き込むわけではありません。この言葉を必ず言ってほしい、こういう流れで進むとおもしろい、といった構成を考えます。台本は生放送や収録の際に出演者の手元に置かれ、それをベースにゲストの方々と面白おかしく話を進めてもらいます」と説明し、「25分のコーナーの場合、A4用紙の縦書きで5~6枚程度を書きます」と具体的なボリュームも紹介しました。

放送当日は、「出演者と同じ机に座ってあらゆるサポートを行います」と役割を紹介。言い忘れや言い間違いをメモに取り、後から補足できるよう準備するほか、収録ブース外の音声スタッフなど技術陣とのやりとり・調整も担うと説明しました。また、「放送後はゲスト出演者へお礼のメール、出演者への来週の内容提案、映画配給会社への事後連絡のほか、細かい事務作業を行っています」と述べました。

放送日以外は、打ち合わせで話題に上がった映画の視聴や関連情報の調査を行うとのことで、担当コーナーに関する分野を深く調べることも業務のひとつであると紹介しました。

音声メディアの今

高山氏は、ラジオが直面している「聴取者の減少」という厳しい現実に触れつつも、「メディアミックスに成功してV字回復している番組もあります。東京ドームでイベントが開催されるなど、売り上げや反響の規模はこれまででは考えられないほどです」と述べ、ラジオにはまだ大きな可能性があることに言及しました。

また、音声だけのメディアには、得られる情報量が少ないからこそ聞き手の印象に残りやすい特性があると説明。コンテンツを継続的に聴取したり、過去の放送を繰り返し聞く“コアなファン”が多いことも特徴であると話しました。さらに、動画やSNSにはない「余白」が聞き手の想像力をかき立てる点にも触れ、「受け取り手が頭の中で情報を補うため、『一番きれいな海を見ることができるコンテンツがラジオ』と言われることもあります」と紹介しました。

加えて、ポッドキャスト(インターネット上に投稿される音声のみのメディア)についても、「盛り上がっているメディア」として紹介しました。音楽配信アプリなどを通じて気軽に聴取できる点を挙げ、「日本ではリスナーはまだ多くないものの、世界的にはポッドキャスト人口が増加している」と述べ、注目度の高まりを説明。特にアメリカでは6億人を超えるとも言われ、日本でも今後成長が期待される「ぜひ注目してほしい」コンテンツであるとまとめました。

メディア業界への就業と女性

高山氏は、「大手のマスメディアへの就職は、ご存じの通り相当難しいです。本気で目指すなら相応の準備が必要で、狭き門であることを覚悟したうえで就職活動を行う必要があります」と述べました。ご自身も大学時代にマスコミ研究室に所属し、メディアに就職した先輩たちからの指導を受けながら大手メディアへの就職を目指していたものの縁がなく、制作会社に就職したことを紹介。その中でもよかったこととして、制作会社で経験を積む中で「大手メディアと比べて業務の幅が制作に限定されているからこそ、一つのやりたい仕事に専念できた点が良かった」と説明しました。また、「これは業界を問わずどの会社にも言えることですが、入社後に必ず希望部署へ配属されるとは限りません。配属されたとしても、そこに至るまでに相当な年数がかかる場合もあります」と述べ、幅広いジャンルを扱う企業ほど入社前後のギャップが大きくなる可能性に言及しました。

続いて高山氏は、メディア業界で働いた自身の肌感覚として「正直、とても昭和的な部分もあります」と率直に語りました。制作ディレクター職から放送作家として再就職するまでの約12年間、業界を離れていた間に、パワーハラスメント・モラルハラスメントをめぐる問題が表面化するなど、「職場環境は大きく改善された」と感じた一方で、「女性が長く働き続けるには、まだ課題もあります」とも述べました。企業の管理職、特に部長やプロデューサーといったポジションに女性が少ない現状にも触れ、「制度上の背景もあるとは思いますが、企業の中核を担う部門で活躍する女性は、まだ多いとはいえない印象があります」と語りました。

最後に高山氏は、「私が皆さんの年代だった頃と比べると、働く環境は確実に良い方向に変化しています。これからさらに改善していくのではと期待しています」と述べ、講演を締めくくりました。

質疑応答

講演の後半では質疑応答の時間が設けられました。「なんでも聞いてください。なんでも答えます」と積極的に促す高山氏の言葉に後押しされ、学生たちから次々と質問が寄せられました。高山氏は、その一つひとつに丁寧に答えていきました。

家庭と仕事をどう両立している?

学生からの質問に対し、高山氏は「女性はできる限り仕事を続けたほうがよいと思います」と自身の考えを述べました。一方で、仕事と家庭の両立の大変さについても率直に語りました。

現在、小学生から高校生まで3人のお子さんを育てており、夫の出張が多いことから「ほとんど単身赴任のような状況です」と家庭の様子を紹介。そのうえで、「両立できているのは、放送作家というフリーランスの働き方だからこそ」と説明しました。仕事量やスケジュールを自分で調整できることが、大きな支えになっているといいます。

また、「家事や子育てをともに担ってくれるパートナーの理解は欠かせません。それでも大変なことは多く、毎日慌ただしいです」と、働く女性としての実感も語りました。

やったことのないジャンルの番組を担当するときは?

この質問に対し、高山氏は、かつて一度も経験のなかったゴルフ情報サイトを担当した際のエピソードを紹介しました。「ゴルフは完全未経験だったので、とにかく勉強を頑張りました。調べていく中で、選手が多くSNSを活用していることを知り、ゴルフ専用のアカウントを作って関連アカウントをひたすらフォロー。流れてくる投稿やニュースを毎日チェックし、そこからニュース化していました」と具体的なリサーチ方法を説明。

さらに学習のためにゴルフスクールにも通い、「初心者であることを企画に生かし、『初心者がスクールに通ってどう成長するか』という企画を提案したところ、採用されました」と、未経験を強みに変えた経験も共有しました。最後に「興味のないジャンルを担当することはよくあります。だからこそ、何事も好奇心を持って臨むことが大切です」と締めくくりました。

女性として働く中で、壁を感じた経験はありますか?

高山氏は「たくさんあります」と前置きし、「AD時代に立ち上げから関わっていた芸人さんの番組を外れたことがあります」と具体例を紹介しました。

当時担当していたラジオ番組は内容がかなり踏み込んだもので、現在とは制作環境も異なっていたといいます。そのため、別の先輩が担当を引き継ぐことになり、結果として担当が変更になったと説明しました。「理由の一つに“女性だから”という説明があり、当時はそうした判断が受け入れられる空気もありました」と振り返ります。

この経験を通して、「女性としてどの分野で力を発揮していくのかを考えるようになった」と語りました。

一番苦戦し、挫折しそうになった仕事は?

学生からの質問に、「考えたこともなかった!」と一つ一つの企画に向き合い続けてきたことを表す一言を返した高山氏。

「メンタル的につらいことは何とか乗り越えてきました」と前置きしたうえで、紹介したことがニュースデスクの夜勤の仕事でした。ニュースデスクは、常に新しい情報が入ってくるニュースを取捨選択し、定時放送の規定時間内に収まるよう原稿にまとめる役割です。更新され続ける情報を読み、放送に間に合わせて文章を構成する必要があります。夜勤は夕方16時から翌朝10時までの勤務で、「特につらかったのは速報対応です」と説明しました。速報とは、地震や大きな事件などが発生した際に通常の放送を中断して流す臨時ニュースのことです。「自分が書いた原稿を自分で読む場合もあり、通常業務の時間が圧迫されてしまうんです」と苦労を語り、「それでも放送時間に原稿を必ず間に合わせなければならないし、担当者は一人なので全て自分で判断する必要がある。責任感と緊張感が大きく、寝る時間が用意されていても寝れませんでした」と振り返りました。

放送作家をやっていてよかったことは?

高山氏は「いろんな人と仕事ができること」と答えました。役者、女優、芸人、政治家、スポーツ選手、評論家、料理家、インフルエンサーなど、多様な職業の人と関われる点を「この仕事ならではの魅力」と紹介。また、やりがいを感じる瞬間として「自分が関わった番組や企画にリアクションが返ってくること」を挙げ、「『届いている』と実感できたとき、本当に幸せを感じます」と話しました。

授業の最後に

高山氏は、ポッドキャストについて、書籍を紹介しながら「本当に注目度が高いメディアです」と述べ、学生に「メディアに興味があるならぜひ自分で取り組んでみてください」とエールを送りました。また、TBSラジオの番組表を配布し、「ラジコ(スマートフォンでラジオを聴けるアプリ)をダウンロードして、実際に番組を聴いてみてください」と呼びかけ、関心を具体的な行動へとつなげるメッセージを伝えました。

今回の講演は、学生にとって「音声メディアの今」と「情報を集め言葉にする仕事」について一歩進んだ理解を得る、貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

本科目は「メディア」と「ことば」をキーワードに、キャリア開拓に必要なコミュニケーション能⼒の向上を目指す授業です。新聞、ラジオ、テレビといったマス・メディアに⽬を向け、理解を深めてもらうために、放送作家として第一線で活躍されている高山様をお迎えしました。

当初、「放送作家」が番組制作においてどのような役割を果たす職業なのか、あまりピンときていなかった学生たちでしたが、制作現場の熱量が伝わってくる刺激的なお話を聞き、質疑応答では全ての受講生から質問が出るほど、興味を惹かれたようでした。また、仕事と子育てを両立しながら、ライフスタイルに合わせて働き方を柔軟に変えてきた高山様のキャリア開拓のあり方も、働く女性のロールモデルとして参考になったようでした。

メディアで「ことば」を生業としている方の実体験をうかがうとともに、女性のキャリア形成について考える貴重な機会となりました。

2026年2月12日

データを社会に役立てる!「データ時代の女性キャリア開発」の授業でNTTデータ数理システムの取締役による特別講義が行われました。

人間社会学部開講科目「データ時代の女性キャリア開発」の授業で、株式会社NTTデータ数理システム取締役の小木しのぶ氏による特別講義が12月2日に行われました。「自分の道を自分で選ぶために」と題し、デジタルサイエンスを活用して人生を生き抜く力を身に付けていく大切さを力強く語りました。

データで課題を解決する企業とは?

NTTデータ数理システムは1982年に「株式会社数理システム」として設立しました。
「数理科学とコンピューターシステムで社会のあらゆる分野の問題を解決する」というビジョンを掲げ、データを活用したシステムの開発、推進をしてきました。
2012年にNTTデータグループ加入し、より幅広い企業とデータを通してビジネスを拡大しています。

統計解析ソフトウェアやデータ分析ツールの開発などのほか、大量のテキストデータから情報やパターンを抽出する「テキストマイニング」ツールの開発にも力を入れています。
テキストマイニングは、たとえば社員満足度向上のためのデータ分析に使われています。自由記述のテキストを分析することで社員のニーズを深堀するのです。
「企業の中にも悩みがある。それを解決するにはどの技術を使えばいいか考え、企業に合わせてシステムを作ります」と小木氏。技術が実際の業務に役立っている例を交えて話されました。

自ら道を切り開くキャリア

小木氏は「プログラミングがしたい」と新卒入社。
しかし最初の配属は半導体シミュレータの開発でした。
「実は数学の公式が苦手でした」と振り返り、他部署に行きたいと強く思うように。その後、UI開発や当時はまだ珍しかったロボット画像認識、テキストマイニングなど興味のある開発に挑戦していきます。
しかし、良いシステムを作るだけでは知ってもらえないことに気づき、自ら営業へ異動。営業企画や広報にも携わりました。

さらにビジネススクールに通いMBAを取得。
小木氏は「せっかく取ったので取締役に立候補しました」と話します。推薦者に自ら声をかけ、取締役に就任したのです。
「興味を持ったことに首を突っ込み、やりたいと言うことが大切」と自らキャリアを切り開いてきた経験を語りました。

生成AI時代の人の役割とは

現在のデータ利用市場では、AIを使った解析システム開発が主流となり、特に最近の1〜2年は生成AIの台頭が加速しています。生成AIはデータの読み込みや分析が得意。
「ではAIがあればデータサイエンスは不要なのでしょうか」と小木氏は問いかけます。確かに統計や機械学習の基礎知識がなくてもプログラムでき、渡したデータを深く分析してくれます。

しかし小木氏は「不要にはならない」と断言します。
たとえば最適なシステム選択や課題設定などのビジネス理解は人間の役割。また生成AIが出した結果が正しいかを判断するのも人間です。
「統計や機械学習の知識だけでは武器にならない。それをどう使うか考える力が求められています」と語りました。

総合格闘技のような感覚で必要な力を身につけよう

「データサイエンスに限らず、専門家+アルファを目指そう」と小木氏は語り掛けます。
小木氏はそれを「総合格闘技」と表現しました。総合的に物事を考えられると、スピーディに物事を解決したり、さまざまな角度からリスクを避けることも出来たりします。
「生成AIに仕事を奪われないために、したたかに生き残りましょう」と小木氏は話しました。

「総合格闘技」に必要なものとして「自分の力を把握する」「なんにでも興味を持つ」「視座を高く持つ」を挙げます。
得意なことを見つけ、役立つ場を探す。視座を高く持ち全体を見渡すことで、次にやるべきことが見つかると話します。
「私もあれこれ取り組んできたからこそ、自分の道を選べている。自分で道を選ぶため、総合格闘技の力を身に付けましょう。ぜひいろんなことにチャレンジしてみてください」と講義を締めくくりました。

「やってみる」が拓く未来

講義のあとは質疑応答の時間が設けられました。
先生からも「取締役に就任してどうでしたか」と質問が。
小木氏は「同じ会社なのに、自分の知らないことがたくさんありました。なってよかったと思います。なんでもやってみるのはおすすめです」と回答されました。

また、また、「生成AI事業が大きく伸びている理由は何だと思いますか」という問いには、「いまの企業は生成AI導入に予算が付きやすい。社会に出れば使うようになりますので、大学でも積極的に利用しリテラシーを身に付けるべきだと思います」と述べました。
そのうえで「社会に出て突き当たるのは、生成AIに聞いても答えが出ない問題です。どのように技術を使うのか、うまく使える力を身に付けましょう」と話しました。
学生たちにとって、これからの時代を生き抜くヒントを得られた講義となりました。

担当教員からのメッセージ

本授業「データ時代の女性キャリア開発」では、企業の第一線で活躍されている方をお招きし、社会の中でデータがどのように課題解決に活かされているのか、また女性がどのようにキャリアを切り拓いてきたのかを、ご自身の経験を交えながら語っていただいています。

今回の講義では、データで社会や企業の課題解決に取り組む現場のお話に加え、「実は数学の公式が苦手だった」という意外なエピソードや、そこから実務の中で力を身につけていった過程も紹介されました。学生にとっては、得意・不得意に関わらず挑戦することの大切さを実感できる機会になったのではないかと思います。また、キャリアを積み重ね、取締役として活躍されている現在に至る歩みも、大きな刺激になったようです。

生成AIが急速に発展する時代においても、最終的に課題を見つけ、判断し、人と協力して解決へ導くのは人間の役割です。講義の中で示された「総合格闘技のように、さまざまな力を組み合わせて身につけていくことが大切」というメッセージは、これから社会に出ていく学生にとって非常に印象的だったと思います。

この授業を通じて、「自分にできるだろうか」と考える前に、まずは「やってみる」ことが未来を拓く一歩になると感じてもらえればと考えています。本授業が、学生一人ひとりにとって自分の可能性に気づき、新しい挑戦に踏み出すきっかけになることを期待しています。

2026年2月2日

企業の社会的責任とは?「社会責任論」の授業でJFEテクノスによる特別講義が行われました。 

12月18日の「社会責任論」(担当:生活科学部 現代生活学科 倉持一准教授)の授業で、JFEテクノス株式会社による特別講義が行われました。企業の社会的責任についてどのようなことをしているのか、実例を挙げながら語っていただきました。学生たちは企業のCSRやCSVの考えについて学びを深めるきっかけとなりました。

JFEテクノスはなんの会社?

登壇されたのは木村満氏と村田雄介氏です。
村田氏は「少し難しい言葉も出てきますが、リラックスして聞いてください」と語り、講義が始まりました。
最初に会社紹介を行ったのは木村氏です。
1990年にJFEの前身である日本鋼管株式会社へ入社。
「30年以上働いてきましたが、企業の社会的責任について深く考える機会は少なく、今回は私にとっても良い機会です」と話しました。
「JFEは鉄を主軸とした会社です」と木村氏。
日本鋼管と川崎製鉄が2002年に経営統合してJFEHDが発足し、現在は鉄鋼、エンジニアリング、商社の3事業を展開しています。そのうちJFEエンジニアリングのグループ会社の1社がJFEテクノスです。
「ルーツは造船業」と木村氏は説明し、船体製造の技術を応用して橋や線路、工場やプラントなど社会インフラを築いてきたと紹介しました。

JFEテクノスは主にそれらのメンテナンスを担っています。太陽光・風力発電設備、コンテナクレーン、高速道路の橋脚、焼却炉、立体駐車場など多岐にわたるものの保守を行います。
「脱炭素の観点からも、今あるものを長く使うことが重要です。劣化を防ぐためには定期的な点検や補修が欠かせません」と語りました。

インフラを守ることで社会貢献

JFEのパーパスは「くらしの礎(もと)を技術で創り担い、すべての人を笑顔にする」。
木村氏は「すべての人とは顧客だけでなく、社員も仕事を通して含まれます」と説明しました。
「そのためにも、すべてのステークホルダーから信頼を得ることが必要です」。
社会の一員として認めてもらう取り組みの一つとして、事業を通じたSDGsへの貢献を重視しています。

JFEテクノスの社会的責任は、インフラを守ること。これは社会の維持に大きく貢献しています。
「ただし、CSRは事業以外にもあります」と木村氏が挙げたのが地域社会との交流です。交流によって認知度が高まり雇用が生まれ、雇用の拡大は企業の成長とさらなる社会貢献につながります。
「社会貢献を通じて社会的価値が生まれ、自分たちも成長していく。企業・消費者・社会の好循環を生み出すことが価値の創造、つまりCSV経営の軸になるのです」と語りました。

技術開発を行うためにも成長は大事

続いて村田氏が登壇。
大学生の頃はアウトドアに関わる仕事を目指していましたが、怪我で断念。自分を見つめ直すため海外を巡る中で、どの国でも日本の製品やサービスが活躍していることに気付いたといいます。日本にいては分からなかった製品のすごさを実感し、自動車会社に入社。
その後、車以外でも多くの人の役に立ちたいと考え2013年にJFEへ転職しました。
「学生時代はこんな業界があるとは知りませんでした」と、車業界をきっかけにエンジニアリング業界と出会ったと話しました。

JFEグループのパーパスは「世界最高の技術で社会に貢献する」こと。
社員の約6割が技術者で、日本だけでなく世界で戦える技術力に誇りを持っています。
その技術力を強みに、カーボンニュートラル分野のトップランカーを目指しています。

環境問題の解決は会社の使命

「カーボンニュートラルの技術開発には、利益がなければ研究費を確保できません」と村田氏。
「だからこそ成長が必要です。企業の利益追求も、何のために利益を増やすのかという目的がなければ社会に認められません」と語ります。気候変動は世界的な課題であり、限られた資源を守りエネルギーを効率的に使うには高い技術力が不可欠です。

「これほど環境を重視するのは、私たちの事業が大量の二酸化炭素を排出するからです」と村田氏。
日本のCO₂排出量は世界5位で2.9%。一見少なく思えますが、6位以下は1%程度で「相対的に見ると多い」と指摘します。
排出量が最も多いのは発電や石油精製などのエネルギー変換分野で約4割、次いで鉄鋼や建設・製造などの産業分野です。
「JFEグループはどちらも深くかかわる分野です。鉄を扱う会社の使命として、二酸化炭素削減に取り組む必要があのんです」と強調しました。
さらに「インフラは一度整備すると数十年使われます。建設や設置時にもCO₂が出るため設計段階で省エネを考え、長く使い最後はリサイクルできるよう取り組んでいます」と説明しました。

CSRは地域とつながってこそ

最後にJFEグループのCSRの取り組み事例として紹介されたのが、ごみ問題への対応です。
公道の清掃活動やごみ拾い大会を定期的に実施。社内での分別は18種類と細かく分けられているといいます。
「本社近くの池では、近隣の小学生を招き、虫取りなど自然と触れ合う交流会も行っています」と紹介されました。

また、社員が働きやすい環境づくりにも注力しています。
「福利厚生は社員へのCSRです」と語り、家賃補助や取得しやすい年休制度、育休など、ライフイベントを支える制度を整えています。
企業の成長を目指すことで社会のサステナビリティに循環していくことがCSRだということを、学生たちも学んだ講義でした。

担当教員からのメッセージ

企業は単なる経済の担い手ではなく、私たちのよりよい未来をつくる大きな主人公の一人だという認識が当然視される中、企業経営において欠かせないのが「企業の社会的責任(CSR)」の考え方です。
この「社会責任論」の授業では、CSRを歴史的な理論変遷を主軸に考察しながら、その時代において何が論点とされ、かつ、どのような影響が企業活動に生じたのかを学びます。これまで、経営者個人の倫理観を重要視する議論もあれば、企業という営利追求組織だからこそ幅広い社会責任論は認めるべきではないという議論もあれば、いや、経済的価値と社会的価値の双方を創出することが重要だという議論も登場するなど、CSRに関する議論はまさに百花繚乱です。
これらの議論を体系的に学び、現代の企業経営のあるべき姿を自らの価値観と照らし合わせながら考えている学生にとって、今回のJFEテクノス株式会社の特別講義は、よりリアルなCSRを感じ取る良い機会になったと考えています。利益追求を旨とする企業という組織がいかに社会貢献に取り組み、自社と社会の2つのサステナビリティを実現していくのか。これは非常に難易度の高い経営課題ですが、それでも真摯にチャレンジし続けるJFEテクノスの各種施策を目の当たりにしたことで、学生たちの企業観も変化したのではないでしょうか。

2026年1月29日

国文学科実践キャリアプランニングの授業にて、株式会社KDDIチャレンジド代表取締役社長の間瀬英世氏による特別講演が行われました。

2025年11月21日(金)実践キャリアプランニング(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)にて、株式会社KDDIチャレンジド(以下KDDIチャレンジド)代表取締役社長の間瀬英世氏をお招きし、キャリアに関する講演が行われました。

授業と企業連携について

「実践キャリアプランニング」は、文学部国文学科の1年生を対象としたキャリア科目です。学生は、企業から招くゲスト講師や在学生の先輩によるキャリア講演、企業と連携したPBL型課題などを通して、社会人基礎力を養い、多様化する女性のキャリアへの理解を深めていきます。

今回の授業には、携帯通信サービスのauを運営するKDDI株式会社の特例子会社であるKDDIチャレンジドから、代表取締役社長の間瀬英世氏をゲスト講師として招き、特別講演が行われました。間瀬氏は、中学校から短期大学までを実践女子学園で過ごした本学園の卒業生であり、学生たちにとっては同窓生にあたります。講演では、ご自身が歩んできたキャリアと価値観の変遷、そして業務として取り組んできたDE&Iや障害者雇用についてお話いただきました。

間瀬氏の自己紹介

間瀬氏は冒頭で、「新卒で入社した会社を転職し、入社した先がKDDIの子会社でした。在職中に親会社と合併し、CSR推進室に配属されました。その後、人事部ダイバーシティ推進室に異動し、2021年にKDDIチャレンジドへ出向、現在は代表取締役社長を務めています」と自身のキャリアを紹介しました。また、「『間瀬』はワーキングネームで、本名は『逢坂』といいます」と補足し、スライドに映し出された愛犬についても紹介しました。最後に「将来の夢は、愛犬がのびのびと暮らせる場所へ移住することです」と語り、会場を和ませました。

キャリアのターニングポイント

間瀬氏は自身のキャリアの転機として「転職後にCSR推進室へ配属され、『DE&I(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)』の推進に取り組んできたこと」を説明しました。

DE&Iとは、ダイバーシティ(Diversity/多様性)、エクイティ(Equity/公平性)、インクルージョン(Inclusion/包摂性)の頭文字をとった言葉で、「性別・人種・能力などの違いに関わらず、全員が同じスタートラインに立てるように必要な配慮を行い、それぞれが安心して自分らしく活躍できる状態をつくること」を指します。

とくに重要なのが「エクイティ」だと間瀬氏は強調しました。「壁の向こうを見ようとする二人の子どものために踏み台を用意する」という例を挙げ、身長の違う子どもに同じ台を渡しても、どちらも壁の向こうを見られるとは限らないと説明。「同じ高さの台を配る“平等”ではなく、それぞれに合った高さの台を用意する“公平”の考え方が大切です」と述べました。

講演ではミニワーク「ある夫婦の相談」も実施されました。
共有された内容は「私は保育士です。パートナーはトラック運転手です。家事と育児は半分ずつ負担する約束でしたが、相手の仕事が忙しく、結局すべて自分に負担がかかっており、離婚を考えています」という相談です。間瀬氏は「あなたならどうアドバイスしますか?」と問いかけ、学生はリアルタイム共有システムを使って回答しました。多くの回答は「まず話し合いをする」といったものでした。

間瀬氏は回答を踏まえて「実はこの相談、保育士が男性で、トラック運転手が女性という設定です」と種明かしをしました。上の世代では、保育士=女性と決めつけた回答が多かったことを紹介し、「無意識の思い込みによるジェンダーバイアスが生まれている」と解説。「皆さんが対話を重視していることがよく伝わりました」と感想を述べました。

最後に企業がダイバーシティ推進に取り組む理由として、「人口減少による労働人口の減少」という社会背景と、「多様なバックグラウンドを持つ人材がいる職場のほうが、生産性が高い」という調査結果を紹介しました。特に、人口減少の社会課題について「日本という国の存続にかかわってくる重要な課題」と述べ、日本社会を形作る企業のトップの一人として推進の理由を話しました。

障害者雇用と多様性

間瀬氏が代表取締役社長を務める KDDIチャレンジドは、KDDIの特例子会社(障害のある人の雇用を積極的に進めるために設立された企業)です。従業員の約7割が身体や精神に障害を抱えており、それぞれの得意や特性を生かし、プログラミングや事務作業、携帯電話の解体など、さまざまな仕事に取り組んでいます。間瀬氏は活躍する社員の例を「発達障害を持ちながらエンジニアとして活躍し、現在は本社に出向している社員もいます。業績もとても良いようです」と紹介しました。

続いて間瀬氏は、障害の捉え方には「医学モデル」と「社会モデル」という2つの考え方があると説明しました。医学モデルは「人が障害を抱えている」と考えるのに対し、社会モデルは「社会の側が障害を生んでいる」という視点を持ちます。たとえば「車いすの人が超えられない段差が公園にある」状況を、社会モデルでは「段差がなければ行動は制限されないはず」と捉え、社会の側を変えることで障害を取り除こうとする考え方です。ダイバーシティ推進の捉え方は後者で、間瀬氏は「環境を変えることで多様な人の就労を可能にしようとしている」と話しました。

また、障害者が何かを成し遂げた姿を感動的に描き、それを消費する現象として「感動ポルノ」という概念も紹介しました。テレビ番組などで涙を誘う演出に障害者が利用されるケースを挙げ、「健常者と障害者を区別して扱うのではなく、まずフラットな視点で見てもらいたい」と強調しました。

間瀬氏のキャリアと価値観の変遷

間瀬氏は、女子校時代から現在に至るまでの価値観やキャリアの変化について、モチベーショーングラフを用いながら振り返りました。

女子校で過ごした学生時代、間瀬氏の中には「良妻賢母」という価値観が強くあり、「就職したら社内婚をして寿退社し、子どもを産んで家庭に入る」という将来像を自然に描いていたといいます。

社会人として働き始めた頃には男女雇用機会均等法が施行されましたが、「法律はできても、自分にはまだ遠い世界の話だった」と回想。当時は社内結婚が一般的で、社外の人と出会う機会が少なかったこと、また「25歳までに結婚できないと“売れ残ったクリスマスケーキ”と例えられていたため、結婚のために転職することも珍しくなかった」と、その時代に普通とされていた環境について語りました。

そのような空気の中、20代後半で「なんとなく転職をした」と話す間瀬氏。しかし転職先で出会った広報の仕事は「天職」と感じられるほど魅力的で、初めて女性の上司を持ったこともあり、「30代前半で仕事の楽しさややりがいを強く感じるようになった」と述べました。

その後、広報からCSR(企業の社会的責任)推進室へ異動。そこでは「新しい取り組みを会社に導入する役割を担い、関係部署との調整や準備がとても大変だった」と振り返ります。その中で、忙しい毎日の中で出会った「面白おかしく」という言葉が心に残っているといい、「ミスやつらい出来事も“面白おかしく”捉えることで、前を向いて行動できる」と紹介しました。

さらに、特例子会社の社長に就任してからは組織改革に力を注いできたと話し、多様性のある職場でのマネジメントに試行錯誤しながら取り組んできたと述べました。社外で出会った人にマネジメントについて相談した際、「愛のシャワーを浴びせる」というアドバイスをされたことが印象的だったといいます。「感謝を伝える、褒める。積極的に言葉で伝えることで『ここにいていいんだ』という安心感を持ってもらえる。この言葉をもらってから、意識して行動しています」と語りました。

講演のまとめ

講演の最後に間瀬氏は、「世界には本当に多様な人がいる。自分と違う相手をどう受け入れるかが大切で、そのためには対話力が不可欠」と強調しました。多様性を受け入れることによって、生活も仕事も、そして人生も豊かで楽しくなると述べました。

自身の体験として、女子校という共通点が多い人が集まった環境から、多様な年齢・価値観を持つ人がいる社会に出たとき、「環境に慣れるまでがとにかく大変だった」と振り返り、「変化や違いを受け入れられるキャパシティを身につけてほしい」と学生に呼びかけました。

また、多様性の時代における女子校については、「女子がマジョリティでいられる唯一の空間」であり、「誰かに忖度することなく、さまざまな経験ができる環境」と述べました。学生には「自分のパーパス(存在意義・志)を考えてほしい」と語り、そのためには外に目を向け、自分自身を知る行動が必要だとしました。さらに、偏ったバイアスを持たないことは生きやすさにもつながるとし、見聞を広げることの重要性も伝えました。

最後に、建学の精神である「女性が社会を変える、世界を変える」という言葉を引用し、学生にエールを送って講演を締めくくりました。

質疑応答

講演の後には、質疑応答の時間が設けられました。学生はグループで感想を共有したのち、間瀬氏に質問したいことをまとめてリアルタイム共有システムに投稿。間瀬氏はPCを通じてスクリーンに投影された質問に、順番に回答されました。

Q.ワーキングネームを使っている理由と、そのメリットについて

間瀬氏は、ワーキングネームを使う理由について次のように説明しました。

「戸籍の名字が変わったのは広報の仕事をしていた時期でした。広報は、メディア担当者に名前を覚えてもらえるかが重要な仕事だったため、旧姓である間瀬をそのまま名乗り続け、現在に至っています。間瀬という名字は珍しいため、覚えてもらいやすいことがメリットでした。」

Q.企業における多様性による問題と、その解決方法について

多様性に伴う課題について問われた際には、時短勤務を例に挙げながら次のように話されました。

「たとえば産休明けで時短勤務の人がいる場合、短い勤務時間では担当業務がこなしきれず、周囲に仕事が回ることがあります。仕事を引き受ける側にとっては通常業務に加えて負担が増えるため、不和が生じやすい状況になります。しかし時短勤務側の話を聞くと、育児と仕事の両立で手いっぱいだったり、仕事を任せてしまう申し訳なさを抱えていたりします。私も以前、時短勤務の人をサポートする立場を経験しましたが、相手の話を聞いて初めてその大変さが理解できました。お互いの状況を知ることで、納得して業務に取り組むことができます。対話はとても大切です」

Q.ジェンダー差別を受けた経験と、女性に関する価値観の変化について

ジェンダー差別を受けた経験については、次のような回答がありました。

「ジェンダー差別を受けたことはあります。管理職になった際に『女性だからなれたよね』と言われたり、社長となった現在でも『女性だから』と言われることがあります。女性に関する価値観の変化については、良い方向に変わったと感じています。実際、男性社員が『夕飯の当番なので早く帰ります』と退勤していく姿をよく見かけており、家事負担の平等化という変化を現場で感じています」

Q.障害者の方の働き方について

障害者の方の働き方について問われた際には、次のような説明がありました。

「障害の程度は人によって異なるため、それぞれできる業務を担当してもらっています。業務内容は一般的な事務作業から携帯電話の解体までさまざまです。特に精神障害のある方は日によって体調の変動が大きいため、日々状態を把握しながら働き方を調整しています。」

授業時間ぎりぎりまで学生の質問に丁寧に回答してくださった間瀬氏。
学生にとっては、女子校から社会へと踏み出した一人の先輩によるリアルな体験談と、キャリア形成に関するお話を伺える貴重な時間となりました。

担当教員からのメッセージ

卒業生である間瀬様にご講演をいただきました。
私自身も「多様性」ということを安易に発言する機会が多いことを
反省するお話しでありました。やはり企業での様々なご経験をお持ちであり、
しかも、現在、特例子会社のトップをお務めになっている間瀬様のお話しには
本当に説得力がありました。
また、女子大に学ぶ意義についても、経験に基づく貴重なアドバイスをいただきました。
この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

2025年12月18日

「スマドリ」をZ世代に広げよう!人間社会学科社会学概論の授業にて、スマドリに関連した特別講演が行われました。

2025年10月22日(水)社会学概論(担当:人間社会学部人間社会学科 原田 謙教授)にて、スマドリ株式会社 野溝氏、スマートドリンキングプロジェクトメンバー新藤氏をお招きし、お酒にまつわるあらたなライフスタイルである「スマートドリンキング」に関する講演と、マーケティングのセミナーが行われました。

授業と企業連携について

「社会学概論」は、人間社会学部の1年生を対象に開講されている専門必修科目です。学生は授業を通して社会学の基礎を学び、社会学的な発想を身につけながら、現代社会の仕組みや課題を正しく理解する力を養っていきます。

本学では「スマートドリンキング」に関するプロジェクトをテーマに、原田教授のゼミや講演などを通して3年間にわたりスマドリ社との連携を行っています。今回のコラボレーションでは、スマドリ社が提案するライフスタイルや飲酒に対する意識の変化についての講義に加え、マーケティングに関する解説やミニワークも実施されました。学生にとって、社会の動向を学び、自らの専門領域への理解をさらに深める貴重な機会となりました。

スマドリについて

講演の冒頭で、野溝氏から「スマートドリンキング(スマドリ)」について詳しい説明がありました。「スマドリ」とは、アルコールを「飲む」「飲まない」という選択の多様性を尊重し、体質や気分に合わせて“自分らしい飲み方”を提案する考え方です。テレビCMなどを通じて認知が広がっており、学生アンケートでは約50%がその名を知っていると回答。教室内では、二人に一人が「スマドリ」を認知していることが分かりました。

さらに、「スマドリ」の推進を目的として「スマドリ株式会社」が設立されたことも紹介されました。同社は「飲む人も飲まない人も共に楽しめる社会」を目指すマーケティング会社であり、飲酒にまつわる楽しみ方の多様性を広げる取り組みを行っています。

大学との産学連携プロジェクトにも積極的に取り組んでおり、スマドリ普及の主要ターゲットである大学生と共に、普及に向けたアイデア創出を行っています。これまでの連携授業では、学生の企画が実際にイベントとして実現したり、大学内でコラボブースを出店したりするなど、学びを出発点に社会へ広がる活動へと発展した事例が紹介されました。さらに、渋谷区主催のイベントでの社会提案型発表など、学生の発想をきっかけに企業や地域と連動した実践的な活動も生まれています。

お酒の適切な楽しみ方を知ろう!

適切な飲酒のための正しい知識を得ることを目的に、学生たちはアルコール体質を確認する「パッチテスト」を体験しました。これは、手の内側にシールを貼り、20分後の色の変化によって「アルコールを分解できる体質かどうか」を判断するものです。

新藤氏は、「アルコールを分解できるかどうかは、特定の分解酵素の働きによって決まります。分解酵素の働きが弱い人は、お酒に弱い体質ということになります」と説明。「日本人の約半数は、この分解酵素の働きが弱い、または働かない体質であるとされています。自分の体質を知ることは、安全にお酒を楽しむための第一歩です」と述べました。

このほかにも、飲酒によって引き起こされる健康被害や、不適切な飲酒によるさまざまなリスクについて解説があり、学生たちは適切にお酒を楽しむための正しい知識を学びました。

マーケティングセミナー

学科の学びと関連づけながら、マーケティングに関する講演も行われました。企業のマーケティングについて、「SNSの普及により、口コミを通じた購買行動が増加しています。消費者同士の交流によって評判が広がり、その結果メガヒット商品が生まれるケースも見られるようになりました」と紹介。さらに、「企業がマーケティング戦略を考える際には、受け手となるターゲットを深く理解することが非常に重要です」と述べ、実際の分析手法についても解説しました。

続いて、マーケティングのアイデアを具体的な施策へと落とし込む際のポイントを紹介。過去の事例をもとに、フレームワークの活用方法や施策立案の流れをわかりやすく解説し、学生たちは真剣な表情で耳を傾けていました。

 実践!企画を考えよう

授業の最後にはワークが行われ、「世の中のZ世代にスマドリを広げるには?」または「渋谷区のZ世代にスマドリしてもらうには?」のいずれかをテーマに、学生たちはアイデアを考えました。

ワーク後は、野溝氏、新藤氏、原田教授の3名によるフィードバックが実施されました。特に「世の中のZ世代にスマドリを広げるには?」の提案に対しては、「スマートフォンを見る機会が増える中、『学食などで食事中によく見る』という大学生の日常動作をもとにスマドリの普及策を考えていた点が非常に参考になった」「提案の中で“推し”やキャラクターといった観点が多かった。身近に感じている存在と組み合わせることで、スマドリもより親しみやすく感じてもらえるのではと気づかされた」といったコメントが寄せられました。

質疑応答

「マーケティング的な商品開発を行ううえで、大学時代に勉強しておくとよいことはありますか?」という質問に対し、「業界に興味を持ったきっかけは、大学時代に履修した授業でした。履修登録の段階で気になる授業を選び、日常で触れるメディアや広告の中から『これを仕事にしたい』という興味の種を見つけることが大切です。そこから逆算して必要な学びを進めていくとよいと思います」と回答しました。

また、「数年前と比べてスマドリの認知度が高まっていますが、広報活動の方向性に変化はありますか?」という質問には、「TVCMによって40~50代の認知度が上昇しました。現在は、認知度をさらに高めたいターゲット層が若年層にシフトしており、SNSプロモーションやポップアップショップの開催など、若者のコミュニケーションスタイルに合わせたプロモーションを展開していきたいと考えています」と回答。今後の展望についても語られました。

今回の特別講義を通じて、学生たちはスマドリが提案する新たなライフスタイルや、マーケティングの考え方について理解を深めました。学びを通して社会とのつながりを意識し、今後の専門的な探究につながる貴重な時間となりました。

担当教員からのメッセージ

渋谷スマートドリンキングプロジェクトの皆様には、これまでも3年ゼミでのワークショップの実施などでお世話になってきました。今年度は、1年生向けに渋谷発のイノベーションである「スマドリ」をご紹介いただきました。前週にちょうど講義していたライフスタイル、ダイバーシティ、アンコンシャス・バイアスといったキーワードとも響き合うお話でした。
ご多忙の中ご講義頂いた野溝様、新藤様、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年12月12日

未来の自分を想像する!〈データ時代の女性キャリア開発〉の授業にて、株式会社マクロミルの特別講演が開催

11月18日(火)人間社会学部の学生を対象とした授業〈データ時代の女性キャリア開発〉にて、株式会社マクロミル(以下マクロミル)人事本部の井出美南氏をお招きし、特別講演が行われました。

授業と企業連携について

〈データ時代の女性キャリア開発〉は、人間社会学部の学生を対象に開講されている専門教育科目です。この授業では、データを扱う企業で働く女性をゲスト講師としてお招きし、業務内容やキャリアについてご講演いただき、学生は、データサイエンスに限らず、データを活用した現代日本におけると女性のキャリアについて理解を深めていきます。

今回の授業では、マクロミル人事本部の井出美南氏をお招きし、データを活用したマーケティングの工程についてご講演いただきました。講演では、実際の仕事に近いミニワークも行われ、学生たちはデータを使ったリサーチ業務を体験的に学びました。今回の授業は学生にとって、情報を活用する仕事に対してより深く考える貴重な機会となりました。

講演に先立ち、竹内教授からは「実際に自分が調査担当となった気持ちで取り組んでみましょう」と声がけがありました。

講演の初めに

井出氏はまず、自身について「2019年に新卒でマクロミルへ入社し、現在は7年目になります」と紹介。現在の採用業務を担当する前は、日用品の対面調査や生体データの分析など、データ収集と解析の現場で経験を積んできたことを説明しました。

また、マクロミルがBtoB(企業間取引)の企業であり、BtoC(企業対一般消費者)ではないため、表に出る機会は少ないと前置きしつつ、この時間を通じてマーケティングリサーチの企業がどのような仕事をしているのかを理解してほしいと語りました。

マクロミルの業務内容に見るデータと仕事

井出氏は、マクロミルの業務内容を「あらゆる生活者データを収集・分析し、ビジネスの成功を支援するマーケティングパートナー」と紹介し、マーケティングリサーチを通じて企業の課題解決を支えることが主な業務であると述べました。

また、マーケティングリサーチについては「消費者の実態を解き明かし、企業のマーケティング課題を解決すること」と説明しました。具体的には、企業から寄せられる「より良い製品やサービスを提供したい」という課題に対し、消費者へのリサーチを実施し、その結果をレポートとしてまとめて納品するという流れであると紹介しました。さらに、多様な調査手法を用いてデータを収集し、集まった情報を分析する仕事であると補足しました。

データとマーケティング

井出氏は、マーケティングリサーチの実際をイメージしてもらうために、会社で扱った代表的な事例として、有名飲料メーカーのビールシリーズの新商品開発を紹介しました。コロナ禍で外食が減少し、「宅飲みの拡大によって若者のビール離れが進んでいる」という課題に対し、性別を問わず若者をターゲットに商品開発が進められたと説明します。まずアンケートによる定量調査を行い、新商品の手がかりとなる意見を収集。その後、小規模な定性調査でアイデアの受容性を検証していく、という一連の流れが紹介されました。

定性調査の結果、ポジティブな評価が集まったことで前例のない発想が商品化へと結びついたと紹介し、名称やパッケージ、缶の塗料など、発売に至るまでのさまざまな検討が行われたことにも触れました。井出氏は、こうしたプロセスを例に挙げながら、身近な商品の裏側にも多くの調査が存在する点を強調し、「この商品はどんな人をターゲットにしているのか」と視点を持ってみることの面白さを学生に伝えました。

さらに井出氏は、自社のデータ活用の幅広さを示す別の事例として、ホラーゲームのマーケティングリサーチも紹介しました。企業から「より確実に選ばれるゲームにしたい」という依頼を受けたこのプロジェクトでは、テストプレイ後に面白さや恐怖を感じた場面をアンケートで把握する調査手法が用いられたと説明します。また、ユーザーの深層心理をとらえるために生体データの調査も行われ、プレイヤーにセンサーを装着して心拍数や手汗の変化を測定し、興奮や警戒が高まるタイミングを特定したことを紹介しました。こうしたデータを基に、音や驚かせる演出の調整が行われた経緯も説明しました。

実践!ミニワーク

井出氏は「皆さんも実際にリサーチのプロセスを体験してみましょう」と述べ、ミニワークの内容を説明しました。テーマは、「人気キャラクターを好む人はどのような特徴や行動特性を持っているのか」をリサーチするというもの。まず、井出氏から学生に対して膨大なアンケートデータが共有されました。

井出氏は、「まず『このキャラクターを好きな人はどんな人か』という仮説を立ててください。その仮説を裏付けるデータをアンケートから探して引用してみましょう」と話し、「データから読み取れる事実を紙に書き出してまとめてください」とワークの手順を丁寧に説明しました。

また、「このデータは、私たちが実際の業務で扱っているものと全く同じです」と述べ、現場で用いられる“リアルなデータ”であることも紹介しました。学生たちは2〜3人のグループに分かれ、約30分かけてワークに取り組み、終了後には数名の学生が結果を発表しました。

ミニワークの最後には、井出氏から模範例として、実際に企業へ納品する形式でまとめられた〈プロファイルサマリー〉の資料が紹介されました。学生たちは提示された資料を自分の解析結果と見比べながら、井出氏の明瞭な解説に真剣に聞き入っていました。

質疑応答

講演の最後に質疑応答の時間が設けられました。

学生が仕事のやりがいについて尋ねると、井出氏はこう答えました。「試飲調査やパッケージ調査の結果など、自分が携わったデータが実際の商品開発に生かされ、スーパーなどで店頭に並び、ターゲット層の方々に手に取ってもらえるのを見たときに、大きなやりがいを感じます。」

続いて、新卒でマーケティング業界を選んだ理由について質問がありました。「就職活動の軸に“商品開発に携わりたい”という思いがあり、さらに『1年目からマーケティングに関わりたい』という強い気持ちもありました。メーカーの場合、多くは営業経験を積んだ後に商品開発部へ異動します。私は早くから携わりたかったため、マーケティング業界を選びました。」

さらに、学生が印象に残った業務について尋ねると、井出氏はアイトラッキングを用いた視線調査を挙げました。「新商品開発を支援するため、コンビニやスーパーの陳列棚を会場内に再現し、消費者の方に普段と同じように商品を取って購入していただく対面調査を行いました。そこで、視線がパッケージのどこに集まるのか、手に取ったときどの部分を最初に見るのかを計測し、デザイン改善に役立てました。」

今回の授業は、学科での学びが社会でどのように生かされるのかを知り、将来のイメージを具体的に持つことができる貴重な時間となりました。

担当教員からのメッセージ

今年度から始まったこの授業では、毎回、企業で活躍されている方々をお招きし、各業界におけるデータの活用や、女性がどのようにキャリアを築いているのかについて、ご自身の経験を交えながら「リアル」なお話をしていただいています。

学生にとっては、教科書だけでは知ることのできない企業の実際の取り組みや、普段は意識することの少ない仕事の裏側に触れる機会となっており、毎回興味深く授業に参加しています。

これからの社会では、DX やデータの活用は、理系・文系を問わず、ほとんどの仕事に関わってきます。「得意でないから」「よく分からないから」と不安になる前に、まずは知ること、触れてみることが大切です。

この授業を通じて、将来の進路がまだ決まっていない人でも、「自分にもできることがある」と感じ、一歩踏み出すきっかけになってほしいと考えています。

2025年11月19日

文化と共に歩みつづける!日本文化論bの授業にて、株式会社叶匠寿庵の特別講演が行われました

2025年10月30日(木)に日本文化論b(担当:国際学部国際学科 コルネーエヴァ スヴェトラーナ准教授)にて、株式会社叶匠壽庵(以下叶匠壽庵)人事部部長の角田徹氏をお招きし、特別講演が行われました。

授業と企業連携について

「日本文化論b」は国際学部国際学科の専門教育科目です。この授業では、日本人の行動様式や様々な慣習について、住まいや冠婚葬祭などをテーマに学んでいます。授業を通して日本の文化への理解を深め、自国の文化を出発点に、世界を多角的にとらえる国際的な視野を養うことが目的となっています。

今回の授業のテーマは「和菓子」。叶匠壽庵(かのう しょうじゅあん)から人事部長 角田徹氏をお招きし、日本文化の一つである和菓子作りのために、一貫した理念で行っている多様な取り組みを特別にご講演いただきました。

叶匠壽庵について

叶匠壽庵は、1958年に創業した和菓子の製造・販売を行う企業です。角田氏は、「京都の老舗和菓子店には、創業から1000年を超える店もある。それと比べると当社はまだ若い企業です」と紹介しました。

また、「和菓子という概念は、西洋から伝わった洋菓子と区別するために生まれた言葉であること」についても説明がありました。角田氏は、日本文化の特徴として「海外から入ってきた文化を、日本人が感性や好みに合わせて編集し、独自のものへと変化させていく傾向がある」と述べ、和菓子の世界においても同様に、「砂糖の輸入が和菓子に大きな影響を与えた」と紹介しました。

企業が大切にしている理念

菓子作りの原点は農業であるという考えから、「農工一つの和菓子作り」を掲げています。
本社兼製造工場である『寿長生(すない)の郷』では、一部の原材料となる農産物を自社で栽培するなど、ものづくりの源流から関わる姿勢が息づいています。

この姿勢は多様な形で商品に表れており、その事例の一つとしてパッケージなどのデザインについて説明しました。
角田氏は「パッケージのデザインについて、以前は他社に依頼していましたが、それでは会社の学びにならないという想いから社内にデザインを行う部署を設立しました。以降はすべて自社で行っています」と学生の手元に配布されたリーフレットをさしながら述べ、「皆さんのお手元にある和菓子のパッケージも社員がデザインしました」と紹介されました。

寿長生の郷について

寿長生の郷は、滋賀県大津市にある本社兼製造工場で、自然と人が共存する里山です。
1985年に、「五感で四季を感じ、和菓子で表現する最良の地」として里山を開墾し、街の中心部から移転。
角田氏は、「季節を表す和菓子を、四季を感じられる場所で、自分たちが収穫した素材でつくる。農工一つの和菓子作りの理念を体現している場所」だと紹介しました。

標野(画面左)

この理念を象徴する商品が、〈標野(しめの)〉という和菓子です。〈標野〉は、かつて近江(現在の滋賀県)で額田王が詠んだ和歌

「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」 を

テーマとしたものです。夕日を思わせる穏やかな赤色のゼリーで、梅を使用した爽やかで芳醇な味わいが特徴です。

角田氏は、「〈標野〉に使う梅は、寿長生の郷で収穫されたものです。梅の木は移転時に植えた約1000本の苗木が成長したもので、剪定や受粉など、年間を通じて管理しています」と説明しました。収穫した梅はすぐ使用せず、一年間熟成させてから〈標野〉に加工されます。さらに、「以前は着色料を使っていましたが、すべて梅で再現したいという思いから、赤い梅の品種『露茜』の栽培を新たに始め、現在は素材の色だけで表現しています」と述べました。

叶匠壽庵HP 商品一覧「標野(しめの)」https://kanou.com/gnaviplus/item/shimeno/

和菓子作りのこだわり

角田氏は、和菓子作りの中で大切にしている点として、「あんこを毎朝職人の手で炊くこと」を紹介しました。小豆の収穫は年に一度であること、また収穫後は品質が日々変化していくことに触れ、「一日ごとに変わる原材料の状態を見極め、その日ごとに最高の状態へ仕上げるため、炊く作業は職人さんに任せています」と話しました。

続いて、あんこを使用した叶匠寿庵の看板商品〈あも〉について紹介がありました。
「〈あも〉は、あんこと餅でつくられた細長い和菓子です。『あも』とは宮中に仕える女房言葉で、『餅』を意味します」と説明しました。
好調な売れ行きの一方で、「一口サイズがほしい」という声もよく寄せられていると紹介。
しかし、「小分けにすると〈あも〉ではなくなる」と述べ、「新しい食べ方の提案をして親しんでもらおうと、商品を開発しました」と、最中に百人一首をプリントした〈あも歌留多〉を紹介しました。

角田氏は〈あも歌留多〉の図版を、本社と同じく滋賀に所在し『かるたの聖地』である近江神宮所蔵のものから引用していること、滋賀に訪れた皇室関係者に夕食後のデザートとしてふるまわれたエピソードも共有され、地域に根差し地域を代表する和菓子作りを行っていることを紹介されました。

叶匠壽庵HP 商品一覧「あも歌留多」https://kanou.com/gnaviplus/item/amokaruta/

寿長生の郷の持続可能性

寿長生の郷は、環境省が指定する「自然共生サイト」(民間の取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域)に認定されています。和菓子製造で排出される生ごみや伐採木の破片を活用した堆肥づくり、絶滅危惧種の保護活動、工場排水の浄化など、自然豊かな里山の環境を維持するため、多様な取り組みが行われていることが紹介されました。

木々は、樹木医の資格を持つ社員によって計画的に管理されており、角田氏は、「担当の社員が、100年後の寿長生の郷の風景を私たちにプレゼンしてくれるんです」と話しました。続けて、「認定を目指して環境整備をしたのではなく、できることに取り組み続けた結果、認定をいただけた、という感覚です」と述べ、自給自足を大切にする企業方針が、環境面でも高く評価されていることを紹介しました。

質疑応答

リアルタイムアンケート機能を使用し、学生からの質問に角田氏が回答する時間が設けられました。
画面にずらりと表示された質問からピックアップして回答していき、採用された学生には角田氏から叶匠壽庵の和菓子がプレゼントされました。

学生への豪華なプレゼント

最初の質問は、「和菓子界で今、一番困っていることは何ですか?」です。

角田氏は「原材料である米の調達」と答えました。全国的なコメ不足という背景を挙げ、「米農家が、もち米の生産リソースをうるち米へ回してしまっている」と説明しました。さらに、日本の食料自給率が約40%にとどまっている状況を踏まえ、「つくれるものは自分たちでつくる意識を持っています」と述べ、企業として持続可能な体制を追求している姿勢を示しました。

学生から一番多かった質問が「一番好きな商品は何ですか?」という質問です。角田氏は「〈紅白薯蕷(じょうよう)饅頭〉の白い方が一番好きです。予約限定商品なので手軽に手に入るわけではないのですが、食べたら違いがわかります」と紹介しました。
叶匠壽庵HP 商品一覧「紅白薯蕷饅頭」https://kanou.com/gnaviplus/item/kouhakujouyomanjyu/

あも歌留多を調べる学生

講演中に紹介された銘菓〈あも〉について、「一口大にすると食感が変わると言っていたが、具体的にどう変わるのか」という質問が挙がり、角田氏は「〈あも〉はもちをあんで包んだ細長い和菓子ですが、あの長さがあるからこそ、もちとあんこの水分バランスが保たれ、独特の食感が生まれます。短くするとそのバランスが崩れ、食感も変わってしまう。つくり手からすると、それはもう〈あも〉とは呼べないんです」と説明しました。
叶匠壽庵HP 商品一覧「あも」https://kanou.com/gnaviplus/item/amo/

「和菓子づくりで一番大切なことは何ですか」という質問に対し、角田氏は「ストーリーです」と回答しました。続けて具体例として〈匠寿庵大石最中〉を紹介。本社のある滋賀県大石は、赤穂浪士で知られる大石内蔵助の祖先ゆかりの地であり、その歴史になぞらえて商品化されたと説明しました。最中に刻まれた山と川の模様は、討ち入りの際の集合の合言葉に由来するものだと補足し、「なぜこの和菓子なのか。土地と結びついたストーリーを持たせることが重要です」と強調しました。
叶匠壽庵HP 商品一覧「匠寿庵大石最中」https://kanou.com/gnaviplus/item/ooisimonaka/

講演の最後に

授業の最後に、三笠宮家当主 彬子女王が雑誌に寄稿した文章を引用しながら「日本の将来を担う若い世代や子供たちが、生け花や畳、床の間など、日本文化を『いいものだね』と親しんでもらわなければ、文化は過去の遺物になってしまう」ことを伝え、講演を締めました。


担当教員からのメッセージ

今回のご講演では、和菓子づくりに込められた叶匠壽庵の理念や地域文化とのつながりだけでなく、企業として大切にしている姿勢についても多くの示唆をいただきました。
特に、人事採用の場で重視される「基本的な姿勢」や「挨拶の重要性」についてのお話は、これから社会へ踏み出す学生にとって大きな学びとなったはずです。
専門知識だけでなく、相手を敬い、自ら成長しようとする姿勢が評価の基盤であるという実践的なご助言は、学生にとって特に心に残る示唆となり、たいへん有り難く感じています。
和菓子づくりにおける一貫した理念や地域への深い理解、素材に向き合う誠実さは、そのまま社会人として求められる姿勢にも通じます。
今回のご講演を、文化への理解を深めるだけでなく、自らの行動や将来像を見つめ直す貴重な機会として、生かして欲しいと願っています。

2025年11月6日

まつ育ファン化計画!実践キャリアプランニングの授業にて、アンファー株式会社とコラボした課題の発表が行われました。

2025年10月24日(金)実践キャリアプランニング(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)にて、アンファー株式会社(以下アンファー)から中溝幸生氏、堀川瑞希氏をお招きし、課題の発表が行われました。アンファーはスカルプDで広く知られている化粧品・健康食品メーカーです。

授業と企業連携について

「実践キャリアプランニング」は、1年生を対象とした必修の共通教育科目です。学生は、企業からのゲスト講師や在学生の先輩によるキャリア講演、企業と連携したPBL型課題などを通して、社会人基礎力を養い、多様化する女性のキャリアへの理解を深めていきます。

国文学科クラスでは、企業から提示される課題に学生がグループワークで取り組み、解決策を導き出す「課題解決型授業」として、アンファーとの連携を行っています。

当日はゲストとして、元アンファー株式会社常務取締役であり、現在もアンファー系列会社で相談役を務める中溝幸生氏と、アンファーグループグループ経営統括局 人事部の堀川瑞希氏が登壇しました。講演に先立ち、堀川氏は「学生の皆さんが将来の就職活動の際に、アンファーグループを選択肢の一つとして考えてもらえたら嬉しい。また、今日の課題にはぜひ一生懸命取り組んでほしい」とエールを送りました。

堀川氏

スピーカーの紹介

今回ご講演いただいたのは、中溝幸生氏です。中溝氏は元資生堂勤務で、深澤教授からは「私の先輩で、一緒に働いていました。机が隣だった時期もあるんですよ」との紹介がありました。

中溝氏のキャリアは営業職からスタート。「新卒で入社後、初めての配属先は、九州の長崎市でした。その5年の在籍期間中のうち、2年間は五島列島福江市に住みながら営業活動を行いました。」と振り返りました。その後、東京本社へ異動し、長くマーケティング業務に携わります。特に男性化粧品のマーケティングや商品企画を担当し、当時の企画書の写真を交えながら具体的な取り組みを紹介しました。赤字だった子会社の業績を大幅な黒字へと転換した事例についても触れ、「このときは社内表彰で社長賞をいただきました」と語りました。

また、上海駐在時の経験として、2010年の上海万博で協賛企業となるための企画提案に尽力したことを紹介。国際的なビジネスの現場で活躍された経験も語られました。

資生堂退社後はアンファーに入社し、これまでの経験を活かして商品開発や海外販路拡大などの業務に携わってきました。
人事部に在籍していた際には、「役職敬称の撤廃(社長を“社長”ではなく“◯◯さん”と呼ぶ)」や「服装規定の見直し」など、組織改革にも取り組まれました。

商品企画や販売促進の施策立案、企画提案など、学生たちがこれから取り組む「課題に対する解決策の提案」と通じる業務を数多く経験してきた中溝氏。
講演は、アンファーという企業の紹介へと続きました。

アンファーについて

中溝氏は「アンファーは、医学を中心に“美と健康”の領域で包括的なソリューションを提供するメディカルヘルスケアカンパニーです」と紹介しました。〈スカルプD〉をはじめ、スカルプケア・スキンケア商品の展開に加え、男性、女性の薄毛治療専門のクリニック、睡眠サポート、オンライン診療など、健康に寄与する多様な事業を展開しています。

アンファーは企業理念として「自分をより『美しく』『健やかに』することを通じ、人生をより『愉しく』したい人を増やすこと」を掲げており、中溝氏は「“愉しむ”という言葉が含まれているのがアンファーらしいところです」と語りました。さらに企業ミッションとして「医学に基づく、最適なソリューションの提供」を掲げ、医療機関との連携体制を強化している点も大きな特徴だと説明しました。医師や専門家の監修のもと、医療知見に基づいた商品開発や診療事業を行っています。

また、アンファーグループ内の企業構成についても詳しく説明があり、「皆さんがドラッグストアで目にする〈スカルプD〉や<まつげ美容液>の販売を行う企業と、クリニック事業の両輪で活動しています。」と紹介。「お客さんの悩みの深さに対応して、日常的の使う商品提供や治療を行う自由診療クリニックを運営し、すべてのお客様に満足いただける企業を目指しています」と述べました。

課題の発表

今回、学生が取り組む課題は「〈スカルプDまつ毛美容液〉のリピート対策の提案」です。中溝氏はシリーズの中でも〈スカルプDまつ毛美容液プレミアム〉を取り上げ、全15班に商品のサンプルを配布しました。

〈スカルプDまつ毛美容液〉シリーズは、2012年に誕生し、「毎日の目元ケアでご機嫌なわたしへ」というメッセージを発信する国内売上NO1のまつげ美容液ブランドです。まつ毛美容液のほか、マスカラやアイライナーなど、目元に特化したメイクアップ商品も展開しています。ブランド誕生のきっかけは「お客様の声」であり、アンファーが頭髪研究で培った知見をもとに、気軽で安心して使えるまつ毛美容液が開発されました。

中溝氏は課題設定の背景として、「美容液は、効果を実感するまでに少し時間がかかる商品」と説明。そのため、継続して使いたくなる工夫がないとリピートにはつながりにくいとし、サポートメールの配信や定期購入者に特典を付与するなどの対策を取り入れていることを紹介しました。さらに、企画提案の条件として「具体的なアプローチの背景を明確に説明すること」や「文字・図表・音声など表現方法は自由であること」を提示。「特に背景の部分をしっかり考えてほしい」と学生に呼びかけました。

講演の最後に中溝氏は「競合商品と比較しながら考えを深めてもらえたら」とライバル商品を紹介しながら助言し、学生の分析と提案に期待を寄せました。

授業の終わりに

中溝氏の講演に続いて、深澤教授から今後のスケジュールと具体的な取り組み方について説明があり、「皆さんにとって初めてのキャリア科目であり、初めての企業連携提案です。協働力と計画力を高めるプロセスを経験し、成長の一つの機会にしてほしい」と学生にエールを送りました。

学生は講義の残りの時間を使って早速グループワークに取り組みました。
今後、2回のグループワークを通して企画をまとめ、その成果をアンファーの皆様に向けて発表する予定です。

担当教員からのメッセージ

今から約30年前、私が企業でマーケティングの業務に携わっていた頃に大変お世話になったのが、
今回、ゲストでお越しいただいた中溝様です。
こうして再び出会えるご縁の深さを感じています。
今回は、学生にも身近な化粧品のマーケティングに関するお題をいただきました。
学生たちの柔軟な発想から、どういった提案がなされるか、とても楽しみです。
この場を借りて、中溝様には心から感謝申し上げます。