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2025年7月18日

巡礼を通し本当の「ホスピタリティ」を学ぶ。「国際理解とキャリア形成」の授業でサンティアゴ巡礼を通じた国際交流の特別講演が行われました。

共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、5月20日に元株式会社資生堂の社員だった片山琢美氏、杉山祐一氏をお呼びしての特別講演が行われました。サンティアゴ巡礼の経験を通して感じたことを、写真を交え語られた二人。学生たちは国際的なつながりやホスピタリティについて考える貴重な機会となりました。

1ヶ月間歩いて自分と向き合う

最初に登壇したのは片山氏。

1975年に資生堂に入社し41年間勤め上げました。物流に関する仕事に携わり、海外での業務経験も豊富。

退職後サンティアゴ巡礼の旅に魅せられて、現在までに3回踏破しています。サンティアゴ巡礼とは、スペイン北西部にあるサンティアゴ大聖堂までの道を、ヨーロッパ各地から自分の足で歩く旅のこと。パリから出発した場合、サンティアゴまでの道のりは1500キロで、2か月間歩き続ける過酷な旅となります。今日では、あらゆる宗教を乗り越えて、世界で180ヵ国以上(*1)の人々がサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して歩いており、2024年には50万人が歩いたと言います。 (*1)サンティアゴ巡礼事務所2024 年度統計情報)

片山氏もキリスト教徒というわけではなく、「歩くのと写真を撮るのが好き」と言います。特に高校生のときに見たゴッホの描いたヨーロッパの田園風景に強い憧れを抱いていました。

フランスの麦畑を自転車で走ってみたいと、少年の頃からの夢を実現するために、自転車旅をしたのが巡礼の始まりだと語りました。

一期一会でみんながファミリー

片山氏は巡礼路で出会った人々との写真を見せつつ、たくさんのエピソードを語ってくださいました。

①遠いスペインの地で偶然出会った日本人。彼の姉は、僕と同じ広島の高校だった。世界は広いようで狭いと感じた。
②自転車で喘ぎながら坂を上っていた時、急に背中が浮いた。足を引きずりながら僕の前を歩いていたオランダの青年が背中をぐぃっと押してくれていた。そのやさしさに涙が溢れた。
➂大切なエピソードとして「巡礼路ではみんなファミリー」という言葉を紹介。巡礼宿で誤って骨折したカナダの女性を、オーストラリアの女性が気遣って病院へのタクシーを手配した時、僕に話してくれた言葉。それは、巡礼者同士の助け合い、共同性の精神だった。
④朝ごはん食べませんかと、オーストラリアの青年が声を掛けてくれた。あっという間に8ヵ国の人々が車座になった。
⑤ブルゴスで出会った自転車旅のスソさん。「スペインの陽気な青年でゴールのサンティアゴまでお供してくれ、とても助かりました。彼とは、今でも交流があります。」

「巡礼路を歩く人々は、ほとんどがもう一生会えない人たち。まさに一期一会です」と片山氏。

「出会いは一度限りだからこそ、いま自分に出来ることを尽くし、心を込めてもてなすというホスピタリティを実感した」と感慨深く語りました。 

新しい自分に生まれ変わる旅

後半は杉山氏にバトンタッチ。
杉山氏は片山氏の資生堂時代の先輩ですが「仕事での絡みは少なかった」と話します。「サンティアゴ巡礼を通して盟友になりました」と語る杉山氏は、2012年から2018年にかけて計6回巡礼路を踏破。距離はなんとのべ3,000kmになると言います。
杉山氏は絵を描くのが好きで巡礼に魅せられたと語り、コロナ禍にはこれまで書き溜めた巡礼路の風景のスケッチをまとめた本も出版されました。

杉山氏もさまざまな経験を語り、サンティアゴ巡礼でかけがえのない体験をしたことを学生たちに伝えられました。
一番ドラマチックなのはなんといっても到達の瞬間だと語ります。サンティアゴ大聖堂のオブラドイロ広場では、たくさんの巡礼者がハグをしたり石畳に大の字になったりと全身で喜びを表します。
「巡礼者たちの多くは、新しい自分に変わりたいと思って巡礼の旅を始めます」と杉山氏。まだ見ぬ自分と出会うことができるのか、迷いや不安のなか歩き続けるのです。
そして到達のとき、長かった道のりを思い返し、静かな意志のある表情に変わっていくと言います。「それぞれが新たな目標を決め、これから頑張ろう、と思うようになるんです」と、自分自身を乗り越える旅であることを語りました。

ホスピタリティにより生まれる利他の心

そしてサンティアゴ巡礼で欠かせないのが、「ホスピタリティ」です。杉山氏は「ホスピタリティとサービスの違いはなんだか分かりますか?」と学生たちに問いかけました。サービスはマニュアルがあり、画一的なもの。
対してホスピタリティは一対一の関係性で成り立つものだと語ります。「お世話をした人、された人どちらも満足してこそホスピタリティ。行われる手助けはそれぞれオリジナリティがあり、相手の期待を上回るものです」と話しました。

「片山さんも言っていましたが、巡礼者はお互い助け合うゆるやかな共同性の中で過ごします。皆さんも例えば文化祭などの企画で、大学外の人たちと共同作業を行うこともあるでしょう。違うコミュニティの人たちが集まり、お互いの立場を尊重しながら同じ目的に向かっていく連帯感からホスピタリティは生まれます」と杉山氏。
このホスピタリティと、歩くことで自身と向き合う内省の時間が化学反応を起こし、人の役に立ちたいという「利他の心」が生まれると話しました。

何度も巡礼をする魅力とは?

講演の後は質疑応答の時間。学生が次々に手を挙げました。
「大変な旅だと思いますが不安はなかったですか」という質問に、杉山氏は「不安はあります。言葉が特に。言葉はスペイン語の他に世界各国の人が来るので英語力も必要ですね」と回答。
片山氏は「行くときは毎回不安です。でも終わると達成感に包まれるんです」と答えました。

「巡礼について初めて知りましたが自分もやってみたいと思いました」という学生も。
「巡礼を終えて心境の変化はありましたか」という質問に、杉山氏は「あるがまま、ということを実感できるようになりました」と話します。
片山氏は「前向きになり、いろいろなことにチャレンジできるようになりました。皆さんも、これだと思ったことは積極的にやってほしいと思います」と語りました。

めったにない体験を伺い、学生たちにも刺激になった講演となりました。

担当教員からのメッセージ

私が資生堂勤務時代にお世話になった片山さんと杉山さんをお迎えしてのスペイン特別セッションが今年も行われました。今年は、前半のセルヒオさんのご講演を含めて2回シリーズとなりました。この授業のタイトルでもある「国際理解」の本質につながる様々な経験をされている片山さんや杉山さんのお話しから、学生は貴重な時間を過ごさせていただいたと感じています。
サンティアゴ巡礼という特別な経験の中からお二人がお話しされた「人と人との出会いの大切さ」まさに「一期一会」の大切さを改めてそして深く教えていただきました。
片山さんは、この講座の後、再びスペインに出かけられました。
片山さん、杉山さん、そしてセルヒオさんに、厚く御礼申し上げます。

2025年7月18日

金融リテラシーを高めてよい暮らしを実現しよう!「家庭経営学」の授業でJ-FLECによるお金についての特別講義が行われました。 

生活文化学科「家庭経営学」(担当:生活科学部生活文化学科 高橋桂子教授)の授業で6月9日に金融経済教育推進機構(J-FLEC)による特別講義が行われました。「社会人として知っておきたいお金の話」と題し金融リテラシーを高める大切さと、トラブルに巻き込まれないための心構えなどを詳しく教えていただきました。

お金の知識を身に付けるとどんな良いことがある?

登壇されたのは種村隆行氏。銀行に約30年勤め、保険代理店などを経て、現在は民間企業の社外監査を担っています。
種村氏はJ-FLECの認定アドバイザー。J-FLECは、幅広い年齢層に金融の知識を高めてもらうために政府、日銀、全国銀行協会などが出資し2024年に設立された認可法人です。
「日本はアメリカに比べ金融教育が遅れていると言われています。皆さんも今回を機会に金融リテラシーを高めていってほしいと思います」とお話しされたあと、

「そもそも金融リテラシーとはなんでしょう」という問いかけから講義は始まりました。
種村氏は「お金に関する知識と判断力のこと」といいます。日々の生活でのお金に関する悩みから、将来のこと、資産形成に至るまで幅広くお金に関わる知識のことで、
「リテラシーがあれば、家計の管理ができ、計画を立ててお金を準備できるので将来やりたいことができるようになる」と種村氏。
そのほか詐欺などのトラブルに遭うことも減り、突然の災害などに備えられる利点も。「つまり経済的に自立して、よい暮らしを実現できるのです」
そして「税制は毎年変わる。金融リテラシーは一度勉強して終わりではなく、常に勉強を続けることが大事」と話されました。

人生のプラン、考えてる?

また、種村氏は「生活設計」の大切さを伝えます。
生活設計とは将来どんな人生を送りたいかの構想を描くこと。
何歳まで働くか、実現したいことは何か、なにがほしいか……。「まだ学生ですべてを考えるのは難しいかもしれませんが、頭の片隅に置いておくといい」とのこと。
なぜかと言えば、ライフイベントにはお金がかかるからです。
例えば結婚する場合には、式や新婚旅行で約300~500万円ほどの支出があるようです。また郊外の一戸建ての場合、家を買おうとすれば2,000-5,000万円かかります。これは都内のマンションであれば1億円以上かかることもあるようです。
「自分の実現したいライフイベントにはいくらかかるのかイメージすること。これらを考えて生涯年収、支出のイメージをつかむことが大事です」と話されていました。

「収入と支出のバランスを考え、家計を管理することが大事」とのこと。
大学生の支出には、通信費、洋服代、家賃、食費、友達と遊ぶお金など支出はさまざまです。
「家計の見直しのポイントは、必ず使うお金と、ほしいものややりたいことに使うお金に分けること。優先順位をつけ支出を減らす工夫をしましょう」とアドバイスされました。

ローンを借りるときは慎重に

講義のメインテーマは「借りる」でした。まずローンについてのクイズです。
海外旅行のため30万円を金利18%で借りた場合、毎月5,000円ずつ返済すると返済額や期間はどれくらいかかるかというもので、毎月定額返済のリボルビング払いの問題になります。
答えは返済し終わるまでに13年かかり、2倍以上、約77万円になるそうです。「みなさんのイメージしていた額とは違うと思います」
「お金の貸し借りには利子や金利がかかる。借りたら返さなくてはいけない。車や家など大きな買い物のときは利用するのもいいですが、安易にローンは使わない方がいいと思います」と話されました。

学生のうちに気を付けておきたいものにはクレジットカードの支払い方法もあります。
一括払い、リボ払いや分割払いなどさまざまありますが、特にリボ払いは金利が高く返済総額が増えてしまいます。
「必ず支払い方法を確認すること。私も以前知らずにリボ払い設定になってしまっていたことがありました」と注意を促されていました。

お金のトラブルに巻き込まれないために

最後に、お金によるトラブルについて説明されました。
借金を返せずにさらに借りてしまう多重債務や、違法な金利で貸し付けをしてくるヤミ金融、マルチ商法や詐欺被害。
種村氏は、「ローリスクハイリターンのおいしい話はありません」ときっぱり。「今だけ、あなただけに」と向こうから近づかれても怪しいと思ったらはっきり断ること、テレビ、SNSなどで広告出ていても安易に信用しないことなどを繰り返し注意喚起されました。
「相手はプロです。プロの詐欺にかかったら銀行の人でも騙される。接触しないことが大事」ですが、万が一、トラブルに巻き込まれてしまったら必ず周りに相談するようにと勧めていました。親や友人のほか、消費者ホットライン(188)や警察といった具体的な方法を教えてくださいました。

講義のあとには、学生からの質疑応答の時間も取られました。
「世間的に投資を勧める流れになっていると思うが、若いうちは余裕がないのですがどうすればいいでしょう」という質問には、「余ったお金があれば、で良いと思う。お金に余裕がないうちはFPの資格を取るなど、お金の知識を付けるといい。将来の自分に絶対役に立ちます」と回答されていました。

なかなか学ぶことのない「お金の授業」を受け、学生たちのお金に対する意識も変わった貴重な講義でした。

2025年7月11日

たくさん達成感を得て自信を付けよう!「女性とキャリア形成」の授業でJFEテクノス社長による特別講義が行われました。

「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で6月5日に、JFEテクノス株式会社の能登隆代表取締役社長をお招きしての特別講義が行われました。仕事との向き合い方や自信を持つことの大切さなど、実体験を交えてお話してくださった能登氏。上に立つものとしての心構えなども含め、なかなか聞くことのできない「社長業」について学生たちが触れる機会となりました。

仕事は金銭的に自立する手段?

JFEテクノスは一言で言えば「街のあらゆるインフラのメンテナンスを行う会社です」と能登氏。
「皆さんの就職希望先とは少し遠いかもしれませんが、一人の社会人のサンプルとして気軽に話を聞いてほしい」と講義を始められました。

学生時代は火を燃やす「燃焼」に関わる勉強をしていた能登氏。
いまでも星空の下で焚火をたいて、コーヒーを飲むのが癒しのひとときだと話します。ただ、「私はこだわりがないんです」と自己分析。
「信念というものがないよな、と言われたこともある」と告白されました。そのためこれといってやりたい仕事があったわけでもなく、仕事は「金銭的に自立するための手段と思っていた」と言います。
ただ、地図に残るような大きなものを作れる会社に行きたかったことと、専攻した燃焼に関する仕事をしたいと思い、現在のJFEの前身である日本鋼管へ入社されました。

偉くなるとやりたくない仕事も増える

社会人になって最初の1年は、大学のころと同じように燃焼の研究を行い「学生時代と近いことをしてお金ももらえるなんて嬉しいと思っていた」と話しました。
しかし年が経つにつれ、自分の仕事に責任がのしかかってくるようになり、徐々にストレスに。

特に、より高いポストに就くようになるとそれは顕著でした。
会社で偉くなるとは部下が増え、権限が増え、責任も増えるということ。
能登氏は「偉くなるとは、自分の知らない領域の仕事を担当することです。自分のやりたい仕事以外のことをやることになる」と語りました。ときには意見の合わない人と一緒に仕事をすることも。
能登氏にとって仕事とはだんだんと、ただ試練を乗り越えうまくやり遂げるものになっていったと言います。
「心に蓋をして、自分に厳しく、人にも厳しくなっていってしまったんです」。

天狗になっていた自分を猛省

仕事がうまくいくと達成感が得られます。
「仕事にはトラブルはつきもの。トラブルがあってもみんなで協力しあって乗り越えることで自信が生まれる。客に感謝され、上司や仲間からも褒められることは、仕事を続けるモチベーションになります」と話しました。

ただ、能登氏は「自信を持ちすぎて、天狗になってしまった」と語りました。
人の話を最後まで聞かずさえぎっては切り捨てる。人として傲慢な態度を取っていたと告白されました。だんだんと部下の力が融合せずうまくいかなくなっていったと言います。
そんなある日、信頼していた女性の部下から「上から目線で皆を見てますよね」ときつい一言が。
能登氏はそれまでコミュニケーションがうまく出来ていると思っており「自分の態度が人を傷つけているとは分からなかった」ため、その一言に大きなショックを受けます。
未熟さを猛省し、そこから話すときはゆっくりと、人の話をしっかり聞くように。徐々にまた空気が良くなり、多くの人たちに受け入れられ、仕事が上手になっていったと話しました。
「社長というのはあくまで社長業なんです。営業などと同じ、一つの仕事」とかみしめるように語りました。

仕事は自信を持たせてくれる手段!

能登氏は「たくさんの達成感を自分に与えましょう」と学生に語りかけました。
人から褒められる経験を増やすことで自信を付けることの大切さを伝えました。
ただ、自信を付けすぎると傲慢になる危険も。けれど「天狗になってもいいんです」と能登氏。
「周りや友人など、おかしいよと言ってくれる人がいるはず。そのときに軌道修正すればいい」と話し、周囲に耳を傾けることも伝えました。

いまの能登氏にとって仕事とは、金銭的に自立する手段だけでなく、自信をつける手段であり自分をポジティブにしてくれるものになったと話しました。
そして学生のうちに「異人コミュ力」を付けてほしいと伝えます。
「異人コミュ力とは私の造語で、自分と異なる考えの人と話す力。社会人になると本当にさまざまな人と仕事をする。自分の考えと違う人の話を聞くことに慣れておくといいでしょう」とアドバイスしました。

自分が変われば周りも変わる

講演後には質疑応答の時間が取られ、学生が次々と手を挙げました。

「部下から指摘されて改善したあと、部下や周りの反応に変化はありましたか?」という質問には「数か月後に同じ部下から、やればできますねと言われました」と笑いを交えて回答。
「徐々に周りからアイデアや企画も出てくるようになり、雰囲気が良くなっていきました。自分が変われば周りも変わることが分かった」と話されました。

最後に、司会進行をした班の学生が代表しお礼の言葉を述べました。
「当初は社長と聞いて、難しい話をされるかと思っていましたが、等身大の話をしてもらえ社会人に対しての解像度が上がりました」と話しました。
「就活に自信がなかったですが、仕事は自信をつけてくれる手段と聞き、自分の人生を豊かにしてくれるものなのだと気づきました」と話し、今回のお話が身になったと伝えました。

担当教員からのメッセージ

能登社長は、今年初めてお迎えいたしました。歴史ある企業のトップを務められる能登さんですが、語りがとてもソフトで、しかも、学生の視点を意識いただいた内容に、学生が真剣に聞き入る姿勢が印象的でした。様々な部下の方とのやりとりには驚くこともありましたが、それだけ社員一人ひとりとの絶対的な信頼関係を築かれている能登社長でなければあり得なかったエピソードも沢山聞かせていただきました。能登様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年7月10日

女性が社会で活躍するために。「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。 

共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、5月22日にSBI金融経済研究所株式会社の取締役理事長である政井貴子氏をお迎えしての、特別講演が行われました。女性が社会に出ていく前に知っておくべき心構えなど、実体験やデータに基づいた貴重なお話をお伺いしました。

なぜ女性が活躍することが重要なの?

この授業は進行も学生が行います。キューブと呼ばれる担当の班の学生が「つねに前向きに学びを深めながら、華麗な転身をしてこられた」と紹介し政井氏が登壇されました。
この授業に出演されるのは4年目です。「毎年気付きがあるのでそのたびにブラッシュアップしています」と話します。
「今回はそもそもなぜ『女性とキャリア形成』という授業があり、女性活躍推進が重要なのかしらという背景の共有をできればと思います」と講演を始められました。

まず政井氏は「男女雇用機会均等法」について説明。性別にとらわれずに自由に働けるための制度です。
逆に言うと、制度がないと女性は自由に生きていけなかった過去があります。
「皆さんは小学校の家庭科の授業は男子も一緒だったと思いますが、私のときは女子だけ。男子は技術という工作の授業を別々に受けていた」と話します。

第二次世界大戦を経て国連が成立した際、あらゆる差別を撤廃するべきだという動きが世界中で盛り上がりました。
そのなかには女性への差別も含まれ、1985年に女子差別撤廃条約に日本も批准。男女共同参画社会基本法を制定し、1999年に男女雇用機会均等法が制定されました。
「こういった流れのひとつとして、皆さんの雇用を後押しする一つとしてこの授業もある」と政井氏は話しました。

男性の意識はどうか

しかし、格差がまったくなくなったわけではありません。
世界のジェンダーギャップの解消には100年以上かかるという試算が。特に政治経済格差はなかなか縮まらないと言われており、それは日本も同様です。

では具体的にどういうことが課題となっているかと言えば、ひとつは家事の分担です。
政井氏は、家事を男女のどちらが担うべきか、男性に取ったアンケート結果を示しました。39歳以下の7-8割は、半々で負担するべきと回答。
しかし年齢が上がるにつれ割合は少なくなり、60歳以上になると半分以上の人がパートナーに任せたいと回答しています。
「女性は家庭に入るべきだと思っている人はまだまだいるということ。社会に出れば、年上とも仕事します。特に60歳くらいの人は偉いポジションも多い」と政井氏。
年上の男性と接する際は、口には出さずとも女性は家庭に入るべきという考えをもっている可能性も想定した方がいいと忠告されました。

ジェンダーギャップはこれからもある

政井氏は続けて「若い世代は大丈夫では、と思うかもしれませんがそうでしょうか」と次のアンケート結果を表示。
「営業職は男性の仕事だ、職場では女性は男性のサポートにまわるべきといった質問に、若い男性もそう思うと回答する人も2割ほどいる。10人いれば2人くらいは内心そう思っている人がいるんだと知っておくべきです」と語りました。
そして「皆さんは、そういうのも含めて会社を見て就活をしましょう」と話しました。
「出したデータは平均値なので業態や会社ごとにばらつきがあります。特定の業種や会社に偏っている可能性もある。受け入れ側の体制がどうなっているか、変わって行きそうかをみるのも大事ですよ」と語り掛けました。

また、賃金格差も依然としてあることを指摘。
政井氏は「私も役員をやってきましたが、世代的にも安く使われていると思います」と告白しました。
「昔は今よりも男女格差が大きかったので、役職に就けるだけで信頼されていると思っていた」と話します。
現在は男女差が出ないようポストに対して報酬制度が決まっているところもあります。「稼いでいくことが目的ではないですが、生涯賃金を考えるのも大事」と話されました。

女子校でリーダーシップを養われる!

「私が学生の頃はキャリアを考える授業もなく、自分もここまで長く仕事をするとは思っていなかった」と政井氏。
英語を使える仕事が良いと外資系金融業へ就職し、周囲は全員外国人のなか、人の数だけいろんな考えや価値観があることを知ったと言います。

日本の会社でも仕事したいと、現SBI新生銀行へ転職。
その後長年金融業界で働いた実務能力を買われ、日本銀行の審議委員へ就任されました。
「経済を学んだことのない私が専門家と混ざって意見交換する立場になるなんて」と話しましたが「20年もやっていると専門家として認めてもらえることもある」と誇らしげに語りました。

「女子校卒は不利ですか、と質問を受けることがあるのですが、そんなことはない」と本学の卒業生でもある政井氏は力強く話します。
「男性がいない中で女性がリーダーシップを取ることが求められる。人の前に立って行動することを経験できることはとても貴重です」と言います。
「皆さんの人生はまだまだ長い。振り返ってみて悔いの残らない充実した時間になると良いなと思います」と政井氏は講演を締められました。

キャリアを積み重ねるには

講演のあとは質疑応答の時間。学生から次々に手が上がりました。
「女子校でリーダーシップが養われることは実感がある」という学生からは、「男性のいる場で女性がリーダーシップを発揮できますか」という質問が。
政井氏は「なかなか自分にチャンスが回ってくることは少なかった」自身の経験を回答。
「一緒に仕事する人によって環境にばらつきがある世の中。自分に何が必要なのか考え、足らないことを実践してみる人がキャリアを積み重ねられると思います」と答えました。

さまざまな仕事をされている政井氏に「新しい仕事で環境が変わるとメンタルも影響出ると思いますが、どうやって前向きでいたのか」と質問した学生には「重要な視点ですね」と感心した様子も。
不安なときは友人に相談していたと話し、「大事なことを相談できる友達の存在が大切かも。そういう存在が学生のうちにできるといいですね」と回答。
「どうしても納得が出来なかったら辞めて、充電できたらまた仕切り直せばいい。手放すのも選択肢のひとつです」と伝えました。

学生たちにとってこの上ないロールモデルとして、貴重なお話を伺えるひとときとなりました。

担当教員からのメッセージ

政井様は、この授業には初回からご登壇いただいています。本学の卒業生ということもあり、学生の姿も真剣です。政井様のキャリアは特筆すべきものがあり、金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた価値は、なかなか存在しないと思われます。今までは比較的遠い存在であった金融のフィールドでしたが、今の学生が社会を牽引するこれからの世の中を考えた時、一人ひとりがみずから資産設計することが求められることになります。政井様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年6月30日

「やさしい日本語」を使って伝えよう。「日本語教育入門b」の授業で東日本旅客鉄道株式会社の特別講義が行われました。 

5月27日に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別コラボ授業が行われました。外国人にも分かってもらえる「やさしい日本語」について、楽しいトークで盛り上げながら実践的に教えてくださいました。

多くのひとが利用するJR東日本

最初に登壇されたのは平山秀人氏。2021年にJR東日本に入社されました。次に挨拶された伊藤暉氏は2015年入社です。
お二人とも、電車の車内放送やドアの開閉などを主に担当する車掌です。
JR東日本は、北は青森県から南は静岡県までの広い範囲の路線を担う、まさに日本の大動脈です。
昨今は、電車の輸送業務のほかIT部門、生活サービスの仕事も行っており、「街づくりや介護の仕事を行う部門もあるんですよ。」と平山氏が明るく説明されました。
お二人が所属している我孫子乗務ユニットは、常磐快速線の品川駅から茨城県の取手駅までなどが乗務範囲です。
「都会の高層ビルから、だんだんと田園風景が広がり癒されています。」と冗談交じりで話されました。

「まずはアイスブレイクをしましょう。」と伊藤氏が取り出したのはカードゲーム。学生たちは班に分かれ、先生方も参加してのゲームが始まりました。
出されたテーマに沿って、配られたカードの数字を表現するものを考えます。上手くいって喜んだり、外れて笑ったりと学生たちも楽しそうに参加していました。
ひとしきり盛り上がったところで、伊藤氏が「皆さん、どうでしたか。」と語り掛けました。
「同じ日本人でも世代や性別などによって感覚は違います。文化や言語が違う在留外国人のお客さまや海外からのお客さまに情報を伝えるのはさらに難しい。」と話し、今回のテーマである「やさしい日本語」について考える講義が始まりました。

どう言ったら伝わる?

ここからは、実際に電車で使われるアナウンスを使ってのグループワークです。
最初に出たお題は「列車非常停止ボタンが押されているため安全確認をしております。運転再開までお待ちください。これを皆さんでやさしい日本語の放送文に変えてみましょう。」と平山氏。
学生たちは「それいいね。」など相談しつつ文を作り上げました。
例えば「電車を止めるためのボタンが押されました。安全か見ています。動くまでお待ちください。」という案です。
平山氏は「すごく分かりやすくて、良いですね。」と感心した様子で拍手を送りました。

我孫子乗務ユニットでは、「SOSボタンが鳴っているため、チェックしています。電車が動くまで待ってください。」と伝えているとのこと。「SOS」や「チェック」などのカタカナ言葉を使うことで伝わりやすくなると話します。
ただ、「やさしい日本語には正解がありません。」と平山氏。
「皆さんが考えた文の方が伝わりやすいということもあると思います。大事なのは相手が本当に理解しているかです。相手を思いやり、どうしたら伝わるか考えることが大切です。」と語り、「私たちも大変勉強になりました。皆さんの案も今後取り入れていきます。」と話されました。

やさしい日本語を必要としている人はいる!

伊藤氏は我孫子ユニットの所属になる前は、秋葉原駅の改札で勤務していました。観光地として名高い土地柄のため、海外からのお客さまも多かったと言います。
特にアジアからの観光客は、英語も通じないことが多く苦労したそうです。
そんなとき、テレビでやさしい日本語を使ったニュース番組を偶然発見し「これは使えるのではと思った。」と話しました。
我孫子常務ユニットに異動になってから早速、上司などに提案してみるも「前例がない。」と難色を示されてしまいます。

「しかし、やさしい日本語を必要としている人がいるという確信がありました。」と伊藤氏。
社員たちで研修をし、車内放送にやさしい日本語を取り入れ、お客さまへポスターや車内アナウンスでお知らせし、理解を求めたところ、SNSなどで好意的に拡散され知れ渡ったと言います。
「実際に伝わるのか、さまざまな国から来ている留学生たちに協力してもらい意見交換を行い、毎月車掌たちで研修をしています」と話しました。

鉄道マナーを伝えるには?

次に登壇したのは、JR東日本サービスクリエーションの山田晃子氏。普通列車グリーン車のアテンダントです。
グリーン車では車内販売や乗り換え案内、チケットの確認など直接乗客と話す場面が多々あります。
「グリーン車には海外からのお客さまも多く、国籍や年齢もさまざまです。」と山田氏。
「今までは細かく決まった応対マニュアルに沿って対応していましたが、やさしい日本語を柔軟に使うことが増えています。」と話します。
やさしい日本語のガイドラインも作成し、JR東日本グループ全体として活動が広がっていると語って下さいました。

最後に平山氏が再度登壇。次回への課題を発表されました。
課題は「鉄道マナーを海外からのお客さまや在留外国人にどのように伝えるか?」。ポスター案と、車内放送文を考えるというものです。
平山氏は「駅を利用するとき、電車に乗るとき、さまざまなマナーがあります。その中からいくつか選び、やさしい日本語を用いてどのように伝えるか考えて下さい。皆さんの発表を楽しみにしています。」と期待を寄せました。

学生たちはグループワークを行い、1ヶ月後にプレゼンテーションに臨みます。

担当教員からのメッセージ

我孫子乗務ユニットの方々のユニークな自己紹介、そして大いに盛り上がったアイスブレイクのおかげで、学生たちの表情も緩み、テンポよく授業が進められました。いつも以上に活性化したグループワークでは、学生の視点から多様な意見が出されました。
東京グリーンアテンダントセンターの方からのグリーン車での取り組みのお話しには、大きくうなずきながらメモを取る学生の姿が見られました。
受講生からは、「日本人も外国人もみんなが安心して電車を利用するためには、誰もが理解できるように情報発信することが大切だとわかった」「在留外国人の方や外国人観光客の方が増加している今、もっとこの取り組みが広がることで、誰もが平等に情報を得られるようになることが望ましい」といった感想が届きました。
次回の発表会に向けて、各グループが協働してアイディアを練っています。
貴重な学びの場を与えてくださったみなさまに、心から感謝申し上げます。

2025年6月27日

自分らしく生きるヒントとは?「国際理解とキャリア形成」でフィジーの文化を学ぶ特別授業が行われました。

「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月3日に株式会社アールイーカンパニーとの特別コラボ講義が行われました。「フィジー留学カラーズ」の運営を手掛ける皆さんが南の島を舞台にしたディズニー映画をベースに、南太平洋の文化を解説。和気あいあいとしたムードのなか、異文化を知る機会となりました。

学生のうちに海外に行ってみよう

教室にはアールイーカンパニーの多田祐樹氏が登壇し、ビデオ通話もつないで授業が始まりました。
植林氏は大阪から、長瀬氏はフィジーからの参加です。
「私だけが話していてもつまらないので、皆さんにも参加してもらいながら話していきたいと思います」と多田氏。
リアルタイムの掲示版を使って、学生たちも随時感想を伝えながら進めていきます。

多田氏は貿易業を経て、2018年よりフィジー共和国にて、主に日本人を対象とした英語学校「カラーズ」を創業。現地で日本語学校も開講し、フィジーの人が日本で働ける機会を増やすプロジェクトも行っています。
多田氏はまず画面に「17%」という数字を示し「なんの数字でしょうか?」と問いかけました。これは日本人のパスポート保有率です。
ただし、18~22歳の大学生の年齢に限ると40%と高い数字です。
多田氏は「しかし、65歳までの労働人口で見る割合だと20%強と減ってしまう」と話し、学生のうちに海外含めさまざまなところに行ってほしいと伝えました。

フィジーの歴史や文化とは?

学生たちは事前準備として、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」を視聴してきています。
この映画の主人公モアナが南の島から船に乗り冒険をするという物語。この映画をベースに「南太平洋に息づく文化と”自分らしく生きる”ヒント」と題しての講義が始まりました。
多田氏はまず南太平洋の島々にすむ民族の歴史から説明。
約6000年前、オーストロネシア語族が大陸から海を渡ります。
優れた航海術で広大な領域に分布し、南太平洋の島々であるフィジーやサモア、トンガなどにも到達しました。

次に植林氏が3人の男性の写真を見せました。南太平洋には3種の族があり、外見も違います。
それがポリネシアン、メラネシアン、ミクロネシアンの3つ。
ポリネシアンはアジア人の肌色に近かったり、メラネシアンは髪の毛がアフロのようにきついカールがかかっていたり。
フィジーはメラネシアンとポリネシアンが混在する島です。ラグビーが強いことで有名ですが、それは遠い昔、厳しい航海を生き抜いた、強い体を持った先祖の血を受け継いでいるからとも言われています。

多田氏は「KAVA(カヴァ)」という伝統的な飲み物を紹介。
儀式や祝い事に欠かせない飲み物です。現在は観光客も飲むことが出来るものですが「私は大好きです」と多田氏。
「カヴァは歓迎してくれている証。海外の人に自分の国の文化を受け入れてもらうのは嬉しいですよね。私は現地で出されたものは全部食べるのがポリシー。皆さんもフィジーに行くことがあったら是非試してみてください」と語りました。

やりたいことを宣言しよう!

続いて長瀬氏が、映画のストーリーにベースに「主人公たちはどんな失敗や不安を抱えていたか考えてみましょう」と語り掛けました。
「皆さんも過去の失敗や不安を振り返ってみましょう。うまくいかなかったこと、恥ずかしかったことなど小さいことでもいいので教えてください」と長瀬氏が言うと、学生たちは掲示板に次々と書き込み始めます。「受験のときもっと勉強を頑張ればよかった」「留学が不安」などの意見が書き込まれました。

意見が集まったところで、長瀬氏は映画のある台詞を紹介。
それは「先のことは分からない。でもどんな自分になるかは決められる」というもの。
長瀬氏は「みなさんも、これからどんなことがやりたいか、どんな自分になりたいか、宣言してみましょう」と促します。学生たちはグループで話し合いながら宣言を書き込みました。
「フィリピンで短期留学をしたので今度は長期で行ってみたい」「去年留学をしなかったけれど今年こそ行く」など、たくさんの決意が集まりました。

衝動に従って人生が開かれる

最後に、多田氏から「偶発性と衝動性が人生を切り開く」という話がありました。
アールイーカンパニーも最初からやろうと思っていたわけではなく、たまたまだといいます。
「しかしたまたまのことを努力すると意味のあることに変わってくる」と話します。
「好きなことで生きていくことはすごく素晴らしい。しかしとても大変。好きなことをすることと、好き勝手することは違います。一人ではできません」と話し、「今やりたいことがなくとも大丈夫です。好きなことを一生懸命にやって行ってください」と話しました。
長瀬氏も「私も海外に行くことなんてないと思っていましたが、いまフィジーに住んで仕事している。次々にチャレンジしていくことで人生が開いていきます」と語られました。

学生たちは遠い島の異文化を知ると同時に、自身の人生を考える貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

国際理解とキャリア形成の授業のゲストとして、今年度初めてお迎えしたのが、カラーズ様です。
そして、ディズニー映画の「モアナと海の伝説」と結び付けて学ぼうという、全く新しい試みでした。
当日は、多田様、長瀬様、植林様のお三方が、教室と大阪、そして実際にフィジーからオンラインで
参加して下さいました。
メラネシアンおよびポリネシアン文化の歴史や、映画に登場するシーンのことなど、
フィジーという国の魅力を沢山伝えていただきました。
近い将来、フィジーへの留学に出かけてくれる学生さんも生まれることと思います。
とても楽しいプログラムを構築いただきました多田様、長瀬様、植林様に心から感謝申し上げます。

2025年6月6日

自身のキャリア志向を知ろう!「女性とキャリア形成」の授業で、日本マナー・プロトコール協会理事長による講演が行われました。

5月8日に行われた共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。明石氏は、積極的になることで人生が変わったと話し、ご自身のエピソードを交えて学生に前向きにキャリアを考える大切さを語りました。

チャレンジ精神を持ってキャリアを切り拓く

司会進行は「キューブ」と呼ばれる班ごとに学生が行います。
学生から紹介され明石氏が登壇されました。明石氏がこの授業で講演されるのは今年で3回目。
「毎年とても楽しみにしています。学生が主体的に運営していて質問も活発にあり、私自身モチベーションが上がります」と笑顔で仰いました。

「ただ、皆さん真面目で優秀なのに、チャレンジ精神がちょっと足りないなと思うことがある」といいます。質問に対して、分かっているのに手を上げないなど積極性に欠けると感じる場面があると話しました。
「キャリアを振り返ってみると、勇気を出したことで今の自分につながってきたなと思うことがたくさんあるんです」と話し、「キャリアも人生も自ら切り拓く」と題し、講演を始められました。

最初の就職先はよく検討して選択しよう

明石氏は大学卒業後、日本航空株式会社(JAL)に新卒のCA(客室乗務員)として入社。今では憧れの職業と言われるCAですが「なりたくて入ったわけではない」と言います。
明石氏が就活をしたのは、第2次オイルショックで4年制大学卒の女性は就職が難しかった頃。
大量採用していたJALになんとか入った、と話されました。

「現在は人手不足で売り手市場と言われている。ある意味、皆さんが企業選択の決定権をもっています」と明石氏。
転職も当たり前になっている現代ですが、「それでも最初の就職先はこれからの人生に大きく関わってくる」と話します。
「たくさん内定をもらっても、最初に入れる会社は1社しかない。だからこそ、入ったらしっかり頑張れるところを選んでほしいと思います」と、よく検討して選択するよう勧めました。

自分のキャリア志向とは?

就職活動をするにあたり、自分自身がどういうキャリア志向なのかを確認することが大事だと明石氏は話します。
例えば自分でやってみたい自立志向型や、人を動かすほうが向いているプロデュース型、まずは何かをやってみたいチャレンジ志向型など。「自分を知ることで、より迷わず、流されず、後悔しないキャリアにつながります」と伝えました。
また、「人生はキャリアだけではない」との言葉も。
「専業主婦だって素敵なことですし、地域活動に力を入れるのも素晴らしい。自分はどういう人生を歩みたいのか考えることが、有意義な企業選択に繋がる」と強調されました。

自分のやりたいことが分からない人には、『置かれた場所で咲きなさい』という元ノートルダム清心学園理事長の故・渡辺和子先生の言葉を紹介。
与えられた仕事を真摯に頑張ることの大切さを伝えました。「人生も仕事も必ず起伏がある。そのときにどうするかで、その人の真価が問われると思います」と話し、逃げずに継続する勇気を持つことが大事だと話します。
ご自身も離婚を経験されたとき、初めて劣等感や将来の不安を感じたと告白されました。
しかし子どものためにも自分が頑張らなくてはと一念発起し、当時まだベンチャー企業だったパソナに秘書として入社。
そこで経営を間近に見る機会を得、その後のコンサル業へとつながっていきます。
「大変なときこそ成長するチャンス。うまくいかなくてもチャレンジ精神をもって乗り越えてほしいと思います」と語りました。

人とのつながりを大事に

最後に強調されたのは、人とのつながりを大切にすること。
「チャンスをくれるのも評価をするのも、相手や周囲の人たちです」と明石氏。
日本マナー・プロトコール協会の立ち上げに加わったのも、会社を立ち上げてから人脈が広がったためだと話しました。
「それまでは一人で仕事をしていましたが、あまり社会貢献をしている気がしていなかった。マナーやプロトコール(国際儀礼)を普及させていくことは社会的に意義があることと思い、協会を立ち上げました」と言います。

そして、主体的な思考をすることを勧めました。
「誰かと同じほうが安心、と思う人もいるかも知れません。しかし正解はひとつではありません。自分で調べいろんな人の意見を聞き、自分なりの判断の基準を持つことが大事」と話し、「本質を見る目を、ぜひ若い時からはぐくんでほしいと思います」と伝えました。

チャンスで力を発揮するためには

講演後は質疑応答の時間が設けられ、たくさんの学生が手を挙げました。

「自分のキャリア志向が合っているか確認する方法は?」という質問には、「やってみないと分からない。ライフステージが変わったら志向も変わることがあります。自分にはこういう面があるなと気付いたらキャリアチェンジも考えていきましょう」と回答。

「いろんなキャリアを歩まれたと思いますが自分の軸はいつ見つけましたか」という質問も。
明石氏は「私自身若い頃はやりたいことが漠然としていたタイプでした。だからこそ『置かれた場所で咲きなさい』を実践し、そのときそのときで自分の力が発揮できるかやってみることを重視しました」と話し、「チャンスはいつ巡ってくるか分からない。いろんな出会いを大切にしてください」と伝えました。

担当教員からのメッセージ

今年も、日本マナー・プロトコル協会理事長の明石伸子様にお越しいただきました。
大変素晴らしいキャリアをお持ちの方ですが、一方、ご苦労の多かった経験もお話しいただきました。
いつも笑顔を絶やさないそのお姿が印象的であり、語りかけるようなお話しに、自然と学生が
引き込まれていく様子を強く感じました。

コロナ禍以降、人と人との触れ合いが減少したと言われています。
しかし、これからどんな時代が来ようとも、人と人とが出会い、直接語り合うことの大切さは
変わらないと思います。そのような大切なことを教えて下さいました。

この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年6月6日

「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲とのコラボがスタートしました。

企業から直接課題が出され課題解決に取り組む、学生たちに人気の社会連携授業。4月30日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)の授業で、猿田彦珈琲との特別コラボが始まりました。代表取締役の大塚朝之氏からコーヒー店を立ち上げた思いなどお話を伺いました。授業の最後には学生たちに課題が出され、後日グループでプレゼンテーションに挑みます。

じぶんごとに捉えて取り組もう

授業の冒頭には、篠﨑先生からこの授業にかける熱い思いが。猿田彦珈琲を知ろうとフィールドワークをするうち、どんどん好きになり広島の店舗まで回るほどのファンになったと告白されました。
自分の体験を踏まえた上で、学生たちに「今回の課題をぜひ『じぶんごと』として取り組んでください」と強調。ただの課題と思わず、自分に引きつけて考えることの大切さを伝えました。

そして猿田彦珈琲創設者の大塚氏が登壇。学生たちの手元にはコーヒーが配られ、リラックスした雰囲気で講義は始まります。
大塚氏は「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」をコンセプトに猿田彦珈琲を創設した経緯について話し始めました。

良いモノを作るためサスティナビリティを考える

猿田彦珈琲はスペシャルティコーヒーの専門店。2011年6月に恵比寿でオープンしたのが始まりです。
スペシャルティコーヒーとは、風味豊かで個性的な味わいのあるコーヒーのこと。検査で高得点を付けたコーヒーだけが名乗れるもので、全体の5%ほどしかないと言われています。
そしてもうひとつの基準はトレーサビリティがしっかりしているものであること。トレーサビリティとは「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」が明確なことです。コーヒー豆の栽培管理から収穫、選別などまで徹底して品質を管理された厳選されたものだけがスペシャルティコーヒーを名乗れるのです。
大塚氏は「サスティナビリティがあることも大事。生産者に安定してお金が入れば設備を整えより良い環境でコーヒー豆を生産できます。現在気候変動によりどんどんコーヒー農園がなくなっている。」と話しました。

大塚氏は学生たちに、配られたホットコーヒーを飲んでみるよう勧めました。
そして「苦いですか?すっぱいですか?」と問いかけます。
苦みよりもほのかな酸味を感じる学生が多数。
大塚氏は頷いて「このコーヒーはベリーのような酸味がありますよね。いいコーヒーであればあるほどコーヒー以外の様々フレーバーを感じるんです」と話しました。

コーヒーに救われた青年時代

大塚氏は若いころ俳優として活動されていました。毎日のようにオーディションに行くも、落とされたり受かっても次の仕事をすぐに探したりせねばならない日々。
「お金もなく本当につらかった」と言います。
ついにはふさぎ込み、人とのコミュニケーションをうまく取れなくなってしまいました。

コーヒーに出会ったのはそのころ。
たまたま寄った有名コーヒーチェーン店で、店員から気さくに話しかけられ、居心地よい空間にとても安心しリラックスできたと話します。
その後、俳優の道を諦める決心を固めた頃に友人からコーヒー豆店で働かないかと声をかけられ、コーヒーに魅了されていきます。美味しいコーヒーの淹れ方を実演販売することで売上を格段に伸ばし、自信も深めていきました。
コーヒー店に救われた経験から、自分でも美味しいコーヒーを提供したいという思いを実現するため独立し、猿田彦珈琲を立ち上げたのです。

やりたいことを言語化し周囲に伝えよう

恵比寿店をオープンしたあと、2014年には清涼飲料メーカーから声がかかり缶コーヒーの監修を手掛けます。商品は大ヒットし、現在もペットボトルコーヒーや美術展とのコラボなど幅広く事業を展開しています。
店員からはバリスタ大会のチャンピオンを輩出するなど、コーヒー専門店としてゆるぎない信頼を得るようになりました。

缶コーヒーを手掛けた際、業界からは批判もあったといいます。大塚氏も迷いがあったと告白されました。
しかし、手掛けたことで店は有名になり、融資を受けることにもつながります。
大塚氏は「やりたいことへの純粋さとお金のバランスを両立させることが大事」と話し、一生懸命やることの大切さと、それを周囲に伝えるために言語化することを伝えました。「自分が究極なにをやりたいのか、それを伝えて利他的に行動すれば周りは応援してくれます」と話しました。

猿田彦珈琲のファンになってもらうSNSの投稿とは?

授業の最後にいよいよ課題の発表です。課題は「猿田彦珈琲のSNSについて考えよう」。ターゲットは20代。
猿田彦珈琲との距離を縮め、長期的にファンになってもらえる投稿を提案します。良い発表案は実際に公式アカウントで採用される可能性も。
学生たちはそれぞれInstagramとXを担当する班に分かれ、グループワークを重ねて1か月後の発表に臨みます。

担当教員よりメッセージ

猿田彦珈琲“推し活”中の篠﨑です。
猿田彦珈琲の存在は以前から知っていましたが、私の生活圏に店舗がなかったこともあり、実際にお店に足を運んだのは、この連携授業を担当することになってからでした。

もともと珈琲に強いこだわりがあり、「美味しい珈琲を提供するカフェ」という印象を持っていたため、店舗でいただく珈琲の満足度は非常に高く、今では自宅で飲む珈琲も猿田彦珈琲社のものに変わりました。

私自身の例のように、「良いもの」が必ずしも選ばれるとは限りませんが、何かのきっかけで状況が一変することがあります。SNSは、その“きっかけ”になり得るのでしょうか。

当該授業の履修学生は、6チームに分かれてInstagramあるいはXを用いた投稿案の検討に取り組んでいます。現在は、猿田彦珈琲社がこれまでに行ってきたInstagramやXでの投稿内容やその手法について考察し、特徴を把握する段階まで進んでいます。今後は、猿田彦珈琲 道玄坂店でのフィールドワークを経て、中間発表に臨む予定です。女子大生ならではの視点と分析力に基づく提案が、大きなうねりとなって広がっていくことを、私自身とても楽しみにしています。

連携授業の初回には、大塚社長をはじめ、播田様(取締役 フード&ビバレッジ クリエイティブディレクター)、田岡様(マーケティングディレクター)、平岡様(広報)、上田様(マーケティンググループ)をお迎えしました。
 ご多忙の中、本学までお越しくださいまして、誠にありがとうございました。
 また、冷たいカフェラテと温かいエチオピアコーヒーをご提供いただき、重ねて御礼申し上げます。

2025年6月5日

スペインと日本のつながりの歴史とは?「国際理解とキャリア形成」の授業でスペインを知る特別講義が行われました。 

共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、5月13日にスペイン人留学生であるセルヒオ・マテオ・アランダ氏による特別講演が行われました。日本で長年住むなかで体験した、文化の違いで驚いたことや新しい発見などを楽しく語って下さいました。学生たちにとっても、国際的な目線から日本を客観的に知ることができる機会でした。

子どもの頃から親しんだ日本文化

セルヒオ氏は現在、埼玉大学の大学院の博士課程に在籍中で、日本語がとても流暢です。「スペイン人は明るいので冗談好き。面白かったら笑ってね」と、なごやかな雰囲気で講演が始まりました。彼はスペインのアンダルシア地方マラガ市の出身です。スペイン南部、地中海沿岸の温暖な地方に住んでいました。子どもの頃から両親の影響で、アジア文化に興味を持つようになりました。最初は三国志、そこから日本のアニメーションなどに触れるようになったと話してくれました。

小学生の時から授業を、スペイン語と英語で受けており「言語を学ぶことは楽しかった」と話してくれました。 マラガ大学在学中に、埼玉大学に一回目の留学を果たし、日本の観光についての論文を書きました。卒業当初は、エンジニアを目指していましたが、「言語を勉強することへの情熱が芽生え、まだ見ぬ自分を発見した」と語ってくれました。
そして一念発起し、アジアと日本の文化交流を調査するために、2023年から二回目の留学で、埼玉大学の大学院に在籍しています。

スペインと日本、文化の違い

次にセルヒオ氏はさまざまなスペインの写真を見せながら、学生たちにスペインのイメージについて話しました。 スペインは明るく晴れた日が多いので、レストランにはテラス席が多くあるけど、「日本では外のテーブルが少ないですね」 と話してくれました。この違いは、スペインの乾燥した気候と、日本の温暖湿潤の違いによるものです。
また、パエリアやトルティージャ、アヒージョなどスペイン名物の料理を紹介し、日本で同じ名前で食べられているものと、本場のものは少し違うと形状を比較し、その面白さについて語ってくれました。

「スペインはパン派でしょうか、米派でしょうか」という質問がありました。当然パンが多いのですが、パエリアをはじめお米の料理も多数あり、お米もよく食べる国民だと話してくれました。

また、スペインでは大晦日にマスカットを12粒食べると話してくれました。それは、翌年の12か月間が幸せに過ごせるようにとの願いが込められているそうです。「日本では年越し蕎麦を食べるが、スペインでも同じような伝統がある」と話しました。

セルヒオ氏が、最初に日本に来たのは2016年で、さまざまなカルチャーショックがあったと言います。些細なことで言えば、自転車通勤のサラリーマンのこと。スペインでは通勤と言えば自動車なので、自転車通勤の人が多いことにびっくりしたとか。また、困ったのはやはり漢字でした。「言葉はわかるけれど限界がある」と言い、市役所の手続きなどが大変だったと話してくれました。

古くからつながりのあった両国

セルヒオ氏は、フラメンコのダンサーが扇子を持った写真を見せてくれました。「日本でも扇子がありますね。遠い遠い国なのに、なぜ同じものがあるのでしょう」とセルヒオ氏が話しました。「不思議に思って調べてみると、私たちの国のつながりの歴史が分かりました」と語りました。

それは17世紀に、伊達政宗の臣下だった支倉常長が、バチカンに手紙を運ぶ使節団を結成し、その途中、地中海を通った彼らのうちの数十人がスペインに移住。その地で、日本の文化が定着したと話されました。

「南スペイン出身のスペイン人のなかには、苗字にJAPON (ハポン)と名乗っている人たちがいまも住んでいます。彼らの子孫ですね」と長い歴史のなかで、いまも繋がりがあることを話してくれました。

もうひとつ、スペインと日本で似ているものが「巡礼路」。スペインのサンティアゴ巡礼と日本の熊野古道の巡礼路は、どちらも世界遺産に認定されています。 どちらも長い歴史があり、巡礼路としての発祥時期が9世紀頃であったこと、また、殊に女性にとっての巡礼は子宝や安産祈願などが関わっていたことなどの共通点も。加えて、熊野古道の温泉郷(湯の峰温泉)やサンティアゴ近郊のオウレンセ市の露天温泉などの共通点もあり、「双方が温泉や観光にもいい場所ですよ」と紹介されました。

海外で生活するためには運も必要

講演の最後には、質疑応答の時間が設けられました。
「日本にきて驚いたことはなんですか」という質問には、セルヒオ氏は「自分より高齢者が元気なこと」と、笑いを交えながら回答されました。「異文化として、温泉にみんなが裸で入ること。ヨーロッパでは水着を着て入るので、 裸は恥ずかしかった」と話されました。

「話を聞いていて、日本でとても楽しそうに過ごしているなと感じました。モチベーションはなんですか」という質問もありました。セルヒオ氏は頷いて「確かに、日本の生活は楽しいです」と答えてくれました。

「ただ、海外で生活するには運もある。大変なこともありますが七転び八起きです。今は、日本で住み続けられるよう、翻訳家を目指して頑張っています」と目標を話されました。

日本に住む外国籍の方のお話を直接聞く機会はなかなかありません。学生たちにとって国際的な目線を得られる貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

元資生堂の片山様にお越しいただいて3年目を迎えます。片山さんに加え、杉山さんにも加わっていただき、今年は、スペイン人留学生のセルヒオさんも駆けつけて下さいました。日本に関心を持ち、現在も、日本の大学で留学生として学ぶセルヒオさんのお話しは、スペインから見た日本、スペイン人から見た日本人について、とても興味深いお話しをいだたきました。日本語も流暢で、かつ、とてもユーモアのある内容に、思わず聞き入ってしまう、大変興味深いご講演でした。次週は、片山さんと杉山さんからスペイン巡礼の道についてお話しいただきます。今年は2週にわたるスペインの旅です。セルヒオさんに心から感謝申し上げます。

2025年2月3日

冬休みにはこれがおすすめ!ゼミ「演習ⅡB」でサイバーエージェントの川越氏をお迎えしてプレゼンテーションが行われました。

12月24日に「演習ⅡB」(担当:人間社会学部人間社会学科 粟津 俊二教授)のゼミでプレゼンテーションが行われました。テーマは「これから迎える冬の休暇におすすめの活動、遊びを紹介する」。学生たちはグループに分かれ資料を作成。株式会社サイバーエージェントの川越寛之氏をゲストに迎え、行われた発表の様子をご紹介します。

自然巡りでリラックス

最初はD班から。
自然がストレスを軽減するという先行研究を調べ紹介。
例えば自然の音には、人間が一番心地よく感じられる「1/fゆらぎ」があり自律神経が整うことなど、自然でリラックスできるのは科学的にも明らかであると伝えました。
この冬オススメの場所としては白川郷と箱根をピックアップ。特に箱根は都心からアクセスが良く、山や湖、温泉など自然が豊富なのでぜひ行ってみてほしいと紹介しました。

各班の発表後には川越氏からコメントをいただきました。
「たくさん要素を集めていて、会話がたくさん生まれそうな内容でした。もっとアピールする点をしぼっても良かったです」とアドバイスも交えて感想を下さいました。

体験×LUUP

次のB班はみんなでLUUPに乗った体験の動画から発表をはじめました。
LUUPとは電動キックボードのシェアサービス。
短距離移動用の乗り物として浸透してきましたが、LUUPを遊びに使うことでいつもと違った景色が見られ、非日常さを感じられるとアピールしました。おすすめとして目黒川沿いをLUUPで移動しながらお店巡りをするコースを紹介し、体験の良さを伝えます。

LUUPを「しょっちゅう使います」と言う川越さんは、「知りたい情報が全部入っていた。入りの動画も掴みとしてとても良かった」と感心したコメント。
「LUUPだからこそできる、というところがもっとあれば」と改善点も伝えました。

行こう!サウナ・岩盤浴へ!

A班は一見分かりづらいサウナと岩盤浴の違いを解説し、自分のニーズの合う方を楽しむことを提案。
どちらも体を温める施設ですが、サウナは蒸し風呂。リフレッシュ、疲労回復に向いており、低血圧やスポーツする人におすすめです。岩盤浴は石の遠赤外線を利用し時間をかけて体を温めるもの。リラックスでき冷え性改善に効果があります。
最後にサウナと岩盤浴のそれぞれおすすめの施設を紹介。メンバーが通っている施設も紹介しました。

発表後、川越氏は「なぜどちらかにせず2つ紹介したんでしょうか」と質問。
学生は「メンバーにサウナ派と岩盤浴派がいて、なにが違うんだろうという疑問から始まった」と回答しました。
川越氏は「それならいっそ対決型にしたら、もっと面白く解像度の高い発表になったかも」と、内容はそのままでも、さらにブラッシュアップできると伝えました。

おうち映画館はじめませんか?

E班はまず、教室の電気を消し全員にお菓子を配ります。
提案は、自宅で映画館のような環境を作って映画を楽しむこと。
プロジェクターや良いスピーカーなどがなくても、部屋を暗くしてスマホを切り、お菓子と共に楽しむだけでも雰囲気を楽しめるとアピール。ポップコーン、チョコ、スナック菓子などお菓子別におすすめ映画を紹介し、最後に1分ほどの短篇映画を流し「配ったお菓子を食べながら楽しんでください」と気分を盛り上げました。
川越氏は「取り上げているテーマがすごくいい。電気を消すなども良い演出でした」と褒められました。

四国自然旅

最後はC班。
自然を楽しめる場所として、離島を紹介しました。そのなかでも温暖でSNS映えする離島が多い四国をピックアップ。
四国はアクセスが悪いと思われがちですが、神戸や大阪など地方都市も近く足を伸ばすのも良いとアピールします。アートの直島、グルメの小豆島などアクティビティを紹介しました。

川越氏からは、「情報を網羅していて資料も見やすい」とお褒めの言葉があったあと、「ただ、情報よりもみなさんが何故行きたいと思ったかが大事。どこに魅力を感じたのか、もっと友達に話すように伝えましょう」と強調されました。

もっと自分たちの感性を大事にしよう

授業の終わりには、学生間での投票の結果発表。
最多はE班でした。
この日はクリスマスイブということもあり、賞品として先生からクリスマスプレゼントが。学生たちはほっとした表情で喜んでいました。

川越氏からの総評では「僕が大学生だったときとは比べものにならないくらい全員素晴らしかったです」とねぎらいのコメントをいただきました。
今回のプレゼン資料には生成AIを使った班も。
「AIで構成を考えたりすることもできるので、どんどん使ってみてください」と話されました。
そして「最後にひとつだけ」と、付け加えます。
「何度かコメントでも言いましたが、ただの情報よりもみなさんの体験の方が断然価値が高いです。今後プレゼンをするときは、もっと自分たちの考えや感性を信じてやると良いと思います」
自分の意見をどう伝えるか、プレゼンテーションの面白さと奥深さを知れる授業となりました。

担当教員よりメッセージ

大学では、調べた情報をまとめて論理的に伝える練習が、多くの授業で行われます。今回は、せっかく川越様に見ていただく機会を得られましたので、魅力や面白さを伝えるという課題にチャレンジしてもらいました。表現する内容も方法も少し違いますので戸惑いもあったようですが、様々なアイデアを出しながら最後まで頑張ってくれました。伝えるということについて、普段とは違う視点から考える良い機会が得られたと思います。川越様には、この場を借りて、心より御礼申し上げます。