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2025年8月28日

2025年度キャリアデザインの授業で、オリエンタルランドとコラボした課題に対する発表が行われました。

7月8日(火)にキャリアデザイン(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、株式会社オリエンタルランド(以下オリエンタルランド)からマーケティング本部コンテンツ開発推進部長の横山政司氏と、マーケティング本部コンテンツ開発推進部ロイヤルティマーケティンググループマネジャーの伊藤大樹氏を招き、課題に対する提案が行われました。今回学生が取り組んだミッションは「あなたは、コンテンツ開発推進部に配属されたオリエンタルランドの新入社員です。人口減少社会でハピネスを提供し続けるために、Z世代のファンダフルディズニー会員を獲得する施策を提案してください」。学生たちは2週間かけて取り組んだプランを提案しました。課題が発表された授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8806/)。

全部で9つの班が発表を行い、伊藤氏から最優秀賞と優秀賞が発表されました。今回は受賞したふたつのグループの発表内容を紹介します。

最優秀賞:1班

ターゲットは、比較的時間と経済的余裕のある大学1~4年生に設定。ターゲットを対象としたアンケート調査を、インスタグラムとグーグルフォームを用いて行いました。その調査結果から、そもそもファンダフル・ディズニーを知る機会が少なく、特典の魅力も十分に伝わっていないことを課題として設定しました。また、ファンのニーズと会員特典が合致していないのではないかという点も課題に挙げました。

ファンのニーズと会員特典の合致を目指し、「コース別ファンダフル・ディズニー」を提案。入会時に「アトラクション」「フードとショー」「グッズ」の3つから希望のコースを選べる制度で、それぞれのコースに沿った特典が用意されます。既存会員も追加料金なしでコースを選択可能とし、満足度の向上と離脱防止を図ります。

さらに、会費については、年払いに加えて月払い制度の導入も提案。大学生にとっては、月払いの方が加入の心理的ハードルを下げやすいので、まずは月払いで気軽に入会してもらいます。そして、会員を継続する中で年払いへ移行する流れを想定しています。また、段階的に外国籍の方の入会も視野に入れるなどの方針を紹介しました。

最後に、認知度向上のためにZ世代に人気のインフルエンサーを起用したSNS発信や、駅構内での広告展開を組み合わせたマーケティング戦略を提案。認知を広げ、自発的な興味・検索行動へとつなげることを狙いました。

伊藤氏は「調査結果を反映させて終わりではなく、既存のコンテンツとの違いを出すためにどうしたらよいかを掘り下げて検討し、「コース別」という切り口の提案にたどりついたのは面白かったです。認知度の課題に対しても具体的な提案をしてくれました。発表も、アンケート結果を出発点に全体の施策につなげていく構成で、ストーリーが見えやすく、非常に良い提案でした。」と受賞理由を紹介しました。

優秀賞:6班

ターゲットを「地方在住のZ世代」と定義し、課題として以下の2点を挙げました。1つ目は、地方に住んでいるとパークに何度も行けず、お金もかかるため、地方在住のZ世代にとって入会のメリットが感じづらいこと。2つ目は、情報発信が首都圏在住者やリピーター向けに偏っており、ファンクラブ自体の認知度が低いことです。

そこで、地方在住のZ世代を対象に「出張ファンダフルイベント」を提案しました。これは、キャラクターが実際に各地域を訪れ、パークでは見られないご当地限定衣装での撮影会、抽選でのグッズお渡し会など、直接ふれあえる体験型イベントです。地方でディズニーパレードを実施した際に大きな反響があった事例を挙げ、地元でディズニーを楽しめる機会には高い需要があると説明しました。これは、パークに行きたくても距離や費用の面で難しいZ世代に、魅力的な体験を提供できるという提案です。また、参加者によるSNS投稿を通じて、ファンクラブの認知拡大や入会促進も狙います。

さらに、SNS上でファンクラブコンテンツの一部を公開し、全貌は会員のみ閲覧可能にすることで、「会員になる特別感」を演出することも提案しました。実際に同様の戦略で、ファン限定コンテンツの会員数が3倍になった成功事例も紹介し、SNSと会員制の連動による効果の高さを強調しました。

この施策を通じて、地方にいてもディズニーの世界観に触れられる機会を提供し、新規会員の獲得と既存会員の継続意欲の向上を目指します。

伊藤氏は「遠方に住んでいて来園が難しい方にどのようにつながりをもってもらうか、という点は我々も課題に置いていたところです。地方で行うファンミーティングなど、いろいろなことをやりたいと考えていたので、共感する内容が非常に多い提案でした。」と受賞の理由を紹介しました。

授業の最後に

受賞したグループには記念品としてディズニーグッズが贈呈されました。

1班
6班

伊藤氏から「短い期間でここまでの提案内容を仕上げたことが素晴らしいと思います。全部で9つの班の、若い世代の声が反映された発表を聞いた時間は非常に有意義なものとなりました。特に知名度の低さとSNS活用の意見は受け止めて、ファンダフルを運営しているチームにもしっかり共有させていただいて、この先につなげていきたいと思います」とコメント。

横山氏からは「ターゲット設定はどのグループも苦労したと思います。ターゲットの掘り下げをさらに行うと、より詳細なアプローチを提案できたと思います。顧客の解像度をどんどん高めていかないと、適切な提案は行えません。この視点は社会に出てから重要になります。今回の提案に当たりアンケート調査を実施したことはよかったのですが、アンケートでは見えてこないターゲットのリアルなニーズをつかむことは提案を行う上で非常に大切です。社会人になったら、ぜひ意識していただければと思います。」と総括の言葉をいただきました。

担当教員のコメント

毎年、多くの学生が楽しみにしている「キャリアデザイン」におけるオリエンタルランド社との連携講座が行われました。本年度も、昨年と同様とてもリアルなテーマを出題いただき、学生にとってのハードルは例年以上に上がったものの、深く企業や、仕事のことを考察する時間となりました。学生にはとても身近な企業であるものの、やはり仕事という側面で考えることは、本当に意義ある取り組みになったものと考えます。

横山様には、毎年、中間段階でのフィードバックを含め、プレゼンテーション当日まで、ご丁寧にアドバイスをいただき、学生にとっては、仕事の厳しさも学ばせていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。就職活動を目前に控えた学生にとって、働くこととは、仕事とは、そして企業とは、一人一人が自らと向き合い、限られた時間でチームとして成果を出すことの重要性など、どこまで深く考えられるかが重要であることに気づいて貰えればと考えています。横山様、伊藤様には、改めて感謝申し上げます。

2025年7月22日

 「キャリアデザイン」の授業で立教大学法学部石川文夫客員教授との特別コラボ授業が行われました。 

6月3日(火)に「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、立教大学法学部石川文夫客員教授との特別コラボセッションが行われました。「ロールモデルから考えるキャリアデザイン」と題された今回の特別講義は、石川教授と縁が深く、独自のキャリアを歩まれている女性ゲストを三名お招きし、それぞれのキャリアや価値観を振り返る講義を行いました。授業には石川教授のゼミから立教大学の学生も参加。特別編成で行われた講義とあって、学生たちも講師の話に真剣に耳を傾けていました。

石川教授が、深澤教授のインタビューが掲載された新聞記事を読み、連絡をとったことがきっかけでコラボ授業の運びとなった今回の授業。ゲストスピーカーは天谷 暁子氏、関口 郷子氏、高柳 真由子氏の三名です。

天谷 暁子氏の講演

富士通の人材採用センターに勤務する天谷暁子氏は、理系の大学に通いながら大学1年で学生結婚、大学院では妊娠・出産を経験。出産時期と就職活動が重なるという状況の中で富士通に応募し、事情を正直に伝えたところ「出産後にぜひ受けてください」と温かく対応された経験を語りました。当時はダイバーシティが今ほど浸透していなかった時代にもかかわらず、面接で「あなたのような人が必要です」と声をかけられたことに感激し、「今も自分の原点として大切にしている」と振り返ります。

富士通に入社後は法務・知的財産権本部から知的財産研究所への異動を経て、海外調査や報告業務にも携わり、さらに東京オリンピック・パラリンピック組織委員会への出向という貴重な経験も。帰任後は企業スポーツ推進室で社会貢献活動やアスリート支援に携わり、現在は主に新卒採用を担当しています。天谷氏はまた、プロスキーヤーとしてカナダでトップ選手たちと共にトレーニングを積んだ経歴も持ち、「スポーツを通じて学んだチームワークや対話力は、今の仕事にも活きている」と語りました。多様なフィールドでの経験を通じて、キャリアを自分の言葉で語る意義を強く実感しているといいます。

関口 郷子氏 の講演

関口郷子氏は、アナウンサーとして長年活動しながら、多彩なキャリアを切り拓いてきた実践者です。講演の冒頭では「質問しにくくても、ぜひ声をあげてほしい」と学生たちに呼びかけ、会場をぱっと明るい空気に染めました。関口氏は長野県飯田市の出身。山々に囲まれた自然の中で育った幼少期を振り返り、「やまびこで返ってくる自分の声が楽しかった。『声がいいね』と言われたことがアナウンサーを志すきっかけになった」と語りました。

大学在学中に地元局のアナウンサー試験に合格し、その後上京。世界各地を飛び回る取材生活の中、アラスカの取材が転機となったといいます。夜になるとオーロラが空を覆う現地で、-60度の厳しい自然の中で生きる人たちと共に生活を送る日々。「毎日生きててよかったと思う経験をした」と話し、「自分のために生きるスイッチが入った」と振り返りました。

38歳のとき、「本業+もう一つのキャリア」に挑戦する“パラレルキャリア”の考え方に出会い、コーチングの世界へ。どのようなパラレルキャリアを築こうか悩んでいた時期、友人へ話を聞いている中でコーチングという分野の存在を知ったといいます。興味を持った関口氏は、さらに理解を深めるため、実際にコーチングを行っている企業を自ら訪問。直接話を聞くなど、積極的に行動する姿勢が印象的でした。

さらには還暦を機に地元にリトリート施設「千代和らぎの郷®」を開設。開設のきっかけは、「世界中から人が集まるタイのリトリート施設に行ったとき、リラックスして素に戻ることができた。これって地元と同じじゃんと気づいて、自分も同じ環境を提供したいと思った」ことと話します。訪れた人が目標や夢を山に向かって叫ぶことが恒例行事となっているそうで、「皆さん、帰ってから驚くほど目標を達成している。言語化って大切です」と紹介しました。

最後に行われたワークは「今の自分が好きなことと、7歳の自分が好きだったことをかく」という内容。幼少期のやまびこがアナウンサーのキャリアにつながっている関口氏は、学生に「幼少期に夢中になったことは今の自分につながっている」と伝え、「無邪気さを思い出すことが、自分らしく生きるヒントになる」と締めくくりました。

高柳真由子氏 の講演

法務部門で唯一の女性として活躍する高柳氏は、車載通信機器、半導体検査治具、医療機器の製造販売・精密加工を行う企業で、契約書作成や紛争対応など、多岐にわたる業務を担当しています。高柳氏は大学時代は司法試験合格を目指すも、合格率3%の壁に心が折れ、のどに食事も通らないほどの気持ちの落ち込みを経験されました。しかし、支えてくれた家族の存在が大きな転機となり、最終的には別の形で法律に関わる道を選択しました

英会話講師や弁護士補助といった異なるフィールドを経て、企業の法務部へと転職した高柳氏。異文化や海外の価値観と向き合いながら、未経験の分野にも挑戦するなかで「性格がガラッと変わった」と振り返ります。「教えてもらう側から、提案できる側に変わると、仕事が本当に楽しくなった」と語り、日々の積み重ねが自信につながったと話しました。

また、高柳氏のプライベートも印象的です。長年続けるクラシックピアノに加え、ジャズピアノ、ジョギング、水泳、ピラティス、歌と多くの趣味を持ち、3匹の愛犬との生活も大切にしています。「クラシックは譜面通りだけど、ジャズは即興。人生も自分の解釈次第で変えられる」と話し、学生に向けては「自分を応援できる人でいてほしい」とエールを送りました。講演を通じて、仕事も人生も“自分のストーリー”として語れる強さとしなやかさを教えてくれました。

質疑応答

講演の後には、学生との質疑応答の時間が設けられました。

「変化が怖いと思い、慎重になってしまう。変化に対して、どのような気持ちで向き合っていけばよいか。心構えを聞きたい」という質問には関口氏が回答。「『変化が怖いと思う』と、今の自分について言葉にできることはすごいと思います」と切り出し、「準備ができる変化に対しては、何に怖がっているか自分に『なんで?』と問いかけてみてください。マインドなのか、行動なのか。理由がわかると解決の行動に移せる。一つ一つ原因をつぶしていく準備が、9割位占めていると思います。終わった後に失敗しても、完璧なんて無理だからそれまでにできる範囲の努力をして『これはできたな』と思える。そういうことが大切なのかなと思っています」と回答しました。

立教の学生から高柳氏に「『英語が話せることだけではなく、それで何ができるかが大切』という言葉に共感した。どうやって『何ができるか』を探せばいいか」と質問。「法律関係で海外の方と交渉する必要があったため、ビジネス英語を学んだ。海外の方と関わる必要がある仕事に携わると、英語は自然と求められるもの。だからこそ、“英語を使う仕事”を探すよりも、“自分がやりたいこと”から逆算して考えてみてはどうでしょうか」と、ご自身の経験に基づいた回答をされました。

担当教員からのメッセージ

日本経済新聞に掲載された私の授業のことがきっかけでご縁が生まれた石川先生が、社会で大活躍されている3人の女性を連れて本学渋谷キャンパスにお越し下さいました。

それぞれが輝く3人のロールモデルの方のお話しに、学生も引き込まれていきました。今回は、石川先生の下で学ぶ立教大学の学生さんもジョインされ、立教大学×実践女子大学というコラボも実現しました。ご支援いただきました石川先生には、この場を借りて心から感謝申し上げます。

2025年5月16日

Life Ship株式会社の田形正広氏が「キャリアデザイン」の授業で今年度も講演を行いました。

2025年度の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は「今、社会や企業が求める人材とは」をテーマに、キャリア形成を学びます。企業のトップなどゲストも多数招き、リアリティがあると評判の授業。2025年5月13日(火)のゲストは、Life Ship株式会社の田形正広氏。深澤教授との縁により実践女子大学で講演を行うのは10回目となります。世界にただ一つのコンテンツである「ワンピースキャリア論」に、学生たちも興味津々で耳を傾けていました。

漫画「ワンピース」でキャリアを学ぶ?

さまざまな経歴をお持ちな田形氏。大好きな漫画が「ワンピース」です。ワンピースは週刊少年ジャンプで連載中の、世界的にも人気の少年漫画。主人公のルフィを中心に海賊たちが大冒険を繰り広げる物語です。田形氏は「ワンピースには人生で起こることのほぼすべてが詰まっている」と言います。仕事のことやリーダーシップについても描かれているというのです。キャリアと漫画がどう結び付くのか学生たちも興味津々です。

講演は田形氏の自己紹介とキャリアの説明からスタート。経歴について説明があったのち、ライフログのグラフに沿って当時の経験を振り返りながら話が進みます。新卒入社の会社を半年でやめた話からはじまり、転職によって良い方向に進んだこと、任された大きな仕事に失敗したことなど、どのような状況に何を感じていたか語られました。

伝えたいことは「海賊になろう」?!

続いて、漫画「ワンピース」のあらすじと大まかなストーリーの解説があり、「伝えたいメッセージは二つだけ」とキャリア論の本題へ進んでいきます。

メッセージの一つ目は「人生は冒険だ!」。「就職はゴールではなく、大冒険の始まりであり、常に挑戦が求められる」「嫌なことや思い通りにいかないことがたくさん出てくるが、それが自分を強くしてくれる」と、自分の過去の経験とからめながら説明。「冒険には危険や勇気が必要な場面が伴うが、それを乗り越えた先には感動や成長が待っている」と述べました。「忘れがちですが自分の人生の主役は自分なんです。自分の人生に遠慮は無用」と田形氏。日本では自分が主役であることを忘れがちな制度や仕組みの中に生きているため、改めてこのことを伝えたいと述べました。

二つ目のメッセージは「海賊になろう!」です。海賊になるとはどういうことでしょうか。これはワンピースに出てくる海賊たちのように、楽しく、自由に、一生懸命に「今」を生きようということ。田形氏は、まず自由とは「何を信じてどの道を進むか自分で決めるということ」と定義しました。自由には責任が伴います。何をしてもいいですが、それを人のせいにはできません。何をどう行動するのか一つずつ自分で決断する必要があります。「大学生時代に自由は社会に出ることによって失われると思っていた」と話しながらも、「責任を負う部分が多くなっているが、それに伴い自由な部分も増え、より自由になっている」と述べました。

自由に必要なもの

自由の定義である「自分で決めること」に必要なものとして「自分の人生を生きる覚悟・判断基準(価値観)・判断材料(情報)」の三点をのべました。とくに「判断基準」と「判断材料」について、「情報だけ取ると溺れてしまうので、自分の価値観というものを同時に大事にする」とアドバイス。続いて、海賊の条件の一つにあがっていた「一生懸命」の定義に触れます。「謙遜も含め私このくらいの生き方で一生懸命かな?なんて思われる方も多いと思います。 なので、私が作った定義をまず言いますので、それに当てはまる方は、自分で自分は一生懸命なんだって認めていいですよ」と話し、その条件を「行動を起こしていること」「悩んだり迷ったりしていること」「失敗したり断られたりしていること」の三点と述べました。成功したかどうかは問題ではなく、まず行動できていることが一生懸命「今」を生きている証拠であると続けました。

クイズワーク

ここで田形氏から学生に向けて「海賊の反対は?」と質問が投げかけられました。グループで話し合う学生たち。「囚人」や「ニート」など様々な答えが出ましたが、田形氏の出した正解は「幽霊」。予想外ながらもどこか納得できる正解にうなずく学生。幽霊は過去や未来にとらわれ「今」を生きていない状態であると説明し、海賊と離れているイメージを認識することで軌道修正できると述べ、「今を一生懸命生きる」大切さを重ねて強調しました。

冒険と宝物(ワンピース)

冒険の先にある宝物(ワンピース)はどこにあるのかという問いに対し、仲間、愛情、仕事であると答え、どれか1つでも手に入れることができれば、ワンピースを見つけたのと同じくらい幸せであると述べました。また、仕事のワンピースとは?という問いに対しては「天職」とこたえ、「自分にしかできない仕事であり、昨年ついに天職を見つけ、現在それに向かって邁進している」と続けました。さらに、働くということは人や社会の役に立つことであり、より役に立てるように成長を重ねることで高い景色を見ることができると述べました。

冒険を楽しむために

宝物の次は、冒険を楽しむための武器と力として悪魔の実と覇気について説明。ワンピースの世界では、能力者と呼ばれる特殊な力を持つキャラクターが登場し、能力は「悪魔の実」という特別な果物を食べると身に付きます。しかし代わりに海賊ながらカナヅチになってしまうという犠牲を伴い、一長一短の力であることが示されました。悪魔の実を現実で例えると、これは時間を犠牲にして身に付ける専門的な技術や資格と説明し、漫画では悪魔の実を食べていないキャラクターも多数活躍していることを提示しながら「あると大きな力を発揮するが必ずしもマストではない」とも助言しました。

続いて覇気について説明。覇気とは、時間を犠牲にせずに得られる力であり、「見聞色」「武装色」「覇王色」の3種類が存在し、それぞれを「自己客観力と他者共感力」「自己コントロール力」「根拠のない自信」と解説します。前者二つは「相手の立場になって考える」「挨拶をする」など日常動作の中で訓練可能であることを提示。最後の「覇王色」の覇気についてはあってもなくてもいいとし、「自分に対する信頼」であると述べました。

「つながり」のキャリア論

今回の講義を通して田形氏が伝えたかったことは「自分の行動や経験と人の縁は繋がっていく」ことだと田形氏は実感を込めて言います。「どこでなにがどう繋がるかは分からない。ただ、勇気を出して行動すると願いは叶っていきます」。例として田形氏と深澤教授との繋がりが挙げられました。キャリアコンサルタントが大勢集まる会で深澤先生が講演をした際に、名刺交換をし、深澤教授の著作の感想を思いきってメールで送ったことから縁ができ、夢だった大学での講義が実現したと語りました。 「自信満々に見えるかも知れないけど軸がブレることもあるんです」と飾らない言葉で真摯に学生に語る田形氏。「自分の人生を生きるために行動しよう」としたことが今に繋がっていると強調しました。

担当教員からのメッセージ

早いもので10回目の特別講座「ワンピースキャリア論」が展開されました。
田形さんとは、キャリアコンサルタント仲間としてお会いしたことがきっかけで
この授業に、毎年駆けつけて下さいます。
仕事にも、家庭にも、とにかくポジティブ思考を貫かれている田形さんから、
私自身も、多くのことを学ばせていただきました。
ワンピースという作品を読んでいる人も、読んだことがない人も、あっという間に
この作品の世界に引き込んでいただき、キャリアデザインのために大切な考え方や
キーワードを沢山伝えて下さること、とても意義ある授業となっています。

先行き不透明に時代に大航海に出かける今の学生には、人との出会い、すなわち
“ご縁”を大切に、海賊として人生を謳歌として欲しいと願うばかりです。
この場を借りて、田形様に心からの感謝をお伝えしたいと思います。

2025年5月8日

「女性とキャリア形成」の授業で実践女子学園理事長の木島葉子氏からこれまでのキャリアについてお話を伺いました。

本学卒業生を含む企業トップの方々をお招きし、ご自身のキャリアや仕事で人生を充実させるために必要なことを語っていただく全6回のリレー講座が今年度もスタートしました。最初の第一回目は、実践女子学園理事長の木島葉子氏です。 木島氏は講座で、アフラックでの39年間のキャリア、そして現在の学園理事長としての活動について語られました。特に、危機対応や日本法人化プロジェクトの経験で得たリーダーシップについて、働き方改革などに代表される組織の改革におけるダイバーシティ推進の重要性など、管理職として実際に経験を重ねられてきたからこそわかるお話が展開されました。進行は担当のグループの学生たちが行うなど、学生主体の組み立てとなっており、講座後も積極的に質疑応答が行われました。

学生生活とキャリアの歩みのスタート

はじめに、自己紹介として大学時代についてお話がありました。木島氏は実践女子大学の卒業生。学生時代はスキーに熱中し、花屋でのアルバイトを通じてフラワーアレンジメントの資格を取得するなど、興味を持ったことには徹底的に取り組む姿勢を持っていたと振り返ります。「手書きの卒業論文の清書が何よりきつかった」と、当時を振り返りながら語りました。

続いてこのリレー講座について触れ、ゲストとして招かれている方々を「もし皆さんが社会に出て講演会に参加しようと思ったら、参加費がかかるようなすごい人たち」と紹介しつつ、「すごい人の講演を聞くという気持ちは捨てて、この人の真似できるところはどこだろうか、どんなことを考えているんだろうかということを探しながら、質問したり事前課題に取り組んでほしい」と話しました。

今回進行を担当した学生

就職活動では、女子大生の就職が厳しかった時代にアフラックに入社し、管理職、役員を経て39年間勤務されました。アフラックでは、保険契約管理、コールセンター、コンプライアンス、日本法人化対応、ダイバーシティ推進など、多岐にわたる業務を経験されました。入社後からのキャリアについて順を追って説明する木島氏。ひとつひとつのステップで得た経験や知見を話します。

象徴的なエピソード

「自分のキャリアの話をするときは避けて通れない」と紹介されたことは、東日本大震災時の危機対応でした。具体的な対応業務に、お客様対応、安否確認、保険料支払いの猶予など、広範囲な対応が必要であったことを説明されました。震災当日は4.5時間かけて帰宅したこと、計画停電の影響を受けて業務が滞ってしまったことなど、通常通りにいかなかった当時の苦労を話します。

その中で「特に大変だった」と触れたことは、お客様の安否確認など、各種対応を実施するにあたり社長の事前承認を得ることでした。単にやることを説明するだけでなく、判断してもらうための情報を合わせてもっていかないと判断してもらえないということに気づかず、何度もやり直しに。最終的には20万人の方の安否確認は一年の月日をかけて終了させましたが、「この経験から、物事の進め方を学ぶことができました」と振り返りました。また、東日本大震災の前後にも大きな危機対応を経験したことに触れ、「はじめは不安が大きかったけど、経験を重ねることで自信がつきました」と話を結びました。

続いて、日本法人化プロジェクトにおいて、チームの力でプロジェクトを成功に導いた経験を共有されました。

プロジェクトの内容は、アメリカの保険会社の日本支店を日本の株式会社にするというもの。取り扱う内容がこれまで触れてきた業務とは全く違う専門分野外で「当時の社長からリーダーを任された際思わず『本当ですか』と聞いてしまうほど衝撃的だった」と話します。「仕事でつかえる英語力がないのに、アメリカとの電話会議が朝7時から始まり、英語でのやり取りが続くという大変なもの」と続け、困難な課題に対して「英語ができる人、プロジェクトマネジメントの経験がある人、税務や法務に詳しい人など、社内の人材を集めてチームを作り、関係者と対話を重ね、課題を一つ一つ解決していきました」と語り、リーダーシップを発揮した経験を話しました。

ダイバーシティ・インクルージョン推進

さらに、アフラックが経営戦略として掲げているダイバーシティ&インクルージョン推進についてもお話がありました。企業がダイバーシティを推進する理由として社会や顧客ニーズが多様化していることをあげ、対応する人材も多様性が求められていることを提示されました。「能力を最大限に発揮できる環境を整え、意思決定の場で多様な意見を聞けるようにする必要がある」と解説。

木島氏がダイバーシティ推進を担当されていたアフラックでは、「女性が比較的多い会社でしたが、上に行けば行くほど女性の割合が減っていくという課題があり、ライン長ポスト(部下がいる管理職)の女性割合を2024年末までに30%以上にすることを目標に掲げています」と実際に行われているダイバーシティ推進について説明。同時に「ダイバーシティ&インクルージョン推進は、変革案件のドライバーになっています」と語り、「働き方改革も、ダイバーシティ推進と一緒にやったことで、長時間労働が激減しました。また、DXやアジャイル型の働き方も導入しやすくなりました」と、変革を進める推進ドライバーとしての役割もあると話しました。

講義を聞く学生の様子

理事長就任

理事長就任の前置きとして、キャリアプランを「30歳の頃から、60歳ぐらいまではアフラックでの仕事を続けるものの、それ以降は家族との時間を増やしたいと考えていました」とお話されました。実践女子学園との再会は「120周年のイベントでお声がけいただいたのがきっかけ」と語ります。その後、理事に就任。さらにその数年後に理事長へのオファーがあり、それ自体に驚くとともに、抱いていたキャリアプランとのタイミングの一致に驚いたといいます。

理事長就任の決め手となったことは「女性が社会を変える、世界を変える」という建学の精神。「120周年のイベントで学校に来て、建学の精神を目にしたときに衝撃を受け、女性活躍推進の最終形態だと思いました。下田先生が100年以上前に考えられたことを言葉にしたもので、そんな人が創立した学校で働けば、少しでも女性の働きやすさという点で変えていけるのではないかと思いました」と決断の決め手となった出来事と、女性が働きやすい環境を整備するために貢献したいという想いを紹介していただきました。

最後に学生の皆さんに伝えたいことを「実践すること」「チームで取り組むこと」「主体的に行動すること」の3つのポイントをあげてお話しされました。それぞれ「気になったことがあれば、とにかく手をつけてみる。そういう習慣を学生のうちに身につけると、社会に出て仕事が忙しくなっても、いろんなことにチャレンジできるようになります」「1人でやることには限界がありますが、チームの成果は無限大です。チームで取り組むことを実行するためには、公私問わず相談できる人、話ができる人をたくさん持っておくことが大切。友達や家族、同僚など、様々な人に相談できる環境を作っておくといいと思います」「人に頼るべきところは頼りつつ、自分がどうしたいのかを自分で決めて行動することが大切。誰かが声をかけてくれるのを待つのではなく、自分から声をかけて、一緒にやってくれないかとお願いすることが、主体性だと思う」と、具体的かつ前向きなアドバイス。学園の後輩たちにエールを送られました。

担当教員からのメッセージ

「女性とキャリア形成」の授業がスタートしました。
6人のトップオブトップを迎えてのキャリア科目、今年は55名の学生とともに展開していきます。

最初のゲストは、本学園の木島理事長のお話しでした。
理事長は、前職時代には企業トップとして、昨年からは学園のトップとしてお話しを伺っています。学生にとっては、大学の先輩でもあり、いわばこの授業の基調講演という位置付けでした。主体性溢れる学生に向けて、大変貴重なご示唆をいただきました。

また、この授業の特徴は、錚々たるゲストの皆さんからのメッセージをお聞きできることは勿論ですが、それぞれのゲストに対し、プレセッション→オンタイムセッション→アフターセッションと続く一連の取り組みにポイントがあると考えています。また、ゲストがお越しになるコマについての授業進行は、学生が行います。学生自らが、授業の設計や運営に携わることにより、より主体的に授業に臨み、大きな成果を感じてもらう試みを続けています。

2025年1月7日

人生の目標を立てて努力する!「グローバル・キャリアデザイン」の授業でAGC株式会社との特別コラボが行われました。

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業でAGC株式会社の高芝秀長氏による特別講義が行われました。老舗企業で海外経験が豊富な高芝氏は、人生の目標を設定する大切さを中心に、本当のグローバル人材とはなにかを分かりやすくお話しくださいました。

人生の目標を考えるために

最初に高芝氏は「私は会議のときに今日の目標を決めるんです」と話し出しました。
どんなことを決定したいか、何を達成したいかなど設定すると言います。
「みなさんも、この授業でなにを学びたいかなど、メモで結構ですから書き留めてみてください」と促しました。

高芝氏は「2-6-2の法則というのを知っていますか?」と問いかけます。
これはどんな組織でも優秀な人が2割、平均的な人が6割、貢献度の低い人が2割となるというもの。
しかし「私はこれに違和感を持っています」と高芝氏。
優秀かどうかではなく、動機があるかどうかではないかと語りました。上位2割の人は自分自身で目標を設定し自らアクションを取れる人たち。それ以外の人たちは目標が定まっていなかったり迷っていたりする人たちです。
「あせる必要はありません。自分の人生を少しずつ考えていきましょう」と講義を始められました。

ひとつの企業にずっと勤められる?

AGC株式会社は旭硝子株式会社の名前で1907年創業。
100年以上の歴史がある老舗企業です。日本で初めて建築用のガラスを開発・販売した会社として有名です。
当時はガラスを創る材料も、設備も海外のものに頼っていましたが、旭硝子は一から国産で作っていきました。
特にガラスは窯で1500℃という超高温で材料を溶かし作ります。その窯を創るには、1500℃に耐えうるレンガがなくてはなりません。ガラスを作るために、高温に耐えるレンガ作りをも自分たちで開発し、徐々に大きくなっていったのです。

ここで高芝氏は「創業100年を超えた企業は世界に何社あると思いますか」と学生たちに問い掛けました。
答えは約3万社。全世界と考えると少ないように思えます。
また30年間存続している企業の割合は、0.02%で、5000社に1社しかありません。日本企業の平均寿命は約23年と言われているそうです。
高芝氏は「そうすると、一生ずっと同じ会社に働けるかと考えると難しいかもということが分かります。だからこそ入社して終わりでなく、自分もやりたいことと共に変わって行くことが大切です」と変化に対応する力を付けることを伝えました。

頑張りを見てくれている人はいる

高芝氏は世界遺産・熊野古道がある三重県尾鷲市の出身。
野球に打ち込んでおり、地元の国立大学への進学を目指していましたが、高校の先生に都内の私立大学の推薦を進められたと言います。
最初は断っていた高芝氏でしたが、「親も賛成してくれ、高芝なら大丈夫だろうと先生も思ってくれたということ。見てくれるひとは必ずいるんだと感じた」と、進学を決めたと話しました。

1990年に旭硝子に入社し、車のガラスを作る部署で営業として活躍。
転機となったのは青年海外協力隊に応募したことだといいます。
そのときは採用されませんでしたが、「会社がこいつは海外に行かせた方が良いと思ったようで、イギリスへ赴任しました」と、入社5年目という早い段階での海外赴任につながったと語ります。
5年後に戻ってくるまでにグローバルな視点を得て、MBA取得を目指すように。

結果取得はかないませんでしたが、そのときに学んだことは今に生きているといいます。
「日本人はもっとできると確信しました」と高芝氏。
ハーバートのビジネススクールで教わることの半分は、信頼を得ることや人を思いやることなど、日本の学校や家庭で教わる基礎的なことだったと言います。「グローバルビジネスパーソンと言っても、基本は人として成長し、会社にどう貢献するかが大事。語学力ではなく、意志があることが必須の要素です」と話しました。

くさらず努力することで次につながる

2023年からは医薬品、農薬等を受託製造するファインケミカルズ事業本部の本部長に就任。
ガラス一筋だった高芝氏は「青天の霹靂の人事」と表現しましたが、「しかしマネジメントはずっとやりたかった仕事。夢は叶うし、次にどんな目標を設定するかが大切」と話しました。

目標を立てるためには、自分を良く知ることが必要だと言います。
将来の夢やどんなことを達成したいかなどを人に話すことで分かることも多いと語りました。
「学校の課題などやってなんの意味があるがあるのかと思っても、やらないといつまでもできないままです。無駄になる努力はありません。ひとつひとつ目の前のことに全力で取り組み習得すると、見える景色が変わります。その頑張りは誰かが見ていてくれます」と学生たちを励ましました。

人に話してやりたいことを見つけよう

授業の最後には質疑応答が行われました。
「やりたいことの見つけ方は?」という質問には、
「私も大学生のときにはグローバルな仕事がやりたいなどざっくりしか考えていなかったです。やりたいことややりたくないことを書き出し、周りの人に話すことで固まってくるのではないかと思います。取ってつけて話すのではなく悩みを素直に表現しましょう」とアドバイス。

「モチベーションの低い人をどう動かしていますか」という質問には、
「モチベーションが低い人でも、言われたことがしっかり出来たら褒めること。その上で本当は何をやりたいか、今後はどういうことに力を入れていきたいのか本人としっかり会話することを大事にしています」とコツを話されました。

自分の目標を定め努力することの大切さと、目標は変わっていっていいのだというメッセージは、学生たちが今後将来を考える上で指針となることでしょう。

担当教員よりメッセージ

高芝氏は、私の大学野球部の後輩です。現役時代も大活躍された名選手ですが、現在も、
後輩のために、様々な活動で尽力されています。とりわけキャリアデザインについての
指導をされており、後輩の人材育成にとても熱心なOBです。
今回、日本を代表するグローバルカンパニーであるAGCで活躍される高芝氏をお招きし、
変わりゆく企業の姿とともに、高芝氏ご自身のキャリアについてお話しをいただきました。
自分を知ることの大切さ、目の前のことに真剣に取り組むことで必ず新しい景色が見えてくること、
そして、「縁」の大切さなど、学生にとって大変に貴重なご講演をいただきました。
この場を借りて心から感謝申し上げます。

2024年11月5日

企業格を考えよう!「グローバル・キャリアデザイン」の授業で元資生堂の山田氏による講義が行われました。 

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月18日に元株式会社資生堂の山田正人氏による講義が行われました。企業にも人格のような「格」がある、というお話のもと、さまざまな企業の企業格を調べてみるケーススタディを行いました。それぞれの企業の特徴をつかむヒントになる、就職活動にも応用できる実践的な授業となりました。

企業にも「格」がある

現在山田氏は、エフクリエイション株式会社に所属しています。
企業広告や商品パッケージやデザインなどをつくる広告制作会社です。エフクリエイションは、資生堂の創業家である福原グループのひとつ。
資生堂とはいまも深い縁があります。
今回は資生堂の現状や歴史や社風などを通して、「企業格」について考えていきます。
「私がしゃべるばかりでなく、皆さんがどう考えどう活かすかを大切にしていきたいです」と話され、講義は始まりました。

まず、前提となる人格とはなにか、というお話から。
人格とは「能力、性格、気質」からなるもの。性格と気質は似たような概念ですが、「性格は成長するにつれあとからできるもの、気質は遺伝的・先天的なもののことです」と山田氏。
この考えを企業にあてはめたのが、企業格です。企業でいう「能力」は、売上利益・ブランド・商品など。「性格」は理念。
また広告や社長の発言など、時代によって移り変わるものです。
そして「気質」は企業の歴史や社風。長年にわたって蓄積されてきた風土だと話しました。

資生堂の作り上げた企業格とは

ここで資生堂を例に企業格を見ていくことに。
資生堂は化粧品業界ではNo.1の業績です。
「能力という目に見える企業格では日本のトップです」と山田氏。
性格にあたる理念では、美を創る、提供することで世の中を良くするという「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を掲げています。
150周年のCMでは、世代を超えて自分らしく活躍する女性たちの姿を表現し、好評を得ました。

気質として、創業者の福原家のことを紹介しました。
資生堂は1872年日本初の洋風薬局として銀座に開業。化粧水や歯磨き粉がヒットし、大きくなっていきました。
2代目の時代に本物やデザインにこだわる「資生堂スタイル」が徐々に確立していきます。
特に資生堂を象徴するモチーフになった「花椿」は2代目自らが描いたスケッチを元にデザインされました。
「ブランドイメージという概念もなかった時代に作り上げていったんです」と、山田氏は2代目の持つ先見性とアートの精神を伝えました。同時期に試験室を開設し、最先端の技術を化粧品に応用することを目指していきます。
山田氏は「このアートとサイエンスの理念は今なお続いています」と話されました。

人に温かい社風はいまも

企業格の気質には社風も含まれます。
資生堂は、人に温かく、社員一人ひとりが互いを尊重し合う社風です。
「私も学生の際の企業面接のときに、エレベーターのボタンを社員の方が開けてくれ、いい会社だなと感じたことがあります。小さなことですが、人に温かいというのは資生堂の持っている気質で、それが周りの人を幸せにするのだなと思います」と山田氏。
社外や世間からのイメージも、信頼性が高く安心感がある、という評価を受けています。

最後に山田氏が資生堂の企業格をまとめられました。
能力は日本を代表する化粧品会社であること、性格は品質や安全性の高い製品を作り美で世界を豊かにすることを目指していること、気質は創造性を大事にしてチームワーク良く仕事に取り組んでいること、を表にして示されました。
「これを例にして、みなさんにも企業格を考えてもらいたいと思います」とケーススタディが始まりました。

身近な企業はどんな企業格?

ケーススタディで示されたのはアパレル企業のユニクロ、飲食業のスターバックスコーヒー、生活雑貨の無印良品、日清食品の4つ。
学生は10つの班に分かれ、それぞれ担当の企業について企業格を調べていきます。学生たちは協力し合いながら各企業について調べていきました。

20分ほどワークの時間が取られたあと、最後に各班から調べた企業格について発表がありました。
ユニクロについて調べた学生は、性格として企業理念のほか、「CMにさまざまな人種や年代の人を採用している」ことに着目。
山田氏も「ダイバーシティを推進している企業ということが分かりますね」と感心されました。
日清食品を調べた班からは企業サイトに合った文言から「ハッピーやユニークであることを重視している」という点を挙げました。
山田氏は日清食品の企業ミュージアムがあることを紹介し、「商品を使うだけでなくミュージアムで体験することでより企業を知ることにつながります」と話しました。

企業格を考え就活に役立てよう

最後に山田氏は「今日で実践女子大学の、真面目で熱心だという大学格が分かった気がします」とあいさつ。
「企業格を考えることは、その企業がどんな会社であってほしいかを考えることにつながります。就職活動のときにもぜひ考えてみてください」とアドバイスを送りました。
学生たちにとって就職活動の企業研究のヒントとなる授業となりました。

担当教員のメッセージ

本授業には、初めてお越しいただきました。
海外の事業所での経験を含めて、グローバルキャリアを築かれてこられた山田さんのお話しは、
大変興味深い内容でした。そして「会社の格」という視点での見方は、学生にとっても
私にとっても新鮮な切り口でありました。
時代とともに会社の姿は変化していきますが、やはり150年の歴史を刻む資生堂ならではの
語り継がれたミームは、永遠に変わらないと思います。
これから就職活動に臨む学生に対する企業研究の新たな視点は、大変参考になる示唆に富んだ
内容を構築いただきました。この場を借りて山田正人様には心から感謝申し上げます。

2024年7月26日

ディズニーのファンをもっと増やそう!「キャリアデザイン」の授業でオリエンタルランドとの特別コラボが始まりました。 

3年生対象の大学共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)において、6月11日に東京ディズニーリゾートの経営・運営を行う株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)のマーケティング開発部長である横山政司氏をお迎えして、特別コラボ授業が行われました。学生たちは、憧れのオリエンタルランドの社員となった気持ちで、実際に企業が現在進行形で考えているリアルな課題解決に挑みます。

海を埋め立てて造られた「東洋一のレジャーランド」

はじめに横山氏は「ディズニーリゾートは世界にいくつあるでしょうか」と学生たちに質問しました。「5つ」「7つ」と答えが出る中で、正解は6つ。
そのうち東京ディズニーランドは3番目に誕生しました。アメリカの国外に初めて出来たディズニーリゾートです。

オリエンタルランドは1960年に設立しました。社名には「東洋一のレジャーランドを作る」という思いが込められています。
創業者がアメリカに視察に行った際、現地のディズニーランドに衝撃を受け「日本の子どもたちにもぜひ体験させたい!」と夢を抱いたところから始まりました。
現在東京ディズニーリゾートのある浦安市は、当時は漁師町。
一帯を埋め立てるため、漁師と粘り強く交渉が行われました。漁業権を放棄してもらうとき、創業者たちは「絶対にあなたたちの海は無駄にはしない」と漁師たちに素晴らしいテーマパークにすることを誓ったそうです。

『本物』にこだわりハピネスを提供する

1964年から埋め立て工事は始まり、1970年に完了。工事が始まって、東京ディズニーランドが開業したのは1983年。
「皆さんが生きてきた時間より長い年月をかけて東京ディズニーランドはできたんです」と横山氏は言います。1981年の当時の社長は「どれだけ時間と費用がかかってもいい」「作る以上はアメリカにあるディズニーランドに勝るものを」という信念があったと横山氏は語りました。

オリエンタルランドの企業使命は「夢、感動、喜び、やすらぎを提供する」。
横山氏は「東京ディズニーリゾートでは、お客様にハピネスを提供することが企業使命の実現に繋がります」と言います。
テーマパークのビジネスモデルは利益を投資に回すスタイル。
利益をさらにアトラクションやイベントなどに投資し、「ハピネスという新たな価値を提供することでまた売上を上げる」というモデルだと説明しました。

どうしたら人口減少しても利益を出せる?

ここで問題になるのが、日本の人口減少です。
テーマパークはお客様に遊びに来てもらわなければいけません。「どうしたら人口が減っても利益を産み、それを投資に循環させてハピネスを提供し続けられるでしょうか」と横山氏は学生たちに問い掛けました。

学生は班でディスカッションをしてそれぞれ案を考えます。
「海外からの集客を増やす」「遠方に住んでいる人へアプローチする」「AIの導入」などさまざまな答えが出ました。
横山氏は「どれも間違いではないです」と言い、他にリピート回数を増やしたり、離脱者を減らしたりという観点を話しました。
そして「これらを実現させるためには、ファンを増やすことが大事です」と言います。

ディズニーファンクラブ会員を増やす施策を考えよう!

横山氏は「東京ディズニーリゾートにファンクラブがあるのを知っていますか?」と質問。
手を挙げたのは数人でした。オフィシャルパークファンクラブである「ファンダフル・ディズニー」は2004年から始まり、現在会員数は約10万人。メンバー限定のグッズがもらえたり、ファンイベントなどに参加出来たりとさまざまな特典がついています。
ただ、若者の会員は多くありません。

そこで、今回の課題は「Z世代のファンダフル・ディズニー会員を獲得する施策を提案する」こと。
「本当にこれは、私の部署で大事な課題になっています」と横山氏。
学生たちは「マーケティング開発部に配属された新入社員となって」課題解決に挑みます。提案資料は、Z世代に会員が少ない原因について仮説をたて、成功すると思える根拠を示す、という実際の企業さながらのものを作成します。

横山氏が「ファンダフル・ディズニーは今年20周年。スペシャル企画をやりたいと考えているので、良い施策があったら採用されるかもしれません」と話すと、学生たちもやる気充分でさっそくグループで話し合っていました。
グループワークを経て約1か月後、最終発表に臨みます。

2024年7月26日

Z世代の会員を増やすには?「キャリアデザイン」の授業でオリエンタルランドとの特別コラボが行われ学生たちはプレゼンテーションに臨みました。

3年生対象の大学共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月2日に株式会社オリエンタルランドの横山政司氏をお迎えしたコラボセッションが行われました。マーケティング開発部長の横山氏の部下になり、学生たちは課題に挑戦。9班に分かれグループワークを行い、若者がディズニー公式ファンクラブ「ファンダフル・ディズニー」の会員になる施策を約1か月かけて考えます。この日の最終プレゼンテーションで、想いのこもった提案が発表されました。

若者はどうしてファンクラブに入る?

この日はファンダフル・ディズニー担当のマネージャーである東氏も来校。まさに上司に提案するプレゼンテーションの状況となり緊張感も高まりました。

最初の発表は1班から。
Z世代がよく見るSNSにはファンダフル・ディズニーの情報が少なく、フィルターバブル現象により、積極的に検索しない限り情報を得られないことを指摘。
そこでZ世代が魅力に感じる特典を付けることを提案しました。予約確保できる権利のほか、会員限定のイベントやパーティを開催。その様子をSNSへ投稿することで、拡散も促します。
横山氏からは「フィルターバブルへの着眼点は良いですね」とコメントがありました。

次の8班は、なぜファンクラブに入るのかを調査。
先行特典やライブの当選確率が上がるからという人が多く、チケット争いには手段をいとわないという実態をつかみました。
そこで、ディズニー以外のアイドルやアーティストなど多くのファンを持つ「推し」のショーを、ファンダフル・ディズニー会員限定で行うことを提案しました。

キャスト体験や限定フードで訴求する

2班は体験価値を重視。
会員限定でパーク内外の清掃を担当するカストーディアルキャスト体験を考えました。SNSのショート動画などで宣伝し、口コミ増加を見込みます。

横山氏はターゲットがSNSでどう広告を見つけるか質問。
学生たちは「若者たちは、年1回はディズニーに行きたいと思っている。行こうと思う時期に情報を検索するため、そのときに見ると思います」と回答しました。

9班は季節ごとの限定フードに着目し、人気のあったメニューを会員限定で復刻することを提案しました。

7班は、Z世代は映え思考であることに注目して、プロのカメラマンに写真を撮ってもらえるディズニーフォトサービスを挙げました。
さらに会報にランダムトレーディングカードを付けることを提案。
トレーディングカードは若者に人気であり、スマホケースに挟むことが流行っていることを伝えました。

次の4班はパーク内で使う東京ディズニーリゾート・アプリに広告を展開することを提案しました。
待ち時間などにアプリを開くことで目に付き認知度向上を目指します。
また、会員が友人を紹介するとアトラクションの優待券をもらえる案を出しました。

横山氏が「東京ディズニーリゾート・アプリはパークで楽しむためのアプリなので、なかなか広告は難しい」と内情を伝えるなど、本物さながらのフィードバックもありました。

グッズのサブスクや限定イベントで惹き付ける!

3班は若者に人気のカチューシャにクローズアップ。
会員限定のサブスクリプション制を導入し、入園したときに借りられるシステムを提案しました。
「問題になっているグッズの転売対策にもなる」と強調。さらにファンダフル・ディズニー専用アプリを立ち上げ、ファン同士の交流の場を作る案を出しました。

横山氏からも「サブスクは面白いですね」と感嘆の声が聞かれました。

5班は若い女性に人気のアフタヌーンティーを会員限定で行うことをプレゼンしました。
SNSで「#アフタヌーンティー」というタグの投稿が多いことを説明し、ディズニーキャラクターをイメージしたメニューを出すことを提案。
SNSに投稿してもらうことで拡散に期待するとしました。

最後は6班です。
若者がパークに行く目的をアンケート調査。
アトラクションに乗ることが目的の人が多いことを説明し、アトラクションの優待券の販売を提案しました。

優秀賞には表彰も

全班の発表が終わると、横山氏と東氏が話し合い、2チームの受賞を決定されました。

準優勝は2班でした。
「知名度を上げる施策が良かった」と横山氏からコメントがありました。
そして優秀賞は7班。
学生からは「最初は全く違う案を考えていてうまくいかず不安でしたが、何が欲しいか考えてトレーディングカードで全員一致して頑張れた。結果につながってよかったです」と感想がありました。
横山氏からも「トレーディングカードは、なかなか自分たちからは出ない切り口。このまま採用とはいかないが、確かに可能性はあると思いました」と評価を頂きました。

2チームには商品としてディズニーのグッズをいただき、学生たちからは笑顔がこぼれていました。

企画を考えるにはストーリーが大切

授業の最後には、東氏、横山氏から総評も頂きました。

東氏からは「いくつか私たちが検討している案もあり、認知率などの数字なども私たちの認識と合っていました」と評価が。
その上で、広告費に見合うか、より効果的にどうやってロイヤリティにつなげるかという「労力対効果」の視点は少し足りなかったと指摘。
また、体験サービスが多く提案されたことに触れ、「遠方にも住む会員に体験を届けるというのは難しいんです。グッズは全員に届けられる」と難しさを伝えました。
「さらに施策を考えるのは楽しいですが、それをやる必然性やストーリーが、仕事の上で重要です」と企画を考える根底の考えを伝えました。
横山氏も「ストーリーをつなげること、顧客の立場に徹底的に立つことが、なるほどという説得力につながります」と話しました。

全班に共通していた調査結果として、若者のファンダフル・ディズニーの知名度が低いこと、入会しようと思うまでの魅力が少ないことが挙げられていました。
「ここまで認知度が低い、魅力がないと言われ続けることもなかなかない」と笑いを交えながら横山氏は言います。
「まだまだ課題があるんだなと分かりました」と話し、「みなさんお疲れさまでした」と学生の頑張りをねぎらいました。

担当教員からのメッセージ

今年も、学生にとって極めて関心の高いオリエンタルランド社との連携授業が行われました。本年度は、昨年以上にリアルなテーマを出題いただき、学生にとってのハードルは相当上がったものの、深く企業や、仕事のことを考察する時間となりました。

横山様には、中間段階でのフィードバックを含め、プレゼンテーション当日まで、ご丁寧に、しかも社会人レベルでのアドバイスをいただき、学生にとっては、仕事の厳しさも学ばせていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。就職活動を目前に控えた学生にとって、働くこととは、仕事とは、そして企業とは、一人一人が自らと向き合い、どこまで深く考えられるかが重要であることに気づいて貰えればと考えています。横山様、東様には、改めて感謝申し上げます。

2024年7月22日

「実践キャリアプランニング」の授業で連合の前事務局長の相原康伸氏が「公益」についての講演を行いました。

大学共通教育科目である「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、4月26日に現公益社団法人教育文化協会(ILEC)理事長の相原康伸氏が講演を行いました

「公益」とは何か?

相原氏の話は「公益とはなにか」というところから始まりました。
公益とは自分のみならず、他者や社会全体の利益を考え、行動することです。
「今日一番のメッセージは、公益に対してどう行動を変容していくか」。
私たちが直面する様々な社会課題に対し、日々の行動をわずかにでも変えることが重要だと最初に語られました。

連合の役割とは

約700万人の加盟組合員を擁する連合は、日本の労働組合の中央組織として、職場の声をまとめ、企業との対話を通じて、労働条件の改善や待遇向上に貢献しています。

相原氏は、「働くということは、いつもピカピカな状態じゃないんです」と力強く語ります。仕事で精神的に追い詰められたり、人間関係で悩んだり、労働条件に不満を感じたり。こうした困りごとこそ、連合が解決に向けて共に歩む重要な役割を担っているのです。年間1万5千件から2万件寄せられる相談内容は、コロナ禍以降、特に女性、フリーランス、非正規雇用労働者からの声が目立つようになりました。相原氏は、「弱い立場の人たちにさらに負担がかかっている」とお話しされました。

国際社会の抱える問題をどのように変容させるか

社会に出る今の学生に求められるのは、単なる知識やスキルだけではありません。創造性、固定観念にとらわれない斬新な視点、そして多様な価値観を持つ人々と協働する能力こそが、これからの時代を生き抜く鍵となります。

「異なる文化を持つ人々への普遍的な敬愛の精神が持てるかどうか。」
国際社会が貧困と分断という深刻な課題に直面している今、日本も例外ではありません。世界の中でもいち早く労働力人口が減少していく中で、多様性やジェンダーの問題も浮き彫りになっています。それらをどのように変容させるべきか、相原氏は課題を改めて確認していきました。

行動変容するために

相原氏は「主要国の中でも、日本は若者世代の投票率が著しく低い。」と語られました。 政治は高齢者向けのものという「シルバー民主主義」と呼ばれ、投票率の高い高齢者に向けたものになります。しかし、相原氏は若者たちへの期待も忘れません。「皆さんこそが、未来を創造する力を持っているのです。政治に参加し、声を上げることによって、より良い社会を実現することができるのです。」

未来は不確実ですが、未来を形作るのは私たち自身の行動です。「私たち一人一人が、どのような行動を選択するかによって、社会全体の利益に貢献できるのです。」 相原氏は、若者たちが主体的に社会と関わり、未来を担っていくことを強く訴えます。

深澤教授の話

相原様には、毎年本学にお越しいただいていますが。本年からは4回シリーズの講座を企画いただき、本日から連合の方にご講演をいただきます。
トップバッターの相原様からは、労働組合の役割のみならず、高い視座広い視点から世の中を見つめることの大切さを教えていただいています。
激動の21世紀を生きる大学生の今後のキャリア形成に重要になると考えます。
今年も、大変に貴重なお話しをいただきありがとうございました。心から感謝申し上げます。

2024年3月8日

高大連携で高校生もアイデア創出にチャレンジ!「グローバルキャリアデザイン」の授業でVISITS Technologies株式会社とのコラボワークショップが行われました。

1月5日に「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業でVISITS Technologies株式会社(以下、VISITS Technologies)とのコラボワークショップが行われました。この授業は高大連携で行われ、本学併設校の実践女子学園の高校3年生も参加。高校生と大学生で協力し、デザイン思考のプロセスを体験しながら新しいアイディア創出のグループワークが行われました。

高校生も一緒にグループワーク

この日は、30人ほどの高校生も参加。この春から本学に進学予定の実践女子学園高等学校の3年生です。くじ引きで大学生と高校生が一緒のグループになるよう全部で11グループに分かれ、授業が開始しました。
VISITS Technologiesの野村博之氏の声掛けで、まずは自己紹介が行われました。「大学生はリーダーシップを取りつつ、高校生たちも気後れせずどんどん発言してくださいね」と促され、最初は緊張した様子の高校生たちからも笑い声が上がる班もありました。

イノベーションは「つなげる力」

VISITS Technologiesはデザイン思考力アセスメントの開発・運用を行っており、大手企業や政府とも連携している注目企業です。日本では「論理的思考力(ロジカルシンキング)」を重視して教育やビジネスが行われてきたと言います。しかし海外では20年ほど前からデザイン思考力に注目が集まっており、多くのイノベーションが生み出されています。イノベーションを一例で説明すると、スマートフォンが代表例です。なぜなら「体験が変わった」から。例えば、電車の中での過ごし方は、昔は新聞や本を読むのが一般的でしたが、現在ではほとんどの人がスマートフォンのを操作をしています。

野村氏は「イノベーションはこれまでなかった組み合わせによって新たな価値や体験を生み出すこと」だと話しました。何かを創り出すには才能だけではなく、この「つなげる力」が重要。そのアイディアを生み出す時に利用される手法の一つがデザイン思考なのです。

新しいショッピング体験を考えよう

いよいよ「デザイン思考ワークショップ」の開始です。

今回は「未来のショッピング体験」を考えることで、デザイン思考のプロセスを体験します。まずは大型ショッピングモール、ECサイト、コンビニのそれぞれの良いところを考えます。学生たちは付箋に1つずつできるだけ多くを書きだし、グループの中で発表し合いました。ショッピングモールなら「まとめて買い物できる」「一日楽しめる」、ECサイトは「中古品も買える」「口コミが見られる」、コンビニなら「家から近い」などなど。様々な意見が出そろいました。

そして、自分たちがどのサービスを新しく考えるかを決め、コンセプトを話し合います。例えばコンビニを選んだグループであれば、ECサイトやショッピングモールの良いところを掛け合わせた「口コミの見られるコンビニ」というようなコンセプトになります。野村氏は「自分たちがそれを使いたいか、ワクワクするか、誰が喜ぶかを考えてみてください」と決めるときのコツを伝えました。

話し合いをしながらグループごとに模造紙にアイディアをまとめていきます。大学生は高校生に「どう思いますか?」など促し、上手に意見を引き出していました。

未来のECサイトはこうなる!

あっという間に時間は過ぎ、いよいよ発表。発表は教室内を2つのスペースに分け2グループずつ同時に行われました。

グループFは「実際に商品を試せるECサイト」を考えました。
チャット機能で店員の説明を聞けたり、化粧品などは試供品を無料で試せなど、購入前に商品を確認できるサービスです。

野村氏は「ECサイトは着心地や質感などが分かりにくい。かゆいところに手が届くサービスだと思います」とコメントされました。

グループCは「仮想空間で直接触れることができるECサイト」を提案しました。VRゴーグルを活用し、空気圧を使い触った感触を再現する技術を使うことを考えました。

野村氏は「実際に触感の分かる技術が出てきている。地方の人も助かるアイディアだなと思いました」と話しました。

新しい技術も取り入れて

グループBは「映画が観られるコンビニ」を発表。
コワーキングスペースのように設置し、コンビニ商品を購入すれば映画代に充てられるシステムも考案。映画館では声が気になってしまう子ども連れや障害のある方、推し活にも利用できるとしました。

「家では集中できない小さい子どもがいる家族連れにも良いですね。マネタイズもしっかり考えられている」と野村氏も評価しました。

グループAは「後悔しないショッピングモール」として、商品についているQRコードを読み込むことで、モール内の類似商品を比較できるシステムを考えました。

野村氏は「服はブランドごとに販売されていて比較が難しい。値段やサイズなど比較できるのは便利ですよね」と話しました。

最後のグループGは「一緒に買い物ができるECサイト」です。
離れたところにいる友人や家族と画面共有して、相談しながら買うことができるというものです。割り勘でプレゼントを買う時や、お揃いのものを買う時などに活用できるとしました。

野村氏は「ネットの買い物でも誰かに相談したい時はあるのですごく良い機能だと思いました」と話しました。

全グループの発表が終わると、野村氏は「皆さんの中には、創造力が必ず眠っています。皆さん自分の中に創造力はあると思って、世の中を変えるアイディアや新しいビジネスのアイディアを生み出して欲しいです」と語り、授業は終了しました。

新しくアイディアを生み出す体験することのできた、貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

今、社会で求められている「デザイン思考力」この学びを深めること、そして高大連携プログラムの試みとして、毎年実践女子大学キャリア教育科目「グローバルキャリアデザイン」と、春から実践女子大学に入学予定の実践女子学園高等学校の3年生とのコラボ授業を継続しています。参加メンバーには、昨年12月にあらかじめ「デザイン思考力アセスメント」を受検してもらっています。
大学生は、積極的にリーダーシップを発揮してもらい、高校生には一足早く大学での授業を体験して貰おうという試みです。今回のプレゼンも、まさにZ世代の極めて柔軟な発想が随所に見られ、参加し学生、生徒のこれからのさらなる成長がとても楽しみです。まさに「大学生」と「高校生」のタッグで最強のイノベーションが起こる予感がします。アセスメントから本授業までご支援をいただきましたVISITS Technologiesの松本様、野村様、今井様に心から感謝申し上げます。