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2025年7月11日

たくさん達成感を得て自信を付けよう!「女性とキャリア形成」の授業でJFEテクノス社長による特別講義が行われました。

「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で6月5日に、JFEテクノス株式会社の能登隆代表取締役社長をお招きしての特別講義が行われました。仕事との向き合い方や自信を持つことの大切さなど、実体験を交えてお話してくださった能登氏。上に立つものとしての心構えなども含め、なかなか聞くことのできない「社長業」について学生たちが触れる機会となりました。

仕事は金銭的に自立する手段?

JFEテクノスは一言で言えば「街のあらゆるインフラのメンテナンスを行う会社です」と能登氏。
「皆さんの就職希望先とは少し遠いかもしれませんが、一人の社会人のサンプルとして気軽に話を聞いてほしい」と講義を始められました。

学生時代は火を燃やす「燃焼」に関わる勉強をしていた能登氏。
いまでも星空の下で焚火をたいて、コーヒーを飲むのが癒しのひとときだと話します。ただ、「私はこだわりがないんです」と自己分析。
「信念というものがないよな、と言われたこともある」と告白されました。そのためこれといってやりたい仕事があったわけでもなく、仕事は「金銭的に自立するための手段と思っていた」と言います。
ただ、地図に残るような大きなものを作れる会社に行きたかったことと、専攻した燃焼に関する仕事をしたいと思い、現在のJFEの前身である日本鋼管へ入社されました。

偉くなるとやりたくない仕事も増える

社会人になって最初の1年は、大学のころと同じように燃焼の研究を行い「学生時代と近いことをしてお金ももらえるなんて嬉しいと思っていた」と話しました。
しかし年が経つにつれ、自分の仕事に責任がのしかかってくるようになり、徐々にストレスに。

特に、より高いポストに就くようになるとそれは顕著でした。
会社で偉くなるとは部下が増え、権限が増え、責任も増えるということ。
能登氏は「偉くなるとは、自分の知らない領域の仕事を担当することです。自分のやりたい仕事以外のことをやることになる」と語りました。ときには意見の合わない人と一緒に仕事をすることも。
能登氏にとって仕事とはだんだんと、ただ試練を乗り越えうまくやり遂げるものになっていったと言います。
「心に蓋をして、自分に厳しく、人にも厳しくなっていってしまったんです」。

天狗になっていた自分を猛省

仕事がうまくいくと達成感が得られます。
「仕事にはトラブルはつきもの。トラブルがあってもみんなで協力しあって乗り越えることで自信が生まれる。客に感謝され、上司や仲間からも褒められることは、仕事を続けるモチベーションになります」と話しました。

ただ、能登氏は「自信を持ちすぎて、天狗になってしまった」と語りました。
人の話を最後まで聞かずさえぎっては切り捨てる。人として傲慢な態度を取っていたと告白されました。だんだんと部下の力が融合せずうまくいかなくなっていったと言います。
そんなある日、信頼していた女性の部下から「上から目線で皆を見てますよね」ときつい一言が。
能登氏はそれまでコミュニケーションがうまく出来ていると思っており「自分の態度が人を傷つけているとは分からなかった」ため、その一言に大きなショックを受けます。
未熟さを猛省し、そこから話すときはゆっくりと、人の話をしっかり聞くように。徐々にまた空気が良くなり、多くの人たちに受け入れられ、仕事が上手になっていったと話しました。
「社長というのはあくまで社長業なんです。営業などと同じ、一つの仕事」とかみしめるように語りました。

仕事は自信を持たせてくれる手段!

能登氏は「たくさんの達成感を自分に与えましょう」と学生に語りかけました。
人から褒められる経験を増やすことで自信を付けることの大切さを伝えました。
ただ、自信を付けすぎると傲慢になる危険も。けれど「天狗になってもいいんです」と能登氏。
「周りや友人など、おかしいよと言ってくれる人がいるはず。そのときに軌道修正すればいい」と話し、周囲に耳を傾けることも伝えました。

いまの能登氏にとって仕事とは、金銭的に自立する手段だけでなく、自信をつける手段であり自分をポジティブにしてくれるものになったと話しました。
そして学生のうちに「異人コミュ力」を付けてほしいと伝えます。
「異人コミュ力とは私の造語で、自分と異なる考えの人と話す力。社会人になると本当にさまざまな人と仕事をする。自分の考えと違う人の話を聞くことに慣れておくといいでしょう」とアドバイスしました。

自分が変われば周りも変わる

講演後には質疑応答の時間が取られ、学生が次々と手を挙げました。

「部下から指摘されて改善したあと、部下や周りの反応に変化はありましたか?」という質問には「数か月後に同じ部下から、やればできますねと言われました」と笑いを交えて回答。
「徐々に周りからアイデアや企画も出てくるようになり、雰囲気が良くなっていきました。自分が変われば周りも変わることが分かった」と話されました。

最後に、司会進行をした班の学生が代表しお礼の言葉を述べました。
「当初は社長と聞いて、難しい話をされるかと思っていましたが、等身大の話をしてもらえ社会人に対しての解像度が上がりました」と話しました。
「就活に自信がなかったですが、仕事は自信をつけてくれる手段と聞き、自分の人生を豊かにしてくれるものなのだと気づきました」と話し、今回のお話が身になったと伝えました。

担当教員からのメッセージ

能登社長は、今年初めてお迎えいたしました。歴史ある企業のトップを務められる能登さんですが、語りがとてもソフトで、しかも、学生の視点を意識いただいた内容に、学生が真剣に聞き入る姿勢が印象的でした。様々な部下の方とのやりとりには驚くこともありましたが、それだけ社員一人ひとりとの絶対的な信頼関係を築かれている能登社長でなければあり得なかったエピソードも沢山聞かせていただきました。能登様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年6月27日

自分らしく生きるヒントとは?「国際理解とキャリア形成」でフィジーの文化を学ぶ特別授業が行われました。

「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月3日に株式会社アールイーカンパニーとの特別コラボ講義が行われました。「フィジー留学カラーズ」の運営を手掛ける皆さんが南の島を舞台にしたディズニー映画をベースに、南太平洋の文化を解説。和気あいあいとしたムードのなか、異文化を知る機会となりました。

学生のうちに海外に行ってみよう

教室にはアールイーカンパニーの多田祐樹氏が登壇し、ビデオ通話もつないで授業が始まりました。
植林氏は大阪から、長瀬氏はフィジーからの参加です。
「私だけが話していてもつまらないので、皆さんにも参加してもらいながら話していきたいと思います」と多田氏。
リアルタイムの掲示版を使って、学生たちも随時感想を伝えながら進めていきます。

多田氏は貿易業を経て、2018年よりフィジー共和国にて、主に日本人を対象とした英語学校「カラーズ」を創業。現地で日本語学校も開講し、フィジーの人が日本で働ける機会を増やすプロジェクトも行っています。
多田氏はまず画面に「17%」という数字を示し「なんの数字でしょうか?」と問いかけました。これは日本人のパスポート保有率です。
ただし、18~22歳の大学生の年齢に限ると40%と高い数字です。
多田氏は「しかし、65歳までの労働人口で見る割合だと20%強と減ってしまう」と話し、学生のうちに海外含めさまざまなところに行ってほしいと伝えました。

フィジーの歴史や文化とは?

学生たちは事前準備として、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」を視聴してきています。
この映画の主人公モアナが南の島から船に乗り冒険をするという物語。この映画をベースに「南太平洋に息づく文化と”自分らしく生きる”ヒント」と題しての講義が始まりました。
多田氏はまず南太平洋の島々にすむ民族の歴史から説明。
約6000年前、オーストロネシア語族が大陸から海を渡ります。
優れた航海術で広大な領域に分布し、南太平洋の島々であるフィジーやサモア、トンガなどにも到達しました。

次に植林氏が3人の男性の写真を見せました。南太平洋には3種の族があり、外見も違います。
それがポリネシアン、メラネシアン、ミクロネシアンの3つ。
ポリネシアンはアジア人の肌色に近かったり、メラネシアンは髪の毛がアフロのようにきついカールがかかっていたり。
フィジーはメラネシアンとポリネシアンが混在する島です。ラグビーが強いことで有名ですが、それは遠い昔、厳しい航海を生き抜いた、強い体を持った先祖の血を受け継いでいるからとも言われています。

多田氏は「KAVA(カヴァ)」という伝統的な飲み物を紹介。
儀式や祝い事に欠かせない飲み物です。現在は観光客も飲むことが出来るものですが「私は大好きです」と多田氏。
「カヴァは歓迎してくれている証。海外の人に自分の国の文化を受け入れてもらうのは嬉しいですよね。私は現地で出されたものは全部食べるのがポリシー。皆さんもフィジーに行くことがあったら是非試してみてください」と語りました。

やりたいことを宣言しよう!

続いて長瀬氏が、映画のストーリーにベースに「主人公たちはどんな失敗や不安を抱えていたか考えてみましょう」と語り掛けました。
「皆さんも過去の失敗や不安を振り返ってみましょう。うまくいかなかったこと、恥ずかしかったことなど小さいことでもいいので教えてください」と長瀬氏が言うと、学生たちは掲示板に次々と書き込み始めます。「受験のときもっと勉強を頑張ればよかった」「留学が不安」などの意見が書き込まれました。

意見が集まったところで、長瀬氏は映画のある台詞を紹介。
それは「先のことは分からない。でもどんな自分になるかは決められる」というもの。
長瀬氏は「みなさんも、これからどんなことがやりたいか、どんな自分になりたいか、宣言してみましょう」と促します。学生たちはグループで話し合いながら宣言を書き込みました。
「フィリピンで短期留学をしたので今度は長期で行ってみたい」「去年留学をしなかったけれど今年こそ行く」など、たくさんの決意が集まりました。

衝動に従って人生が開かれる

最後に、多田氏から「偶発性と衝動性が人生を切り開く」という話がありました。
アールイーカンパニーも最初からやろうと思っていたわけではなく、たまたまだといいます。
「しかしたまたまのことを努力すると意味のあることに変わってくる」と話します。
「好きなことで生きていくことはすごく素晴らしい。しかしとても大変。好きなことをすることと、好き勝手することは違います。一人ではできません」と話し、「今やりたいことがなくとも大丈夫です。好きなことを一生懸命にやって行ってください」と話しました。
長瀬氏も「私も海外に行くことなんてないと思っていましたが、いまフィジーに住んで仕事している。次々にチャレンジしていくことで人生が開いていきます」と語られました。

学生たちは遠い島の異文化を知ると同時に、自身の人生を考える貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

国際理解とキャリア形成の授業のゲストとして、今年度初めてお迎えしたのが、カラーズ様です。
そして、ディズニー映画の「モアナと海の伝説」と結び付けて学ぼうという、全く新しい試みでした。
当日は、多田様、長瀬様、植林様のお三方が、教室と大阪、そして実際にフィジーからオンラインで
参加して下さいました。
メラネシアンおよびポリネシアン文化の歴史や、映画に登場するシーンのことなど、
フィジーという国の魅力を沢山伝えていただきました。
近い将来、フィジーへの留学に出かけてくれる学生さんも生まれることと思います。
とても楽しいプログラムを構築いただきました多田様、長瀬様、植林様に心から感謝申し上げます。

2024年11月5日

企業格を考えよう!「グローバル・キャリアデザイン」の授業で元資生堂の山田氏による講義が行われました。 

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月18日に元株式会社資生堂の山田正人氏による講義が行われました。企業にも人格のような「格」がある、というお話のもと、さまざまな企業の企業格を調べてみるケーススタディを行いました。それぞれの企業の特徴をつかむヒントになる、就職活動にも応用できる実践的な授業となりました。

企業にも「格」がある

現在山田氏は、エフクリエイション株式会社に所属しています。
企業広告や商品パッケージやデザインなどをつくる広告制作会社です。エフクリエイションは、資生堂の創業家である福原グループのひとつ。
資生堂とはいまも深い縁があります。
今回は資生堂の現状や歴史や社風などを通して、「企業格」について考えていきます。
「私がしゃべるばかりでなく、皆さんがどう考えどう活かすかを大切にしていきたいです」と話され、講義は始まりました。

まず、前提となる人格とはなにか、というお話から。
人格とは「能力、性格、気質」からなるもの。性格と気質は似たような概念ですが、「性格は成長するにつれあとからできるもの、気質は遺伝的・先天的なもののことです」と山田氏。
この考えを企業にあてはめたのが、企業格です。企業でいう「能力」は、売上利益・ブランド・商品など。「性格」は理念。
また広告や社長の発言など、時代によって移り変わるものです。
そして「気質」は企業の歴史や社風。長年にわたって蓄積されてきた風土だと話しました。

資生堂の作り上げた企業格とは

ここで資生堂を例に企業格を見ていくことに。
資生堂は化粧品業界ではNo.1の業績です。
「能力という目に見える企業格では日本のトップです」と山田氏。
性格にあたる理念では、美を創る、提供することで世の中を良くするという「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を掲げています。
150周年のCMでは、世代を超えて自分らしく活躍する女性たちの姿を表現し、好評を得ました。

気質として、創業者の福原家のことを紹介しました。
資生堂は1872年日本初の洋風薬局として銀座に開業。化粧水や歯磨き粉がヒットし、大きくなっていきました。
2代目の時代に本物やデザインにこだわる「資生堂スタイル」が徐々に確立していきます。
特に資生堂を象徴するモチーフになった「花椿」は2代目自らが描いたスケッチを元にデザインされました。
「ブランドイメージという概念もなかった時代に作り上げていったんです」と、山田氏は2代目の持つ先見性とアートの精神を伝えました。同時期に試験室を開設し、最先端の技術を化粧品に応用することを目指していきます。
山田氏は「このアートとサイエンスの理念は今なお続いています」と話されました。

人に温かい社風はいまも

企業格の気質には社風も含まれます。
資生堂は、人に温かく、社員一人ひとりが互いを尊重し合う社風です。
「私も学生の際の企業面接のときに、エレベーターのボタンを社員の方が開けてくれ、いい会社だなと感じたことがあります。小さなことですが、人に温かいというのは資生堂の持っている気質で、それが周りの人を幸せにするのだなと思います」と山田氏。
社外や世間からのイメージも、信頼性が高く安心感がある、という評価を受けています。

最後に山田氏が資生堂の企業格をまとめられました。
能力は日本を代表する化粧品会社であること、性格は品質や安全性の高い製品を作り美で世界を豊かにすることを目指していること、気質は創造性を大事にしてチームワーク良く仕事に取り組んでいること、を表にして示されました。
「これを例にして、みなさんにも企業格を考えてもらいたいと思います」とケーススタディが始まりました。

身近な企業はどんな企業格?

ケーススタディで示されたのはアパレル企業のユニクロ、飲食業のスターバックスコーヒー、生活雑貨の無印良品、日清食品の4つ。
学生は10つの班に分かれ、それぞれ担当の企業について企業格を調べていきます。学生たちは協力し合いながら各企業について調べていきました。

20分ほどワークの時間が取られたあと、最後に各班から調べた企業格について発表がありました。
ユニクロについて調べた学生は、性格として企業理念のほか、「CMにさまざまな人種や年代の人を採用している」ことに着目。
山田氏も「ダイバーシティを推進している企業ということが分かりますね」と感心されました。
日清食品を調べた班からは企業サイトに合った文言から「ハッピーやユニークであることを重視している」という点を挙げました。
山田氏は日清食品の企業ミュージアムがあることを紹介し、「商品を使うだけでなくミュージアムで体験することでより企業を知ることにつながります」と話しました。

企業格を考え就活に役立てよう

最後に山田氏は「今日で実践女子大学の、真面目で熱心だという大学格が分かった気がします」とあいさつ。
「企業格を考えることは、その企業がどんな会社であってほしいかを考えることにつながります。就職活動のときにもぜひ考えてみてください」とアドバイスを送りました。
学生たちにとって就職活動の企業研究のヒントとなる授業となりました。

担当教員のメッセージ

本授業には、初めてお越しいただきました。
海外の事業所での経験を含めて、グローバルキャリアを築かれてこられた山田さんのお話しは、
大変興味深い内容でした。そして「会社の格」という視点での見方は、学生にとっても
私にとっても新鮮な切り口でありました。
時代とともに会社の姿は変化していきますが、やはり150年の歴史を刻む資生堂ならではの
語り継がれたミームは、永遠に変わらないと思います。
これから就職活動に臨む学生に対する企業研究の新たな視点は、大変参考になる示唆に富んだ
内容を構築いただきました。この場を借りて山田正人様には心から感謝申し上げます。