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2024年9月9日

2024年度「キャリア開発実践論」が行われました。(8/24~26)

先行きが益々不透明になる時代にあっても、社会で活躍し、リーダーシップが発揮できる人財に成長して欲しいと願い実施してきたキャリア教育科目「キャリア開発実践論」がクロスウェーブ府中において行われました。本学のキャリア教育科目を代表する授業として、企業の管理職レベルの内容を大学の正課科目として行う特別な講座も今年は9年目を迎え、16名の精鋭たちが参加しました。これまで180名の学生が飛び立ってくれています。

<熱い仲間16名が集結>

今年も、3年生14名、4年生2名の合計16名が、本講座に臨みました。事前課題として提示されたのは、書籍2冊の熟読に加え、自らを分析すること、かなりの時間を費やして課題に取り組んだことが、提出物から読み取れました。
そして、本講座の最大の魅力は、リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄氏(元スターバックスコーヒージャパンCEO)と同社共同代表の鷲見健司氏、そして受講生同士が徹底的に、自分に向き合い、グループで議論することです。

<チームビルディングからスタート>

学年も学部も学科も異なるグループに分かれた学生たち。まずはチームビルディングとして自分たちの共通点を元にチーム名を決め、この講座で得たいこと、そしてチームに対してどういう貢献ができるかを発表しました。その後、岩田氏より「ミッション」についての講義を受けます。「ミッション」を考えることは、これからの人生でとても大切な軸となります。とことん自らと向き合い、ミッションを考える学生の姿は真剣そのものでした。

<今年も20名の先輩社会人を迎えた交流セッションを開催>

本講座のもう一つの特色は、過去の本講座履修生をゲストに迎えて行う先輩交流会が行われることです。今年も第1期生から8期生まで20名がクロスウェーブ府中に集まりました。実際に働いている先輩方の話が聞けるということで、学生からは就職活動についての相談や、現在の仕事のやりがいなどの質問をして盛り上がりました。また、社会で活躍されている卒業生にとっても、鷲見氏・岩田氏や卒業生同士が交流できる機会となっています。卒業生たちのキャリアも様々ではあるものの、この授業で学んだこと、経験したことが社会に入って役に立っていることを後輩に熱く語ってくれていました。後半はクイズ大会が開かれ、2時間半の交流会はあっという間に終了しました。

<ケーススタディでのファシリテーターの体験>

2日目は再び岩田氏より「リーダーシップ」を学んだ後、鷲見氏より「ファシリテーション」について実践を用いて学びました。まず、学生たちはグループ毎に“ミーティングルール”を決めます。そのルールを共通認識として、必ずファシリテーターの役割を含め、役割を変えながら、チームディスカッションを合計5回行いました。自身のファシリテーション力を発揮するだけでなく、チーム全員がそれぞれの役割を全うしながら、難しい課題に対しても積極的に意見を出し合い、話し合いを進めていく様子が印象的でした。学生からは、「普段は聞き役に回ることが多かったが、グループの仲間が支えてくれたことでリーダーシップも発揮出来て、ファシリテーターとは何かについて考えることが出来た。」、「相手の立場に寄り添う大切さも実感したが、一方、遠慮することなく自分の意見を言葉にして伝えることの大切さを学べたのが良かった」など、実践したからこその感想が出ました。

<ミッション作成と宣言を実施して後期期間での実践を約束>

最終日は、「リーダーシップ」と「ファシリテーション」を具体的にどう発揮するかを踏まえて考えた一人一人の「ミッションステートメント」をチームで共有しました。3日間という短い時間の間に自身と向き合い、ミッションを考えた学生たちからは、「好きなことと得意なことは比較的良く考えられたが、人のためになることを考えるのが難しかった」という意見や、「行動宣言を言語化する際には、どうしても抽象的な表現や内容になってしまい、具体的な行動をいれることが難しかった」など、多くの感想が出されました。これに対し岩田氏より、「見ていると、ミッションよりも行動指針(バリュー)に近いものがありました。そういったものについては、これからどのような場面で活かしていきたいのかをイメージできるとより具体性が出るので、ミッションにすることができると思います。ミッションは常に変化し進化するものですので、是非これからどんどんブラッシュアップしていってください」というフィードバックが送られました。そして、学生たちは3日間の学びや気づきから作った「アクション宣言」を行い、終了となりました。

最後に深澤教授より、「縁を大切にしてほしい」というお話しがありました。講師の岩田氏・鷲見氏はもちろん、卒業生や、チームのメンバーと共に過ごした3日間とそのご縁を胸に、今後の学生生活を送ってほしいというメッセージが送られました。

岩田松雄氏より

今年度も学生の皆様には、真摯に課題に取り組んでいただきました。「ミッション」・「リーダーシップ」・「ファシリテーション」・「プレゼンテーション」等の授業は大企業の部長研修とほぼ同じレベルの内容です。しかしながら受講生の皆さんは、自己を見つめ直し、自分の頭で考え、チーム内で討議をして、3日間で多くのことを学ばれておられるようです。合宿での様々なグループ討議を通じ、チームメンバー同士が日を追って強い絆で結ばれ、一生の財産になっているのではと感じます。最終日、自己のミッションなどの決意表明をするのですが、内容が素晴らしくとても感動します。我々講師陣も毎回多くの刺激をいただいています。

鷲見健司氏より

本講座の過去8年全年代の卒業生21名が今年もクロスウエーブ府中を訪れてくれました。本講座の学びや精神を共有する先輩との触れあいとつながりは、就活や卒業を控えた受講生にとって得難い貴重なものです。それは日本中のどの大学にもない本講座の素晴らしい価値です。
「社会を変える、世界を変える」若きフューチャーリーダーたちとの3日間は、毎年私に社会や世界の未来への希望を感じさせてくれます。数か月間の実践を経て更に成長した受講生との1月の再会が楽しみです。

学生からのコメント

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今振り返って、客観的に見て3日間あの環境の中で過ごしていたと思うと、すごく集中して学んでいたんだなと感じました。本当に濃い3日間で、あっという間だったように感じます。この講座を通して、自分の中でのリーダー像が明確になりましたし、今まで悩んでいたことが急にすっきりした感じがしています。
————————————————————————<文学部3年>——————-

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この2泊3日という時間の中で自分が成長するぞという強い信念があったので、申し込みを決めました。実際に講座が始まってから家に帰るまでの間、リーダーとは、自分のミッションとは、自分のやりたいことは何か、優れたファシリテーターになるにはをずっと真剣に考えていました。どれも答えがあるわけではないからこそ、自分の価値判断だけは忘れてはいけないと強く感じられました。自分と向き合うきっかけになり、将来どんなことを成し遂げるためにどんな仕事をしていきたいかの方向性も見えてきて参加できて本当に良かったです。アクションはみんなに宣言したからこそ絶対やって自分に磨きをかけていきたいです。
————————————————————————<文学部3年>——————-

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3日間、社会のトップを走るお二方からの貴重な授業を受けることができて非常に良かったと思います。自分のミッションを考えるために、自分の好きなこと・得意なこと・人のためになることを他者を巻き込みながら考えられる機会はなかなかないため有意義でした。
————————————————————————<人間社会学部3年>————-

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3日間自己分析をし自分と向き合いながらリーダーシップやファシリテーションについて実践的に考えることができました。最初に私は3日間で、自分に自信を持てるようになりたいと目標を立てていました。グループワークをしていくなかで、発表をすることもあり、参加前よりも自分に自信が持てるようになったと思います。ミッションステートメントを考えるのが一番大変でした。しかし、好きなこと、得意なこと、人のためになることの3つを考えられたことで、自分を知ることができました。最後にグループのメンバーからメッセージカードをもらって、普段はなかなか言ってもらう機会のないフィードバックをもらうべき点を3日間一緒に頑張ってきたメンバーに言ってもらうことができて、よかったです。
————————————————————————<人間社会学部3年>————-

深澤晶久教授より

キャリア開発実践論は9年目、今年8月での閉館が決まっているクロスウェーブ府中での最後の開催となりました。
岩田様、鷲見様からは、社会人、しかも管理職レベルの数々のご示唆をいただき、また、熱心なアドバイスもあり、3日間で大きく成長した姿には、頼もしさすら感じました。
20名の先輩との交流も含めて、まさに「大学の価値は卒業生が決める」を体現するその活躍は、現役学生にとっては、貴重なロールモデルとの出会いになったことと思います。

毎年、絶大なるご支援をいただいている岩田様、鷲見様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2024年2月19日

自販機で社会貢献!「経営学概論」の授業でダイドードリンコとの特別コラボが行われました。 

12月6日、人間社会学部1年生の必修科目の一つである「経営学概論」(担当:人間社会学部現代社会学科 篠﨑香織教授)の授業で、ダイドードリンコ株式会社(以下、ダイドードリンコ)の特別講義が行われました。学生は『自販機でできる社会貢献』という事前課題について考えて授業に参加しており、指名された学生はその発表もしました。企業の経営戦略を直接学ぶ貴重な講義であったと同時に、学生たちのアイディアを企業に評価していただく交流の機会となりました。

自販機は一番顧客に近い!

最初に自販機営業企画部の松本英康氏からご挨拶があったのち、人事総務部の真野祐子氏からダイドードリンコの説明がありました。
ダイドードリンコは、1950年代に栄養剤を販売したことからスタートした大同薬品工業を起源とし、ダイドーグループホールディングスの中の清涼飲料事業を担っています。グループ会社はこの他に、医薬品、医療品事業やゼリーなどの食品事業があります。

本社は大阪府にあり「今回のメンバーは、全員大阪から来ています」と真野氏。
ダイドードリンコの事業は、自動販売機での販売が約8割を占めるのが特徴。競合他社の同事業は約3割のため大きな違いです。また自動販売機に並ぶ商品に占める50%がコーヒー飲料で、主な購買層は男性だそうです。
なぜ自販機での販売がメインなのかと言えば、店舗販売よりも利益率が高いことや、顧客により近い距離で販売できるといったメリットがあるからです。

ダイドードリンコの飲料事業のもうひとつの特徴はファブレス経営であること。
ファブレス経営とは、自社で工場を持たず100%製造委託しているビジネスモデルです。工場にかかる大きなコストを削減できるのがメリットです。

優秀な人材に入社してもらうには

「当社の経営戦略として、優秀な人材を確保することに重きを置いています」と真野氏。
経営戦略を考える上で、持続的な競争優位を確立することが非常に大切です。そのためには優秀な人材を採用し、定着してもらうことを重視しているそうです。
優秀な人材にダイドードリンコに興味を持ってもらうために行っている施策として、フルリモートワークや副業可能、充実した福利厚生制度などが紹介されました。

特に働く女性にとって好評なのが、コアタイムのないスーパーフレックス制度やリモートワーク、法定よりも長い期間利用できる時短勤務制度です。
こういった取組みを行うことで、社員がプライベートと仕事の両立がしやすくなり、直近3年間ではライフイベントを理由にした退職者はなしという成果に繋がっているそうです。
真野氏は「企業の、ヒトに対するアプローチということに焦点を当てて見てみると、商品だけからは見えなかったことが見えてくる」と就活の際に企業サイトなどをよく見てみることを勧めていました。

自販機で女性を助けたい

次にダイバーシティ推進グループの井阪愛歩氏、大植あかね氏、奥川美優氏から、ダイドードリンコが取り組んでいる女性の社会進出についてのお話がありました。
まず「日本のジェンダーギャップ指数の順位を知っていますか?」という質問があり、選択肢の中の一つである「100位以下」に多くの学生の手が挙がりました。
井阪氏の「皆さんさすが知ってらっしゃいますね」との言葉通り、日本の順位は2023年時点で125位。特に女性役員の数が少ないことは国も課題としており、2030年までに女性役員の割合を30%まで上げることを目標としています。

ダイドードリンコでも2023年から自販機営業企画部内にダイバーシティ推進グループを発足。女性の自販機利用を増やそうと女性発案の企画で新たなコンテンツを開発しています。
例えば女性が誰もが経験し、悩みのタネである生理。アンケートで特に多い悩みである「急な生理への対応」として生理用ナプキンを購入できる自販機を開発しました。
誰もが使える自販機で生理用品を販売することで社会の理解促進も図ります。

この他にも赤ちゃんのおむつやお菓子の販売など、さまざまなモノを自販機で販売することに精力的にチャレンジしています。本学の渋谷キャンパス9Fにもダイドードリンコの自販機があり、オープンキャンパスのときに「赤本缶(https://www.jissen.ac.jp/learning/human_sociology/interview/shinozaki.html)」を搬出しました。
「世の中の潜在的な課題を見つけて自販機で解決するお手伝いをすることが私たちの仕事」と奥川氏は語りました。

社会貢献できる自販機って?

事前に学生たちには「自販機でできる社会貢献」を考える課題が出ており、授業の最後にダイドードリンコのメンバーが指名した学生が自分のアイディアを発表しました。
募金をしたら写真が撮れてSNSに投稿できる仕組みを提案した学生のアイディアには、松本氏は「募金ができる自販機は既にあるが、写真が撮れるアイディアは斬新」と高く評価していました。
省エネに着目した学生は、照明を消し、常温の飲料専用の自販機を提案しました。
「常温飲料のニーズがあることが分かりました。省エネの観点から常温の発想になったのもすごい」と着眼点の良さが評価されました。

野菜など無人販売所の役割のある自販機を提案した学生もおり、特産品などの地産地消にもつながるアイディアが出ました。
「モノを売る自販機はあるので、地域と協力すれば可能性がありそう」と松本氏はほかの主体との連携の必要性に言及していました。
他にも秀逸なアイディアが次々飛び出し、企業の皆様から感嘆の声が上がりました。

学生たちは企業がどんな経営戦略を取っているか、また社会貢献活動にどう取り組んでいるかを知る機会となった講義でした。

担当教員からのメッセージ

ダイドードリンコ社とは、赤本缶を自動販売機から搬出する企画を立てたのを機にご縁を得ました。
飲料事業を持つ企業の中でも差別化が際立っていることや、女性の社会進出を後押ししている企業というイメージが強いことから、「経営戦略」の回にぜひお越しいただきたいとお声がけしました。

 当日は、入社3年目、子育て中、転職の経験ありなど、学生にとって数年先から20年ぐらい後までのロールモデルになる社員の方たちからお話を伺う機会になり、「働きたいように働く」ことのイメージが少し掴めたのではないかと期待しています。実際、「ダイドードリンコ社で働いてみたい」という履修者の声が複数ありました。また、「社会貢献につながる自動販売機」の学生のアイディアについて、松本氏より一つひとつ丁寧にコメントをいただき、アイディアの面白さと実現可能性の両立の難しさを実感する機会になりました。

 早朝より大阪からお越しくださいまして、また有意義な授業の実現にご協力いただきまして、本当にありがとうございました。