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2025年9月2日

学生が考案!株式会社東京サマーランドで販売を想定したメニューの提案が、2025年度食生活オープン講座で行われました。

8月7日(火)に生活科学部 食生活科学科の専門教育科目である食生活オープン講座にて、株式会社東京サマーランド(以下サマーランド)から経営企画室課長の田村 修平氏と経営企画室兼営業推進部企画宣伝課の高見 哲平氏をお招きし、課題に対する成果の発表が行われました。

発表の前に

 食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科の学生を対象に開講されている専門教育科目です。企業から提示される課題に学生が取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。サマーランドから提示された課題のテーマは「プール遊園地施設における商品提案」です。5月末に実施された現地調査と中間発表での意見交換をふまえ、各班が試行錯誤して、考案・開発した最終成果を発表します。

1班:スノーバーガー

1班は現地調査で、天候によって来場者の行動が変化すること、ファミリー層が多いことを分析し、飲食の簡便さと軽食に需要があることに着目。「現地調査で食べたバーガーのバンズがおいしかった」という経験から、アイスをバンズで挟んだ「スノーバーガー」を提案しました。

ハンバーガーのバンズにアイスがサンドされている見た目のインパクトで、映えるビジュアルを実現。手を汚さずに食べられる工夫を取り入れたアイスの提案をしました。さらに、バンズを事前に仕込むことにより提供時の工程を削減。約1分で商品を提供できるスムーズさと、アイスとバーガーの意外な組み合わせの斬新さで、購買意欲を高めます。販売戦略としては、SNSでのハッシュタグ活用やインフルエンサーとの連携を予定。販売価格は500円としました。

2班:ぱちぱちストロベリーソーダ

2班は、現地調査から、飲食を持ち込みをしている来場者であってもつい購入したくなるインパクトが強い商品に集客力があること、屋内の暑い環境では冷たいメニューの需要が高いこと、また飲食の持ち込みをしている来場者ほど軽い飲食物を購入する傾向にあることを分析。自分でひと手間加えて完成させる体験型のフードに着目し、口に入れるとぱちぱちはじける粉末を自分でドリンクに入れる「ぱちぱちストロベリーソーダ」を提案しました。

「ぱちぱちストロベリーソーダ」はアクティブさを邪魔しないベリーと炭酸のさわやかさと鮮やかなビジュアルで、五感を使って楽しむことににこだわったドリンクです。試作段階では「ぱちぱちと弾ける音が10-20分ほど持続していた」と、味や見た目だけでなく音でも楽しめる”五感”で味わう体験型ドリンクを実現。ターゲットは20代の若者とし、価格は手の届きやすい500円と設定しました。宣伝方法にはSNSの発信や場内看板を活用し、多くの来場者に魅力を伝えます。

3班:シャリっとサマージェノベーゼ

3班は現地調査の結果、既存のフードには冷たい主食がないことに着目。加えて、夏に求められている食の要素として「あっさりとした味付け」が好まれること、夏野菜の中ではトマトが人気であるという調査結果を重ね合わせ、冷凍トマトを使用した「シャリっとサマージェノベーゼ」を提案しました。若い女性や家族連れの母親をターゲットに、こってりした味付けが多い既存のフードとの差別化を狙いました。

フローズントマトを使用することで、時間がたってもひんやりと冷たい状態を保つことができる食事を実現。他の材料はジェノベーゼソース、エビ、チーズを使用し、さっぱりとした味で満足感のあるフードを目指しました。

販売価格は、園内の既存フードの価格を参考に、1000円と設定。SNSでは実際に食べている様子を発信し、購買意欲を高める戦略としました。

4班:青空ふわもこソーダ

4班は現地調査の際に購入した、自分で手を加える体験型フードに着目。手を加える楽しさとロゴ入りドリンクをコンセプトに「青空ふわもこソーダ」を提案しました。

作り方は、カップの側面に雲に見立てた生クリームを塗布し、そこにバタフライピーティーと炭酸水を注ぎ、仕上げに綿あめを乗せてロゴ入りのストローを指して完成です。青空を表現するためのバタフライピーティーの配分にこだわり、試作では最もきれいに青空を再現できる色味を検討しました。

ターゲットは中学生から20代までの若年層。販売価格は手に取りやすい700円に設定。販促にはSNSを活用し、綿あめを溶かしながら飲む様子を動画で紹介し、「実際にやってみたい」と思わせ、購買意欲につなげます。

授業の最後に

発表後、田村氏と高見氏による協議を経て、最優秀賞が決定しました。

見事受賞したのは4班の「青空ふわもこソーダ」。賞状の授与と、副賞としてサマーランドワンデーパスが贈呈されました。

授業の終わりに、企業担当者のお二人から総括のコメントをいただきました。

田村氏は「提案していただいたメニューはどれも独創的でした。発表の中に動画を取り入れていたチームがあったと思います。昨今SNS発信では動画の活用が非常に多いです。特にショート動画(15-60秒の動画のこと)のように、短時間でインパクトを与える手法は、現在のニーズに合っていると感じました。サマーランドとしては飲食店の回転率も重要視しており、その点で調理工程がシンプルであることは大事な視点です。どの班もすばらしい発表でした」とコメント。

高見氏は「発表内容はとても素晴らしかったです。プレゼンテーションにおける見やすさや伝わりやすさの工夫は、経験を重ねることで身についていくものだと思います。発表する環境によっては、資料の色使いなどにも配慮されるといいと思います。また、サマーランドの客層や来場者の行動は季節により大きく変化します。今の時期は夏休みのため、ファミリー層に加えて学生も多く来場します。今回の視察での分析が非常にしっかりしていたからこそ、変化を想像し別の視点で考えるとどのような結果になるのかも興味深いと感じました。今後同様の発表の機会があれば、そうした点にもぜひ意識を向けていただけたらと思います。」とフィードバックしました。

担当教員のコメント

プール遊園地施設における商品提案という課題に対して、東京サマーランドの方から、お客様視点ということが重要視されました。

現地視察の日はあいにくの天気でしたが、参加した学生は、施設を楽しみ、それぞれの視点で園内の環境や飲食店のメニュー、客層など詳細に分析することができました。その成果が最後の提案発表につながっていたと感じます。また、発表後のフィードバックでもご意見をいただき、調理設備や使用できる材料、回転率重視など、商品提案の難しい部分も感じることができたことは、大変よい経験となったのではないでしょうか。

東京サマーランドの田村様、高見様には、講義から始まり、現地でのご案内、最終発表のご講評まで関わっていただき、改めまして、お礼申し上げます。おかげさまで学生達はやりがいを感じながらも楽しく授業に取り組むことができました。

一連の活動が、自信となり今後の学びや課外活動につながることを期待します。

生活科学部食生活科学科 中川 裕子 准教授
2025年8月28日

2025年度キャリアデザインの授業で、オリエンタルランドとコラボした課題に対する発表が行われました。

7月8日(火)にキャリアデザイン(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、株式会社オリエンタルランド(以下オリエンタルランド)からマーケティング本部コンテンツ開発推進部長の横山政司氏と、マーケティング本部コンテンツ開発推進部ロイヤルティマーケティンググループマネジャーの伊藤大樹氏を招き、課題に対する提案が行われました。今回学生が取り組んだミッションは「あなたは、コンテンツ開発推進部に配属されたオリエンタルランドの新入社員です。人口減少社会でハピネスを提供し続けるために、Z世代のファンダフルディズニー会員を獲得する施策を提案してください」。学生たちは2週間かけて取り組んだプランを提案しました。課題が発表された授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8806/)。

全部で9つの班が発表を行い、伊藤氏から最優秀賞と優秀賞が発表されました。今回は受賞したふたつのグループの発表内容を紹介します。

最優秀賞:1班

ターゲットは、比較的時間と経済的余裕のある大学1~4年生に設定。ターゲットを対象としたアンケート調査を、インスタグラムとグーグルフォームを用いて行いました。その調査結果から、そもそもファンダフル・ディズニーを知る機会が少なく、特典の魅力も十分に伝わっていないことを課題として設定しました。また、ファンのニーズと会員特典が合致していないのではないかという点も課題に挙げました。

ファンのニーズと会員特典の合致を目指し、「コース別ファンダフル・ディズニー」を提案。入会時に「アトラクション」「フードとショー」「グッズ」の3つから希望のコースを選べる制度で、それぞれのコースに沿った特典が用意されます。既存会員も追加料金なしでコースを選択可能とし、満足度の向上と離脱防止を図ります。

さらに、会費については、年払いに加えて月払い制度の導入も提案。大学生にとっては、月払いの方が加入の心理的ハードルを下げやすいので、まずは月払いで気軽に入会してもらいます。そして、会員を継続する中で年払いへ移行する流れを想定しています。また、段階的に外国籍の方の入会も視野に入れるなどの方針を紹介しました。

最後に、認知度向上のためにZ世代に人気のインフルエンサーを起用したSNS発信や、駅構内での広告展開を組み合わせたマーケティング戦略を提案。認知を広げ、自発的な興味・検索行動へとつなげることを狙いました。

伊藤氏は「調査結果を反映させて終わりではなく、既存のコンテンツとの違いを出すためにどうしたらよいかを掘り下げて検討し、「コース別」という切り口の提案にたどりついたのは面白かったです。認知度の課題に対しても具体的な提案をしてくれました。発表も、アンケート結果を出発点に全体の施策につなげていく構成で、ストーリーが見えやすく、非常に良い提案でした。」と受賞理由を紹介しました。

優秀賞:6班

ターゲットを「地方在住のZ世代」と定義し、課題として以下の2点を挙げました。1つ目は、地方に住んでいるとパークに何度も行けず、お金もかかるため、地方在住のZ世代にとって入会のメリットが感じづらいこと。2つ目は、情報発信が首都圏在住者やリピーター向けに偏っており、ファンクラブ自体の認知度が低いことです。

そこで、地方在住のZ世代を対象に「出張ファンダフルイベント」を提案しました。これは、キャラクターが実際に各地域を訪れ、パークでは見られないご当地限定衣装での撮影会、抽選でのグッズお渡し会など、直接ふれあえる体験型イベントです。地方でディズニーパレードを実施した際に大きな反響があった事例を挙げ、地元でディズニーを楽しめる機会には高い需要があると説明しました。これは、パークに行きたくても距離や費用の面で難しいZ世代に、魅力的な体験を提供できるという提案です。また、参加者によるSNS投稿を通じて、ファンクラブの認知拡大や入会促進も狙います。

さらに、SNS上でファンクラブコンテンツの一部を公開し、全貌は会員のみ閲覧可能にすることで、「会員になる特別感」を演出することも提案しました。実際に同様の戦略で、ファン限定コンテンツの会員数が3倍になった成功事例も紹介し、SNSと会員制の連動による効果の高さを強調しました。

この施策を通じて、地方にいてもディズニーの世界観に触れられる機会を提供し、新規会員の獲得と既存会員の継続意欲の向上を目指します。

伊藤氏は「遠方に住んでいて来園が難しい方にどのようにつながりをもってもらうか、という点は我々も課題に置いていたところです。地方で行うファンミーティングなど、いろいろなことをやりたいと考えていたので、共感する内容が非常に多い提案でした。」と受賞の理由を紹介しました。

授業の最後に

受賞したグループには記念品としてディズニーグッズが贈呈されました。

1班
6班

伊藤氏から「短い期間でここまでの提案内容を仕上げたことが素晴らしいと思います。全部で9つの班の、若い世代の声が反映された発表を聞いた時間は非常に有意義なものとなりました。特に知名度の低さとSNS活用の意見は受け止めて、ファンダフルを運営しているチームにもしっかり共有させていただいて、この先につなげていきたいと思います」とコメント。

横山氏からは「ターゲット設定はどのグループも苦労したと思います。ターゲットの掘り下げをさらに行うと、より詳細なアプローチを提案できたと思います。顧客の解像度をどんどん高めていかないと、適切な提案は行えません。この視点は社会に出てから重要になります。今回の提案に当たりアンケート調査を実施したことはよかったのですが、アンケートでは見えてこないターゲットのリアルなニーズをつかむことは提案を行う上で非常に大切です。社会人になったら、ぜひ意識していただければと思います。」と総括の言葉をいただきました。

担当教員のコメント

毎年、多くの学生が楽しみにしている「キャリアデザイン」におけるオリエンタルランド社との連携講座が行われました。本年度も、昨年と同様とてもリアルなテーマを出題いただき、学生にとってのハードルは例年以上に上がったものの、深く企業や、仕事のことを考察する時間となりました。学生にはとても身近な企業であるものの、やはり仕事という側面で考えることは、本当に意義ある取り組みになったものと考えます。

横山様には、毎年、中間段階でのフィードバックを含め、プレゼンテーション当日まで、ご丁寧にアドバイスをいただき、学生にとっては、仕事の厳しさも学ばせていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。就職活動を目前に控えた学生にとって、働くこととは、仕事とは、そして企業とは、一人一人が自らと向き合い、限られた時間でチームとして成果を出すことの重要性など、どこまで深く考えられるかが重要であることに気づいて貰えればと考えています。横山様、伊藤様には、改めて感謝申し上げます。

2025年8月28日

2025年度国際理解とキャリア形成の授業で、スポーツニッポン新聞社コラボ冬季オリンピックに関する課題に対する発表が行われました。

7月15日(火)に国際理解とキャリア形成(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、株式会社スポーツニッポン新聞社から編集委員の藤山健二氏、ビジネス開発局の池田智子氏、記者の佐藤博之氏を招き、課題に対する成果の発表が行われました。当日の様子は、7月16日付の朝刊に掲載されました。

発表の前に

この発表は、4月に発表されていた「オリンピック(特に冬季オリンピック)の持続性について」という課題に対して、解決策を提案するものとなっています。学生ならではの自由な発想が求められました。★課題が発表された授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8135/)。

藤山氏から「スポニチ賞(最優秀賞)の景品を用意しました。スポニチのロゴグッズと、長野五輪の関係者用参加証明メダルです」と当時の関係者のみ所有している非売品のメダルの授与を発表し、学生からは驚きの声が上がりました。

本記事では全8グループの発表のうち、4グループの提案を抜粋して紹介します。

7班の発表

オリンピックの持続可能性の現状として、開催都市の財政負担や財務面の不透明性、閉会後に施設が使用されず廃墟化してしまう「負の遺産化」の問題に触れ、SDGsとの乖離があることを指摘。

解決策として、まず透明性の高い資金調達手段であるクラウドファンディングを提案しました。費用の用途を明示することで広く支援を募り、支援者には公式グッズのリターンなど特典を用意します。

次に、大会後の施設を地域住民向けの健康増進施設としてリノベーションし、売店収益を活用して改修費用の一部を補う案が示されました。維持費に悩む施設を長く運営していくための施策です。健康増進や地域交流を狙った施設を運営し、持続的に地域に貢献する拠点とすることで、一時的なものではなく地域資源として生かす方向性を提案しました。

クラウドファンディングによる費用負担の軽減、リノベーションによる施設の有効活用、そして施設利用を通じた市民の健康促進を狙い、あるものを活かして次につなげることで開催後も地域住民がオリンピックと共にあることを目指しました。

藤山氏は「IOCに入る収益の多くは選手の競技団体に分配されています。特に恵まれない小さな競技の資金源になっている背景があります」と補足。「クラウドファンディングを取り入れるという視点は大変面白いとおもいました」とコメントしました。

6班の発表

6班はオリンピックの持続可能性について、環境の観点から考察しました。現在は一国で開催されるため、大規模な施設の建設や運営にかかる費用など、さまざまな問題が一国に集中し、開催国に大きな負担を強いています。また、競技場などの施設を建設するために森林が伐採されたり、開催期間中に大量の観光客が訪れ、ごみの分別が困難になるなど、環境への悪影響も懸念されています。

こうした課題に対し、地域に応じて競技を分散開催する「複数国開催」のオリンピックを提案しました。メリットとして、以下の3点を挙げました。

1つ目は、金銭的負担の軽減です。複数国で費用を分担することで、開催国ごとの負担を抑えることができます。2つ目は、競技環境の向上です。選手村の質や競技環境が不十分で実力を発揮できない問題に対し、開催規模を抑えることで柔軟に対応できると考えました。3つ目は、国際交流の促進です。複数国で同一のイベントを実施することで、開催国同士の連携が生まれ、交流が活発になると期待されます。

一方で、複数国開催による観客の移動負担というデメリットにも言及し、対策としてストリーミング配信の活用や航空会社との連携強化を提案しました。こうした工夫により観光客の往来が活発になり、世界経済にも好影響をもたらすと考えました。

藤山氏は、「金銭的な問題などにより、一国でオリンピックを支えることが難しい時代になっているのは事実ですが、さまざまな国のアスリートが一つの国に集い、交流することは、オリンピックの大切な要素の一つです。複数国開催については、そうした価値観との折り合いをどうつけていくかが、今後の課題です」と述べ、提案の中で指摘されたオリンピックの現状の課題を話しました。また、「スポーツを通じた国際交流という考え方には、確かにそうなってほしいという思いがあります」とコメントし、提案への共感も示しました。

8班の発表

8班は地球温暖化による降雪量の減少と、それに伴う冬季オリンピックでの人工雪の使用率の高さに着目しました。人工雪の生成には大量のエネルギーが必要であり、また自然雪に比べてアスリートのパフォーマンスに悪影響を与える可能性が高い点が課題として挙げられました。

さらに、自然雪で冬季オリンピックを開催するには、豊富な自然降雪、安定した低気温、標高差のある山岳地帯といった競技に適した環境に加え、選手村やメディアセンターなどの施設を建設できる広大な土地や、空港・鉄道・道路などの交通インフラの整備も求められると説明されました。

そこで、都市開発とオリンピックを組み合わせた「未開発地域での開催」が提案されました。これは、降雪地帯の未開発地域で都市開発を行い、人工雪に頼らず高水準の競技環境を整備しつつ、地域の復興や活性化を図る施策です。

具体的な候補地として、国内では岩手県八幡平市をはじめとする東北地方の山間部、国外ではノルウェー北部のトロムス地方などが紹介されました。これらの地域は自然環境に恵まれている一方で、環境規制の厳しさや、北極圏に近いため日照時間が短いといった課題もあると指摘されました。

自然雪に恵まれた地域を、オリンピック開催に向けて計画的に整備することで、競技環境の質を高めると同時に、大会終了後も施設を活用して地域に長期的な価値を残すことを目指しました。

藤山氏は「雪のあるところで開催するという提案で止まらず、具体的な都市名を出してくれたことがよかった。環境保護の観点から、本当に実施するとなったときには反対の意見もたくさん出ると思いますが、地域を一つではなく複数あげてくれたことも、検討の幅を感じることができよかったです」とコメントしました。

5班の発表

5班は「持続可能なオリンピック」に向けて、3つの課題とその解決策を提案しました。

第一の課題は、大会終了後の施設の利活用や、地域住民への影響です。これに対し、仮設スタジアムを活用し複数都市で競技を実施する「分散型オリンピック」の導入を提案しました。また、FSC認証木材を使ったプレートにメッセージを記入し、ツリー型のパネルに掲示する「メッセージツリープロジェクト」も提案しました。このプロジェクトでは、地域住民の声や選手への応援メッセージを集めて掲示し、終了後は地元施設に展示することで、地域と一体となった大会運営を目指しました。

第二の課題は、環境への影響、特に大会期間中に発生する未分別ごみの問題です。この課題に対しては、楽しみながら環境意識を高める「スポGOMIオリンピック」と「分別オリンピック」を提案しました。「スポGOMIオリンピック」は、ごみ拾いの質と量でポイントを競うイベントです。「分別オリンピック」は、ごみをいかに速く正確に分別できるかを競います。これらの優勝チームには、FSC認証木材で作られたオリジナルの木製メダルを授与し、森林伐採などの環境問題への関心も促します。

第三の課題はフードロスです。東京大会では、IOCの要請により多種多様な食事を常時用意していましたが、食材の管理が難しくなり、結果として大量の食品廃棄が発生しました。これに対しては、アプリによる事前予約制の導入に加え、『もったいない弁当』の提供を提案しました。「もったいない弁当」は通常は廃棄されがちな可食部を使用した弁当で、フードロス削減と同時に、サステナブルな取り組みとしての話題性も狙いました。

藤山氏は「FSC認証木材に注目したエコ金メダルの発想はとてもいいですね。実際にメダルを獲得した選手が地元に凱旋した際、自治体が記念としてFSC認証木材製のメダルを贈呈を行ったり、東京オリンピックではメダルケースをFSC認証の木材で制作しています。ゆくゆくはオリンピックのメダルも木製になるかもしれません」とコメントしました。

授業の最後に

全ての班の発表が終わり、ゲストの三名による審査を経てスポニチ賞が発表されました。

受賞した班は8班。

藤山氏は「三人でどれがいいか意見が分かれました。皆さん本当に素晴らしかった」と全員の頑張りをねぎらいつつ「具体的な開催地まで一歩進んで言及していた点を評価しました」と受賞理由を説明。景品の授与が行われました。

藤山氏は「皆さんのプレゼンテーションを聞かせていただいて、とても楽しかったです。中身について本当に差はありません」と発表全体を振り返り、授業全体の総括として、前回授業で行った岡崎朋美氏との対談内容に触れ「岡崎さんが対談の中で話していた『なぜできないのかではなくどうしたらできるか』と考えるポジティブさは大切。困ったときはこの考え方を思い出して頑張ってもらえたら、きっと楽しい学生生活を送っていただけると思います。オリンピックメダリストの話を直接きいたという特別感も、覚えておいてもらえたらなと」と総括されました。

★オリンピックメダリスト元スピードスケート選手の岡崎朋美氏との対談が行われた授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8695/)

担当教員のコメント

「東京2020」の開幕前からスポーツニッポン新聞社様にご支援をいただき、8年の歳月が流れたことになります。その間には、東京2020の延期と無観客開催から昨年のパリ五輪まで、オリンピック・パラリンピックに関しても様々な話題があり、と同時に課題も浮き彫りになっています。
今年は、初めて冬季五輪に視点を当て、日本女子スピードスケート界のレジェンド岡崎朋美選手にもお越しいただき、特に冬季のオリンピックパラリンピックの持続可能性について考えてきました。
スポーツニッポン新聞社の藤山さん、池田さん、佐藤さんには本当にお世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年8月13日

若者をファンにするSNSの投稿とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲との特別コラボが行われ学生たちがプレゼンテーションを行いました。

6月25日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)で、猿田彦珈琲との特別コラボ授業が行われました。この日は約2ヵ月にわたり取り組んできた課題の最終発表です。課題のテーマは「20代にファンになってもらえるSNSの投稿を考えよう」。企業の皆さんを前に、学生たちは緊張しながらも猿田彦珈琲のファンを増やすためのSNSの施策を発表しました。

中間発表から最終発表会に向けて

 5月末の中間発表以降今回の最終発表会までに、篠﨑先生は学生に2つのことを徹底するように伝えていました。ひとつは、猿田彦珈琲から出ている課題に回答するかたちでまとめること、もう一つは、ターゲットを絞ることです。猿田彦珈琲からいただいたテーマは、学生のみなさんの年代層(20代男女)のお客様に、「猿田彦珈琲に興味をもってもらうきっかけ」or「猿田彦珈琲に行ってみたい!」と思ってもらうための投稿案を提示するというものでした。加えて、instagramもしくはXの投稿案に入れて欲しい項目が提示されていました。項目は多岐にわたるため、必ずしも網羅的でなくても良いが、提示されている項目を入れて提案することを強調しました。ターゲットについては、「20代男女」とはどのような層なのか。例えば、どこに住んでいて、何に興味がある学生なのかなど、より具体的にする指示が出ていました。
 さて、では実際に発表がどのようであったのかを見てみましょう。

一目で情報が分かるように

トップバッターはAチーム。
ターゲットを女子大学生に定めました。学生のうちに猿田彦珈琲を知ることで、社会人になってから利用してもらい長期的なファンにするのが目標です。
若い世代はコーヒーを飲むとき、苦みが少ないカフェラテなどを好む傾向から、甘いスイーツドリンクの紹介に力を入れることに。抹茶ラテやフロートなどの写真に、説明文をつけて投稿します。
文も情報を書くだけではなく、共感を呼ぶような語り掛ける口調を意識。女子大生の検索が多いハッシュタグをつけて投稿します。
発表後は企業の皆さんからの質問タイム。
「写真に文字が入っている方が良いですか?」という質問に、学生は「一目で見て情報が分かる方が興味を引かれると思います」と実体験から回答していました。

次のCチームは2種類の投稿を考案。
毎日おすすめ商品の投稿と、定期的にフォロワー限定クーポンを配布するキャンペーンの投稿です。
毎日の投稿は、通勤通学の時間帯にその日の気候に合わせたおすすめ商品を投稿し、学校帰りなどに来てもらえるように訴求します。フォロワー限定クーポンは、公式アプリと連動して応募した人に、50円引きのクーポンを配布するというもの。投稿当日限定とすることで、限定好きな若い女性の興味をそそります。
「毎日のおすすめ商品は、例えばどんなものを考えていますか?」と質問が。
「雨の日はテイクアウトが少なくなると思うので、店内で食べられるスイーツとセットで紹介したり、晴れている日はフロートを紹介したりすることを考えています」と回答しました。

店内のおしゃれな雰囲気を伝えるには?

続いてはEチーム。
現状の投稿内容や課題を細かく分析。期間限定商品が分かりにくかったり、文章が長かったりと統一感がないことを指摘しました。
そこで投稿写真を同一のフィルターをかけ、商品にキャッチコピーを入れることを提案。また投稿の下にはロゴを挿入することで、ユーザーに一目で猿田彦珈琲であることを分かりやすくします。
投稿案では店内風景を撮った紹介動画を作成。雰囲気が統一されブランドイメージを伝えられるとしました。
質問では「統一感の話がありましたが、猿田彦珈琲っぽさとは何だと思いますか」と聞かれ、学生は「落ち着いた店舗の雰囲気がSNSでも伝われば良いと思いました」と回答。
企業の方も納得されていました。

Fチームは自分の時間を大事にするZ世代をターゲットに一人でも快適で、落ち着いて過ごせる猿田彦珈琲の特徴をアピールするSNSを提案しました。
行きたいなと思わせる構成にこだわった、店舗の紹介動画を作成。渋谷店では「都会のリズムからひとやすみ」をキャッチコピーに、渋谷という忙しい街との対比を強調して落ち着いた雰囲気を伝えます。
企業の方からは「全店舗ぶん考えたいなと思いました」と感嘆の声が聴かれました。

スイーツ推しで興味を引く!

Dチームは、おしゃれで落ち着いている猿田彦珈琲は大人な雰囲気があるとして、少し背伸びしたい女子大生をターゲットに投稿を考えました。
まず、自分たちのSNSを利用してアンケート調査を実施。フードを注文したときドリンクも頼むという結果から、フードペアリングを提案する投稿を考案しました。スイーツをとりあげ、それにあったドリンクを3種類提案するというものです。
発表後は「アンケートはすごく参考になりました」「簡潔で分かりやすく素晴らしかった」と感想をいただいた、完成度の高い発表でした。

最後はBチームです。
ターゲットは普段からよくカフェに行くスイーツにこだわりのある女子大生。投稿案は診断テスト風を考えました。
「今日はどんな気分?」と問いかけ、「リラックス」「リフレッシュ」など選択肢を用意。気分に合う方をタップするとおすすめの商品が表示される仕組みです。
「心理テストなどの診断は女子大生たちに人気なことから取り入れました」と話し、若者にも楽しみながら商品に触れてもらえる、遊び心ある提案を考えました。
「こういった診断方法は何を参考にしたのですか」と聞かれ、学生は「服のブランドなどの投稿を見て思いつきました」と回答していました。

すべての発表が終わり、代表取締役の大塚朝之氏から総評をいただきました。
「とても有意義で、学びばかりでした。自信になる部分も、参考になる部分もどちらもあった刺激的な時間でした」と感嘆した面持ちで話されました。
今回のSNS案の優秀賞は猿田彦珈琲の公式アカウントで実際に投稿される予定です。

担当教員からのメッセージ

 4月末から始まった猿田彦珈琲株式会社との連携授業が幕を閉じようしています。
 連携授業開始前の打ち合わせで、「猿田彦珈琲のSNSを活性化させるための提案」が課題となってからは、私自身も学生と進めているプロジェクトの情報をインスタグラムから投稿するなど、閲覧数が伸びる投稿について考える機会が増えました(写真は人間社会学部のインスタグラム。左側の真ん中が篠﨑による投稿)。

 今回学生が提案したアイデアをもとに猿田彦珈琲の広報担当の方がアレンジしたものが、間もなく猿田彦珈琲の公式インスタグラムやXから投稿されるということで、とても楽しみです。閲覧数はもとより、見た方の反応がこれまでの投稿と違ってくるのかどうか、ぜひ猿田彦珈琲のご担当者に検証結果を伺いたいです。
 
 最終回となった今回は、「蜂蜜ラテ」の差し入れをいただきました。
 猿田彦珈琲の上田様によると、自家製蜂蜜オレンジソースと芳醇なエスプレッソにミルクを合わせ、風味豊かなドリンクに仕上げた、猿田彦珈琲ならではの一杯だそうです。エスプレッソには、ふくよかなボディ感とキャラメルのような甘さ、さらにアプリコットやマーマレードの果実味を思わせる余韻が特徴の「TOKYO ’til Infinity」を使用しているそうです(味わいは2025年6月29日時点のものとなります)。蜂蜜の独特のクセを感じず、ほどよい甘みのラテでした。ご馳走様でした。
 大塚社長、平岡様、田岡様、上田様、播田様、そしてフィールドワークでお世話になった渋谷道玄坂通店の皆様、大変お世話になりました。また連携授業ができることを楽しみにしております。ありがとうございました。
 

2025年7月31日

相手を思いやって「やさしい日本語」を使ってみよう!「日本語教育入門b」でJR東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別授業が行われました。 

6月24日(火)に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、JR東日本との「やさしい日本語」第2回特別コラボ授業が行われました。学生たちはマナーについてポスターや放送文案を作成し発表しました。また、ロールプレイングをとおして、相手を思いやって伝える姿勢について学びました。

音だけで伝えるのは難しい

前回に引き続き、我孫子乗務ユニットから車掌の皆さんが登壇されました。
平山秀人氏と伊藤暉氏に、車掌と取手駅で改札業務を兼務している山田直人氏が加わり、和気あいあいとテンポよく楽しい授業を行ってくださいました。

まずは前回の授業の振り返り。
電車の車内放送や改札で、外国人のお客さまに伝えるため、やさしい日本語を使う工夫を学んだ感想として学生からは「音(放送)だけで伝える難しさを感じた」「見た目で英語を使おうと判断しないこと」などが寄せられました。
伊藤氏は「人によって価値観が違うということに気付いてもらえた。今日は特にこのことを中心に進めていきます」と話し、授業が始まりました。

ピクトグラムを使って分かりやすく

さっそく、前回出された課題の発表から。
課題は「鉄道マナーを在留外国人にどう伝えるか?」ポスターと、車内放送文を考えるというものでした。
学生たちは5つの班に分かれ、約1か月の期間でスライドとポスターを作成し、それぞれの班が発表を行いました。

 最初の班は、荷物を前に抱えて乗るマナーについて。
ポスターはピクトグラムを使って分かりやすくしています。文も「混雑時」などの言葉は理解してもらえない可能性を考え、あえて省き「荷物は自分の前に!」と、シンプルに仕上げました。
平山氏からは「このまま車内に貼ってもいいくらいの完成度」と感嘆の声が。
伊藤氏も「外国人だけでなく日本人にも分かりやすいですね」と感心されました。

 2番目の班は、駅構内では右側通行のルールについて。
ポスターはこちらの班もピクトグラムを使った、一目で分かるデザインとし、英語でも注意を促します。放送文は「階段や廊下は右側を歩いて下さい」と一文で分かるものを目指しました。
山田氏は「ピクトグラムは外国人のお客さまに分かりやすい。参考にしたいと思います。」と話しました。

一目でマナーを伝えるには?

 3番目の班は、席に荷物を置いてしまうお客さま向けに注意を促すポスターを考案しました。
「かばんを座るところにおかないでください」と文章で示し、放送文では「席は一人ひとつです」と伝えます。
伊藤氏は「普通車でもグリーン車では空いている席をつい使ってしまう外国人のお客さまが多いので、ぜひ使いたいと思いました。」とコメントされました。

 4番目の班は、外国と日本で違うルールを一目で分かりやすく。
エスカレーターは左に立つ、走らないなどをイラストで表現しました。これらのマナーは実際に学生が「駅を利用している際に感じたことをもとに選んだ」と話しました。

 最後の班は、荷物のマナーについて。
マナー違反であるイラストを載せて、赤字で注意喚起しました。注意文には漢字を使わず、分かりやすく伝わることを意識しました。
平山氏も「漢字を使わないというのはとてもいい」と評価されました。

全部の発表が終わると、伊藤氏から総評をいただきました。
「すごいなと思ったのが、自分の経験が作品に反映されていること。私も秋葉原駅での改札業務がきっかけでやさしい日本語について考えるようになりました。今後も経験を大切にしながら社会に役立てていってほしい」と話されました。

相手に合わせてコミュニケーションを取ろう

続いて株式会社JR東日本サービスクリエーションの藤根美咲氏が登壇され、グリーン車での案内について話されました。
近年グリーン車は外国人も多く利用しており、やさしい日本語が必要な場面も多々あります。
そこで、学生たちはグリーン車で使われる案内をやさしい日本語に言い換えることができるか挑戦しました。

「お手持ちの特急券ではグリーン車はご利用いただけません」という文言を、ある班は「このチケットではこの電車に乗れません」と言い換えました。
藤根氏は「とても詳しくて分かりやすい。私たちが実際使っているものに近いです」とコメントされました。

グリーンアテンダントは直接お客さまと会話します。やさしい話し方のポイントは、分かりやすい説明や落ち着いた態度などです。
特に大事なのは、積極的な態度と相手に合わせた説明だといいます。
「外国人のお客さまは、熱心に自分に話されていることを重視します。思いやりをもってコミュニケーションを取れば、伝わりやすいですよ。」と話されました。

ロールプレイングで「やさしい日本語」にチャレンジ!

最後は「やさしい日本語ロールプレイング」。
平山氏たちが迷惑行為をしている乗客を演じ、それをやさしい日本語で注意してみるというものです。車掌用の手袋がプレゼントされ学生たちは歓声を上げました。帽子もお借りして車掌になりきります。

最初は車内で外国人のお客さまが大声で話しているシチュエーション。
学生が「車内では静かにしてください。」と話しかけても、「なんで?」と分からない様子。学生たちは試行錯誤しながら「周りの人が困っているので、静かに話してください」と言い直していました。
伊藤氏は「文化が違うとなぜ、静かにしないといけないのか分からない。理由も伝えることが大事ですね」と解説されました。

次の班は渋谷駅で乗り換えに迷っている外国人のお客さまを想定します。
どこに行きたいのか、乗り換えの改札はどこかなど伝えることが複雑で、学生たちは相談し合いながら頑張って伝えていました。
終了後、山田氏は「改札では複雑なことを聞かれることが多く非常に大変。翻訳アプリだけに頼らず、相手の様子を見ることも大事ですね」と解説されました。

平山氏は、最後に「やさしい日本語は伝えるためのひとつの手段です。」と話します。「皆さんが、授業で習っているとおり、やさしい日本語の使い方はとても上手。一方で、それだけでは難しいこともあります。やさしい日本語は選択肢のひとつとして、伝わる方法を工夫していってほしいと思います」と語り、和やかに授業は終了しました。

担当教員からのメッセージ

第1回に引き続き、第2回の連携授業も活気あふれる有意義な100分間となりました。

学生たちが発表した課題に対し、貴社の皆様から一つひとつ丁寧にフィードバックを賜り、誠にありがとうございました。実務の最前線でご活躍されている皆様からのご指導は、学生にとって大変貴重な学びの機会となり、教員一同、心より感謝しております。

特に、実際の現場を想定した臨場感あふれるロールプレイングでは、学生たちが協働しながら真剣に課題へ取り組む姿に、この1ヶ月間での著しい成長を感じることができました。

授業後、学生からは次のような感想が寄せられています。 「『やさしい日本語』で対応する際、相手を尊重しつつ自分の要望を伝えること、そして相手の『なぜ?』『どうやって?』という疑問を的確に汲み取ることの難しさと重要性を学びました。」 「貴社スタッフの方々の模範ロールプレイングを拝見し、相手の文化背景を理解した上で疑問に答えることが、多文化共生社会においていかに大切であるかを実感しました。」

この2回の連携授業を経て、学生たちの学ぶ姿勢にも顕著な変化が見られました。一人ひとりが深く思考して主体的に発言するようになり、仲間と協働してより良い答えを導き出す場面が増えました。実践的な体験型学習がもたらす教育効果の大きさを、改めて実感する貴重な機会となりました。

末筆ではございますが、本連携授業の実施にあたり多大なるご尽力を賜りました東日本旅客鉄道株式会社ならびにJR東日本サービスクリエーション 東京グリーンアテンダントセンターの皆様に、心より御礼申し上げます。

2025年6月30日

「やさしい日本語」を使って伝えよう。「日本語教育入門b」の授業で東日本旅客鉄道株式会社の特別講義が行われました。 

5月27日に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別コラボ授業が行われました。外国人にも分かってもらえる「やさしい日本語」について、楽しいトークで盛り上げながら実践的に教えてくださいました。

多くのひとが利用するJR東日本

最初に登壇されたのは平山秀人氏。2021年にJR東日本に入社されました。次に挨拶された伊藤暉氏は2015年入社です。
お二人とも、電車の車内放送やドアの開閉などを主に担当する車掌です。
JR東日本は、北は青森県から南は静岡県までの広い範囲の路線を担う、まさに日本の大動脈です。
昨今は、電車の輸送業務のほかIT部門、生活サービスの仕事も行っており、「街づくりや介護の仕事を行う部門もあるんですよ。」と平山氏が明るく説明されました。
お二人が所属している我孫子乗務ユニットは、常磐快速線の品川駅から茨城県の取手駅までなどが乗務範囲です。
「都会の高層ビルから、だんだんと田園風景が広がり癒されています。」と冗談交じりで話されました。

「まずはアイスブレイクをしましょう。」と伊藤氏が取り出したのはカードゲーム。学生たちは班に分かれ、先生方も参加してのゲームが始まりました。
出されたテーマに沿って、配られたカードの数字を表現するものを考えます。上手くいって喜んだり、外れて笑ったりと学生たちも楽しそうに参加していました。
ひとしきり盛り上がったところで、伊藤氏が「皆さん、どうでしたか。」と語り掛けました。
「同じ日本人でも世代や性別などによって感覚は違います。文化や言語が違う在留外国人のお客さまや海外からのお客さまに情報を伝えるのはさらに難しい。」と話し、今回のテーマである「やさしい日本語」について考える講義が始まりました。

どう言ったら伝わる?

ここからは、実際に電車で使われるアナウンスを使ってのグループワークです。
最初に出たお題は「列車非常停止ボタンが押されているため安全確認をしております。運転再開までお待ちください。これを皆さんでやさしい日本語の放送文に変えてみましょう。」と平山氏。
学生たちは「それいいね。」など相談しつつ文を作り上げました。
例えば「電車を止めるためのボタンが押されました。安全か見ています。動くまでお待ちください。」という案です。
平山氏は「すごく分かりやすくて、良いですね。」と感心した様子で拍手を送りました。

我孫子乗務ユニットでは、「SOSボタンが鳴っているため、チェックしています。電車が動くまで待ってください。」と伝えているとのこと。「SOS」や「チェック」などのカタカナ言葉を使うことで伝わりやすくなると話します。
ただ、「やさしい日本語には正解がありません。」と平山氏。
「皆さんが考えた文の方が伝わりやすいということもあると思います。大事なのは相手が本当に理解しているかです。相手を思いやり、どうしたら伝わるか考えることが大切です。」と語り、「私たちも大変勉強になりました。皆さんの案も今後取り入れていきます。」と話されました。

やさしい日本語を必要としている人はいる!

伊藤氏は我孫子ユニットの所属になる前は、秋葉原駅の改札で勤務していました。観光地として名高い土地柄のため、海外からのお客さまも多かったと言います。
特にアジアからの観光客は、英語も通じないことが多く苦労したそうです。
そんなとき、テレビでやさしい日本語を使ったニュース番組を偶然発見し「これは使えるのではと思った。」と話しました。
我孫子常務ユニットに異動になってから早速、上司などに提案してみるも「前例がない。」と難色を示されてしまいます。

「しかし、やさしい日本語を必要としている人がいるという確信がありました。」と伊藤氏。
社員たちで研修をし、車内放送にやさしい日本語を取り入れ、お客さまへポスターや車内アナウンスでお知らせし、理解を求めたところ、SNSなどで好意的に拡散され知れ渡ったと言います。
「実際に伝わるのか、さまざまな国から来ている留学生たちに協力してもらい意見交換を行い、毎月車掌たちで研修をしています」と話しました。

鉄道マナーを伝えるには?

次に登壇したのは、JR東日本サービスクリエーションの山田晃子氏。普通列車グリーン車のアテンダントです。
グリーン車では車内販売や乗り換え案内、チケットの確認など直接乗客と話す場面が多々あります。
「グリーン車には海外からのお客さまも多く、国籍や年齢もさまざまです。」と山田氏。
「今までは細かく決まった応対マニュアルに沿って対応していましたが、やさしい日本語を柔軟に使うことが増えています。」と話します。
やさしい日本語のガイドラインも作成し、JR東日本グループ全体として活動が広がっていると語って下さいました。

最後に平山氏が再度登壇。次回への課題を発表されました。
課題は「鉄道マナーを海外からのお客さまや在留外国人にどのように伝えるか?」。ポスター案と、車内放送文を考えるというものです。
平山氏は「駅を利用するとき、電車に乗るとき、さまざまなマナーがあります。その中からいくつか選び、やさしい日本語を用いてどのように伝えるか考えて下さい。皆さんの発表を楽しみにしています。」と期待を寄せました。

学生たちはグループワークを行い、1ヶ月後にプレゼンテーションに臨みます。

担当教員からのメッセージ

我孫子乗務ユニットの方々のユニークな自己紹介、そして大いに盛り上がったアイスブレイクのおかげで、学生たちの表情も緩み、テンポよく授業が進められました。いつも以上に活性化したグループワークでは、学生の視点から多様な意見が出されました。
東京グリーンアテンダントセンターの方からのグリーン車での取り組みのお話しには、大きくうなずきながらメモを取る学生の姿が見られました。
受講生からは、「日本人も外国人もみんなが安心して電車を利用するためには、誰もが理解できるように情報発信することが大切だとわかった」「在留外国人の方や外国人観光客の方が増加している今、もっとこの取り組みが広がることで、誰もが平等に情報を得られるようになることが望ましい」といった感想が届きました。
次回の発表会に向けて、各グループが協働してアイディアを練っています。
貴重な学びの場を与えてくださったみなさまに、心から感謝申し上げます。

2025年6月27日

自分らしく生きるヒントとは?「国際理解とキャリア形成」でフィジーの文化を学ぶ特別授業が行われました。

「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月3日に株式会社アールイーカンパニーとの特別コラボ講義が行われました。「フィジー留学カラーズ」の運営を手掛ける皆さんが南の島を舞台にしたディズニー映画をベースに、南太平洋の文化を解説。和気あいあいとしたムードのなか、異文化を知る機会となりました。

学生のうちに海外に行ってみよう

教室にはアールイーカンパニーの多田祐樹氏が登壇し、ビデオ通話もつないで授業が始まりました。
植林氏は大阪から、長瀬氏はフィジーからの参加です。
「私だけが話していてもつまらないので、皆さんにも参加してもらいながら話していきたいと思います」と多田氏。
リアルタイムの掲示版を使って、学生たちも随時感想を伝えながら進めていきます。

多田氏は貿易業を経て、2018年よりフィジー共和国にて、主に日本人を対象とした英語学校「カラーズ」を創業。現地で日本語学校も開講し、フィジーの人が日本で働ける機会を増やすプロジェクトも行っています。
多田氏はまず画面に「17%」という数字を示し「なんの数字でしょうか?」と問いかけました。これは日本人のパスポート保有率です。
ただし、18~22歳の大学生の年齢に限ると40%と高い数字です。
多田氏は「しかし、65歳までの労働人口で見る割合だと20%強と減ってしまう」と話し、学生のうちに海外含めさまざまなところに行ってほしいと伝えました。

フィジーの歴史や文化とは?

学生たちは事前準備として、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」を視聴してきています。
この映画の主人公モアナが南の島から船に乗り冒険をするという物語。この映画をベースに「南太平洋に息づく文化と”自分らしく生きる”ヒント」と題しての講義が始まりました。
多田氏はまず南太平洋の島々にすむ民族の歴史から説明。
約6000年前、オーストロネシア語族が大陸から海を渡ります。
優れた航海術で広大な領域に分布し、南太平洋の島々であるフィジーやサモア、トンガなどにも到達しました。

次に植林氏が3人の男性の写真を見せました。南太平洋には3種の族があり、外見も違います。
それがポリネシアン、メラネシアン、ミクロネシアンの3つ。
ポリネシアンはアジア人の肌色に近かったり、メラネシアンは髪の毛がアフロのようにきついカールがかかっていたり。
フィジーはメラネシアンとポリネシアンが混在する島です。ラグビーが強いことで有名ですが、それは遠い昔、厳しい航海を生き抜いた、強い体を持った先祖の血を受け継いでいるからとも言われています。

多田氏は「KAVA(カヴァ)」という伝統的な飲み物を紹介。
儀式や祝い事に欠かせない飲み物です。現在は観光客も飲むことが出来るものですが「私は大好きです」と多田氏。
「カヴァは歓迎してくれている証。海外の人に自分の国の文化を受け入れてもらうのは嬉しいですよね。私は現地で出されたものは全部食べるのがポリシー。皆さんもフィジーに行くことがあったら是非試してみてください」と語りました。

やりたいことを宣言しよう!

続いて長瀬氏が、映画のストーリーにベースに「主人公たちはどんな失敗や不安を抱えていたか考えてみましょう」と語り掛けました。
「皆さんも過去の失敗や不安を振り返ってみましょう。うまくいかなかったこと、恥ずかしかったことなど小さいことでもいいので教えてください」と長瀬氏が言うと、学生たちは掲示板に次々と書き込み始めます。「受験のときもっと勉強を頑張ればよかった」「留学が不安」などの意見が書き込まれました。

意見が集まったところで、長瀬氏は映画のある台詞を紹介。
それは「先のことは分からない。でもどんな自分になるかは決められる」というもの。
長瀬氏は「みなさんも、これからどんなことがやりたいか、どんな自分になりたいか、宣言してみましょう」と促します。学生たちはグループで話し合いながら宣言を書き込みました。
「フィリピンで短期留学をしたので今度は長期で行ってみたい」「去年留学をしなかったけれど今年こそ行く」など、たくさんの決意が集まりました。

衝動に従って人生が開かれる

最後に、多田氏から「偶発性と衝動性が人生を切り開く」という話がありました。
アールイーカンパニーも最初からやろうと思っていたわけではなく、たまたまだといいます。
「しかしたまたまのことを努力すると意味のあることに変わってくる」と話します。
「好きなことで生きていくことはすごく素晴らしい。しかしとても大変。好きなことをすることと、好き勝手することは違います。一人ではできません」と話し、「今やりたいことがなくとも大丈夫です。好きなことを一生懸命にやって行ってください」と話しました。
長瀬氏も「私も海外に行くことなんてないと思っていましたが、いまフィジーに住んで仕事している。次々にチャレンジしていくことで人生が開いていきます」と語られました。

学生たちは遠い島の異文化を知ると同時に、自身の人生を考える貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

国際理解とキャリア形成の授業のゲストとして、今年度初めてお迎えしたのが、カラーズ様です。
そして、ディズニー映画の「モアナと海の伝説」と結び付けて学ぼうという、全く新しい試みでした。
当日は、多田様、長瀬様、植林様のお三方が、教室と大阪、そして実際にフィジーからオンラインで
参加して下さいました。
メラネシアンおよびポリネシアン文化の歴史や、映画に登場するシーンのことなど、
フィジーという国の魅力を沢山伝えていただきました。
近い将来、フィジーへの留学に出かけてくれる学生さんも生まれることと思います。
とても楽しいプログラムを構築いただきました多田様、長瀬様、植林様に心から感謝申し上げます。

2025年6月9日

ファッションと花で母の日と父の日をお祝いする「Happy Family Day」が実践女子大学で開催されました!

2025年5月24日(土)・25日(日)の2日間、実践女子大学渋谷キャンパスにて、母の日と父の日をお祝いする特別なイベント「Happy Family Day」が開催されました。本イベントは、BEAMSが低所得のひとり親家庭を支援するNPO法人グッドネーバーズ・ジャパン (GNJP) と連携し、フードバンク「グッドごはん」の利用者である中高生の子どもを持つひとり親家庭を対象に企画された衣類の無償提供会です。参加者の皆さんは、ファッションや花を通して喜びと感謝を分かち合うあたたかなひと時を過ごしました。

大学施設が期間限定のセレクトショップに!プロによるお買い物体験

イベント期間中、実践女子大学渋谷キャンパス内にある「JISSEN PLAY BASE」は、特別なセレクトショップへと大変身!この企画には大手セレクトショップのBEAMS、NOLLEY’S(ノーリーズ)、ABAHOUSE(アバハウス)のアパレル3社が参加。各社が所有するお洋服がラックに並び、各社のスタッフがプロの目線でコーディネート提案を行います。ブースを担当するのは、この日のために各社から集まったスペシャルメンバーです。親子の参加者にここでしか味わえない特別な買い物体験を提供しました。

イベントは、中高生のお子さんとその親に服をプレゼントするという内容。シャツやズボンだけではなくバッグや靴にアクセサリーなど、小物も充実したラインナップが用意されました。参加者それぞれがスタッフと相談しながらコーディネートを考えます。なかには親子でお揃いの服装を組む方も。「今日選んだお揃いの服で出かけたい」と明るく楽しい声のほか、「修学旅行に着ていく服がもらえた」と感想があがりました。

イベントでは、ファッションのほかに花束のプレゼントも用意されました。これは母の日と父の日をお祝いするもので、フラワーショップであるALL GOOD FLOWERS様がこの日のために仕入れを行った花束です。かごにいっぱい入った花束から一つ選び取り、服とともに思い出をお持ち帰りいただきました。参加者のみなさんからは、イベント内容に関するあたたかで明るい感想のほか、普段立ち入る機会がなかなかない大学のキャンパスに新鮮な印象を持った感想も寄せられました。

ファッションイベントを社会貢献の場に

本イベントは、社会貢献の一環として位置づけられる取り組みでもありました。服をプレゼントするという企画は、ひとり親家庭の支援を目的としており、ファッションコーディネートの体験や大学のイベントスペースに触れる機会など、中高生にとっては日常では得がたい貴重な体験となりました。

また、イベントの運営には本学の学生ボランティアが参加。参加企業の方々とコミュニケーションを取りながら会場設営に関わり、当日はブースにて服の袋詰めや花束の受け渡しを担当しました。

さらに、本学は会場提供という形でも本イベントに協力し、多方面からの支援が結集して実現された取り組みとなりました。

社会連携の展開

普段のJISSEN PLAY BASE

実践女子大学では今後も、企業やNPO法人との連携を積極的に進め、学生が座学にとどまらず、リアルな体験を通して成長できる機会を創出していきます。あわせて、地域社会への貢献にも力を入れ、「Happy Family Day」のように、多くの方々と喜びを分かち合える場をこれからも提供してまいります。

2025年6月6日

「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲とのコラボがスタートしました。

企業から直接課題が出され課題解決に取り組む、学生たちに人気の社会連携授業。4月30日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)の授業で、猿田彦珈琲との特別コラボが始まりました。代表取締役の大塚朝之氏からコーヒー店を立ち上げた思いなどお話を伺いました。授業の最後には学生たちに課題が出され、後日グループでプレゼンテーションに挑みます。

じぶんごとに捉えて取り組もう

授業の冒頭には、篠﨑先生からこの授業にかける熱い思いが。猿田彦珈琲を知ろうとフィールドワークをするうち、どんどん好きになり広島の店舗まで回るほどのファンになったと告白されました。
自分の体験を踏まえた上で、学生たちに「今回の課題をぜひ『じぶんごと』として取り組んでください」と強調。ただの課題と思わず、自分に引きつけて考えることの大切さを伝えました。

そして猿田彦珈琲創設者の大塚氏が登壇。学生たちの手元にはコーヒーが配られ、リラックスした雰囲気で講義は始まります。
大塚氏は「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」をコンセプトに猿田彦珈琲を創設した経緯について話し始めました。

良いモノを作るためサスティナビリティを考える

猿田彦珈琲はスペシャルティコーヒーの専門店。2011年6月に恵比寿でオープンしたのが始まりです。
スペシャルティコーヒーとは、風味豊かで個性的な味わいのあるコーヒーのこと。検査で高得点を付けたコーヒーだけが名乗れるもので、全体の5%ほどしかないと言われています。
そしてもうひとつの基準はトレーサビリティがしっかりしているものであること。トレーサビリティとは「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」が明確なことです。コーヒー豆の栽培管理から収穫、選別などまで徹底して品質を管理された厳選されたものだけがスペシャルティコーヒーを名乗れるのです。
大塚氏は「サスティナビリティがあることも大事。生産者に安定してお金が入れば設備を整えより良い環境でコーヒー豆を生産できます。現在気候変動によりどんどんコーヒー農園がなくなっている。」と話しました。

大塚氏は学生たちに、配られたホットコーヒーを飲んでみるよう勧めました。
そして「苦いですか?すっぱいですか?」と問いかけます。
苦みよりもほのかな酸味を感じる学生が多数。
大塚氏は頷いて「このコーヒーはベリーのような酸味がありますよね。いいコーヒーであればあるほどコーヒー以外の様々フレーバーを感じるんです」と話しました。

コーヒーに救われた青年時代

大塚氏は若いころ俳優として活動されていました。毎日のようにオーディションに行くも、落とされたり受かっても次の仕事をすぐに探したりせねばならない日々。
「お金もなく本当につらかった」と言います。
ついにはふさぎ込み、人とのコミュニケーションをうまく取れなくなってしまいました。

コーヒーに出会ったのはそのころ。
たまたま寄った有名コーヒーチェーン店で、店員から気さくに話しかけられ、居心地よい空間にとても安心しリラックスできたと話します。
その後、俳優の道を諦める決心を固めた頃に友人からコーヒー豆店で働かないかと声をかけられ、コーヒーに魅了されていきます。美味しいコーヒーの淹れ方を実演販売することで売上を格段に伸ばし、自信も深めていきました。
コーヒー店に救われた経験から、自分でも美味しいコーヒーを提供したいという思いを実現するため独立し、猿田彦珈琲を立ち上げたのです。

やりたいことを言語化し周囲に伝えよう

恵比寿店をオープンしたあと、2014年には清涼飲料メーカーから声がかかり缶コーヒーの監修を手掛けます。商品は大ヒットし、現在もペットボトルコーヒーや美術展とのコラボなど幅広く事業を展開しています。
店員からはバリスタ大会のチャンピオンを輩出するなど、コーヒー専門店としてゆるぎない信頼を得るようになりました。

缶コーヒーを手掛けた際、業界からは批判もあったといいます。大塚氏も迷いがあったと告白されました。
しかし、手掛けたことで店は有名になり、融資を受けることにもつながります。
大塚氏は「やりたいことへの純粋さとお金のバランスを両立させることが大事」と話し、一生懸命やることの大切さと、それを周囲に伝えるために言語化することを伝えました。「自分が究極なにをやりたいのか、それを伝えて利他的に行動すれば周りは応援してくれます」と話しました。

猿田彦珈琲のファンになってもらうSNSの投稿とは?

授業の最後にいよいよ課題の発表です。課題は「猿田彦珈琲のSNSについて考えよう」。ターゲットは20代。
猿田彦珈琲との距離を縮め、長期的にファンになってもらえる投稿を提案します。良い発表案は実際に公式アカウントで採用される可能性も。
学生たちはそれぞれInstagramとXを担当する班に分かれ、グループワークを重ねて1か月後の発表に臨みます。

担当教員よりメッセージ

猿田彦珈琲“推し活”中の篠﨑です。
猿田彦珈琲の存在は以前から知っていましたが、私の生活圏に店舗がなかったこともあり、実際にお店に足を運んだのは、この連携授業を担当することになってからでした。

もともと珈琲に強いこだわりがあり、「美味しい珈琲を提供するカフェ」という印象を持っていたため、店舗でいただく珈琲の満足度は非常に高く、今では自宅で飲む珈琲も猿田彦珈琲社のものに変わりました。

私自身の例のように、「良いもの」が必ずしも選ばれるとは限りませんが、何かのきっかけで状況が一変することがあります。SNSは、その“きっかけ”になり得るのでしょうか。

当該授業の履修学生は、6チームに分かれてInstagramあるいはXを用いた投稿案の検討に取り組んでいます。現在は、猿田彦珈琲社がこれまでに行ってきたInstagramやXでの投稿内容やその手法について考察し、特徴を把握する段階まで進んでいます。今後は、猿田彦珈琲 道玄坂店でのフィールドワークを経て、中間発表に臨む予定です。女子大生ならではの視点と分析力に基づく提案が、大きなうねりとなって広がっていくことを、私自身とても楽しみにしています。

連携授業の初回には、大塚社長をはじめ、播田様(取締役 フード&ビバレッジ クリエイティブディレクター)、田岡様(マーケティングディレクター)、平岡様(広報)、上田様(マーケティンググループ)をお迎えしました。
 ご多忙の中、本学までお越しくださいまして、誠にありがとうございました。
 また、冷たいカフェラテと温かいエチオピアコーヒーをご提供いただき、重ねて御礼申し上げます。

2025年4月8日

京都市と「Jミッション」を実施しました!

 本学では、低学年向けキャリア支援を強化すべく、2019年度より企業や自治体との産学連携プログラム「Jミッション」を実施しています。本取り組みは、大学1年生・2年生を対象に「良質な経験・学修の場」を提供することで、学びに対する意欲や自己肯定感の向上を目的としております。学生だけで構成されたチームで、企業や自治体からのミッション(課題)に取り組み、最終的には企業担当者の前で発表を行います。今回は、2019年に本学との連携協定を締結した京都市様のご協力のもと、首都圏で感じられる「京都らしさ」を発掘し、TikTokでPR動画の作成を行いました。

実践女子大学×京都市(2025年2月~3月実施)

 初日のキックオフでは、京都市様から京都市の紹介や若者の観光客が少ないといった課題について説明していただきました。また、都内には京都の伝統工芸品や和菓子を扱うお店、京都出身の方がオーナーを務めるお店など京都にゆかりのあるサポーターショップが100件以上あるとの説明がありました。その後、各チームは取材を担当するサポーターショップを決めるドラフト会議を行いました。
 2日目は、企業や自治体のブランディング動画やプロモーション動画の制作を手掛ける、シェイクトーキョー株式会社の代表取締役汐田様より、動画作成に関する講義をしていただきました。TikTokの特徴や検索アルゴリズムのお話など、戦略的に視聴数を稼ぐためのコツをプロの視点で解説いただきました。
 2日目終了以降、各チームサポートショップへのアポ取り、現地取材、素材撮影を行い、中間発表に向けて動画作成を行いました。
 3日目の中間発表では、各チーム作成した動画を京都市様、汐田様に向けてプレゼンしました。汐田様からは、「ここから1週間でクリエイティブジャンプを起こしそうなチームが多く、完成形が楽しみ」というご講評をいただきました。

 最終発表では、中間発表でのフィードバックを参考に各チームがブラッシュアップした動画のプレゼンを行いました。生菓子実演が見学できる和菓子店や金継ぎ・茶道が体験できるお店、都内の神社の紹介など、どのチームも京都が存分に感じられる動画に仕上がっていました。映像はもちろん、テキストの入れ方や、音声の入れ方など細部にまでこだわったクオリティの高い動画ばかりでした。
 審査は難航しましたが、京都市様から最優秀賞の発表があり、チーム「うめとしゃけ」が見事最優秀賞に輝きました。
 このチームは、京都市出身のオーナーが経営する鉄板居酒屋を動画内で紹介し、食事ではなくオーナーの人柄に焦点をあてた動画が高く評価されました。

 都内で開催された「高輪桜まつり2025」の京都の伝統工芸ワークショップ会場内で学生が作成した動画が放映されました! また、最優秀チームは京都市公式TikTokアカウントに動画が投稿される予定です。

【参加学生の声】

・ミッションを通して、チームで協力しながら動画作成やパワーポイントの制作、訪問などを行い、チームワークの大切さを実感しました。また、発表に向けて分かりやすく伝える工夫をしたことでプレゼンテーション力が向上し、訪問や準備の過程で予想外の修正点が出た際には、チームで話し合いながら柔軟に対応することで、課題解決力も身についたと感じています。

・このミッションを通じて大きく自己成長することが出来たと感じました。まず、コンセプトを作り上げ、全体的なテーマを具体的なコンテンツに落とし込む力などの企画力から、分析して伝える力など様々な力をつけ成長に繋げられました。

・アポ取りや動画制作という今までやったことがないことに挑戦させていただいて、動画1本を作るのにたくさんの時間と労力をかけていることが改めて理解できました。ひとつのことに対して掘り下げる力というのは全体を通して身についたと思います。