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2025年7月3日

「国際理解とキャリア形成」の授業で五輪メダリストの岡崎朋美氏をお招きしスポーツニッポン新聞社との特別コラボが行われました。

6月24日(火)に「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、スポーツニッポン新聞社との特別コラボセッションが行われました。スペシャルゲストは元スピードスケート選手でありオリンピックメダリストの岡崎朋美氏。藤山健二編集委員との対談という形で、学生たちの前で講演を行って下さいました。世界の第一線で活躍された岡崎氏の貴重なお話に、学生たちも頷いたりメモを取ったりしながら真剣に耳を傾けていました。

対談の初めに

藤山氏はまず、岡崎氏が学生と同じ年齢だった頃の話題を切り出しました。岡崎氏は次のように語ります。「18歳で実業団に入ったのですが、当時は実力がなく、周囲のレベルについていけませんでした。3年間がんばって成果がでなければ、その先の将来を考えようと思っていたんです。3年目の頃にオリンピックが現実味を帯び始め、翌年の選考会で出場を決めました。それが22歳の時でした」

藤山氏は続けて、岡崎氏の経歴と実績を簡単に紹介しました。「冬季オリンピックに5大会連続出場。日本のウィンタースポーツ界を代表するレジェンドです。長野大会では、500mで銅メダル。女子短距離スピードスケートで初めてメダルを獲得し、その後のオリンピックでは日本選手団の団長や旗手も務めました。本当に大活躍した選手です」以降、対談は岡崎氏のこれまでの歩みを振り返る形で進みます。

岡崎氏の学生時代

学生時代には大会の受賞歴がほとんどなかったという岡崎氏。北海道出身で、スケートは幼いころから身近な存在であったものの「スポーツ万能だったが、スケートだけはうまくいかなかった」といいます。高校は、道内の強豪校ではなく、女子校を選んでスケート部に入部しました。男女合同で練習する学校に比べ、練習内容に限界があったと感じていたそうです。「他校の練習風景を見て、自分もああいう練習をすればもっと伸びるのではと思っていました」と、当時を振り返ります。

実業団入団

入団のきっかけは、実業団の監督が偶然リンクを訪れていたことでした。さまざまな高校の生徒が同じリンクで練習している中で、岡崎氏のスタート100mの速さが監督の目に留まりました。「当時の体格の良さも含めて可能性を感じてもらったんだと思います」と話しました。

入団後は、富士山のふもとの標高の高い場所でのトレーニングに環境の変化が大きく、慣れるまでに1〜2年かかったと話しました。さらに、オリンピック出場者もいる実力あるチームでの練習はレベルが高く、意識やメンタル面の重要性も学んだといいます。最初のオリンピック選考会については、こう振り返ります。「ようやく環境に慣れてきた頃で、オリンピックを目指すというより、先輩たちに少しでも近づきたいと思っていました。才能がないなら辞めようという気持ちで、全力を出し切れば結果に関係なく納得できると思い、満足した状態になろうととことん練習に取り組みました。」その結果、1994年のリレハンメルオリンピックに出場が決まりました。

オリンピック出場

初めて出場した1994年リレハンメルオリンピックは、14位入賞という結果で終わりました。自己ベストを更新できたことに手ごたえを感じ、「一度出られれば十分かなと思っていましたが、会場で他の選手たちの姿を見て、“もっとやりたい”と感じました」と話しました。次のオリンピックは日本開催の長野大会。「日本で五輪が行われるのは、自分の競技人生の中ではもうないかもしれない。そして日本という慣れ親しんだ環境で行われること、日本を応援してくれる人も多いことはモチベーションにつながりました。そこからやらされる練習から、やる練習に変わりました」と語ります。

1998年長野オリンピックでは、短距離で銅メダルを獲得。二日間にわたるレース形式で、一日目が終わった時点で緊張のあまり眠れなかったといいます。「選手村にいると緊張してしまうので、あえて会場に行きました。五輪マークが目に入るとワクワクしてきて、あとはスタートラインに立つだけ、という気持ちでした」大会直前にスケートシューズの規定が変わり、新しい靴に苦労したそうですが、「スタートしたら結果は決まっていると思っていた」「仕上がりに不安もありましたが、結果が出てよかった」と振り返り、当時の銅メダルを取り出し、学生に手渡して見せました。

けがのお話

藤山氏が「長野で一区切りと思わなかったか」と尋ねると、「新しい靴にも慣れてきて、まだタイムを縮められると思った。世界記録と自己ベストに2秒差があって、追いつきたかった」と語りました。しかしその約1年後、腰を痛め手術を受けることに。シーズン最後の大会の朝、起き上がれないほどの痛みに襲われながらも、注射でなんとか出場したといいます。藤山氏が「体にメスを入れるリスクをどう考えたか」と問うと、「次のオリンピックを目指していたし、手術して復帰した前例があまりなかったから、自分が最初になろうと思った。誰かがやらないと前に進まないこともあるから」と、力強く答えました。藤山氏は「どこまでもポジティブにとらえるんですね」と驚きの表情を見せました。

結婚・出産とアスリートのキャリア

2002年ソルトレイク、2006年トリノと五輪出場を重ねた岡崎氏は、2007年に結婚。当時、夫は東京勤務、岡崎氏は練習拠点に残り別居生活をしていたそうです。2010年に出産。その後も現役を続ける決断をしました。「当時は出産したら引退、という選手が多く、託児所もなく、相談できる人もいませんでした」「でも、一般の人も仕事と育児を両立している。形は違っても、私も挑戦してみようと思いました」と話し、手術のエピソードにもあった岡崎氏のチャレンジ精神がここにも反映されていることがわかりました。さらに「練習中に電話に出られないので、保育園の緊急連絡先は監督だった」というリアリティのあるエピソードに、学生は岡崎氏の苦労を想像しつつもくすっと笑うリアクションをしていました。

妊娠・出産後の体の変化については、「子どものために母乳育児をしていたら、自分の栄養が足りなくなって。初めて“食べても追いつかない”という経験をしました。ホルモンの影響も大きくて、筋肉がつきづらかった」と実感を語りました。それでも、「自分の経験が次の世代のお母さんたちの参考になると思って、いろいろ勉強しました」「子育てと競技を両立したことは、手探りでしたが全く後悔していません」と語ります。

対談の最後に

引退については、「もう無理だな、と思って案外すんなり決めました。振り返れば悔いはありません。私は本当にラッキーな人間で、たくさんの人に支えられました」と話しました。最後に、学生へのメッセージとしてこう語ります。「“この人いやだな”と思う人がいても、その人のために生きてるわけじゃない。自分のために時間を使ってください」「他人と比べることもあるけど、自分の目標に集中して進んでいってほしい。迷ったら相談して、行き詰まったら一度リセットして、そこからまた立ち上がればいいんです」

そして、こう締めくくりました。

「うまくいかなかった経験も、後々生きてくることがある。どんどんチャレンジして、自分の糧にしていってください。私も、これからもチャレンジを続けます」

質疑応答

対談の後に、学生からの質疑応答の時間が設けられました。

「リフレッシュ方法は?」という質問には「今はウィンドウショッピングやツーリング、ドライブなど体を動かすことをしています。現役時代はなかなか時間がなかったので、温泉に行ったりマッサージを受けたりしていました」と回答。「試合前に大切にしていたこととは?」という質問には「メンタル面でいうと『どうしようか迷わない。やるべきことをやる。』ということです。スタートラインに立つときにはもう結果は決まっている。そこで悪い癖が出るのであれば、出さないようにする。マイナスな考えは、うまくいくはずのことがうまくいかなくなってしまう原因になる。」と話し、「もちろん、練習不足だったなとか、結果がうまくいかなかったなと思うときもあります。でも、その原因を自分が理解していれば対処することができる。だめだったら次の方法に行こうと思える」と、勝負の瞬間に迷わないよう、事前準備で淡々と前に進み続ける行動方針を話しました。「応援される人はどのような人だと思いますか?」という質問には「一生懸命頑張っている人。好きなものに一心不乱に打ち込んでいる人は、応援したくなります」といい、「笑顔も大事。無理して笑う必要はないけど、素直な気持ちを出すことは大切」と続けました。その後、授業時間いっぱいまで質疑応答が続き、学生にとっても、学びの多い時間となりました。

担当教員からのメッセージ

国際理解とキャリア形成の授業においては、2018年からご支援をいただいているスポーツニッポン
新聞社様、今年のテーマを冬季五輪に置いていただいたこともあり、今年のスペシャルゲストは
スピードスケート日本人女子短距離で初のメダリストになられた岡崎朋美選手にお越しいただき
ました。
勿論、アスリートとしてはレジェンドである岡崎さんですが、その厳しい競技生活からは
想像がつかないほど、優しいお人柄を感じながらの、藤山記者との対談が続きました。
今なお、スピードスケートの世界で活躍を続ける岡崎さんから、そのポジティブ思考と、
諦めないことの大切さなど、本当に多くのことを学ばせていただきました。
岡崎朋美様と藤山健二様に、この場を借りて心から感謝申し上げたいと思います。

2025年6月26日

就活に役立つ留学!「国際理解とキャリア形成」の授業でアンジェラス留学の中根なゆた氏の講演が行われました。

6月16日(火)、国際理解とキャリア形成(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、アンジェラス留学の中根なゆたさんを講師に迎え、「就職に役立つ留学」をテーマとした講演が行われました。アンジェラス留学が取り扱っている留学の行先やプログラム内容などの紹介のほか、実際に留学へ行った学生の体験談発表や留学先現地との生中継インタビューなど、留学のリアルに触れられる講演でした。

留学について知ろう

中根さんはまず、「そもそも留学とは?」という基本的な問いから話をスタート。留学に対してよく聞かれる「怖い・高い・難しそう」といった不安について言及し、「この時間で留学について知らないことを知っていただいて、留学を少しでも身近に感じてもらう。そして、留学に行ったことで得られるインセンティブを知っていただく。その中に就職活動に役立つものがあるはず」と話しました。

「留学と旅行、一週間の滞在を想定した場合、実は値段がそんなに変わりません。留学は『現地で学校に行くこと、生活の体験をすること』。留学をすることで良いことはいっぱいあるけれど、その中の一つに『不自由な体験をすること』があると思います」と話しました。

自身の経験も踏まえ、「大学在学中にフランスに留学し、生活文化の違いによる不自由さを経験したことで、自分の価値観が決まり、就職活動の軸となりました。視野も気持ちの持ちようも広がりました」さらに、「大学入学時、資生堂入社時、そして入社後のフランス出張など、人生の節目で留学経験に助けられてきました」と、留学の価値を具体的に伝えました。

留学経験者のお話

続いて、実際にカナダで1年間の留学を経験した、現代生活学科4年生の村上遥香さんが体験談を発表しました。村上さんが参加したのは、語学学習と専門プログラム、そして現地での就労が一体となった「Co-op留学」です。「最初の三か月間で英語を勉強し、その後はカスタマーサービスに関する専門プログラムを英語で受講しました。授業ではカナダの就職活動についても学びました」と説明。プログラム終了後は一カ月のバケーションを経て、空港の免税店での就労を経験したと話しました。

さらに村上さんは、現地で参加した「キャリアフォーラム」という就職イベントにも言及。海外経験者を対象としたこのイベントでは、短期間で企業の選考が進む仕組みになっており、日本国内外の企業が参加しているといいます。「日本にいながら海外と日本をつなぐ仕事をしたい」という思いから、村上さんは主に日本支部の採用にエントリーしたそうです。

体験談の中盤には、免税店での就労経験をもとに、文化の違いに関するクイズも出題されました。「カナダと聞くと移民が多い国という印象があると思います。実際にそうで、免税店で働いているときには、国内の方以外にも海外の旅行客の方も多く接客し、国籍や文化の違いによってお客様の振る舞いや求めているものが全く違うことを肌で感じました」と話し、「皆さんが想像できる範囲で構わないので、どのような違いが具体的にあるでしょうか」と学生に問いかけました。

グループワークののち、学生からは「ドラマで見たヨーロッパのショッピングの場面では、お客さんとたくさん会話しながら商品を選んでいた。コミュニケーションが大事なのでは」「国によってチップ文化の有無もあるのでは」という回答がありました。

村上さんは「まさにその通り」とうなずき、「中国のお客様は価格を気にされる方が多く、韓国籍やフィリピン籍の方は日本人と似ていて、優柔不断な方が多い印象。だからこそ、的確な情報を提供することを意識していた」と説明。「メキシコ国籍のお客様とは、商品に関係ない雑談が多かったりと、接客スタイルも工夫が必要でした」と、国ごとの違いを生かした対応を語りました。

最後に、現地での接客を英語で再現するデモンストレーションも披露。自然な英語表現と立ち居振る舞いに、留学で得た実力が垣間見えました。

留学先現地と生中継!

講演の後半では、海外インターンシップ型の留学プログラムも紹介され、現地とオンラインで中継をつないだ“リアルな声”が届けられました。「大人の職業体験」と銘打って紹介された留学プランは、ホテルで働きながら実践的な英語を学ぶというもの。実施地はフィリピンのセブ島にある、語学学校が敷地内に併設されたリゾート地の三ツ星ホテルです。四週間の滞在期間中、ホテルでホスピタリティを学びながら、英語を習得していきます。現地ホテルの従業員と語学学校の先生から手厚いサポートを受けながら、滞在期間で合計四種類の業務を経験できるプログラムです。

現地スタッフの鈴木さんとズームでつながり、インタビューが始まりました。インタビューに答えてくれた方は、実際にプログラムに参加しているありささん。渋谷からセブ島へ、質疑応答が始まります。

「実際に参加してみてどうでしたか?英語の生活に慣れるのに、どのくらいの時間がかかりましたか?」という質問に「インターン以外にも、英語のクラスが充実していて面接の練習やプレゼンの勉強をしています。英語は難しいけど、実践的な英語を学べると思います。現地の生活には一週間ほどで慣れました。語学学校なので、日本人の方も多く思っていたよりも簡単に友達ができました。最初はびっくりすることが多いけど、一週間くらいで慣れて楽しくなってくると思います」とコメント。学生からも質問を投げかけました。「日本国内のホテルでもインターンができたと思いますが、フィリピンのセブ島を選んだ理由は何ですか?」との問いに、ありささんは「英語でインターンができることが一番の理由です。スタッフの人や先生と会話するときにすべて英語なので、英語を実践できる環境がいいなとおもいました」と回答しました。インタビューの最後には、現地の語学学校の先生も画面に登場。実際の環境や経験できる内容を直接知ることができる貴重な機会となりました。

今回の講演を通じて、学生たちは留学が語学力の習得だけではなく、自分の経験を広げることによってキャリアへの意識につながるという、新たな視点を得ることができたようです。将来を見据え、自分にとって意味のある留学とは何かを考えるきっかけとなる、貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

私が株式会社資生堂の人事部で採用の責任者であった時に、中根さんと出会いました。その後、中根さんが父上の会社に転職された後は、毎年ゲストとしてお越しいただき、留学を中心にキャリア形成のお話しをしていただいています。親身に相談に乗っていただくことがきっかけで、中根さんにお世話になって海外留学に出かけた学生は、約60人を数えます。長いご縁に本当に感謝です。
この国際理解とキャリア形成の授業には、特に留学や海外での業務に夢を持つ学生も多く、中根さんのお話しには、とても関心深く授業に参加してくれています。今年もセブ島とオンラインで結んでいただいたり、中根さんにお世話になって留学に行かれた現4年生の村上さんの体験談まで、盛りだくさんの内容となりました。様々な準備をして下さった中根さんに心から感謝申し上げます。

2025年6月25日

2025年度「実践プロジェクトa」にてサントリーホールディングス株式会社から課題の発表がありました。

6月13日(金)に実践プロジェクトa(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、サントリーホールディングス株式会社(以下サントリー)から髙橋誠二郎氏を招き、課題の共有が行われました。実践プロジェクトaでは全14回の授業を前半・後半に7回ずつ分け、それぞれの期間で異なる企業を迎え、企業から提示される課題に対し学生がグループワークを重ねて企画を立案・発表し、それを企業が評価するという、PBL(Project Based Learning)形式のコラボ授業を展開しています。サントリーは後半の連携企業として参加しています。前半で得た経験を生かし、前半の経験を生かし、最終プレゼンテーションに向けて、準備を進めていきます。

今回講話していただいた方は、人財戦略本部の髙橋誠二郎氏です。サントリーに関する三択クイズが3問出題されたあと、課題の発表が行われました。

課題発表!

今回の課題は「サントリー社員として、サントリーの新人研修を考案すること」。具体的な課題として「会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人・社会人に求められているものは何か、結論を発表してください」「それをふまえ、これからサントリーに入社してくる社員に対する具体的な研修計画を提案してください」の2点が提示されました。続けて、課題を考えていくステップとして「ニーズの把握」「ニーズの背景を探り本質的な課題を考察する」「具体的な研修計画を提案する」という流れが示されました。

会社を知ろう

サントリーは、総合食品メーカーとして、清涼飲料水や酒類をはじめ、サプリメントなどの健康食品、外食、化粧品など、多岐にわたる事業を展開しています。取り上げられた商品名や店舗名は、学生にとってもなじみ深く、企業の認知度の高さがうかがえました。現在では売上の約半分を海外が占めており、世界に265社、約4万人の従業員を抱えるグローバル企業でもあります。

サントリーについて、髙橋氏は「挑戦し続ける企業」と紹介。これは創業者の想いが受け継がれているといい、話は社員が共有する価値観について移ります。とくに「やってみなはれ」と「利益三分主義」について詳しい説明がされました。

「やってみなはれ」とは、新しい価値の創造に挑戦することを意味し、創業者が日本で洋酒文化を築いたエピソードが紹介されました。さらに、競合他社がすでにビール事業に力を入れていた時期に新たに参入した経緯にも触れ、未知の市場への挑戦や、失敗を恐れない姿勢が大切にされていることが語られました。海外展開もまた、この精神のもとで行われているといいます。

「利益三分主義」は、事業で得た利益は自社の再投資にとどまらず、取引先や社会にも利益を還元していく、という考え方です。実際にサントリーは、コンサートホールや美術館、社会福祉法人の運営、水育という森林保護に関する学校教育やラベルレスデザインの推進などの環境活動など、さまざまな社会貢献活動を行っています。

最後に、髙橋氏はサントリーの人材育成方針についても紹介しました。サントリーの人財戦略本部では「人本主義」を重視しており、個人が「どうありたいか」を尊重し、その実現の場として会社があるという考えを持っています。短期的に人材の価値を判断せず、長期的な視点で人を育てること、そして「変化をチャンスに変え、チャンスを挑戦につなげられる人」が求められていることが語られました。

また、「成果を出して自分を磨いた人が、夢を追い、挑戦できる」制度が整っていることも紹介されました。実際に、社内公募制度を通じて、自ら手を挙げる形式の研修や海外チャレンジ、グローバルチャレンジといった多様な機会が提供されています。スライドには「目指す社員像」が示され、髙橋氏の講話は締めくくられました。

最後に

髙橋氏の講話の後、学生たちは早速グループワークに取りかかりました。斎藤氏からは「課題検討のステップから外れないように。行き詰まったときこそ、スライドに戻って立ち返ってください」とのアドバイスがありました。髙橋氏や斎藤氏に直接質問しながら、各グループで課題の方向性を細かく議論していく様子が見られました。

最終プレゼンテーションは7月11日に実施予定です。学生たちはまず、6月27日に予定されている中間発表に向けて、グループワークを進めていきます。

担当教員からのメッセージ

本授業について、サントリーホールディングス様にご支援いただくのは5回目となります。サントリーホールディングス様からのお題は、常に同じ内容をいただいています。
「大学での学び方を学ぶ」という本講座の狙いを実現する大切なテーマだからです。言い換えれば、このお題を通して、今社会は、どのような人材を求めているのか、そしてサントリー様ではどのような人材を育成しようとしているのかを考えることになりますが、このことを議論することは、1年生にとっては、ここからの4年間何を学ぶべきかを考えることに繋がるのです。果敢に挑戦してくれることを期待しています。この場を借りて、サントリーホールディングス様の斎藤様、髙橋様に心から感謝申し上げます。

※本講座は、一般社団法人フューチャー・スキルズプロジェクト研究会との連携となります。

2025年6月16日

2025年度「実践キャリアプランニング」の授業で文化放送から課題が発表されました

6月6日(金)に実践キャリアプランニング(担当:文学部英文学科 鹿島千穂 専任講師)にて、株式会社文化放送様とのコラボ授業が行われました。この授業では、「人生100年時代」を見据えたキャリア形成の一環として、企業との連携による疑似ビジネス体験を取り入れています。実社会に近い環境で課題に取り組むことで、学生が自らの生き方や働き方について考え、将来に向けた視点を養うことを目的としています。今回提示された文化放送からの課題をもとに、学生たちがグループで協力しながら疑似ビジネス体験に挑戦。授業内では、各グループが考えたアイデアをプレゼンテーション形式で発表します

課題発表に先駆けて

今回講演していただいたのは、文化放送の村田さん。「ラジオ・音声メディアの特性と伝え方」と題し、ラジオと音声メディアの特性やそれに基づいた伝え方のポイントをお話しいただきました。

冒頭では、文化放送についての紹介からスタート。1952年に開局した歴史あるラジオ局であり、関東一都六県に電波を届けています。時間帯ごとに変わる聴取者層に向けて、多様なジャンルの番組を放送しているとのことです。

特に、アニメ・ゲーム・声優関連番組が多い、アイドル番組に強い、プロ野球・大学駅伝中継にも注力といった特色が紹介されました。さらに、自社プラットフォーム「クローバー」での配信、落語のサブスクサービスやイベント企画、声優アワード、養成学校の運営など、ラジオ配信にとどまらない幅広い事業展開も紹介されました。

ラジオ・音声メディアの特徴とは?

村田さんは、ラジオが移動中や作業中に「ながら聞き」ができる身近なメディアである点を強調。さらに、スマホアプリ「radiko」の登場やワイヤレスイヤホンやスマートスピーカーの普及により、ラジオのリスナー数は増加傾向にあること、ポッドキャストの利用も若年層を中心に広がっていることを紹介しました。

音声メディアの特性としては、リスナーの行動を促す力があること、映像に比べて情報が少ない分、聞き手の「想像力」で補完されること、パーソナリティへの親近感や信頼感が生まれやすく、コミュニティのようなつながりが生まれることが挙げられました。

例として、野球の実況中継では「見えないものを言葉から想像する」体験があり、聞き手と送り手の“想像”が合わさって初めて情報が成立すると説明。また、村田さんが制作したラジオドキュメンタリーを例に、音声には情報の真偽にかかわらず人の心を動かす力があるとも語りました。さらに、イェール大学の実験結果を引用し、音声のみのコンテンツが情報理解に有効であることも紹介。「音声コンテンツとは、送り手と聞き手による共同作業である」と強調しました。

音声で伝える工夫

音声メディアでは、 効果音の順番や種類、言葉の選び方や話し方など、細かい部分が情報の伝わり方に大きな影響を与えるといいます。

情報があふれる現代では、「共感できる情報や自分に関係のある情報しか届かない」という前提のもと、具体的な話をする、 身近なたとえ話を使う、簡単な言葉を選ぶといった“共感を呼ぶための3つのポイント”が紹介されました。さらに、話の順番や構成など、「聞きやすさ」も大切な要素です。ラジオの特徴を活かし、リスナーとの距離が近いからこそ、“気持ちに訴える”表現が必要だということが再確認されました。

課題発表!

今回の課題は、20秒のラジオCMを考えるというもの。

テーマは「渋谷センター街の子ども食堂」と「実践女子大学」の2つです。課題にあたって、過去のコンテスト受賞作品の紹介もあり、優れた点や音声コンテンツを伝える工夫が共有されました。村田さんは「効果音や音楽、言葉づかいを工夫して、商品やサービスの魅力を伝えることが大切」とコメント。学生たちは、何をどう伝えるのか、目的設定から構成まで、すべてを自ら考えることになります。

質疑応答の時間には、課題のことのほかにもラジオや村田さんの社会人経験について質問が投げかけられ、音声メディアについて理解を深める貴重な機会となりました。

学生は、次の授業からグループに分かれて話し合い、いずれかのテーマでCM制作に挑戦します。

担当教員からのメッセージ

昨今、リスナーの減少が叫ばれているラジオですが、文化放送様はアニメ、声優、アイドル番組の先駆け的存在で、若者層にもよく聞かれているステーションです。実際に本授業の受講生の中にも文化放送様の番組リスナーが予想以上に多く、業界の深い話を聞けたことは貴重な経験となったようでした。
一方、講演内容は表現法にも及び、情報過多の社会において、音声のみで「伝える/伝わる」ための手法についてもお話がありました。私自身、ラジオパーソナリティーとして長年番組を担当し、メディアにおけるコミュニケーションの手法を教育や生活の場にどのように活かすことができるのか試行錯誤してきたため、村田様のお話に大変共鳴した次第です。
お題であるラジオCM制作はハードルの高いものですが、この経験を通して、学生たちが音声表現の本質に触れることを期待しています。

2025年6月13日

離島の課題を解決する企画とは?「実践プロジェクトa」の授業で近畿日本ツーリストに出された課題への最終プレゼンが行われました。

実践プロジェクトa(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で、5月23日(金)に近畿日本ツーリスト株式会社とのコラボ授業が行われました。企業から出された課題に対しプレゼンテーションをするこの授業。課題は「東京諸島の課題にパートナー企業と連携してブレークスルーを起こせ!」。この日は中間発表を経ていよいよ最終プレゼンを行います。学生たちは緊張しながらも、練りに練った提案を、自信をもって発表していました。

自然の美しさをどう使う?

企業側からは近畿日本ツーリストの橘清志氏と小宮めぐみ氏のほか、東京諸島観光連盟の小出詩織氏も来校。
プレゼンテーションは各班7分です。発表後は、企業のみなさんから直接フィードバックをいただきます。

トップバッターは小笠原諸島チームから。
「心のデトックスと新たな自分の発見」と題し、心と体の健康になる旅を企画。体重計メーカーとコラボし、島の特産品を使った食事メニューを開発します。
小笠原諸島に行くには24時間かかるフェリーでしかアクセスできない環境を利用して、デジタルデトックスとダイエットを体験できる6日間のツアーを行うと説明しました。

次は神津島チーム。
この島の魅力と言えば、星空保護区に認定されたほどの美しい夜空と自然です。
そこで「壊さない旅始めよう」をテーマに、自然派コスメブランドやグランピング施設とコラボを提案。企業として自然保護を大事にしている会社をピックアップしました。
木を傷つけずに設営できるツリーハウスで宿泊してアスレチックで遊び、ハンモックで夜空を楽しめるというまさに自然を体感できるツアーです。
発表後、小宮氏は「壊さない旅というコンセプトは島民にもささるのでは」と評価。
橘氏も「島の特徴であるエコをしっかりとらえ、うまくビジュアル化していました」と感想を話しました。

若者に人気なコンテンツで人を集めよう!

3番手は新島チームです。
若者と島をつなぐ新しいフェスの形として、「NEW FES」を企画。大型イベント運営会社とタッグを組み、Z世代をターゲットにした音楽イベントを開催します。
新島が年中温かいことに目を付け、冬の11、12月に行うことで他のイベントと差別化。
小規模ですが、アーティストとの距離が近いことも売り。島全体に会場やアクティビティをちりばめ、島全体を回ってもらえるような工夫をします。

4番目は三宅島チーム。
人気ゲームとのコラボレーションを提案しました。ゲームのステージのなかに三宅島を出し、PRに繋げます。
ゲームをきっかけに三宅島に来た観光客向けに、コラボ商品やゲームの限定アイテムを配布するとしました。ARも活用し、キャラクターと写真を撮れるなど仕組みなども作成。
新たな顧客層の開拓を狙います。
橘氏は「ARの紹介などプレゼンの中にも工夫があった」と感心されました。

持続可能な企画にするために

続いては八丈島チームです。
島民と島外の人の新たなつながりを創ろうと、「浜辺結婚式」を企画。挙式サービス事業の会社とコラボして、八丈島でのウェディングプランを提供するとしました。
島民にも出し物や飾り付けの協力を依頼しつながりを創ります。また、八丈島の名産・黄八丈の生産会社との連携。島内の企業にも仕事が発生するように考えました。
橘氏は「中間発表からブラッシュアップされていた。島の連携企業を入れてくれたのも良かったですね」と評価されました。

最後は伊豆大島チーム。
「大島島民になってみよう」をコンセプトに、親子三世代にそろって来島してもらう企画を考えました。
菓子製造企業の工場やホテルを誘致し、地熱発電を使った温水プールやサウナを展開。高齢者だけでなく、若者にも来てもらえるようなイベントを提案しました。
小宮氏からは「拡大可能性がある。さらに細かく練っていくととてもいい企画になりそうです」と褒められました。

もっと島について知ってほしい

発表が終わると橘氏と小宮氏は審査へ。
その間に東京諸島観光連盟の小出氏からもコメントをいただきました。
「どの班も新しいアイデアがありました。それぞれの島の課題は、私たちも考えていることと同じことを気づいてくれているなと思いました」と学生たちの発表に感心された様子でした。
「みなさんこの課題に取り組むときは島のことは知らなかったと思います。私も大学生のときは全然知らなかった」と、リゾートバイトをきっかけに島に関心を持っていくようになったと話しました。
「皆さんも今回をきっかけにもっと島のことを知ってもらえると嬉しいと思います」と話されました。

チームワークや「掛け算」の楽しさを知る

そしていよいよ優秀賞の発表です。
発表の前に橘氏は「今回の課題はとても難しいテーマで大変だったと思います」と学生たちの頑張りをねぎらいました。
「企業と地域を組み合わせることで、ひとつではできない掛け算の楽しさを感じてもらえていたらと思います」と語り、「社会人になると知らないことは欠点になりますが、学生のうちはまだ知らないと言える強みでもある。どんどん知らないことに興味を持って、引き出しを増やしていってください」と話されました。

優秀賞は三宅島チーム、2位は八丈島チームがそれぞれ受賞。
橘氏直筆の絵の入った賞状もいただき、学生たちも和んだ表情になっていました。
八丈島チームの学生は「中間発表から練り直すのが大変でしたが、頑張って良かった。楽しかったです」とコメント。
三宅島チームの学生も「チームのみんながたくさん準備してくれたので、選ばれて嬉しいです」とほっとした顔で話しました。

企業さながらのプレゼンテーションを経て、学生たちもさまざまに成長した授業となりました。

担当教員からのメッセージ

1年生に対象を絞って行われている「実践プロジェクトa」も、今年は6年目を迎えます。近畿日本ツーリスト様には、本講座スタートから継続してご支援いただいています。毎年、テーマも変えていただき、1年生が真剣に取り組んでいる授業です。この授業がきっかけで、その後、様々な活動に参画する学生が拡大しており、この講座の狙いである「主体性」が磨かれていることを実感します。

また、本学の講座には、過去履修してくれた学生たちがSAとして参加してくれており、自身の経験を通じて後輩へのアドバイスも行ってくれています。コラボいただいている企業、先輩、そして履修している学生が一体となって展開している講座は、年々グレードアップされており、本授業を履修している学生の成長には凄まじいものがあります。毎年ご支援いただいている近畿日本ツーリストの橘さん、小宮さんには、心から感謝申し上げます。

2025年5月21日

2025年度「実践プロジェクトa」で近畿日本ツーリストの課題への中間プレゼンが行われました

5月9日(金)に実践プロジェクトa(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で近畿日本ツーリスト様とのコラボ授業が行われました。今回は、提示された課題に対する中間発表が実施されました。中間発表後は各グループに丁寧なフィードバックをいただきました。

「実践プロジェクトa」

この授業は前半後半にわたり2社の企業とコラボし、提示された課題に対してグループワークで答えを出し、プレゼンテーションを行う内容。学部学科を問わず一年生から受講することができ、実際に企業が認識している課題をグループワークのテーマとして提示いただき、実際の社員の立場を疑似体験する極めてリアリティの高い内容が特徴です。

今年の前半のコラボ企業は近畿日本ツーリスト様。地域活性化・課題解決を担う旅行会社の社員として、東京諸島の個性豊かな地域資源と各島が抱える地域課題を、自分たちで考えたパートナー企業のサービスを組み合わせて、新しい顧客体験や課題を解決する企画を考えます。

提示されたお題は「東京諸島の課題にパートナー企業と連携してブレークスルーを起こせ!」です。

今回の中間発表は、授業として初めてのグループワークの成果を発表する機会。プレゼンテーションのあとは、課題をいただいた社員の方から直接フィードバックをいただきます。

学生は6つのグループに分かれ、2週にわたってワークを行いました。

島をもっと良くしていくためには?

発表のトップバッターは新島チーム。新島の抱える問題点を分析し「知名度」と「高齢化」に焦点を当て、Z世代をターゲットにした音楽フェス「ニューアイランド」を提案。「海と音楽による非日常体験」をコンセプトに掲げ、海岸でのライブやプロジェクションマッピングを企画しました。SNSでの拡散を狙い、若者の来島を促進することで、新島の知名度向上と観光客増加を目指す内容となっており、具体的な方策として抽選でドリンクチケットが当選する「SNS投稿キャンペーン」が提案されました。

2番目は三宅島チーム。三宅島の抱える「少子高齢化」と「設備維持」の問題解決には「認知度の向上」と「経済活性化」が必要とし、三宅島と人気ゲームとのコラボレーションを提案しました。この人気ゲームは、離島を舞台にしたライフシュミレーションゲーム。ゲームと現実の離島コラボという話題性を狙います。具体的なコラボレーション施策として、ファミリー層向けの自然体験ツアーと限定コラボグッズの販売を企画。実際のゲーム画面を動画で編集しプレゼンテーションに組み込みながら、新たな顧客層の開拓を狙います。

本当に行きたくなるプレゼン

3番目は八丈島チーム。「島の活性化」をおおまかな問題点としてあげ、「知名度向上」「経済活性化」を解決すべき問題としました。そして、Z世代をターゲットに設定し、高校生の恋愛リアリティ番組とのコラボと、オリジナルTシャツの制作を提案しました。この番組は「運命の恋と青春の修学旅行」がコンセプト。離島旅行と修学旅行を重ね、八丈島でロケーション撮影を提案。番組視聴者層への知名度向上を狙います。さらに、番組とコラボした限定オリジナルグッズを販売することで、「SNS映え」の心理をくすぐり「経済活性化」につながると提起。実際にロケ地とコラボしたグッズを販売した例をあげ、期待される経済効果を説明しました。

4番目は伊豆大島チーム。「観光客・宿泊客の減少」を課題にあげ、有名スイーツ店とのコラボレーションによる特産品開発と、ホテルとの業務提携による宿泊プランを提案しました。この企業を選んだ理由は「伊豆大島に甘いものを売っている場所がすくない」こと、「経営理念に自然を生かすことがある」ことの2点。企業にとってもイメージアップや認知度向上につながるとし、コラボする企業の必然性を説明しました。特産品開発として島の特産である大島牛乳を使用したプリンを、宿泊プランとして星空観測とスイーツ食べ放題を組み合わせた内容を提案しました。宿泊プランは、親子三代で楽しめる内容にすることで、若い子供連れやその親世代まで幅広い年齢層に認知してもらうことを狙います。また、宿泊施設で生活の類似体験をしてもらうことで、将来的な移住につなげることも提案されました。

ならではの要素

5番目は小笠原諸島チーム。「島と本州の人に継続的なつながりがないこと」「移動に24時間かかること」「コンビニやファストフード店がないこと」を問題点にあげ、島内でのダイエットプログラムを提案し、旅行会社との連携により、健康と観光を組み合わせた新しいプランを提案しました。提携する旅行会社は「旅で幸せになる人が増えること」を企業理念に据えた企業を提案しました。理由として旅で人生が豊かになる仕組みを創りたいと考えている理念と、今回の提案プラン内容の一致を説明しました。今回の24時間かかるフェリーでしかアクセスできない環境を利用し、参加者が逃げられない状況を作り出すことでダイエットと向き合う時間を確保するという、問題点を逆手に取ったユニークな提案。島でのアクティビティとして島民との農作業体験を取り入れ、カロリー消費と共に島民との交流を狙います。

最後は神津島チーム。豊かな自然の中でも星空保護区に指定された夜空に焦点を当て、グランピング施設の展開と自然派コスメブランドとのコラボレーションにより、都市生活で疲れた人々への癒しの提供を提案しました。液晶画面の眺めすぎによる眼精疲労や、デスクワークによる肩こりなど現代社会人ならではの悩みを、グランピングで味わえる手軽な非日常感と神津島の自然とのふれあいを通じて癒してもらうことを狙っています。さらに、自然派コスメブランドとコラボレーションし、神津島名産のパッションフルーツを使用した商品開発を行いブランドの店舗でPRすることで、集客効果を高めたいと考えています。 

よりよくしていくためには

中間発表終了後、近畿日本ツーリストの橘氏からアドバイスの記載された資料が配布されました。「皆さんが考えている企画自体もダイヤモンドの原石なので、どんどんブラッシュアップしていってもらいたいなと思っています」と語られたのち、全体に向かって改善点をアドバイス。「島の価値、中で生活している人のことも想像してみて」「自分がそのコラボする企業のプロジェクトマネージャーや企画の担当者だったらどうかなっていう目線をもっと考えて欲しい」「スピーチではなく、相手へのプレゼンテーションを意識した発表に」と、三つの要点と具体的な改善方法・調査方法を提示されました。

その後発表順に各グループのテーブルを回り、発表内容のフィードバックがありました。ひとつひとつ細かく丁寧なフィードバックに対し、学生も質問を重ね、有意義な時間となりました。

中間発表から二週間後の5月23日には最終プレゼンテーションが行われる予定です。

担当教員からのメッセージ

キャリア教育の中でも初年次教育として実施している「実践プロジェクトa」
今年も多くの履修希望者の中から34名の1年生が挑戦してくれています。
さらに今年度は、科目等履修生として、実践女子学園高等学校の3年生2名も加わり、
総勢36名での授業がスタートしました。
ご支援いただく企業様は、今年も、近畿日本ツーリスト様とサントリーホールディングス様です。
早速、近畿日本ツーリスト様からのお題が提示されました。今年は、さらにハードルの高い課題が
提示されています。
大学1年生が、いきなり社会人1年生の立場で、企業のリアルな課題解決にチャレンジします。
今年も、アウトプットがとても楽しみです。
なお、本講座は、一般社団法人フューチャースキルズプロジェクト研究会が、バックアップしています。

2025年5月8日

冬季オリンピックが変わる?「国際理解とキャリア形成」でオリンピックの持続可能性について考えるコラボ授業が行われました。

4月22日(火)に共通教育科目の「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)でスポーツニッポン新聞社とのコラボ授業が行われました。今回の授業では、スポーツニッポン新聞社から藤山健二氏と佐藤博之氏をゲストとして迎え、「オリンピックの持続可能性について」という課題が出されました。課題の説明では「冬季オリンピックと環境問題」について焦点をあて、オリンピックが置かれている現在の課題について説明が行われました。その後早速グループワークを行い、7月のプレゼンテーションに向けて議論がスタートしました。

「スポニチ」って?

授業のはじめに、今回の社会連携授業のパートナーであるスポーツニッポン新聞社について、佐藤氏から事業の概要についての説明がありました。スポーツニッポン新聞社は野球、サッカー、オリンピックなどのスポーツに加え、芸能や競馬なども報道する大衆紙です。読者層の約4分の1が女性で、30代から50代が中心となっています。新聞購読者の約3分の2が定期購読者で、残りはコンビニや駅での販売となっています。また、地域ごとに関心度合いや興味の対象が異なるため、各地域版で一面の内容が変わることを、野球の紙面を例に説明されました。さらに、スポニチアネックスというオンラインプラットフォームでは月間2億2000万ページビューを記録し、ヤフーニュースやLINEニュースにも配信されています。取り扱う内容や掲載記事のデザインの特徴など、誰もが見たことある記事について触れながら、説明を受けました。

未来のオリンピックと環境問題

続いて藤山氏から、課題の詳細とオリンピックの現状について説明されました。オリンピックの担当記者として世界を取材してきた経歴の自己紹介からスタート。続いて、2026年にイタリアで開催される「ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」に触れながら、テーマにかかわる現状や課題について解説がありました。

雪が残るのは札幌だけ?!

藤山氏から提示された課題は「オリンピックの持続可能性について」。特に冬季オリンピックが直面している深刻な課題が詳細に説明されました。地球温暖化の影響により、15年後である2040年までに開催可能な都市が15都市から10都市に減少する予測があること、さらに、これまで冬季オリンピックが開催された歴代の都市のうち、今世紀末も安全な競技環境を提供できる地域は札幌のみであるという衝撃的な調査結果が紹介されました。

続いてこの問題に対する解決策として検討が行われているいくつかの例が紹介されました。具体的には、複数都市での共同開催、夏季・冬季競技の再編成などがありました。特に注目すべき点として、屋内競技を冬季に移行させることで、暑さ対策と施設の効率的な活用が可能になるという提案がありました。

オリンピックの今

続いて、持続可能な取り組みを実行する具体例として2026年のミラノ・コルティナオリンピックの紹介がありました。オリンピックが抱える諸問題に対し、先進的な取り組みとして注目されています。会場で使用する電力はすべて再生可能エネルギーでまかない、使い捨てプラスチックの使用を完全に禁止し、食品廃棄物の削減を徹底する計画です。とくに、選手村は大会後に学生用施設として再利用される予定で、これは環境配慮と社会貢献を両立させる新たな取り組みとして評価されています。さらに、この選手村では自動車の使用を制限し、自転車を中心とした環境に優しい交通システムを導入する計画も発表されています。

発想力に期待大

授業の最後には、コラボ授業のゲストとしてスピードスケートの岡崎朋美氏を迎えることが発表されました。岡崎氏は、1998年長野オリンピックで日本女子短距離で初のメダルを獲得し、その後5度にわたりオリンピックに出場、さらに結婚・出産を経験しながらも20年以上にわたって現役を続け、トップアスリートとして活躍した経歴を持っています。競技生活と家庭生活の両立について、貴重な経験談を聞く予定となっています。また、可能であれば長野オリンピックのメダルも持参していただく予定です。

最後に、既存の枠にとらわれない自由な発想を期待されていること、優秀なアイディアはIOCに紹介するかもとコメント。大学生の発想に期待が寄せられました。

担当教員よりメッセージ

恒例の「オリンピック・パラリンピック連携講座」は、今年もスポーツニッポン新聞社様にご協力いただいています。「東京2020大会」の開催が決まった直後から継続しているこの講座について振り返ると、オリンピック・パラリンピックを取り巻く環境が、様々な意味で変化していることを感じています。

今後、益々重要になる「持続可能性」が今年のテーマ、学生たちの柔軟でかつ奇抜なアイデアを期待したいと思います。

2025年2月14日

女子大生に流行るキャラクターをつくろう!現代生活学科の授業で株式会社クロス・マーケティンググループ、株式会社トキオ・ゲッツとのコラボ授業が行われました。

現代生活学科の授業ビジネスプランニング(担当:上野亮助教、倉持一准教授)で株式会社クロス・マーケティンググループとグループ企業の株式会社トキオ・ゲッツとのコラボ授業が行われました。「女子大生に好まれるキャラクター作り」をテーマに、班に分かれてグループワーク。コンセプトを一から考え、イメージ画像まで作成しました。2クラスに分かれて行われたプレゼンテーションの様子をご紹介します。

自社オリジナルのキャラクターを考えよう!

株式会社トキオ・ゲッツは、IPを活用した企業プロモーションや商品の企画開発、イベント企画などを行う会社で、主に他企業や作品とのコラボやタイアップを専門に手掛けています。
事業を拡大させていくにあたり、自社のオリジナルキャラクターを作成し商品化を展開していきたいと考えており、学生たちへの課題となりました。

テーマは「女子大生に好まれそうな新しいキャラクターとそれを活用した商品展開」です。
学生たちは9班に分かれ、それぞれグループワークを開始。
市場分析からキャラクターのコンセプトを考え、キャラクター名や画像を創作します。PRに使用するSNSにどういった内容を投稿するかや、どのような商品を売り出していくのかまで細かく考えました。
プレゼンテーションは、クロス・マーケティンググループの日下部将氏や、トキオ・ゲッツ代表の小笠原亨氏を始め、企業の皆様もリモートで参加されました。

キャラと一緒に推し活をしよう

上野先生のクラスは1班から5班が発表を行いました。

1班は推し活の写真撮影の際に映りこませられるキャラクターを考案。
与件整理から動物モチーフのキャラが人気であると分析し、イリナキウサギをモチーフに「イリぴぃー」を作り上げました。ふわふわでまんまるな目がかわいい癒し系です。
トレーディングカバーの収納フレームや缶バッチケースなどで商品展開を考えています。
発表後の質疑応答では、「キャラクターを細かく作りこまれている。イリナキウサギというモチーフは珍しいですが、元々知っていた?」と質問され、学生は「かわいい動物で、まだキャラクターになっていないものを探しました」と、一からリサーチしたことを回答しました。

2班はカフェやアニメが好きな女子大生向けにキャラクターを作成。
女子大生は週一以上カフェに行く人が多いというデータや、人気のアニメキャラを分析。「ビタベル」と「シュガリーナ」というカフェの女子店員を提案しました。
SNSではキャラクターから接客を受けているような動画や、チャット機能を使ってユーザーの悩みを相談したり雑談したりできる展開を考えています。
質問で「女性がターゲットで、なぜ男性キャラではなく女性にしたのですか?」と聞かれ、「女子大生はカッコいい女性への憧れがあり、共感を呼ぶと考えました」と答えていました。

キャラクターも成長するアプリ

次の3班は推しと共に成長するキャラクターを提案しました。
独自で女子大生へアンケートを取った結果、推しに抱く感情の1位は「かわいい」だと判明。そこで赤ちゃんをモチーフにしたキャラクター「ベベたん」を考案しました。
キャラクター育成ゲームと推し活機能を兼ね備えたアプリを作成し、アプリを使うことでキャラクターがしゃべったり食事を出来るようになったり成長する機能を付けます。
企業の方からは「独自でアンケートを取っていたのがいい。私たちが普段やっている方法に近いですね」と感心されました。

4班は励ましてくれるパートナーとしてのキャラクター。
かわいいだけではなく、インパクトのあるキャラクターを目指しちょっとキモカワのウサギとリス、「オン」「オフ」を考案しました。お互いに悩みを相談し励ましあう動画をSNSで流し、LINEスタンプを展開するとしました。
発表後の感想で「LINEスタンプとの相性はすごくいいと思いました。よく考えられている」「ロジックが緻密でよくできている企画でした」とお褒めの言葉が聞かれました。

5班はまず既存の人気キャラクターを分析。
かわいいというビジュアルだけでなく、癒されるといった内面的要素も大事だと説明しました。作ったのはブルーチーズの妖精「ぶるちぃ」。
可愛らしい外見ですが、毒舌でネガティブ。そして落ち込むとカビが増えるという特徴を考えました。人気のキャラクターに動物モチーフが多かったため、あえて食べ物をモチーフでキャラクターを作成。
ブルーチーズはカビが生えていて、臭いが強いというマイナス面があることから、キャラクターの性格に結び付けました。

女子大生の共感を得るキャラとは

倉持先生のクラスでは6班から9班が発表しました。
6班は合言葉を「省エネライフ」として、ナマケモノをモチーフにした「ノロちゃん」を考えました。
きらきらした日常を演じていますが実はメイクやおしゃれは面倒、という性格で女子大生の共感を呼ぶことを狙います。SNSではノロちゃんが部屋でぐうたらしている動画を展開。
さらにバスボムや食器スポンジなど、面倒臭くなりがちなお風呂や家事が楽しくなるような商品を出していきます。
発表後は企業の方から「しっかりコンセプトも考えられていた。商品展開までストーリーがつながっていました」と感心されました。

7班はカプセルトイで観葉植物の植木鉢や机に置けるフィギュア展開から発展。地球外生命体で一つ目のうさぎ「もののん」を考えました。
質疑応答で「なぜ一つ目なのですか?」と聞かれ、一人の学生がマイクを持ちました。
「実は、私が5歳のときに考えたキャラクターです。目をハートの形で作りたかったので、一つ目にしました」と回答すると、「そんな愛着のあるキャラクターなのですね」と企業の方も笑顔に。

女子大生の日常に寄り添う

続いての8班はキャラクターを考えるなかで、女子大生は情緒が不安定なときもあると考え、ネガティブな気持ちに寄り添うコンセプトに定めました。
フェネックをモデルにした丸くて小柄なふんわりした「ペソ」を作成しました。SNSでショートアニメを配信したり、落ち込んだユーザーを肯定するようなポエムを投稿したりすることで訴求します。
企業の方からは「商品展開案がとてもまとめられていて分かりやすかったです」と感想がありました。

最後の9班は「ときめきと季節」をテーマにキャラクターを4体作成。四季をテーマに、うさぎの「こはる」、猫の「なぎさ」、ヒツジの「あかね」、熊の「こぐま」を考えました。
女子大生は恋愛や趣味、美容などの会話で盛り上がることをデータから分析し、話題にしやすく日常に溶け込むキャラクターにしたのです。キャラクター同士で恋愛や趣味の話をする4コマまんがやアニメーションをSNSで発信。
季節モノの商品とコラボし、カレンダーやマフラー、文房具などの商品展開を考えています。また、オーディション番組が若者に人気であることをヒントに、グッズを買うことで投票できる仕組みなども提案しました。
発表後には「商品展開の戦略に実現味があり、マーケターがいるのかと思うほど作りこまれていました」と企業の方も感心されました。

全班の発表後、企業の皆様から総括をいただきました。
日下部氏は「素敵な発表をありがとうございました。それぞれの班で別々の魅力がありました」と学生たちの頑張りをねぎらわれました。
「女子大生は推し活のほか、日常への共感が必要なのだと分かりました。マーケティングに活かせたらと思います」と話されたあと、「緊張したと思いますが、アイデアを考え資料にまとめて発表するというのが社会人になると増えていきます。今後も頑張って行ってください」と学生たちにエールを送りました。

担当教員よりメッセージ

2022年度より開始した、株式会社クロス・マーケティンググループの皆様とのコラボ授業
も3年目となりました。今年度の授業では、株式会社クロス・マーケティンググループに
加え、株式会社トキオ・ゲッツのご協力のもと、新しいキャラクターを考案し、そのキャ
ラクターを活用した、商品企画も考えるという課題に取り組みました。キャラクターを考
えるだけでなく、それをビジネスとして実現する方法まで考える。そして、その内容を企
業の方たちに対し、プレゼンするのは大変だったはずです。しかし、大変だった分だけ、
その経験は大きな学修成果となります。今回、経験した内容は実際に社会に出た後も活か
せる内容です。学生達にはこれからの学修活動にも、この貴重な経験を活かした活躍をし
てもらえればと思います。最後になりますが、この度はこのような貴重な機会を頂きまし
た、株式会社クロス・マーケティンググループ、株式会社トキオ・ゲッツの皆様に、この
場を借りてお礼を申し上げます。

2024年8月23日

1年生対象の企業連携講座「実践プロジェクトa」を実施しました!

1年生対象の企業連携講座「実践プロジェクトa」をキャリア教育科目として展開いたしました。本年は5回目の実施となり、近畿日本ツーリスト様とサントリーホールディングス様の2社にご協力いただき、今年は、過去最高の36名の1年生が履修致しました。本講座は、フューチャースキルズプロジェクト研究会(FSP研究会)が構築しているプログラムであり、全国約30大学で展開されている講座です。狙いは、「大学での学び方を学ぶこと」と「主体性を引き出し、身につけること」です。14コマに2つの企業様からお題をいただき、中間、最終と2回のプレゼンテーションを含めての議論が続きます。しかも、テーマは、実際に企業様が取り組んでいる課題てあり、1年生にとっては、極めて高いハードルです。

近畿日本ツーリスト様からの課題

近畿日本ツーリスト様からの課題は、

あなたは地域活性化・課題解決を担う旅行会社の社員として、地域の本質を見極めて、地域の課題をデザインの力で解決し、その土地に元気を与え、より豊かに暮らせるような価値を生み出すことに挑戦。
今回は、伊豆諸島の個性豊かな6島の“土地の力”を引き出して『東京諸島の未来』をデザイン!
「ぜひ島に行ってみたいなぁ」「わたしもこんな風を島で感じてみたいな」と、心が動かされるような新たな企画をプレゼンせよ!です。
日本のZ世代+海外インバウンドに向けて、日本語と英語で島のキャッチコピーや島のオリジナルロゴマークをデザインし、それを活用して企業・商品・サービスと島と連携させて効果的な地域プロモーション案を企画する課題が出されました。かなり難しい課題に、グループのみんなで力を結集し、各島の斬新なデザインや企画を発表してくれました。


サントリーホールディングス様からの課題

サントリーホールディングス様からの課題は、あなたはサントリーホールディングスの社員です。2024年6月、ピープル本部から「人材育成革新プロジェクト」のメンバーとして指名されました。具体的な課題は二つあります。
①会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人・社会人に求められるものは何なのか、結論を発表して下さい。
②それを踏まえ、これからサントリーに入社してくる社員に対する具体的な研修計画を提案してください。
今年のメンバーも、必死に取り組み、最後までやり遂げてくれました。

<学生のコメント>
◆実践に入学したら絶対に受けたいと思っていた授業でした。辛かったけれど、近畿日本ツーリスト様のお題を
いただいた頃とサントリーホールディングス様の提案を終えた今では、明らかに自分自身に変化がありました。
◆社会人と学生のギャップもかなり衝撃的なものがありました。これからの学びに変化をもたらせてくれました。

担当教員からのメッセージ

入学直後の1年生、自ら選択したとは言え、相当難しい課題に頭を悩ませながらも、真摯に前向きに諦めることなく取り組んでくれました。この授業を履修してくれた学生のその後の成長が著しいことは言うまでもありません。さらなる成長に向けてサポートを続けていきたいと思います。ご協力いただいた近畿日本ツーリスト様、サントリーホールディングス様にこの場を借りて御礼申し上げます。

2024年8月7日

柔道五輪で7大会に帯同した木村昌彦横浜国立大学副学長が、日野キャンパスで特別授業!示唆に富んだ言葉に学生が熱心に聞き入る

 「栄養学」はスポーツの分野でも大きな役割を果たしているー。そんな新しい視点も学んでもらおうと、世界トップクラスの柔道選手の育成に携わった横浜国立大学の木村昌彦副学長の特別授業が7月10日(水)、日野キャンパスで行われました。「常識を疑え」などと訴え、学生の意識改革を促した木村副学長。目から鱗の話に出席した約50人の学生は、メモを取るなど真剣な表情で聞き入っていました。

五輪で栄養指導した奈良准教授の要請に快諾して実現

 木村副学長は、92年のバルセロナから16年のリオデジャネイロまで7大会のオリンピックに、全日本女子柔道のコーチなどとして選手に帯同しました。また、アトランタ・シドニー・アテネ・北京オリンピック大会をはじめ多数の海外遠征に帯同し女子柔道の栄養指導を担当してきたキャリアを持つ食生活科学科の奈良典子准教授とは、競技のパフォーマンス向上のため体調管理の一環としての栄養の大切さを柔道の日本選手団に根付かせるため、苦楽を共にした間柄です。奈良准教授から「学生に他の領域での学びの機会を与えたいスポーツ指導論を通して是非お願いしたい」との要望を受け、木村副学長が快諾、「スポーツと健康科学a」の科目を履修する学生のための特別授業が実現しました。

パフォーマンスに影響する栄養の重要性

 木村副学長によると、柔道は他の競技より先駆的に「スポーツ科学」を導入。その中でもいち早く取り入れたのが適切な栄養指導や海外遠征での食事提供だったといいます。選手がパフォーマンスを十分に発揮するためには、運動能力に加え、あがりなどの心理的状態が大きく結果を左右すると強調。「心技体の中でも心はプラスとマイナスの振れ幅が大きい。心が萎えるとできるものもできなくなります」と指摘しました。意外だったのが、栄養と心の関係です。「栄養は心の問題に大きく関わり、海外でも日常と同様の食事ができると選手の落ち着きにつながります」と話しました。

「常識を疑え」

 また、木村副学長が野球部に所属していた中学時代は、運動中の水の摂取は禁止だったこと、漫画「巨人の星」で、主人公の星飛雄馬が着用した運動器具の「大リーグ養成ギブス」も、筋肉を付けるためには効果がないことを挙げ、「常識を疑い、思い込みを捨てることが大事」と力説しました。五輪選手がインタビューを受ける際にしっかりした言葉で受け答えをしていることについては、「自分の言葉で話すことが大切です。自分を変える時には言葉にすることが必要です。マイナスに解釈すると挫折だが、ポジティブに解釈すると次へのステップに変わることもあります。第三者に論理的に話していくとは自分が変わることにもつながります」と言葉の重要性も説きました。

日本柔道復活の立役者、井上元監督の指導法とは

 話は、木村副学長だから知っているオリンピックの裏側にも及びました。柔道男子日本代表が52年ぶりに全階級でメダル獲得という快挙を成し遂げたリオ五輪の時には、木村副学長は、柔道日本代表チームのチームリーダーを務め、立役者となった当時の井上康生監督の指導法を間近に見ていたといいます。井上元監督は「コーチングよりもマネジメントを重視し、期待しているのではなく、選手を信じている」とのスタンスだったといいます。決して、勝利至上主義ではなかったといい、「高い目標に向かっていく過程が大事。それが次につながるのです」とも。さらに、スポーツ選手が本番に臨む際に良く使う「(試合を)楽しむ」という言葉についても、うんちくを披露。「『楽しむ』と『楽(らく)する』は違う。楽しむは、自分が決めた高い目標に向かっていくために試行錯誤すること。ここが充実しているのが楽しいことなのです」と示唆に富んだ言葉を学生にかけました。

真剣だと知恵がでる

 最後に、試合中に膝に大けがをした柔道女子の新谷翠選手がその後、世界選手権で金メダルを獲得したエピソードを紹介し、「絶望からの脱出だった」と振り返りました。「モチベーションを高めるのに大事なことはビジョン、ミッション、パッション、そして、アクションです」と語り、今後の人生において、学生にも奮起を促しました。

 そして、授業の最後に、「真剣だと知恵が出る 中途半端だと愚痴が出る いい加減だと言い訳ばかり」という言葉を送りました。戦国武将の武田信玄が残した木村副学長の「一番好きな言葉」だそうです。

奈良典子准教授の話

 「スポーツと健康科学」の科目は、健康運動実践指導者の資格を目指す授業科目ですが、資格を取るための知識習得にとどまらず、スポーツ指導論を通して広い視野で物事を見てほしいと思い、木村副学長の特別授業を開催しました。学生には受け身ではなく、自分の考えで行動できる人になってほしい。知識を習得してわかっただけでなく、1回やってみて、さらにいろんなシーンで使えるような、「わかる」、「できる」、「使える」人になってほしい。学生生活にも慣れてくる2年以降は、入学当初よりもモチベーションを維持するのが難しい学生も散見されます。そんな時期だからこそ、スポーツ現場の指導経験もあり、さまざまな角度から問いかけてくださる木村副学長の講話は、間違いなく学生の気持ちを高揚させてくださると思っていました。今回はスケジュールの関係で2年生を中心としましたが、学生らの真剣な受講姿勢に、より多くの学生らに刺激を与えていければと改めて感じました。木村副学長には感謝の気持ちでいっぱいです。心より感謝申し上げます。