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2025年10月24日

共働き世帯が住みやすい住宅を作る!人間社会学科の授業で旭化成ホームズとのコラボ授業が行われました。 

9月29日に人間社会学科 原田謙教授の授業で、旭化成ホームズ株式会社の河合慎一郎氏による特別講義が行われました。社会の価値観の変化や、生活者に合わせた住宅の例を示しつつ、「LONGLIFE」な暮らしについてお話されました。学生たちには課題も提示。学生たちは11月にプレゼンテーションに臨みます。

いつまでもしあわせに暮らすためには?

旭化成ホームズは「住宅」を商品にしている会社です。
戸建て住宅商品名である「ヘーベルハウス」は学生たちも聞き覚えがある様子。住まいを通して、安心で豊かな暮らしを実現することを理念としています。
「つまり家だけではなく、最高な人生を提供したいという会社です」と河合氏が紹介されました。

河合氏は住宅設計士として旭化成ホームズに入社。
これまで約450軒のマンションや戸建ての家を設計されてきました。
現在はLONGLIFE総合研究所で、住んでいる人の価値観や時代の変化をとらえた新しい暮らしを研究されています。
「LONGLIFEとは、長持ちするという意味ですが、単に家が長持ちすることだけを目指しているのではありません。住んでいる人の暮らしが、いかにハッピーな状態で長く続くかが重要です」と河合氏。

防犯防災、環境配慮についてはもちろん、子育てや働き方、ペットの有無などによって暮らし方は変わります。
ミドルライフやシニアライフの研究も行っており、「今では浸透した二世帯住宅という言葉を作ったのは、HEBEL HAUSなんですよ」と話しました。

変わって行く社会に価値観

「今日は主に共働き世帯に注目して、価値観の変化と住宅商品開発の歩みをみていきます」と、河合氏はさまざまなグラフや表を提示しました。
日本では1980年代以前は専業主婦世帯が当たり前で共働きはほとんどいませんでした。1986年に男女雇用機会均等法が成立。1990年代ころから共働きが徐々に増えていき、2000年代頃に拮抗。
その後専業主婦世帯は急速に減少していきました。いまでは7,8割が共働き世帯です。

河合氏は30年前と現在の女性誌を比べて、価値観の変化についても話します。
「昔は主婦を応援するようなおかずの作り方などがメイン。家事や育児を上手にこなすことを求められていました。いまは仕事も子育ても両立し、自分自身が輝ける行き方を求めるようになっています」。

答えは生活者のなかにある

旭化成ホームズは世の中の変化に合わせて住宅を開発してきました。1989年には、「共働き家族研究会」を発足させ、フルタイムで働く夫婦をターゲットに家事の省力化を提案しました。
ダブルボール洗面台や買いだめ可能な収納庫などを備え付けに。今でこそ当たり前なオープンキッチンも開発しました。
しかし、当時は時代がその発想に追いついていませんでした。開放的なキッチンは、あまりにも先進的だったのです。

河合氏自身も共働き世帯。
まだ子どもが小さかった2010年代、息子を抱っこして娘の手を引いて買い物していた際の思い出を話してくださいました。レジの女性から「お父さん大変ね、大丈夫?奥さんに逃げられたの?」と聞かれたと言うのです。
当時も調査では共働き世帯は増えているデータを示していましたが、まだまだ浸透するのは難しい。それを痛感したといいます。
「いつの時代も研究開発の出発点は生活現場です。今の時代もAIや新しい技術が出ていますが、正解は生活している人の現場にしか答えはないと思っています」と話しました。

2010年代に提供していた住宅は、家事に関心はあるものの、うまく取り組めない男性層を主なターゲットとしていました。
家族全員が使いやすいキッチンはどんなものかを考え、空間の真ん中に作業台を設置。子どもも手伝いができるようにし、調理時間もシェアすることで思い出作りにもなる場所を提供しています。

これからの時代に求められる住宅とは?

ここで河合氏から改めて課題の発表がありました。
テーマは「新しい住宅のサービス・商品の企画を行う」というもの。「皆さんの思う、こんな住宅やアイデアがあったら面白いなという考えを考えて見てください」と河合氏は話します。
そして「このときに使えるのが5W1Hのフレームワークです」。5W1Hは、いつ・どこで・なにを・どうして、といった要素を考えることで課題解決や企画発案を考えるフレームワークです。

課題の発表の際にはどんな住宅の提案か、どんな人がターゲット向けか、どんな工夫があるかをポイントに考えることを伝えました。
また「この企画が世の中や使用者にどんな役に立つのかを考えましょう。自分たちが楽しいだけで終わらないものを提案してください」と話します。

「皆さんに問いたいのは、今の世の中にどういった商品、住宅を提供するのか。ユーザーはどんなことに困っている?いまはどんな社会変化があるかを考えてみてください。そのためにはターゲット層を具体的に決め、実際に話を聞いてみましょう。検索では出てこないオリジナルな情報を使ってみてください」。

4班に分かれ、学生たちはグループワークを開始。
高齢化に着目する班や、30代の独身女性をターゲットする班など着眼点もさまざま。11月のプレゼンテーションに向かって資料作成に努力していきます。

担当教員からのメッセージ

3、4年のゼミ生は「都市と地域の社会学」と「ライフスタイルの社会学」というテーマに基づいてオリジナル報告を実施してきました。今回の講義は、家庭生活や働き方の変化をふまえた企業活動のお話だったので、学生もこれまでの社会学系の講義で学んできた事柄とのつながりを理解することができたようです。11月の発表に向けて、ヘーベルハウス/へーベルメゾンの取り組みをふまえながら、学生らしい提案ができるように奮闘中です!

ご多忙の中ご講義頂いた河合様、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年9月18日

2025年度食生活オープン講座にて、雪印メグミルク、SRAジャパンとコラボした特別講義が行われました。

8月26日(火)に食生活オープン講座(担当:生活科学部食生活科学科 松岡 康浩 准教授)にて、雪印メグミルクの和田玲司氏と日本サステイナブル・レストラン協会(SRAジャパン)代表の下田屋毅氏をお招きし、飲食店とサステナブルに関する特別講義が行われました。講義は夏季集中科目として開講されました。学生は、課題内容に関連する講義を受けたのち、2つの課題に関するグループワークを行い、結果を発表しました。食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科を対象に開講されている専門科目です。企業から提示される課題に取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。

課題について

一つ目の課題は「飲食店での紙パックリサイクル回収率アップへの対応策を検討する」です。和田氏から紙パックそのものの性質や、全国牛乳容器環境協議会が行っている紙パックリサイクルの取り組みについて、そして回収に関する課題が共有されました。紙パックがリサイクルに非常に適していること、リサイクルを行うことによってCO2の削減に貢献できますが、飲食店において紙パックのリサイクル率の低いことを説明。

二つ目は「シェフズ・サステナビリティマニュフェスト取り組み拡大への対応策を検討する」です。下田屋氏が携わっている農林水産省フードテック官民協議会「サステナブルレストラン推進ワーキングチーム」は、消費者がサステナブルを選べる仕組みづくりを行っている団体です。その一歩としてまずは飲食店や、料理を提供するシェフがサステナブルについて知ることが重要とし「持続可能な⾷の未来へ⽇本の料理⼈・シェフのサステナビリティ・マニフェスト:2030年へ向けた17 の指針(シェフズ・サステナビリティ・マニフェスト)」を策定。その周知を行っています。

学生はそれぞれの課題についてグループワークを行いました。

成果発表

講義を踏まえて課題に対するアンサーをグループでまとめて発表しました。

課題1に対しては、指導マニュアルへの組み込みや複数店舗での共同回収、回収率の見える化など、飲食店が現実的に行える行動変化の提案、回収量に応じたリワードや専用乾燥機の導入など、現場目線の提案を中心に様々なアイデアが発表されました。

課題2に対しては、自治体とのイベント開催や認証シェフイベント、マスコットキャラクター作成、SDGsとの連携による情報発信、SNSキャンペーン、賛同飲食店をキーワードの組み合わせで検索可能なサイトなど、来店者目線の提案がされました。

班の発表の後、ゲストの二人と先生を交えて意見交換とフィードバックが行われました。

授業の最後に

ゲストのお二人から総括のコメントをいただきました。

発表班と意見交換を行う和田氏、下田屋氏

和田氏は「皆さんの環境に対する意見、紙パックリサイクルに関する提案、しっかりと受け止めました。共有を行い、活かしていきたいと思います。今回の講義をきっかけとして、皆さんもリサイクルに対する意識をより一層高めてほしいと思います」とコメント。

 下田屋氏は「マニフェストに関して、これからどのように進めていくかアイディアをたくさんいただけてよかった。サステナビリティに関して飲食店側で様々な活動をしていますが、社会の構造上、消費者のニーズがないとつながっていかない部分があります。この場にいるみなさん一人一人が、サステナビリティに関する積極的な選択を重ねていくことが大切です」と総括されました。

 

担当教員のコメント

社会には今回取り組んだような課題がまだまだたくさんあります。
問題に関わる立場はその時その時で変わるかもしれませんが、
現状を知り、身近に感じ、より良い方向に向かって行動することは大変重要です。

2025年9月5日

学生が考案!丸紅プラックス株式会社の容器を活用したメニュー提案が、2025年度食生活オープン講座で行われました。

8月7日(火)に生活科学部 食生活科学科の専門教育科目である食生活オープン講座にて、丸紅プラックス株式会社(以下丸紅プラックス)から産業資材本部産業資材第二部主任の神谷裕美氏と管理本部総務人事部の先川祥弘氏をお招きし、課題に対する成果の発表が行われました。

発表の前に

食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科の学生を対象に開講されている専門教育科目です。企業から提示される課題に学生が取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。丸紅プラックスから提示された課題のテーマは「丸紅プラックスの容器を活用した弁当の提案」。学生が実際の店舗に足を運んだ市場調査と中間発表を経て、最終成果を発表しました。発表の後は学生間投票で優秀賞が決定し、賞状の授与が行われました。

1班:ベジっと!うどん

市場調査の結果、冷凍食品には選択肢が少ないこと、そして「野菜の豊富さ」を打ち出した商品が特に女性から支持されていることが分かりました。そこで1班は、野菜をたっぷり使った冷凍弁当「ベジっと!うどん」を提案しました。

ターゲットは、ヘルシーな食事への関心が高い女性層と、栄養バランスが課題とされる高齢者層です。蒸し野菜を中心に、鉄分・ビタミンなど不足しがちな栄養素を補えるように工夫し、消化の良いうどんと組み合わせることで、健康的で食べやすい弁当に仕上げました。

商品は透明なフタ付き耐熱容器で提供し、彩り豊かな見た目をそのまま楽しめる設計に。電子レンジで手軽に調理できる点もポイントです。冷凍・レンジ調理が可能な容器の特性を最大限に活かしています。パッケージは透明デザインを採用し、ロゴのみでシンプルに情報を伝える工夫がされています。

さらに「ベジっと!うどん」は主食やソース、トッピングを変えることで幅広いバリエーション展開が可能。実際に「ベジっと!ペンネ」などの試作も行われ、ソースによる味の違いが好評という結果が共有されました。

販売はコンビニやスーパーに加え、冷凍食品の強みを活かしたネット販売も想定。価格は700円以内に設定し、SNSでは「温活」「健康志向」といったキーワードを用いた発信を計画しています。学生が考案した商品である点もアピールポイントとしています。

2班:世界プチ旅行弁当

市場調査では、営業時間や店舗規模の異なるスーパーの弁当コーナーの比較を行いました。その結果、彩りや食体験を重視した弁当へのニーズが明らかに。これらを踏まえ、「目で楽しみ気分を変えられる世界を旅する弁当」をコンセプトに、世界各国の料理をブッフェ形式で選ぶことができる「世界プチ旅行弁当」を提案しました。

ターゲットは「海外旅行に行きたいけど行けない人」や「食による気分転換を求めている人」。購入者は、国ごとの代表的な料理を一品ずつ選び、区切りのある容器に盛り付けることで、異なる料理の味が混ざらない工夫を施しました。さらに、容器は多国籍認証であるFSC認証を受けたエコ素材容器を使用することで、環境への配慮もアピールします。

また、リピーター向けの仕掛けとして国旗ステッカーを取り入れました。料理に添えられている小さな国旗のピックを、耐久性のあるステッカー素材にすることで、コレクション性を高めました。加えて、展開例として各国のスイーツを集めたアフタヌーンティーボックスも紹介され、幅広い提案がされました。

価格は980円に設定し、プチ贅沢な特別感を演出しました。宣伝方法としては、店頭のPOPやSNS広告を活用するほか、ブッフェ形式ならではの特徴を活かし、購入者自身が「自分で選んだ弁当の内容」を発信することで話題性を広げる戦略としました。

3班:Salaporte(サラポルテ)

3班は、市場調査として訪れたデパート地下食品売り場で、サラダの需要の高さに着目しました。一方で、販売されている商品の多くは彩りが欠けていることを分析。これらを踏まえて、華やかな見た目と1日分の野菜の2分の1が摂取できるヘルシーさを兼ね備えたサラダボウル「Salaporte」を提案しました。この名称は、“サラダ”とフランス語で『運ぶ』を意味する“ポルテ”を組み合わせた造語です。

ターゲットは20~30代の健康志向の女性で、フルーツ・ナッツ・チーズを使用していることが大きな特徴です。近年SNSで華やかなサラダボウルが流行していることを背景に、彩り豊かなサラダを考案しました。

また、恒常メニューに加えて季節限定商品を展開し、旬のフルーツを楽しめる仕組みを提案。そして、容器は既存のものをベースに、ボタニカルなデザインとドレッシングを効率的に使用できる容器を提案し、フランス風のコンセプトと環境に配慮したエコ容器を組み合わせることで、脱プラスチックを意識した欧風イメージを打ち出しました。

デパートの地下食品売り場での販売を想定し、価格は800円~1200円と設定。自分へのご褒美や気分転換にもぴったりな商品としました。

4班:まんぷくミニパレードBOX

4班は市場調査として、価格帯の異なる複数のコンビニエンスストアを比較・分析。その結果、共通して「健康志向」と「環境意識の高さ」が重視されている点に注目しました。また、近年人気のグルテンフリー食品については、「健康的ではあるものの満足感に欠ける」という課題を抽出しました。

この課題を踏まえ、ダイエット中の人や健康志向の人、アレルギーを持つ人をターゲットにした「まんぷくミニパレードBOX」を提案しました。コンセプトは「目でも楽しめて、しっかり満足できるヘルシー弁当」。パレードのように多彩な料理が並ぶ楽しい見た目にすることで、食の制限がある人にも食べる楽しさを感じてもらえる工夫をしています。

メニューにはパンケーキ・フルーツのコンポート・キッシュ・ナゲットを採用。料理はすべて米粉や豆腐など、低アレルゲンかつ健康的な素材を使用します。「ナゲットに使用する豆腐はきちんと水切りを行う」など、調理法や食感にもこだわり、満足感のある味わいを実現しました。容器は区切りのあるタイプを使用し、多種類の料理を美しく盛り付けられるように配慮しています。

販促方法としてSNSや店頭POPを活用し、価格は900円程度を想定。販売場所としては、キッチンカー・スーパー・コンビニなど幅広い展開を計画しました。

5班:夏野菜チーズカレードリア

5班は市場調査を通じて、弁当における「健康志向の高まり」「季節感の演出」「彩りの工夫」が重視されていることを発見。これらの要素を取り入れ、20代を中心に幅広い世代に人気のあるカレーをベースにした「夏野菜チーズカレードリア」を提案しました。

ターゲットは、健康や食生活に気を配りながらも満足感のある食事を求める若年層や社会人です。旬の夏野菜をふんだんに使用し、見た目にも華やかで季節感のある一品に仕上げました。ごはんには雑穀米を取り入れて、彩りと栄養価をプラス。さらにカレーのルーに刻んだ野菜を加えることで、1食で1日の野菜摂取量の半分を補えるよう工夫しました。チーズは低脂肪のものを使用し、ヘルシーさにも配慮しています。

容器には、耐水・耐油に加えて冷凍保存やオーブン加熱も可能な素材を採用。調理の流れとしては、製造後に冷凍保存し、販売店では冷蔵保存で管理。提供時にはオーブンでチーズに焼き目をつけることで、アツアツで香ばしい状態で販売できるようにしました。

冷凍保存が可能な点を活かし、販売数に応じた柔軟な調整が可能となり、フードロス削減にもつながります。さらに、テイクアウト販売にも対応可能なため、キッチンカーなど多様な販売形態の展開も可能です。

宣伝方法としてはSNS広告や店頭看板を活用し、弁当の価格は750円程度を想定。夏の暑さで食欲が落ちやすい時期にも、野菜たっぷりで満足感のあるヘルシーな一品として提案しました。

6班:夏バテ防止スープカレー弁当

6班は市場調査として、揚げ物弁当専門店や駅併設の商業施設の食品売り場を訪問。その結果、弁当における「見た目の美しさ」や「売り場のライスの選択肢の豊富さ」の2点に注目しました。この調査を踏まえ、旬の野菜に素揚げのひと手間を加えた彩り豊かな見た目と、選べるご飯で楽しみ方を広げられる「夏バテ防止スープカレー弁当」を考案しました。

食材には立川産の野菜を使用し、地産地消を意識することで地域とのつながりを大切にしながら、ヘルシーで満足感のある商品を目指します。ご飯は、白米・ターメリックライス・雑穀米の3種類から選べる形式とし、リピーター獲得を狙っています。

ターゲットは「立川に勤務する健康志向のオフィスワーカー」。通勤途中や昼休みに手軽に購入できるよう、キッチンカーでの販売を想定しています。価格は900円程度に設定し、ランチとして無理なく購入できる価格設定としました。

販促ではSNS広告を活用し、地域限定ターゲティングを実施。「地産地消」や「一食で手軽にたっぷり野菜」などのキーワードを軸に商品価値を発信します。

7班:からだ想いの彩り弁当

7班は市場調査において、店舗ごとの売り方の違いや共通点を比較しました。その結果、弁当選びにおいて「健康志向」「環境への関心」「見た目の美しさ」が重要な要素であることが明らかになりました。加えて、栄養の偏りやフードロスといった社会課題にも着目し、これらを解決する「からだ想いの彩り弁当」を提案しました。

ターゲットは健康志向の女性。旬の野菜を豊富に使用し、「季節のごはん」「豆腐入りつくね」「トマト入りだし巻き卵」や「だし茹でにんじん」など、彩り鮮やかでヘルシーな料理を盛り込んでいます。容器は多くの料理を美しく分けて盛り付けられる構造を採用しました。

食材には、規格外野菜を活用してフードロスを抑え、地元産野菜を使用することで地域経済の循環にも貢献します。さらに、販売エリアに合わせて中身をカスタマイズできる柔軟性も備えています。

販売場所はデパートの地下食品売り場を想定し、価格は1000円前後に設定。和食の持つヘルシーさと、美しさを兼ね備えた商品として、現代のライフスタイルに合った形で「和の食文化」を発信します。

授業の最後に

すべての班の発表が終了したあとは、最優秀賞を決める学生間投票が行われました。学生たちは事前に配布された評価シートをもとに、他班の発表を評価し投票を行います。

結果はなんと、1班と2班が同率一位という接戦に。最終的に神谷氏と先川氏の協議の結果、「容器について深堀していた」という観点から、最優秀賞は1班に決定!受賞した1班には賞状が授与されました。

授業の終わりに、企業担当者のお二人から授業の総括のコメントをいただきました。

神谷氏は「初回講義で容器の説明をさせていただきましたが、その特徴をしっかり理解していると感じました。商品の提案に至るまでの市場調査など、想像以上に熱心に取り組まれていて参加させていただいて本当によかったです。多くの班が宣伝方法にSNSの活用を挙げていましたが、SNSを使って世の中にどう広めていくかという点は、実際に今課題として抱えています。SNSを活用しようとする姿勢は今後社会に出てからも活きていくと思います」とコメントされました。

先川氏は「調査をしっかりしたうえでターゲットを明確にし、それに向かってアプローチしていく姿勢は、将来仕事をしていく上で大切な考え方だと思います。プレゼンテーションでは、ただ話せることに加えて、プレゼンツールの活用や相手の意図・気持ちを理解した提案が重要になっていきます。今回の経験を通して学んだことを、今後も継続していくことで、将来必ず役立つはずです」と発表をきいた感想を述べました。

担当教員のコメント

食品の流通・販売において「容器」は欠かせない存在です。丸紅プラックス株式会社様は、環境に配慮したエコ容器「EUCALP(ユーカルプ)」を開発されており、今回この容器を活用したお弁当のメニュー開発という貴重な課題を提案してくださいました。連携がスタートした5月、神谷様よりユーカルプの特徴をご説明いただき、これをもとに学生たちは7月の中間発表に向けて市場調査や試作を重ねました。私からは、「ユーカルプの特徴を最大限に活かすこと」と「丸紅プラックス様の容器だからこそ実現可能な提案であること」を強く意識して取り組むよう伝えました。
最終発表では、すべての班がこの視点を反映させ、学生らしい個性豊かな発表を行ってくれました。特に1・2年生が中心で調理実習の経験も浅い中、各班が何度も試作を重ね、自分たちのお弁当の写真を使って堂々とプレゼンテーションをしてくれたことは、とても頼もしく感じました。丸紅プラックス株式会社のお二人からいただいたご講評にもありましたように、この経験は今後の社会人生活において必ず活きるものと確信しています。
神谷様には各班の発表ごとに大変前向きなフィードバックをいただき、学生にとって商品提案を考えるうえで貴重な学びとなりました。今回の社会連携授業は、学生にとって非常に実り多い経験となったと感じております。改めまして、神谷様、先川様をはじめ丸紅プラックス株式会社の皆様に心より御礼申し上げます。

生活科学部食生活科学科 守田 和弘 准教授
2025年9月2日

学生が考案!株式会社東京サマーランドで販売を想定したメニューの提案が、2025年度食生活オープン講座で行われました。

8月7日(火)に生活科学部 食生活科学科の専門教育科目である食生活オープン講座にて、株式会社東京サマーランド(以下サマーランド)から経営企画室課長の田村 修平氏と経営企画室兼営業推進部企画宣伝課の高見 哲平氏をお招きし、課題に対する成果の発表が行われました。

発表の前に

 食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科の学生を対象に開講されている専門教育科目です。企業から提示される課題に学生が取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。サマーランドから提示された課題のテーマは「プール遊園地施設における商品提案」です。5月末に実施された現地調査と中間発表での意見交換をふまえ、各班が試行錯誤して、考案・開発した最終成果を発表します。

1班:スノーバーガー

1班は現地調査で、天候によって来場者の行動が変化すること、ファミリー層が多いことを分析し、飲食の簡便さと軽食に需要があることに着目。「現地調査で食べたバーガーのバンズがおいしかった」という経験から、アイスをバンズで挟んだ「スノーバーガー」を提案しました。

ハンバーガーのバンズにアイスがサンドされている見た目のインパクトで、映えるビジュアルを実現。手を汚さずに食べられる工夫を取り入れたアイスの提案をしました。さらに、バンズを事前に仕込むことにより提供時の工程を削減。約1分で商品を提供できるスムーズさと、アイスとバーガーの意外な組み合わせの斬新さで、購買意欲を高めます。販売戦略としては、SNSでのハッシュタグ活用やインフルエンサーとの連携を予定。販売価格は500円としました。

2班:ぱちぱちストロベリーソーダ

2班は、現地調査から、飲食を持ち込みをしている来場者であってもつい購入したくなるインパクトが強い商品に集客力があること、屋内の暑い環境では冷たいメニューの需要が高いこと、また飲食の持ち込みをしている来場者ほど軽い飲食物を購入する傾向にあることを分析。自分でひと手間加えて完成させる体験型のフードに着目し、口に入れるとぱちぱちはじける粉末を自分でドリンクに入れる「ぱちぱちストロベリーソーダ」を提案しました。

「ぱちぱちストロベリーソーダ」はアクティブさを邪魔しないベリーと炭酸のさわやかさと鮮やかなビジュアルで、五感を使って楽しむことににこだわったドリンクです。試作段階では「ぱちぱちと弾ける音が10-20分ほど持続していた」と、味や見た目だけでなく音でも楽しめる”五感”で味わう体験型ドリンクを実現。ターゲットは20代の若者とし、価格は手の届きやすい500円と設定しました。宣伝方法にはSNSの発信や場内看板を活用し、多くの来場者に魅力を伝えます。

3班:シャリっとサマージェノベーゼ

3班は現地調査の結果、既存のフードには冷たい主食がないことに着目。加えて、夏に求められている食の要素として「あっさりとした味付け」が好まれること、夏野菜の中ではトマトが人気であるという調査結果を重ね合わせ、冷凍トマトを使用した「シャリっとサマージェノベーゼ」を提案しました。若い女性や家族連れの母親をターゲットに、こってりした味付けが多い既存のフードとの差別化を狙いました。

フローズントマトを使用することで、時間がたってもひんやりと冷たい状態を保つことができる食事を実現。他の材料はジェノベーゼソース、エビ、チーズを使用し、さっぱりとした味で満足感のあるフードを目指しました。

販売価格は、園内の既存フードの価格を参考に、1000円と設定。SNSでは実際に食べている様子を発信し、購買意欲を高める戦略としました。

4班:青空ふわもこソーダ

4班は現地調査の際に購入した、自分で手を加える体験型フードに着目。手を加える楽しさとロゴ入りドリンクをコンセプトに「青空ふわもこソーダ」を提案しました。

作り方は、カップの側面に雲に見立てた生クリームを塗布し、そこにバタフライピーティーと炭酸水を注ぎ、仕上げに綿あめを乗せてロゴ入りのストローを指して完成です。青空を表現するためのバタフライピーティーの配分にこだわり、試作では最もきれいに青空を再現できる色味を検討しました。

ターゲットは中学生から20代までの若年層。販売価格は手に取りやすい700円に設定。販促にはSNSを活用し、綿あめを溶かしながら飲む様子を動画で紹介し、「実際にやってみたい」と思わせ、購買意欲につなげます。

授業の最後に

発表後、田村氏と高見氏による協議を経て、最優秀賞が決定しました。

見事受賞したのは4班の「青空ふわもこソーダ」。賞状の授与と、副賞としてサマーランドワンデーパスが贈呈されました。

授業の終わりに、企業担当者のお二人から総括のコメントをいただきました。

田村氏は「提案していただいたメニューはどれも独創的でした。発表の中に動画を取り入れていたチームがあったと思います。昨今SNS発信では動画の活用が非常に多いです。特にショート動画(15-60秒の動画のこと)のように、短時間でインパクトを与える手法は、現在のニーズに合っていると感じました。サマーランドとしては飲食店の回転率も重要視しており、その点で調理工程がシンプルであることは大事な視点です。どの班もすばらしい発表でした」とコメント。

高見氏は「発表内容はとても素晴らしかったです。プレゼンテーションにおける見やすさや伝わりやすさの工夫は、経験を重ねることで身についていくものだと思います。発表する環境によっては、資料の色使いなどにも配慮されるといいと思います。また、サマーランドの客層や来場者の行動は季節により大きく変化します。今の時期は夏休みのため、ファミリー層に加えて学生も多く来場します。今回の視察での分析が非常にしっかりしていたからこそ、変化を想像し別の視点で考えるとどのような結果になるのかも興味深いと感じました。今後同様の発表の機会があれば、そうした点にもぜひ意識を向けていただけたらと思います。」とフィードバックしました。

担当教員のコメント

プール遊園地施設における商品提案という課題に対して、東京サマーランドの方から、お客様視点ということが重要視されました。

現地視察の日はあいにくの天気でしたが、参加した学生は、施設を楽しみ、それぞれの視点で園内の環境や飲食店のメニュー、客層など詳細に分析することができました。その成果が最後の提案発表につながっていたと感じます。また、発表後のフィードバックでもご意見をいただき、調理設備や使用できる材料、回転率重視など、商品提案の難しい部分も感じることができたことは、大変よい経験となったのではないでしょうか。

東京サマーランドの田村様、高見様には、講義から始まり、現地でのご案内、最終発表のご講評まで関わっていただき、改めまして、お礼申し上げます。おかげさまで学生達はやりがいを感じながらも楽しく授業に取り組むことができました。

一連の活動が、自信となり今後の学びや課外活動につながることを期待します。

生活科学部食生活科学科 中川 裕子 准教授
2025年8月28日

2025年度キャリアデザインの授業で、オリエンタルランドとコラボした課題に対する発表が行われました。

7月8日(火)にキャリアデザイン(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、株式会社オリエンタルランド(以下オリエンタルランド)からマーケティング本部コンテンツ開発推進部長の横山政司氏と、マーケティング本部コンテンツ開発推進部ロイヤルティマーケティンググループマネジャーの伊藤大樹氏を招き、課題に対する提案が行われました。今回学生が取り組んだミッションは「あなたは、コンテンツ開発推進部に配属されたオリエンタルランドの新入社員です。人口減少社会でハピネスを提供し続けるために、Z世代のファンダフルディズニー会員を獲得する施策を提案してください」。学生たちは2週間かけて取り組んだプランを提案しました。課題が発表された授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8806/)。

全部で9つの班が発表を行い、伊藤氏から最優秀賞と優秀賞が発表されました。今回は受賞したふたつのグループの発表内容を紹介します。

最優秀賞:1班

ターゲットは、比較的時間と経済的余裕のある大学1~4年生に設定。ターゲットを対象としたアンケート調査を、インスタグラムとグーグルフォームを用いて行いました。その調査結果から、そもそもファンダフル・ディズニーを知る機会が少なく、特典の魅力も十分に伝わっていないことを課題として設定しました。また、ファンのニーズと会員特典が合致していないのではないかという点も課題に挙げました。

ファンのニーズと会員特典の合致を目指し、「コース別ファンダフル・ディズニー」を提案。入会時に「アトラクション」「フードとショー」「グッズ」の3つから希望のコースを選べる制度で、それぞれのコースに沿った特典が用意されます。既存会員も追加料金なしでコースを選択可能とし、満足度の向上と離脱防止を図ります。

さらに、会費については、年払いに加えて月払い制度の導入も提案。大学生にとっては、月払いの方が加入の心理的ハードルを下げやすいので、まずは月払いで気軽に入会してもらいます。そして、会員を継続する中で年払いへ移行する流れを想定しています。また、段階的に外国籍の方の入会も視野に入れるなどの方針を紹介しました。

最後に、認知度向上のためにZ世代に人気のインフルエンサーを起用したSNS発信や、駅構内での広告展開を組み合わせたマーケティング戦略を提案。認知を広げ、自発的な興味・検索行動へとつなげることを狙いました。

伊藤氏は「調査結果を反映させて終わりではなく、既存のコンテンツとの違いを出すためにどうしたらよいかを掘り下げて検討し、「コース別」という切り口の提案にたどりついたのは面白かったです。認知度の課題に対しても具体的な提案をしてくれました。発表も、アンケート結果を出発点に全体の施策につなげていく構成で、ストーリーが見えやすく、非常に良い提案でした。」と受賞理由を紹介しました。

優秀賞:6班

ターゲットを「地方在住のZ世代」と定義し、課題として以下の2点を挙げました。1つ目は、地方に住んでいるとパークに何度も行けず、お金もかかるため、地方在住のZ世代にとって入会のメリットが感じづらいこと。2つ目は、情報発信が首都圏在住者やリピーター向けに偏っており、ファンクラブ自体の認知度が低いことです。

そこで、地方在住のZ世代を対象に「出張ファンダフルイベント」を提案しました。これは、キャラクターが実際に各地域を訪れ、パークでは見られないご当地限定衣装での撮影会、抽選でのグッズお渡し会など、直接ふれあえる体験型イベントです。地方でディズニーパレードを実施した際に大きな反響があった事例を挙げ、地元でディズニーを楽しめる機会には高い需要があると説明しました。これは、パークに行きたくても距離や費用の面で難しいZ世代に、魅力的な体験を提供できるという提案です。また、参加者によるSNS投稿を通じて、ファンクラブの認知拡大や入会促進も狙います。

さらに、SNS上でファンクラブコンテンツの一部を公開し、全貌は会員のみ閲覧可能にすることで、「会員になる特別感」を演出することも提案しました。実際に同様の戦略で、ファン限定コンテンツの会員数が3倍になった成功事例も紹介し、SNSと会員制の連動による効果の高さを強調しました。

この施策を通じて、地方にいてもディズニーの世界観に触れられる機会を提供し、新規会員の獲得と既存会員の継続意欲の向上を目指します。

伊藤氏は「遠方に住んでいて来園が難しい方にどのようにつながりをもってもらうか、という点は我々も課題に置いていたところです。地方で行うファンミーティングなど、いろいろなことをやりたいと考えていたので、共感する内容が非常に多い提案でした。」と受賞の理由を紹介しました。

授業の最後に

受賞したグループには記念品としてディズニーグッズが贈呈されました。

1班
6班

伊藤氏から「短い期間でここまでの提案内容を仕上げたことが素晴らしいと思います。全部で9つの班の、若い世代の声が反映された発表を聞いた時間は非常に有意義なものとなりました。特に知名度の低さとSNS活用の意見は受け止めて、ファンダフルを運営しているチームにもしっかり共有させていただいて、この先につなげていきたいと思います」とコメント。

横山氏からは「ターゲット設定はどのグループも苦労したと思います。ターゲットの掘り下げをさらに行うと、より詳細なアプローチを提案できたと思います。顧客の解像度をどんどん高めていかないと、適切な提案は行えません。この視点は社会に出てから重要になります。今回の提案に当たりアンケート調査を実施したことはよかったのですが、アンケートでは見えてこないターゲットのリアルなニーズをつかむことは提案を行う上で非常に大切です。社会人になったら、ぜひ意識していただければと思います。」と総括の言葉をいただきました。

担当教員のコメント

毎年、多くの学生が楽しみにしている「キャリアデザイン」におけるオリエンタルランド社との連携講座が行われました。本年度も、昨年と同様とてもリアルなテーマを出題いただき、学生にとってのハードルは例年以上に上がったものの、深く企業や、仕事のことを考察する時間となりました。学生にはとても身近な企業であるものの、やはり仕事という側面で考えることは、本当に意義ある取り組みになったものと考えます。

横山様には、毎年、中間段階でのフィードバックを含め、プレゼンテーション当日まで、ご丁寧にアドバイスをいただき、学生にとっては、仕事の厳しさも学ばせていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。就職活動を目前に控えた学生にとって、働くこととは、仕事とは、そして企業とは、一人一人が自らと向き合い、限られた時間でチームとして成果を出すことの重要性など、どこまで深く考えられるかが重要であることに気づいて貰えればと考えています。横山様、伊藤様には、改めて感謝申し上げます。

2025年8月28日

2025年度国際理解とキャリア形成の授業で、スポーツニッポン新聞社コラボ冬季オリンピックに関する課題に対する発表が行われました。

7月15日(火)に国際理解とキャリア形成(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、株式会社スポーツニッポン新聞社から編集委員の藤山健二氏、ビジネス開発局の池田智子氏、記者の佐藤博之氏を招き、課題に対する成果の発表が行われました。当日の様子は、7月16日付の朝刊に掲載されました。

発表の前に

この発表は、4月に発表されていた「オリンピック(特に冬季オリンピック)の持続性について」という課題に対して、解決策を提案するものとなっています。学生ならではの自由な発想が求められました。★課題が発表された授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8135/)。

藤山氏から「スポニチ賞(最優秀賞)の景品を用意しました。スポニチのロゴグッズと、長野五輪の関係者用参加証明メダルです」と当時の関係者のみ所有している非売品のメダルの授与を発表し、学生からは驚きの声が上がりました。

本記事では全8グループの発表のうち、4グループの提案を抜粋して紹介します。

7班の発表

オリンピックの持続可能性の現状として、開催都市の財政負担や財務面の不透明性、閉会後に施設が使用されず廃墟化してしまう「負の遺産化」の問題に触れ、SDGsとの乖離があることを指摘。

解決策として、まず透明性の高い資金調達手段であるクラウドファンディングを提案しました。費用の用途を明示することで広く支援を募り、支援者には公式グッズのリターンなど特典を用意します。

次に、大会後の施設を地域住民向けの健康増進施設としてリノベーションし、売店収益を活用して改修費用の一部を補う案が示されました。維持費に悩む施設を長く運営していくための施策です。健康増進や地域交流を狙った施設を運営し、持続的に地域に貢献する拠点とすることで、一時的なものではなく地域資源として生かす方向性を提案しました。

クラウドファンディングによる費用負担の軽減、リノベーションによる施設の有効活用、そして施設利用を通じた市民の健康促進を狙い、あるものを活かして次につなげることで開催後も地域住民がオリンピックと共にあることを目指しました。

藤山氏は「IOCに入る収益の多くは選手の競技団体に分配されています。特に恵まれない小さな競技の資金源になっている背景があります」と補足。「クラウドファンディングを取り入れるという視点は大変面白いとおもいました」とコメントしました。

6班の発表

6班はオリンピックの持続可能性について、環境の観点から考察しました。現在は一国で開催されるため、大規模な施設の建設や運営にかかる費用など、さまざまな問題が一国に集中し、開催国に大きな負担を強いています。また、競技場などの施設を建設するために森林が伐採されたり、開催期間中に大量の観光客が訪れ、ごみの分別が困難になるなど、環境への悪影響も懸念されています。

こうした課題に対し、地域に応じて競技を分散開催する「複数国開催」のオリンピックを提案しました。メリットとして、以下の3点を挙げました。

1つ目は、金銭的負担の軽減です。複数国で費用を分担することで、開催国ごとの負担を抑えることができます。2つ目は、競技環境の向上です。選手村の質や競技環境が不十分で実力を発揮できない問題に対し、開催規模を抑えることで柔軟に対応できると考えました。3つ目は、国際交流の促進です。複数国で同一のイベントを実施することで、開催国同士の連携が生まれ、交流が活発になると期待されます。

一方で、複数国開催による観客の移動負担というデメリットにも言及し、対策としてストリーミング配信の活用や航空会社との連携強化を提案しました。こうした工夫により観光客の往来が活発になり、世界経済にも好影響をもたらすと考えました。

藤山氏は、「金銭的な問題などにより、一国でオリンピックを支えることが難しい時代になっているのは事実ですが、さまざまな国のアスリートが一つの国に集い、交流することは、オリンピックの大切な要素の一つです。複数国開催については、そうした価値観との折り合いをどうつけていくかが、今後の課題です」と述べ、提案の中で指摘されたオリンピックの現状の課題を話しました。また、「スポーツを通じた国際交流という考え方には、確かにそうなってほしいという思いがあります」とコメントし、提案への共感も示しました。

8班の発表

8班は地球温暖化による降雪量の減少と、それに伴う冬季オリンピックでの人工雪の使用率の高さに着目しました。人工雪の生成には大量のエネルギーが必要であり、また自然雪に比べてアスリートのパフォーマンスに悪影響を与える可能性が高い点が課題として挙げられました。

さらに、自然雪で冬季オリンピックを開催するには、豊富な自然降雪、安定した低気温、標高差のある山岳地帯といった競技に適した環境に加え、選手村やメディアセンターなどの施設を建設できる広大な土地や、空港・鉄道・道路などの交通インフラの整備も求められると説明されました。

そこで、都市開発とオリンピックを組み合わせた「未開発地域での開催」が提案されました。これは、降雪地帯の未開発地域で都市開発を行い、人工雪に頼らず高水準の競技環境を整備しつつ、地域の復興や活性化を図る施策です。

具体的な候補地として、国内では岩手県八幡平市をはじめとする東北地方の山間部、国外ではノルウェー北部のトロムス地方などが紹介されました。これらの地域は自然環境に恵まれている一方で、環境規制の厳しさや、北極圏に近いため日照時間が短いといった課題もあると指摘されました。

自然雪に恵まれた地域を、オリンピック開催に向けて計画的に整備することで、競技環境の質を高めると同時に、大会終了後も施設を活用して地域に長期的な価値を残すことを目指しました。

藤山氏は「雪のあるところで開催するという提案で止まらず、具体的な都市名を出してくれたことがよかった。環境保護の観点から、本当に実施するとなったときには反対の意見もたくさん出ると思いますが、地域を一つではなく複数あげてくれたことも、検討の幅を感じることができよかったです」とコメントしました。

5班の発表

5班は「持続可能なオリンピック」に向けて、3つの課題とその解決策を提案しました。

第一の課題は、大会終了後の施設の利活用や、地域住民への影響です。これに対し、仮設スタジアムを活用し複数都市で競技を実施する「分散型オリンピック」の導入を提案しました。また、FSC認証木材を使ったプレートにメッセージを記入し、ツリー型のパネルに掲示する「メッセージツリープロジェクト」も提案しました。このプロジェクトでは、地域住民の声や選手への応援メッセージを集めて掲示し、終了後は地元施設に展示することで、地域と一体となった大会運営を目指しました。

第二の課題は、環境への影響、特に大会期間中に発生する未分別ごみの問題です。この課題に対しては、楽しみながら環境意識を高める「スポGOMIオリンピック」と「分別オリンピック」を提案しました。「スポGOMIオリンピック」は、ごみ拾いの質と量でポイントを競うイベントです。「分別オリンピック」は、ごみをいかに速く正確に分別できるかを競います。これらの優勝チームには、FSC認証木材で作られたオリジナルの木製メダルを授与し、森林伐採などの環境問題への関心も促します。

第三の課題はフードロスです。東京大会では、IOCの要請により多種多様な食事を常時用意していましたが、食材の管理が難しくなり、結果として大量の食品廃棄が発生しました。これに対しては、アプリによる事前予約制の導入に加え、『もったいない弁当』の提供を提案しました。「もったいない弁当」は通常は廃棄されがちな可食部を使用した弁当で、フードロス削減と同時に、サステナブルな取り組みとしての話題性も狙いました。

藤山氏は「FSC認証木材に注目したエコ金メダルの発想はとてもいいですね。実際にメダルを獲得した選手が地元に凱旋した際、自治体が記念としてFSC認証木材製のメダルを贈呈を行ったり、東京オリンピックではメダルケースをFSC認証の木材で制作しています。ゆくゆくはオリンピックのメダルも木製になるかもしれません」とコメントしました。

授業の最後に

全ての班の発表が終わり、ゲストの三名による審査を経てスポニチ賞が発表されました。

受賞した班は8班。

藤山氏は「三人でどれがいいか意見が分かれました。皆さん本当に素晴らしかった」と全員の頑張りをねぎらいつつ「具体的な開催地まで一歩進んで言及していた点を評価しました」と受賞理由を説明。景品の授与が行われました。

藤山氏は「皆さんのプレゼンテーションを聞かせていただいて、とても楽しかったです。中身について本当に差はありません」と発表全体を振り返り、授業全体の総括として、前回授業で行った岡崎朋美氏との対談内容に触れ「岡崎さんが対談の中で話していた『なぜできないのかではなくどうしたらできるか』と考えるポジティブさは大切。困ったときはこの考え方を思い出して頑張ってもらえたら、きっと楽しい学生生活を送っていただけると思います。オリンピックメダリストの話を直接きいたという特別感も、覚えておいてもらえたらなと」と総括されました。

★オリンピックメダリスト元スピードスケート選手の岡崎朋美氏との対談が行われた授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8695/)

担当教員のコメント

「東京2020」の開幕前からスポーツニッポン新聞社様にご支援をいただき、8年の歳月が流れたことになります。その間には、東京2020の延期と無観客開催から昨年のパリ五輪まで、オリンピック・パラリンピックに関しても様々な話題があり、と同時に課題も浮き彫りになっています。
今年は、初めて冬季五輪に視点を当て、日本女子スピードスケート界のレジェンド岡崎朋美選手にもお越しいただき、特に冬季のオリンピックパラリンピックの持続可能性について考えてきました。
スポーツニッポン新聞社の藤山さん、池田さん、佐藤さんには本当にお世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年8月13日

発見したことを共有しよう!「演習Ⅱa」の授業で、複数のカフェのSNS分析とフィールドワークの成果を共有する中間発表を行いました。

5月28日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)で、猿田彦珈琲とのコラボ授業が行われました。この日は、4月に企業から出された課題に取り組む過程で発見したことを共有する中間発表。代表取締役の大塚朝之氏をはじめ社員の皆さんを前に、実際に店舗へ行って感じたことなどをプレゼンしました。

フィールドワークで発見したことを発表!

学生たちに出されている課題は「猿田彦珈琲のSNSについて考えよう」。
ターゲットは20代で、猿田彦珈琲のファンになってもらえる投稿を提案することです。
そのためのフィールドワークとして、先週クラスの皆で道玄坂通店へ来店。そのときに感じたことや課題に生かせそうなことをまとめてきました。

この日も学生たちの手元にはアイスコーヒーが配られました。
「緊張するかと思いますがリラックスしてやってください」と芸人でもある平岡佐智男氏が話し、発表が始まりました。

対応の良さをアピールするには?

トップバッターはE班です。
ターゲットを20代前半の女性に定め、新規顧客の獲得を重視した投稿案を考える予定です。
フィールドワークで感じたこと、発見したことを学生それぞれが細かく発表し、大塚氏からも「すごいね」と感嘆の言葉をいただいていました。
そのなかで特に「店員の対応がとても良い」ことに注目。
平岡氏から「店員の対応が良いというメリットをSNSでどうアピールしますか?」と質問され、学生は「対応している最中の動画を出すとか、大切にしている言葉をピックアップすることなどを考えています」と答えていました。

2番手はB班。
大学生をターゲットに、スイーツに焦点を当てる投稿を考えています。天井が高く、店内の雰囲気が良いためちょっといい時間を過ごしたいときに使ってもらえるようアピールする作戦。
特に一口サイズのクッキーなど、摘まめるものがあることに着目していました。

大塚氏からは「スイーツでカフェを選ぶことは多いですか?」という質問が。
学生は「SNSでチェックしてスイーツをみて行ってみようと思うことはある」と回答し、「スイーツを頼むときは必ず飲み物も頼む。スイーツを基準に飲み物を決めるときもあります」と話し、大塚氏も頷いていました。

マイナスポイントも次に生かす

次のA班からは残念だった体験も。
グラスに美しく入った写真に惹かれて「ブルーベリーバイオレットフロラッテ」を頼むも、提供は紙コップで中身が見えなかったということ。
「グラスやプラカップなど透明なものに入っていれば、写真も映えるため雰囲気が演出できると思います」と発表すると、企業の皆さんも納得したように頷いていました。

D班もスイーツ系や期間限定商品を押し出していくことを考えています。
公式サイトやSNSに載っていないスイーツやフードが、実際には種類が豊富にあり驚いたと発表。
「事前に公式サイトを見てから行きましたが、あんまり種類がなく残念だと思っていたので驚いた」と話しました。
大塚氏から「公式サイトでフードやドリンクの情報を調べますか?」と質問があり、「初めて行く場合は見ることもあります」と回答しました。

店舗ならではの良さを発見

続いてC班。
季節限定などだけではなく、その日の天候や気温などに合わせてオススメ商品を紹介するなど、日常的な投稿案を考え中です。
店内は落ち着いていて一人で作業する人もいますが、学生たちが普通の声量で話したり笑ったりしても大丈夫な雰囲気で、過ごしやすかったと話しました。

最後のF班は、映えだけではない、猿田彦珈琲独自の落ち着いた雰囲気が伝わるような投稿を目指しています。
道玄坂通店には、靴を脱いで上がる畳敷きの小上がりがあります。インバウンドの方向けの和風の雰囲気を重視したそのスペースを、班のメンバーが体験。
「他のカフェと違い、足を伸ばしてリラックスできた」と感想を語りました。
メンバーが頼んだものは、フルーツをメインにしたスイーツドリンク。
それを見て「期間限定商品などはフルーツ系の商品が多いのですが、コーヒーを使った商品でも飲みたいと思いますか?」と平岡氏から質問。
気分に合えばもちろん飲みたいと学生たちは回答しました。
最終プレゼンでコーヒーを使った新商品の提案もしてみようという話も出ました。

最終プレゼンに向けさらにレベルアップ

全部の班の発表を終え、企業の皆さんからは「みなさんとても考えていてすごいですね」という感心の声が。
6月に行われる最終プレゼンテーションへの期待が高まりました。
最終プレゼンでは、SNSへの投稿案というのがメインの課題ですが、どんな提案もNGはありません。
新商品の提案や、提供の仕方など実際にフィールドワークから思いついた発想も活かし、自由に提案します。
学生たちはさらに1ヵ月かけてグループワークを行い、企画の完成度を高めていく予定です。

担当教員からのメッセージ

 4月30日の初回連携授業から5月28日の中間発表まで、約1か月の期間がありましたが、5月7日は本学の創立記念日のため授業はなく、実質2回の授業を経て中間発表を迎えることになりました。
 この演習を履修している学生には、前期14回分の授業計画をあらかじめ示しており、ゴールデンウィークなど授業がない期間にも、猿田彦珈琲からいただいた課題に対応するために、意識的に「よく見るInstagraやXを参考に、フォロー・リツイート・コメントが多い投稿の特徴を分析する」という課題に取り組むように伝えていました。
 5月14日の授業では、「インスタグラムの分析(フォロー、リツイート、コメントのあるインスタグラムとは?)」をテーマに、猿田彦珈琲のInstagramまたはXの投稿を、チームごとに分析しました。
 また、5月21日には、猿田彦珈琲のお取り計らいにより、道玄坂通店でのフィールドワークを実施することができました。学生にとっては「猿田彦珈琲って?」「行ったことがありません」という状態からのスタートだったため、店舗の雰囲気やスタッフの皆さまの接客の様子、商品ラインナップ、顧客層などを観察・確認するとともに、それぞれが思い思いに商品を注文し、飲食できたことは非常に貴重で、「百聞は一見に如かず」を実感する良い機会となりました。
 学生はあらかじめ猿田彦珈琲のInstagramやXのほか、他のカフェや女子大生に人気のブランドのSNSも観察し、「SNSを活性化させるとはどういうことか?」を自分なりに考えてから現地に赴きました。そして、「誰に」「何を」「どのように」伝えることが、課題解決に結びつくのかについて、店舗での経験を踏まえて検討を重ねました。

 そして迎えた本日の中間発表会では、各チームがそれぞれの視点から猿田彦珈琲を分析し、その成果を発表することができました。猿田彦珈琲の皆さまからは、驚きや喜びのお声をいただく場面もあり、次のひと月で何を加えていけるかが私自身の課題になりました。
 
 最後になりましたが、ご多忙の中ご対応いただきました猿田彦珈琲道玄坂通店のスタッフの皆さま、また中間発表会にご出席くださった大塚社長、平岡様、田岡様、上田様に、心より御礼申し上げます。今回は、当時「東京大学 Special Edition店」でしか味わえなかった「濃縮カスタムミルクラテ」を差し入れとしてご提供いただきました(6月21日より全店舗で販売開始)。重ねて感謝申し上げます。

【フィールドワークと中間発表会の様子はこちらからも知ることができます!】
https://www.jissen.ac.jp/learning/human_sociology/blog/2025/shinozakizemi_20250530.html)

https://www.jissen.ac.jp/learning/human_sociology/blog/2025/20250613_shinozakizemi.html
2025年8月5日

社会人にはどんな力が必要?「実践プロジェクトa」の授業でサントリーの新人研修を考える課題のプレゼンテーションを行いました。

7月11日に「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、サントリーホールディングス株式会社(以下サントリー)とのコラボ授業が行われました。この日は6月に企業から出された課題に対しての最終プレゼンテーション。課題は「サントリー社員として、サントリーの新人研修を考案すること」です。中間プレゼンを経て、内容をよりブラッシュアップして臨みます。学生たちはサントリーの髙橋氏、斎藤氏を前に自信をもってプレゼンしていました。

グループワークで「協働力」を付ける

最初の発表は6グループから。
「協働力」にフォーカスした一週間のプログラムを考案しました。
アンケート結果から、日本の若者は輪を乱さないことを重要視する傾向があると分析。
しかし協働力とは周りと合わせることではありません。違う考えでも一緒に仕事をして、結果を出すことができる力です。
サントリーの大事な資源である「天然水の森」に関わる地域課題に取り組むことで協働力を高める、としました。
発表後の講評で、斎藤氏から「自分たちで行ったアンケート結果をしっかり分析し整理できていた」とお褒めの言葉が。
髙橋氏は「水問題に絡めていたけれど、協働力とのつながりがもっとあればさらに良かったです」と話されました。

次の5グループは「揺らぐ世界に揺らがない力を」をコンセプトに、1年間を通して行う研修を考えました。
時代を越えて社会人に求められる力として思考力や主体性、柔軟性が大事と考え、それぞれが身に着くワークを提案。
前期ではクイズなどで知識を養い、中期にそれぞれ気になることを調べる個人ワーク、後期には販売戦略を考えるグループワークを行います。
講評では髙橋氏から「原稿を見ずに話していて事前準備をしっかりしたことが伝わりました」と感心の言葉もありました。
斎藤氏は「アイデアはとても良い。どんなワークがどんな成長につながるのかもう少し考えてみましょう」とアドバイスもいただきました。

社会人基礎力を身に付けるには?

3グループは社会人基礎力をOSとアプリケーションに例え、「基盤となる考えは最新にアップデートし、語学力などのスキルをダウンロードすることが大事」と主張。その上で若者の8割が、挑戦することに苦手意識があることに注目し、意欲を引き出す研修を考えました。
主体性を養う方法として、プレゼンテーションのワークを行い、自分の言葉に責任を持ち行動できる人材を育てます。
髙橋氏は「中間発表から内容を大きく変えて、改善しましたね」と驚いた様子。「社会人基礎力を詳しく分析し理論的でした」と感嘆されました。

続いては4グループです。
社会には「自ら動く人と繋がり価値を生み出す人材」が必要として、まずは自己理解ができる自己診断ツールを導入することを提案。
「探求心」が弱い、「協調性」が苦手など、自分になにが足りないかを把握してからグループワークに臨みます。お互いの強みや弱みを補いあうことで、協調性やリーダーシップなどを育む計画です。
斎藤氏は「方法論をよく考えている。成長支援を長期的にできる研修で良いアイデアだと思います」と語られました。

パラスポーツを研修に活用

次の2グループは、現代社会ではAIが発展していることに注目。
しかしビジネスも根本的には人と人でのやりとりです。AIには真似できない、人に気持ちに寄り添う人間性を育てることが重要と考えました。
考案した研修はなんともユニークな「逆転研修計画」。
上司と部下の立場を入れ替え課題に取り組みます。部下が上司に具体的に指示を出すことで、リーダーシップや言語化能力を身に付けます。上司と部下の相互理解にもつながり、風通しのよい社内になるとしました。
斎藤氏からは「人間性と自ら行動することのつながりに、もっとフォーカスしているとさらに良かった」とコメント。
また、中間発表とがらりと内容を変えてきたことに対して「中間発表より素晴らしくなっている」と頑張りをねぎらいました。

最後は1グループ。
社会人にはリーダーシップや規律性が求められるとして、団体スポーツを取り入れた研修を提案しました。
ゴールボールという視覚障害の方が行うパラスポーツを通し、フェアプレーの精神やルールを守る規律性、積極性を養うと発表しました。
髙橋氏は「研修の中身が全グループのなかで一番詰められていた。実際に、車いすラグビーを行う研修もあります」と感心されていました。

自分の個性に気付き次に活かそう

全グループ発表が終わり、サントリーのお二人から総評をいただきました。
「非常にハードだったと思いますが、まさに『仕事』を体験してもらえたと思います」と髙橋氏。「グループで協力し、適材適所で進めていったと思います。そのなかで自分がうまく出来なかったこと、足りないものを知れるいい機会になったはず。この授業で終わりではなく、得たことや気付いたことを糧にするため一歩踏み出していってください」と語りました。

斎藤氏は「大事なのは結果よりもプロセスです。他の人は自分からどう見えたか、自分は他の人からどう見えたか。自分の個性に気付き、自分がどう成長できたかを大事にしてください」と話しました。
そして二人から「全員が優秀賞です」とアイスクリームのギフト券がプレゼントされると、学生たちから歓声が上がりました。ほっとした表情で笑い合う学生たちは、難しい課題を乗り越えた満足感に満ちていました。

担当教員からのメッセージ

「実践プロジェクトa」は今年で5年目となりました。サントリーホールディングス様には毎年ご支援いただいています。そして、一貫して同じテーマをご提示いただいています。大学生なったばかりの1年生が、社会人に求められているものを調べあげ、サントリーホールディングス様の新人研修を考えるというのはかなりハードルの高い課題ではありますが、この講座が「1年生に対して大学での学び方を学ぶ」という目的があるからです。言い換えれば、この授業で考え、調べ抜いた社会人に求められることを理解し、これからの大学生活を送ることが、素晴らしいキャリア形成に繋がるからです。まさに「主体性講座」と名付けている理由がここにあります。今のレベルと社会人に求められるレベルとのギャップを埋めていく事が大学での真の学びなのです。そして、今年は、初めて併設校の実践女子学園高等学校の3年生も2名加わってくれました。「実践10年教育」の具現化が図れた意義ある講座となりましたことを付け加えさせていただきます、最後に、毎年ご支援いただいているサントリーホールディングス様に心から感謝申し上げます。

2025年6月13日

離島の課題を解決する企画とは?「実践プロジェクトa」の授業で近畿日本ツーリストに出された課題への最終プレゼンが行われました。

実践プロジェクトa(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で、5月23日(金)に近畿日本ツーリスト株式会社とのコラボ授業が行われました。企業から出された課題に対しプレゼンテーションをするこの授業。課題は「東京諸島の課題にパートナー企業と連携してブレークスルーを起こせ!」。この日は中間発表を経ていよいよ最終プレゼンを行います。学生たちは緊張しながらも、練りに練った提案を、自信をもって発表していました。

自然の美しさをどう使う?

企業側からは近畿日本ツーリストの橘清志氏と小宮めぐみ氏のほか、東京諸島観光連盟の小出詩織氏も来校。
プレゼンテーションは各班7分です。発表後は、企業のみなさんから直接フィードバックをいただきます。

トップバッターは小笠原諸島チームから。
「心のデトックスと新たな自分の発見」と題し、心と体の健康になる旅を企画。体重計メーカーとコラボし、島の特産品を使った食事メニューを開発します。
小笠原諸島に行くには24時間かかるフェリーでしかアクセスできない環境を利用して、デジタルデトックスとダイエットを体験できる6日間のツアーを行うと説明しました。

次は神津島チーム。
この島の魅力と言えば、星空保護区に認定されたほどの美しい夜空と自然です。
そこで「壊さない旅始めよう」をテーマに、自然派コスメブランドやグランピング施設とコラボを提案。企業として自然保護を大事にしている会社をピックアップしました。
木を傷つけずに設営できるツリーハウスで宿泊してアスレチックで遊び、ハンモックで夜空を楽しめるというまさに自然を体感できるツアーです。
発表後、小宮氏は「壊さない旅というコンセプトは島民にもささるのでは」と評価。
橘氏も「島の特徴であるエコをしっかりとらえ、うまくビジュアル化していました」と感想を話しました。

若者に人気なコンテンツで人を集めよう!

3番手は新島チームです。
若者と島をつなぐ新しいフェスの形として、「NEW FES」を企画。大型イベント運営会社とタッグを組み、Z世代をターゲットにした音楽イベントを開催します。
新島が年中温かいことに目を付け、冬の11、12月に行うことで他のイベントと差別化。
小規模ですが、アーティストとの距離が近いことも売り。島全体に会場やアクティビティをちりばめ、島全体を回ってもらえるような工夫をします。

4番目は三宅島チーム。
人気ゲームとのコラボレーションを提案しました。ゲームのステージのなかに三宅島を出し、PRに繋げます。
ゲームをきっかけに三宅島に来た観光客向けに、コラボ商品やゲームの限定アイテムを配布するとしました。ARも活用し、キャラクターと写真を撮れるなど仕組みなども作成。
新たな顧客層の開拓を狙います。
橘氏は「ARの紹介などプレゼンの中にも工夫があった」と感心されました。

持続可能な企画にするために

続いては八丈島チームです。
島民と島外の人の新たなつながりを創ろうと、「浜辺結婚式」を企画。挙式サービス事業の会社とコラボして、八丈島でのウェディングプランを提供するとしました。
島民にも出し物や飾り付けの協力を依頼しつながりを創ります。また、八丈島の名産・黄八丈の生産会社との連携。島内の企業にも仕事が発生するように考えました。
橘氏は「中間発表からブラッシュアップされていた。島の連携企業を入れてくれたのも良かったですね」と評価されました。

最後は伊豆大島チーム。
「大島島民になってみよう」をコンセプトに、親子三世代にそろって来島してもらう企画を考えました。
菓子製造企業の工場やホテルを誘致し、地熱発電を使った温水プールやサウナを展開。高齢者だけでなく、若者にも来てもらえるようなイベントを提案しました。
小宮氏からは「拡大可能性がある。さらに細かく練っていくととてもいい企画になりそうです」と褒められました。

もっと島について知ってほしい

発表が終わると橘氏と小宮氏は審査へ。
その間に東京諸島観光連盟の小出氏からもコメントをいただきました。
「どの班も新しいアイデアがありました。それぞれの島の課題は、私たちも考えていることと同じことを気づいてくれているなと思いました」と学生たちの発表に感心された様子でした。
「みなさんこの課題に取り組むときは島のことは知らなかったと思います。私も大学生のときは全然知らなかった」と、リゾートバイトをきっかけに島に関心を持っていくようになったと話しました。
「皆さんも今回をきっかけにもっと島のことを知ってもらえると嬉しいと思います」と話されました。

チームワークや「掛け算」の楽しさを知る

そしていよいよ優秀賞の発表です。
発表の前に橘氏は「今回の課題はとても難しいテーマで大変だったと思います」と学生たちの頑張りをねぎらいました。
「企業と地域を組み合わせることで、ひとつではできない掛け算の楽しさを感じてもらえていたらと思います」と語り、「社会人になると知らないことは欠点になりますが、学生のうちはまだ知らないと言える強みでもある。どんどん知らないことに興味を持って、引き出しを増やしていってください」と話されました。

優秀賞は三宅島チーム、2位は八丈島チームがそれぞれ受賞。
橘氏直筆の絵の入った賞状もいただき、学生たちも和んだ表情になっていました。
八丈島チームの学生は「中間発表から練り直すのが大変でしたが、頑張って良かった。楽しかったです」とコメント。
三宅島チームの学生も「チームのみんながたくさん準備してくれたので、選ばれて嬉しいです」とほっとした顔で話しました。

企業さながらのプレゼンテーションを経て、学生たちもさまざまに成長した授業となりました。

担当教員からのメッセージ

1年生に対象を絞って行われている「実践プロジェクトa」も、今年は6年目を迎えます。近畿日本ツーリスト様には、本講座スタートから継続してご支援いただいています。毎年、テーマも変えていただき、1年生が真剣に取り組んでいる授業です。この授業がきっかけで、その後、様々な活動に参画する学生が拡大しており、この講座の狙いである「主体性」が磨かれていることを実感します。

また、本学の講座には、過去履修してくれた学生たちがSAとして参加してくれており、自身の経験を通じて後輩へのアドバイスも行ってくれています。コラボいただいている企業、先輩、そして履修している学生が一体となって展開している講座は、年々グレードアップされており、本授業を履修している学生の成長には凄まじいものがあります。毎年ご支援いただいている近畿日本ツーリストの橘さん、小宮さんには、心から感謝申し上げます。

2025年6月6日

「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲とのコラボがスタートしました。

企業から直接課題が出され課題解決に取り組む、学生たちに人気の社会連携授業。4月30日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)の授業で、猿田彦珈琲との特別コラボが始まりました。代表取締役の大塚朝之氏からコーヒー店を立ち上げた思いなどお話を伺いました。授業の最後には学生たちに課題が出され、後日グループでプレゼンテーションに挑みます。

じぶんごとに捉えて取り組もう

授業の冒頭には、篠﨑先生からこの授業にかける熱い思いが。猿田彦珈琲を知ろうとフィールドワークをするうち、どんどん好きになり広島の店舗まで回るほどのファンになったと告白されました。
自分の体験を踏まえた上で、学生たちに「今回の課題をぜひ『じぶんごと』として取り組んでください」と強調。ただの課題と思わず、自分に引きつけて考えることの大切さを伝えました。

そして猿田彦珈琲創設者の大塚氏が登壇。学生たちの手元にはコーヒーが配られ、リラックスした雰囲気で講義は始まります。
大塚氏は「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」をコンセプトに猿田彦珈琲を創設した経緯について話し始めました。

良いモノを作るためサスティナビリティを考える

猿田彦珈琲はスペシャルティコーヒーの専門店。2011年6月に恵比寿でオープンしたのが始まりです。
スペシャルティコーヒーとは、風味豊かで個性的な味わいのあるコーヒーのこと。検査で高得点を付けたコーヒーだけが名乗れるもので、全体の5%ほどしかないと言われています。
そしてもうひとつの基準はトレーサビリティがしっかりしているものであること。トレーサビリティとは「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」が明確なことです。コーヒー豆の栽培管理から収穫、選別などまで徹底して品質を管理された厳選されたものだけがスペシャルティコーヒーを名乗れるのです。
大塚氏は「サスティナビリティがあることも大事。生産者に安定してお金が入れば設備を整えより良い環境でコーヒー豆を生産できます。現在気候変動によりどんどんコーヒー農園がなくなっている。」と話しました。

大塚氏は学生たちに、配られたホットコーヒーを飲んでみるよう勧めました。
そして「苦いですか?すっぱいですか?」と問いかけます。
苦みよりもほのかな酸味を感じる学生が多数。
大塚氏は頷いて「このコーヒーはベリーのような酸味がありますよね。いいコーヒーであればあるほどコーヒー以外の様々フレーバーを感じるんです」と話しました。

コーヒーに救われた青年時代

大塚氏は若いころ俳優として活動されていました。毎日のようにオーディションに行くも、落とされたり受かっても次の仕事をすぐに探したりせねばならない日々。
「お金もなく本当につらかった」と言います。
ついにはふさぎ込み、人とのコミュニケーションをうまく取れなくなってしまいました。

コーヒーに出会ったのはそのころ。
たまたま寄った有名コーヒーチェーン店で、店員から気さくに話しかけられ、居心地よい空間にとても安心しリラックスできたと話します。
その後、俳優の道を諦める決心を固めた頃に友人からコーヒー豆店で働かないかと声をかけられ、コーヒーに魅了されていきます。美味しいコーヒーの淹れ方を実演販売することで売上を格段に伸ばし、自信も深めていきました。
コーヒー店に救われた経験から、自分でも美味しいコーヒーを提供したいという思いを実現するため独立し、猿田彦珈琲を立ち上げたのです。

やりたいことを言語化し周囲に伝えよう

恵比寿店をオープンしたあと、2014年には清涼飲料メーカーから声がかかり缶コーヒーの監修を手掛けます。商品は大ヒットし、現在もペットボトルコーヒーや美術展とのコラボなど幅広く事業を展開しています。
店員からはバリスタ大会のチャンピオンを輩出するなど、コーヒー専門店としてゆるぎない信頼を得るようになりました。

缶コーヒーを手掛けた際、業界からは批判もあったといいます。大塚氏も迷いがあったと告白されました。
しかし、手掛けたことで店は有名になり、融資を受けることにもつながります。
大塚氏は「やりたいことへの純粋さとお金のバランスを両立させることが大事」と話し、一生懸命やることの大切さと、それを周囲に伝えるために言語化することを伝えました。「自分が究極なにをやりたいのか、それを伝えて利他的に行動すれば周りは応援してくれます」と話しました。

猿田彦珈琲のファンになってもらうSNSの投稿とは?

授業の最後にいよいよ課題の発表です。課題は「猿田彦珈琲のSNSについて考えよう」。ターゲットは20代。
猿田彦珈琲との距離を縮め、長期的にファンになってもらえる投稿を提案します。良い発表案は実際に公式アカウントで採用される可能性も。
学生たちはそれぞれInstagramとXを担当する班に分かれ、グループワークを重ねて1か月後の発表に臨みます。

担当教員よりメッセージ

猿田彦珈琲“推し活”中の篠﨑です。
猿田彦珈琲の存在は以前から知っていましたが、私の生活圏に店舗がなかったこともあり、実際にお店に足を運んだのは、この連携授業を担当することになってからでした。

もともと珈琲に強いこだわりがあり、「美味しい珈琲を提供するカフェ」という印象を持っていたため、店舗でいただく珈琲の満足度は非常に高く、今では自宅で飲む珈琲も猿田彦珈琲社のものに変わりました。

私自身の例のように、「良いもの」が必ずしも選ばれるとは限りませんが、何かのきっかけで状況が一変することがあります。SNSは、その“きっかけ”になり得るのでしょうか。

当該授業の履修学生は、6チームに分かれてInstagramあるいはXを用いた投稿案の検討に取り組んでいます。現在は、猿田彦珈琲社がこれまでに行ってきたInstagramやXでの投稿内容やその手法について考察し、特徴を把握する段階まで進んでいます。今後は、猿田彦珈琲 道玄坂店でのフィールドワークを経て、中間発表に臨む予定です。女子大生ならではの視点と分析力に基づく提案が、大きなうねりとなって広がっていくことを、私自身とても楽しみにしています。

連携授業の初回には、大塚社長をはじめ、播田様(取締役 フード&ビバレッジ クリエイティブディレクター)、田岡様(マーケティングディレクター)、平岡様(広報)、上田様(マーケティンググループ)をお迎えしました。
 ご多忙の中、本学までお越しくださいまして、誠にありがとうございました。
 また、冷たいカフェラテと温かいエチオピアコーヒーをご提供いただき、重ねて御礼申し上げます。