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2025年9月18日

2025年度食生活オープン講座にて、雪印メグミルク、SRAジャパンとコラボした特別講義が行われました。

8月26日(火)に食生活オープン講座(担当:生活科学部食生活科学科 松岡 康浩 准教授)にて、雪印メグミルクの和田玲司氏と日本サステイナブル・レストラン協会(SRAジャパン)代表の下田屋毅氏をお招きし、飲食店とサステナブルに関する特別講義が行われました。講義は夏季集中科目として開講されました。学生は、課題内容に関連する講義を受けたのち、2つの課題に関するグループワークを行い、結果を発表しました。食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科を対象に開講されている専門科目です。企業から提示される課題に取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。

課題について

一つ目の課題は「飲食店での紙パックリサイクル回収率アップへの対応策を検討する」です。和田氏から紙パックそのものの性質や、全国牛乳容器環境協議会が行っている紙パックリサイクルの取り組みについて、そして回収に関する課題が共有されました。紙パックがリサイクルに非常に適していること、リサイクルを行うことによってCO2の削減に貢献できますが、飲食店において紙パックのリサイクル率の低いことを説明。

二つ目は「シェフズ・サステナビリティマニュフェスト取り組み拡大への対応策を検討する」です。下田屋氏が携わっている農林水産省フードテック官民協議会「サステナブルレストラン推進ワーキングチーム」は、消費者がサステナブルを選べる仕組みづくりを行っている団体です。その一歩としてまずは飲食店や、料理を提供するシェフがサステナブルについて知ることが重要とし「持続可能な⾷の未来へ⽇本の料理⼈・シェフのサステナビリティ・マニフェスト:2030年へ向けた17 の指針(シェフズ・サステナビリティ・マニフェスト)」を策定。その周知を行っています。

学生はそれぞれの課題についてグループワークを行いました。

成果発表

講義を踏まえて課題に対するアンサーをグループでまとめて発表しました。

課題1に対しては、指導マニュアルへの組み込みや複数店舗での共同回収、回収率の見える化など、飲食店が現実的に行える行動変化の提案、回収量に応じたリワードや専用乾燥機の導入など、現場目線の提案を中心に様々なアイデアが発表されました。

課題2に対しては、自治体とのイベント開催や認証シェフイベント、マスコットキャラクター作成、SDGsとの連携による情報発信、SNSキャンペーン、賛同飲食店をキーワードの組み合わせで検索可能なサイトなど、来店者目線の提案がされました。

班の発表の後、ゲストの二人と先生を交えて意見交換とフィードバックが行われました。

授業の最後に

ゲストのお二人から総括のコメントをいただきました。

発表班と意見交換を行う和田氏、下田屋氏

和田氏は「皆さんの環境に対する意見、紙パックリサイクルに関する提案、しっかりと受け止めました。共有を行い、活かしていきたいと思います。今回の講義をきっかけとして、皆さんもリサイクルに対する意識をより一層高めてほしいと思います」とコメント。

 下田屋氏は「マニフェストに関して、これからどのように進めていくかアイディアをたくさんいただけてよかった。サステナビリティに関して飲食店側で様々な活動をしていますが、社会の構造上、消費者のニーズがないとつながっていかない部分があります。この場にいるみなさん一人一人が、サステナビリティに関する積極的な選択を重ねていくことが大切です」と総括されました。

 

担当教員のコメント

社会には今回取り組んだような課題がまだまだたくさんあります。
問題に関わる立場はその時その時で変わるかもしれませんが、
現状を知り、身近に感じ、より良い方向に向かって行動することは大変重要です。

2025年9月8日

キユーピー株式会社を招いた講義で本学の卒業生が登壇しました(8/5)

生活科学部食生活科学科食物科学専攻3年生を対象とした授業「食産業演習」(担当:中川裕子准教授)の学内講義に8月5日(火)、本学の卒業生でキユーピー株式会社研究開発本部グループR&D推進部の伊藤裕子氏が登壇。キユーピーの食と健康の取り組みについて講演し、食品メーカーの視点で食産業の現状と今後の可能性を展望しました。

――講演のテーマは「食と健康の取り組み」

この日の講義に登壇したのは、本学の卒業生で管理栄養士の資格を持つ、キユーピー株式会社研究開発本部グループR&D推進部の伊藤裕子氏。
「キユーピーの食と健康の取り組みについて」というタイトルでお話をいただきました。

伊藤氏はまず、キユーピーの歴史と、1925年に日本初のマヨネーズを発売した創業者の想いや企業理念「楽業偕悦」を紹介。市販用・業務用、内食・中食・外食を網羅する「食のエキスパート」としてのキユーピーの強みを紹介しました。

続いて、マヨネーズ100周年を迎えた現在の多様な商品展開や使いやすさへの工夫、研究開発と商品企画の連携、社内外との協業など、食を創造する仕事の内容を解説。本題の食と健康戦略では、「サラダファースト」(野菜摂取促進)、「朝食摂取率向上」(欠食改善)、「適塩」(塩分過多対策)、「フレイル予防」(健康寿命延伸)の4つの社会課題解決に向けた具体的な取り組みを挙げ、国や他団体と連携しながら推進している点を強調しました。

最後に伊藤氏は、「思い切り『食』を楽しみながら、学業を通じて可能性を広げてください」と学生たちにメッセージを送り、講演を締めくくりました。

 講演の後には質疑応答の時間も設けられ、多岐にわたる質問が飛び交いました。中川裕子准教授の「就職活動中の学生に求める人物像は?」という問いに対し伊藤氏は、「食が好きで、コミュニケーション意欲がある人。仕事は人と人との関わりなので、それを大切にできる人を求めている」と述べ、これから就職活動が本格化する3年生に向けて貴重な助言を送りました。

キユーピー株式会社研究開発本部グループR&D推進部 伊藤裕子氏のコメント

実践女子大学の卒業生として後輩の皆さんにお伝えしたかったのは、キユーピーは食品を製造するだけでなく、「食と健康への取り組み」を通じて社会に貢献している企業であるということです。若い学生の皆さんは、健康の課題を身近に感じる機会がまだ少ないかもしれませんが、「おいしさ」という食の楽しみを生涯にわたって味わうためにも、今から食習慣に気を配ることが欠かせません。講義で紹介した「たんぱく質診断」や「野菜の摂取量チェック」「10食品群チェック」などのツールは、自分の食生活の傾向を客観的に把握するのに役立ちます。これらを活用し、ご自身だけでなくご家族や身近な人たちの食生活改善にぜひつなげてください。

 また、食の世界を楽しみながら学ぶための姿勢についてもお話ししましたが、これからは商品の変化にぜひ注目いただきたいと思います。現代は商品のサイクルが驚くほど速く、新しいものが次々と登場します。街の店舗の移り変わり、そこに並ぶ商品の変化に意識を向けることで、きっと新たな発見があるはずです。

 学業を通じて可能性を広げ、何より「食」を心から楽しんでほしいと願っています。

担当教員からのメッセージ

「食産業演習」では、食品の生産から消費までを包含する、フードシステム全体に関わる仕事への理解を深めることを目的としています。そこで今回は、本学の卒業生の伊藤氏をお招きし、日本にマヨネーズを広めた老舗食品メーカー、キユーピーの食と健康の取り組みについて伺いました。商品開発といった仕事内容に加えて、製品製造にとどまらないSDGsなど社会的課題への取り組みについてもお話をお聞かせいただき、学生たちは仕事の幅の広さや食品メーカーとしての社会的責任の重さを実感したようです。質疑応答では、業務内容に加えロゴの扱いなど多彩な質問も飛び交い、非常に有意義な時間となりました。

 この「食産業演習」は、これから就職活動を本格化させる3年生にとって貴重な業界研究の場でもあります。キユーピーという企業への理解により、食品関連業全体への興味関心が高まることを期待します。

2025年9月5日

学生が考案!丸紅プラックス株式会社の容器を活用したメニュー提案が、2025年度食生活オープン講座で行われました。

8月7日(火)に生活科学部 食生活科学科の専門教育科目である食生活オープン講座にて、丸紅プラックス株式会社(以下丸紅プラックス)から産業資材本部産業資材第二部主任の神谷裕美氏と管理本部総務人事部の先川祥弘氏をお招きし、課題に対する成果の発表が行われました。

発表の前に

食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科の学生を対象に開講されている専門教育科目です。企業から提示される課題に学生が取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。丸紅プラックスから提示された課題のテーマは「丸紅プラックスの容器を活用した弁当の提案」。学生が実際の店舗に足を運んだ市場調査と中間発表を経て、最終成果を発表しました。発表の後は学生間投票で優秀賞が決定し、賞状の授与が行われました。

1班:ベジっと!うどん

市場調査の結果、冷凍食品には選択肢が少ないこと、そして「野菜の豊富さ」を打ち出した商品が特に女性から支持されていることが分かりました。そこで1班は、野菜をたっぷり使った冷凍弁当「ベジっと!うどん」を提案しました。

ターゲットは、ヘルシーな食事への関心が高い女性層と、栄養バランスが課題とされる高齢者層です。蒸し野菜を中心に、鉄分・ビタミンなど不足しがちな栄養素を補えるように工夫し、消化の良いうどんと組み合わせることで、健康的で食べやすい弁当に仕上げました。

商品は透明なフタ付き耐熱容器で提供し、彩り豊かな見た目をそのまま楽しめる設計に。電子レンジで手軽に調理できる点もポイントです。冷凍・レンジ調理が可能な容器の特性を最大限に活かしています。パッケージは透明デザインを採用し、ロゴのみでシンプルに情報を伝える工夫がされています。

さらに「ベジっと!うどん」は主食やソース、トッピングを変えることで幅広いバリエーション展開が可能。実際に「ベジっと!ペンネ」などの試作も行われ、ソースによる味の違いが好評という結果が共有されました。

販売はコンビニやスーパーに加え、冷凍食品の強みを活かしたネット販売も想定。価格は700円以内に設定し、SNSでは「温活」「健康志向」といったキーワードを用いた発信を計画しています。学生が考案した商品である点もアピールポイントとしています。

2班:世界プチ旅行弁当

市場調査では、営業時間や店舗規模の異なるスーパーの弁当コーナーの比較を行いました。その結果、彩りや食体験を重視した弁当へのニーズが明らかに。これらを踏まえ、「目で楽しみ気分を変えられる世界を旅する弁当」をコンセプトに、世界各国の料理をブッフェ形式で選ぶことができる「世界プチ旅行弁当」を提案しました。

ターゲットは「海外旅行に行きたいけど行けない人」や「食による気分転換を求めている人」。購入者は、国ごとの代表的な料理を一品ずつ選び、区切りのある容器に盛り付けることで、異なる料理の味が混ざらない工夫を施しました。さらに、容器は多国籍認証であるFSC認証を受けたエコ素材容器を使用することで、環境への配慮もアピールします。

また、リピーター向けの仕掛けとして国旗ステッカーを取り入れました。料理に添えられている小さな国旗のピックを、耐久性のあるステッカー素材にすることで、コレクション性を高めました。加えて、展開例として各国のスイーツを集めたアフタヌーンティーボックスも紹介され、幅広い提案がされました。

価格は980円に設定し、プチ贅沢な特別感を演出しました。宣伝方法としては、店頭のPOPやSNS広告を活用するほか、ブッフェ形式ならではの特徴を活かし、購入者自身が「自分で選んだ弁当の内容」を発信することで話題性を広げる戦略としました。

3班:Salaporte(サラポルテ)

3班は、市場調査として訪れたデパート地下食品売り場で、サラダの需要の高さに着目しました。一方で、販売されている商品の多くは彩りが欠けていることを分析。これらを踏まえて、華やかな見た目と1日分の野菜の2分の1が摂取できるヘルシーさを兼ね備えたサラダボウル「Salaporte」を提案しました。この名称は、“サラダ”とフランス語で『運ぶ』を意味する“ポルテ”を組み合わせた造語です。

ターゲットは20~30代の健康志向の女性で、フルーツ・ナッツ・チーズを使用していることが大きな特徴です。近年SNSで華やかなサラダボウルが流行していることを背景に、彩り豊かなサラダを考案しました。

また、恒常メニューに加えて季節限定商品を展開し、旬のフルーツを楽しめる仕組みを提案。そして、容器は既存のものをベースに、ボタニカルなデザインとドレッシングを効率的に使用できる容器を提案し、フランス風のコンセプトと環境に配慮したエコ容器を組み合わせることで、脱プラスチックを意識した欧風イメージを打ち出しました。

デパートの地下食品売り場での販売を想定し、価格は800円~1200円と設定。自分へのご褒美や気分転換にもぴったりな商品としました。

4班:まんぷくミニパレードBOX

4班は市場調査として、価格帯の異なる複数のコンビニエンスストアを比較・分析。その結果、共通して「健康志向」と「環境意識の高さ」が重視されている点に注目しました。また、近年人気のグルテンフリー食品については、「健康的ではあるものの満足感に欠ける」という課題を抽出しました。

この課題を踏まえ、ダイエット中の人や健康志向の人、アレルギーを持つ人をターゲットにした「まんぷくミニパレードBOX」を提案しました。コンセプトは「目でも楽しめて、しっかり満足できるヘルシー弁当」。パレードのように多彩な料理が並ぶ楽しい見た目にすることで、食の制限がある人にも食べる楽しさを感じてもらえる工夫をしています。

メニューにはパンケーキ・フルーツのコンポート・キッシュ・ナゲットを採用。料理はすべて米粉や豆腐など、低アレルゲンかつ健康的な素材を使用します。「ナゲットに使用する豆腐はきちんと水切りを行う」など、調理法や食感にもこだわり、満足感のある味わいを実現しました。容器は区切りのあるタイプを使用し、多種類の料理を美しく盛り付けられるように配慮しています。

販促方法としてSNSや店頭POPを活用し、価格は900円程度を想定。販売場所としては、キッチンカー・スーパー・コンビニなど幅広い展開を計画しました。

5班:夏野菜チーズカレードリア

5班は市場調査を通じて、弁当における「健康志向の高まり」「季節感の演出」「彩りの工夫」が重視されていることを発見。これらの要素を取り入れ、20代を中心に幅広い世代に人気のあるカレーをベースにした「夏野菜チーズカレードリア」を提案しました。

ターゲットは、健康や食生活に気を配りながらも満足感のある食事を求める若年層や社会人です。旬の夏野菜をふんだんに使用し、見た目にも華やかで季節感のある一品に仕上げました。ごはんには雑穀米を取り入れて、彩りと栄養価をプラス。さらにカレーのルーに刻んだ野菜を加えることで、1食で1日の野菜摂取量の半分を補えるよう工夫しました。チーズは低脂肪のものを使用し、ヘルシーさにも配慮しています。

容器には、耐水・耐油に加えて冷凍保存やオーブン加熱も可能な素材を採用。調理の流れとしては、製造後に冷凍保存し、販売店では冷蔵保存で管理。提供時にはオーブンでチーズに焼き目をつけることで、アツアツで香ばしい状態で販売できるようにしました。

冷凍保存が可能な点を活かし、販売数に応じた柔軟な調整が可能となり、フードロス削減にもつながります。さらに、テイクアウト販売にも対応可能なため、キッチンカーなど多様な販売形態の展開も可能です。

宣伝方法としてはSNS広告や店頭看板を活用し、弁当の価格は750円程度を想定。夏の暑さで食欲が落ちやすい時期にも、野菜たっぷりで満足感のあるヘルシーな一品として提案しました。

6班:夏バテ防止スープカレー弁当

6班は市場調査として、揚げ物弁当専門店や駅併設の商業施設の食品売り場を訪問。その結果、弁当における「見た目の美しさ」や「売り場のライスの選択肢の豊富さ」の2点に注目しました。この調査を踏まえ、旬の野菜に素揚げのひと手間を加えた彩り豊かな見た目と、選べるご飯で楽しみ方を広げられる「夏バテ防止スープカレー弁当」を考案しました。

食材には立川産の野菜を使用し、地産地消を意識することで地域とのつながりを大切にしながら、ヘルシーで満足感のある商品を目指します。ご飯は、白米・ターメリックライス・雑穀米の3種類から選べる形式とし、リピーター獲得を狙っています。

ターゲットは「立川に勤務する健康志向のオフィスワーカー」。通勤途中や昼休みに手軽に購入できるよう、キッチンカーでの販売を想定しています。価格は900円程度に設定し、ランチとして無理なく購入できる価格設定としました。

販促ではSNS広告を活用し、地域限定ターゲティングを実施。「地産地消」や「一食で手軽にたっぷり野菜」などのキーワードを軸に商品価値を発信します。

7班:からだ想いの彩り弁当

7班は市場調査において、店舗ごとの売り方の違いや共通点を比較しました。その結果、弁当選びにおいて「健康志向」「環境への関心」「見た目の美しさ」が重要な要素であることが明らかになりました。加えて、栄養の偏りやフードロスといった社会課題にも着目し、これらを解決する「からだ想いの彩り弁当」を提案しました。

ターゲットは健康志向の女性。旬の野菜を豊富に使用し、「季節のごはん」「豆腐入りつくね」「トマト入りだし巻き卵」や「だし茹でにんじん」など、彩り鮮やかでヘルシーな料理を盛り込んでいます。容器は多くの料理を美しく分けて盛り付けられる構造を採用しました。

食材には、規格外野菜を活用してフードロスを抑え、地元産野菜を使用することで地域経済の循環にも貢献します。さらに、販売エリアに合わせて中身をカスタマイズできる柔軟性も備えています。

販売場所はデパートの地下食品売り場を想定し、価格は1000円前後に設定。和食の持つヘルシーさと、美しさを兼ね備えた商品として、現代のライフスタイルに合った形で「和の食文化」を発信します。

授業の最後に

すべての班の発表が終了したあとは、最優秀賞を決める学生間投票が行われました。学生たちは事前に配布された評価シートをもとに、他班の発表を評価し投票を行います。

結果はなんと、1班と2班が同率一位という接戦に。最終的に神谷氏と先川氏の協議の結果、「容器について深堀していた」という観点から、最優秀賞は1班に決定!受賞した1班には賞状が授与されました。

授業の終わりに、企業担当者のお二人から授業の総括のコメントをいただきました。

神谷氏は「初回講義で容器の説明をさせていただきましたが、その特徴をしっかり理解していると感じました。商品の提案に至るまでの市場調査など、想像以上に熱心に取り組まれていて参加させていただいて本当によかったです。多くの班が宣伝方法にSNSの活用を挙げていましたが、SNSを使って世の中にどう広めていくかという点は、実際に今課題として抱えています。SNSを活用しようとする姿勢は今後社会に出てからも活きていくと思います」とコメントされました。

先川氏は「調査をしっかりしたうえでターゲットを明確にし、それに向かってアプローチしていく姿勢は、将来仕事をしていく上で大切な考え方だと思います。プレゼンテーションでは、ただ話せることに加えて、プレゼンツールの活用や相手の意図・気持ちを理解した提案が重要になっていきます。今回の経験を通して学んだことを、今後も継続していくことで、将来必ず役立つはずです」と発表をきいた感想を述べました。

担当教員のコメント

食品の流通・販売において「容器」は欠かせない存在です。丸紅プラックス株式会社様は、環境に配慮したエコ容器「EUCALP(ユーカルプ)」を開発されており、今回この容器を活用したお弁当のメニュー開発という貴重な課題を提案してくださいました。連携がスタートした5月、神谷様よりユーカルプの特徴をご説明いただき、これをもとに学生たちは7月の中間発表に向けて市場調査や試作を重ねました。私からは、「ユーカルプの特徴を最大限に活かすこと」と「丸紅プラックス様の容器だからこそ実現可能な提案であること」を強く意識して取り組むよう伝えました。
最終発表では、すべての班がこの視点を反映させ、学生らしい個性豊かな発表を行ってくれました。特に1・2年生が中心で調理実習の経験も浅い中、各班が何度も試作を重ね、自分たちのお弁当の写真を使って堂々とプレゼンテーションをしてくれたことは、とても頼もしく感じました。丸紅プラックス株式会社のお二人からいただいたご講評にもありましたように、この経験は今後の社会人生活において必ず活きるものと確信しています。
神谷様には各班の発表ごとに大変前向きなフィードバックをいただき、学生にとって商品提案を考えるうえで貴重な学びとなりました。今回の社会連携授業は、学生にとって非常に実り多い経験となったと感じております。改めまして、神谷様、先川様をはじめ丸紅プラックス株式会社の皆様に心より御礼申し上げます。

生活科学部食生活科学科 守田 和弘 准教授
2025年9月2日

学生が考案!株式会社東京サマーランドで販売を想定したメニューの提案が、2025年度食生活オープン講座で行われました。

8月7日(火)に生活科学部 食生活科学科の専門教育科目である食生活オープン講座にて、株式会社東京サマーランド(以下サマーランド)から経営企画室課長の田村 修平氏と経営企画室兼営業推進部企画宣伝課の高見 哲平氏をお招きし、課題に対する成果の発表が行われました。

発表の前に

 食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科の学生を対象に開講されている専門教育科目です。企業から提示される課題に学生が取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。サマーランドから提示された課題のテーマは「プール遊園地施設における商品提案」です。5月末に実施された現地調査と中間発表での意見交換をふまえ、各班が試行錯誤して、考案・開発した最終成果を発表します。

1班:スノーバーガー

1班は現地調査で、天候によって来場者の行動が変化すること、ファミリー層が多いことを分析し、飲食の簡便さと軽食に需要があることに着目。「現地調査で食べたバーガーのバンズがおいしかった」という経験から、アイスをバンズで挟んだ「スノーバーガー」を提案しました。

ハンバーガーのバンズにアイスがサンドされている見た目のインパクトで、映えるビジュアルを実現。手を汚さずに食べられる工夫を取り入れたアイスの提案をしました。さらに、バンズを事前に仕込むことにより提供時の工程を削減。約1分で商品を提供できるスムーズさと、アイスとバーガーの意外な組み合わせの斬新さで、購買意欲を高めます。販売戦略としては、SNSでのハッシュタグ活用やインフルエンサーとの連携を予定。販売価格は500円としました。

2班:ぱちぱちストロベリーソーダ

2班は、現地調査から、飲食を持ち込みをしている来場者であってもつい購入したくなるインパクトが強い商品に集客力があること、屋内の暑い環境では冷たいメニューの需要が高いこと、また飲食の持ち込みをしている来場者ほど軽い飲食物を購入する傾向にあることを分析。自分でひと手間加えて完成させる体験型のフードに着目し、口に入れるとぱちぱちはじける粉末を自分でドリンクに入れる「ぱちぱちストロベリーソーダ」を提案しました。

「ぱちぱちストロベリーソーダ」はアクティブさを邪魔しないベリーと炭酸のさわやかさと鮮やかなビジュアルで、五感を使って楽しむことににこだわったドリンクです。試作段階では「ぱちぱちと弾ける音が10-20分ほど持続していた」と、味や見た目だけでなく音でも楽しめる”五感”で味わう体験型ドリンクを実現。ターゲットは20代の若者とし、価格は手の届きやすい500円と設定しました。宣伝方法にはSNSの発信や場内看板を活用し、多くの来場者に魅力を伝えます。

3班:シャリっとサマージェノベーゼ

3班は現地調査の結果、既存のフードには冷たい主食がないことに着目。加えて、夏に求められている食の要素として「あっさりとした味付け」が好まれること、夏野菜の中ではトマトが人気であるという調査結果を重ね合わせ、冷凍トマトを使用した「シャリっとサマージェノベーゼ」を提案しました。若い女性や家族連れの母親をターゲットに、こってりした味付けが多い既存のフードとの差別化を狙いました。

フローズントマトを使用することで、時間がたってもひんやりと冷たい状態を保つことができる食事を実現。他の材料はジェノベーゼソース、エビ、チーズを使用し、さっぱりとした味で満足感のあるフードを目指しました。

販売価格は、園内の既存フードの価格を参考に、1000円と設定。SNSでは実際に食べている様子を発信し、購買意欲を高める戦略としました。

4班:青空ふわもこソーダ

4班は現地調査の際に購入した、自分で手を加える体験型フードに着目。手を加える楽しさとロゴ入りドリンクをコンセプトに「青空ふわもこソーダ」を提案しました。

作り方は、カップの側面に雲に見立てた生クリームを塗布し、そこにバタフライピーティーと炭酸水を注ぎ、仕上げに綿あめを乗せてロゴ入りのストローを指して完成です。青空を表現するためのバタフライピーティーの配分にこだわり、試作では最もきれいに青空を再現できる色味を検討しました。

ターゲットは中学生から20代までの若年層。販売価格は手に取りやすい700円に設定。販促にはSNSを活用し、綿あめを溶かしながら飲む様子を動画で紹介し、「実際にやってみたい」と思わせ、購買意欲につなげます。

授業の最後に

発表後、田村氏と高見氏による協議を経て、最優秀賞が決定しました。

見事受賞したのは4班の「青空ふわもこソーダ」。賞状の授与と、副賞としてサマーランドワンデーパスが贈呈されました。

授業の終わりに、企業担当者のお二人から総括のコメントをいただきました。

田村氏は「提案していただいたメニューはどれも独創的でした。発表の中に動画を取り入れていたチームがあったと思います。昨今SNS発信では動画の活用が非常に多いです。特にショート動画(15-60秒の動画のこと)のように、短時間でインパクトを与える手法は、現在のニーズに合っていると感じました。サマーランドとしては飲食店の回転率も重要視しており、その点で調理工程がシンプルであることは大事な視点です。どの班もすばらしい発表でした」とコメント。

高見氏は「発表内容はとても素晴らしかったです。プレゼンテーションにおける見やすさや伝わりやすさの工夫は、経験を重ねることで身についていくものだと思います。発表する環境によっては、資料の色使いなどにも配慮されるといいと思います。また、サマーランドの客層や来場者の行動は季節により大きく変化します。今の時期は夏休みのため、ファミリー層に加えて学生も多く来場します。今回の視察での分析が非常にしっかりしていたからこそ、変化を想像し別の視点で考えるとどのような結果になるのかも興味深いと感じました。今後同様の発表の機会があれば、そうした点にもぜひ意識を向けていただけたらと思います。」とフィードバックしました。

担当教員のコメント

プール遊園地施設における商品提案という課題に対して、東京サマーランドの方から、お客様視点ということが重要視されました。

現地視察の日はあいにくの天気でしたが、参加した学生は、施設を楽しみ、それぞれの視点で園内の環境や飲食店のメニュー、客層など詳細に分析することができました。その成果が最後の提案発表につながっていたと感じます。また、発表後のフィードバックでもご意見をいただき、調理設備や使用できる材料、回転率重視など、商品提案の難しい部分も感じることができたことは、大変よい経験となったのではないでしょうか。

東京サマーランドの田村様、高見様には、講義から始まり、現地でのご案内、最終発表のご講評まで関わっていただき、改めまして、お礼申し上げます。おかげさまで学生達はやりがいを感じながらも楽しく授業に取り組むことができました。

一連の活動が、自信となり今後の学びや課外活動につながることを期待します。

生活科学部食生活科学科 中川 裕子 准教授
2025年8月28日

2025年度キャリアデザインの授業で、オリエンタルランドとコラボした課題に対する発表が行われました。

7月8日(火)にキャリアデザイン(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、株式会社オリエンタルランド(以下オリエンタルランド)からマーケティング本部コンテンツ開発推進部長の横山政司氏と、マーケティング本部コンテンツ開発推進部ロイヤルティマーケティンググループマネジャーの伊藤大樹氏を招き、課題に対する提案が行われました。今回学生が取り組んだミッションは「あなたは、コンテンツ開発推進部に配属されたオリエンタルランドの新入社員です。人口減少社会でハピネスを提供し続けるために、Z世代のファンダフルディズニー会員を獲得する施策を提案してください」。学生たちは2週間かけて取り組んだプランを提案しました。課題が発表された授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8806/)。

全部で9つの班が発表を行い、伊藤氏から最優秀賞と優秀賞が発表されました。今回は受賞したふたつのグループの発表内容を紹介します。

最優秀賞:1班

ターゲットは、比較的時間と経済的余裕のある大学1~4年生に設定。ターゲットを対象としたアンケート調査を、インスタグラムとグーグルフォームを用いて行いました。その調査結果から、そもそもファンダフル・ディズニーを知る機会が少なく、特典の魅力も十分に伝わっていないことを課題として設定しました。また、ファンのニーズと会員特典が合致していないのではないかという点も課題に挙げました。

ファンのニーズと会員特典の合致を目指し、「コース別ファンダフル・ディズニー」を提案。入会時に「アトラクション」「フードとショー」「グッズ」の3つから希望のコースを選べる制度で、それぞれのコースに沿った特典が用意されます。既存会員も追加料金なしでコースを選択可能とし、満足度の向上と離脱防止を図ります。

さらに、会費については、年払いに加えて月払い制度の導入も提案。大学生にとっては、月払いの方が加入の心理的ハードルを下げやすいので、まずは月払いで気軽に入会してもらいます。そして、会員を継続する中で年払いへ移行する流れを想定しています。また、段階的に外国籍の方の入会も視野に入れるなどの方針を紹介しました。

最後に、認知度向上のためにZ世代に人気のインフルエンサーを起用したSNS発信や、駅構内での広告展開を組み合わせたマーケティング戦略を提案。認知を広げ、自発的な興味・検索行動へとつなげることを狙いました。

伊藤氏は「調査結果を反映させて終わりではなく、既存のコンテンツとの違いを出すためにどうしたらよいかを掘り下げて検討し、「コース別」という切り口の提案にたどりついたのは面白かったです。認知度の課題に対しても具体的な提案をしてくれました。発表も、アンケート結果を出発点に全体の施策につなげていく構成で、ストーリーが見えやすく、非常に良い提案でした。」と受賞理由を紹介しました。

優秀賞:6班

ターゲットを「地方在住のZ世代」と定義し、課題として以下の2点を挙げました。1つ目は、地方に住んでいるとパークに何度も行けず、お金もかかるため、地方在住のZ世代にとって入会のメリットが感じづらいこと。2つ目は、情報発信が首都圏在住者やリピーター向けに偏っており、ファンクラブ自体の認知度が低いことです。

そこで、地方在住のZ世代を対象に「出張ファンダフルイベント」を提案しました。これは、キャラクターが実際に各地域を訪れ、パークでは見られないご当地限定衣装での撮影会、抽選でのグッズお渡し会など、直接ふれあえる体験型イベントです。地方でディズニーパレードを実施した際に大きな反響があった事例を挙げ、地元でディズニーを楽しめる機会には高い需要があると説明しました。これは、パークに行きたくても距離や費用の面で難しいZ世代に、魅力的な体験を提供できるという提案です。また、参加者によるSNS投稿を通じて、ファンクラブの認知拡大や入会促進も狙います。

さらに、SNS上でファンクラブコンテンツの一部を公開し、全貌は会員のみ閲覧可能にすることで、「会員になる特別感」を演出することも提案しました。実際に同様の戦略で、ファン限定コンテンツの会員数が3倍になった成功事例も紹介し、SNSと会員制の連動による効果の高さを強調しました。

この施策を通じて、地方にいてもディズニーの世界観に触れられる機会を提供し、新規会員の獲得と既存会員の継続意欲の向上を目指します。

伊藤氏は「遠方に住んでいて来園が難しい方にどのようにつながりをもってもらうか、という点は我々も課題に置いていたところです。地方で行うファンミーティングなど、いろいろなことをやりたいと考えていたので、共感する内容が非常に多い提案でした。」と受賞の理由を紹介しました。

授業の最後に

受賞したグループには記念品としてディズニーグッズが贈呈されました。

1班
6班

伊藤氏から「短い期間でここまでの提案内容を仕上げたことが素晴らしいと思います。全部で9つの班の、若い世代の声が反映された発表を聞いた時間は非常に有意義なものとなりました。特に知名度の低さとSNS活用の意見は受け止めて、ファンダフルを運営しているチームにもしっかり共有させていただいて、この先につなげていきたいと思います」とコメント。

横山氏からは「ターゲット設定はどのグループも苦労したと思います。ターゲットの掘り下げをさらに行うと、より詳細なアプローチを提案できたと思います。顧客の解像度をどんどん高めていかないと、適切な提案は行えません。この視点は社会に出てから重要になります。今回の提案に当たりアンケート調査を実施したことはよかったのですが、アンケートでは見えてこないターゲットのリアルなニーズをつかむことは提案を行う上で非常に大切です。社会人になったら、ぜひ意識していただければと思います。」と総括の言葉をいただきました。

担当教員のコメント

毎年、多くの学生が楽しみにしている「キャリアデザイン」におけるオリエンタルランド社との連携講座が行われました。本年度も、昨年と同様とてもリアルなテーマを出題いただき、学生にとってのハードルは例年以上に上がったものの、深く企業や、仕事のことを考察する時間となりました。学生にはとても身近な企業であるものの、やはり仕事という側面で考えることは、本当に意義ある取り組みになったものと考えます。

横山様には、毎年、中間段階でのフィードバックを含め、プレゼンテーション当日まで、ご丁寧にアドバイスをいただき、学生にとっては、仕事の厳しさも学ばせていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。就職活動を目前に控えた学生にとって、働くこととは、仕事とは、そして企業とは、一人一人が自らと向き合い、限られた時間でチームとして成果を出すことの重要性など、どこまで深く考えられるかが重要であることに気づいて貰えればと考えています。横山様、伊藤様には、改めて感謝申し上げます。

2025年8月28日

2025年度国際理解とキャリア形成の授業で、スポーツニッポン新聞社コラボ冬季オリンピックに関する課題に対する発表が行われました。

7月15日(火)に国際理解とキャリア形成(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、株式会社スポーツニッポン新聞社から編集委員の藤山健二氏、ビジネス開発局の池田智子氏、記者の佐藤博之氏を招き、課題に対する成果の発表が行われました。当日の様子は、7月16日付の朝刊に掲載されました。

発表の前に

この発表は、4月に発表されていた「オリンピック(特に冬季オリンピック)の持続性について」という課題に対して、解決策を提案するものとなっています。学生ならではの自由な発想が求められました。★課題が発表された授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8135/)。

藤山氏から「スポニチ賞(最優秀賞)の景品を用意しました。スポニチのロゴグッズと、長野五輪の関係者用参加証明メダルです」と当時の関係者のみ所有している非売品のメダルの授与を発表し、学生からは驚きの声が上がりました。

本記事では全8グループの発表のうち、4グループの提案を抜粋して紹介します。

7班の発表

オリンピックの持続可能性の現状として、開催都市の財政負担や財務面の不透明性、閉会後に施設が使用されず廃墟化してしまう「負の遺産化」の問題に触れ、SDGsとの乖離があることを指摘。

解決策として、まず透明性の高い資金調達手段であるクラウドファンディングを提案しました。費用の用途を明示することで広く支援を募り、支援者には公式グッズのリターンなど特典を用意します。

次に、大会後の施設を地域住民向けの健康増進施設としてリノベーションし、売店収益を活用して改修費用の一部を補う案が示されました。維持費に悩む施設を長く運営していくための施策です。健康増進や地域交流を狙った施設を運営し、持続的に地域に貢献する拠点とすることで、一時的なものではなく地域資源として生かす方向性を提案しました。

クラウドファンディングによる費用負担の軽減、リノベーションによる施設の有効活用、そして施設利用を通じた市民の健康促進を狙い、あるものを活かして次につなげることで開催後も地域住民がオリンピックと共にあることを目指しました。

藤山氏は「IOCに入る収益の多くは選手の競技団体に分配されています。特に恵まれない小さな競技の資金源になっている背景があります」と補足。「クラウドファンディングを取り入れるという視点は大変面白いとおもいました」とコメントしました。

6班の発表

6班はオリンピックの持続可能性について、環境の観点から考察しました。現在は一国で開催されるため、大規模な施設の建設や運営にかかる費用など、さまざまな問題が一国に集中し、開催国に大きな負担を強いています。また、競技場などの施設を建設するために森林が伐採されたり、開催期間中に大量の観光客が訪れ、ごみの分別が困難になるなど、環境への悪影響も懸念されています。

こうした課題に対し、地域に応じて競技を分散開催する「複数国開催」のオリンピックを提案しました。メリットとして、以下の3点を挙げました。

1つ目は、金銭的負担の軽減です。複数国で費用を分担することで、開催国ごとの負担を抑えることができます。2つ目は、競技環境の向上です。選手村の質や競技環境が不十分で実力を発揮できない問題に対し、開催規模を抑えることで柔軟に対応できると考えました。3つ目は、国際交流の促進です。複数国で同一のイベントを実施することで、開催国同士の連携が生まれ、交流が活発になると期待されます。

一方で、複数国開催による観客の移動負担というデメリットにも言及し、対策としてストリーミング配信の活用や航空会社との連携強化を提案しました。こうした工夫により観光客の往来が活発になり、世界経済にも好影響をもたらすと考えました。

藤山氏は、「金銭的な問題などにより、一国でオリンピックを支えることが難しい時代になっているのは事実ですが、さまざまな国のアスリートが一つの国に集い、交流することは、オリンピックの大切な要素の一つです。複数国開催については、そうした価値観との折り合いをどうつけていくかが、今後の課題です」と述べ、提案の中で指摘されたオリンピックの現状の課題を話しました。また、「スポーツを通じた国際交流という考え方には、確かにそうなってほしいという思いがあります」とコメントし、提案への共感も示しました。

8班の発表

8班は地球温暖化による降雪量の減少と、それに伴う冬季オリンピックでの人工雪の使用率の高さに着目しました。人工雪の生成には大量のエネルギーが必要であり、また自然雪に比べてアスリートのパフォーマンスに悪影響を与える可能性が高い点が課題として挙げられました。

さらに、自然雪で冬季オリンピックを開催するには、豊富な自然降雪、安定した低気温、標高差のある山岳地帯といった競技に適した環境に加え、選手村やメディアセンターなどの施設を建設できる広大な土地や、空港・鉄道・道路などの交通インフラの整備も求められると説明されました。

そこで、都市開発とオリンピックを組み合わせた「未開発地域での開催」が提案されました。これは、降雪地帯の未開発地域で都市開発を行い、人工雪に頼らず高水準の競技環境を整備しつつ、地域の復興や活性化を図る施策です。

具体的な候補地として、国内では岩手県八幡平市をはじめとする東北地方の山間部、国外ではノルウェー北部のトロムス地方などが紹介されました。これらの地域は自然環境に恵まれている一方で、環境規制の厳しさや、北極圏に近いため日照時間が短いといった課題もあると指摘されました。

自然雪に恵まれた地域を、オリンピック開催に向けて計画的に整備することで、競技環境の質を高めると同時に、大会終了後も施設を活用して地域に長期的な価値を残すことを目指しました。

藤山氏は「雪のあるところで開催するという提案で止まらず、具体的な都市名を出してくれたことがよかった。環境保護の観点から、本当に実施するとなったときには反対の意見もたくさん出ると思いますが、地域を一つではなく複数あげてくれたことも、検討の幅を感じることができよかったです」とコメントしました。

5班の発表

5班は「持続可能なオリンピック」に向けて、3つの課題とその解決策を提案しました。

第一の課題は、大会終了後の施設の利活用や、地域住民への影響です。これに対し、仮設スタジアムを活用し複数都市で競技を実施する「分散型オリンピック」の導入を提案しました。また、FSC認証木材を使ったプレートにメッセージを記入し、ツリー型のパネルに掲示する「メッセージツリープロジェクト」も提案しました。このプロジェクトでは、地域住民の声や選手への応援メッセージを集めて掲示し、終了後は地元施設に展示することで、地域と一体となった大会運営を目指しました。

第二の課題は、環境への影響、特に大会期間中に発生する未分別ごみの問題です。この課題に対しては、楽しみながら環境意識を高める「スポGOMIオリンピック」と「分別オリンピック」を提案しました。「スポGOMIオリンピック」は、ごみ拾いの質と量でポイントを競うイベントです。「分別オリンピック」は、ごみをいかに速く正確に分別できるかを競います。これらの優勝チームには、FSC認証木材で作られたオリジナルの木製メダルを授与し、森林伐採などの環境問題への関心も促します。

第三の課題はフードロスです。東京大会では、IOCの要請により多種多様な食事を常時用意していましたが、食材の管理が難しくなり、結果として大量の食品廃棄が発生しました。これに対しては、アプリによる事前予約制の導入に加え、『もったいない弁当』の提供を提案しました。「もったいない弁当」は通常は廃棄されがちな可食部を使用した弁当で、フードロス削減と同時に、サステナブルな取り組みとしての話題性も狙いました。

藤山氏は「FSC認証木材に注目したエコ金メダルの発想はとてもいいですね。実際にメダルを獲得した選手が地元に凱旋した際、自治体が記念としてFSC認証木材製のメダルを贈呈を行ったり、東京オリンピックではメダルケースをFSC認証の木材で制作しています。ゆくゆくはオリンピックのメダルも木製になるかもしれません」とコメントしました。

授業の最後に

全ての班の発表が終わり、ゲストの三名による審査を経てスポニチ賞が発表されました。

受賞した班は8班。

藤山氏は「三人でどれがいいか意見が分かれました。皆さん本当に素晴らしかった」と全員の頑張りをねぎらいつつ「具体的な開催地まで一歩進んで言及していた点を評価しました」と受賞理由を説明。景品の授与が行われました。

藤山氏は「皆さんのプレゼンテーションを聞かせていただいて、とても楽しかったです。中身について本当に差はありません」と発表全体を振り返り、授業全体の総括として、前回授業で行った岡崎朋美氏との対談内容に触れ「岡崎さんが対談の中で話していた『なぜできないのかではなくどうしたらできるか』と考えるポジティブさは大切。困ったときはこの考え方を思い出して頑張ってもらえたら、きっと楽しい学生生活を送っていただけると思います。オリンピックメダリストの話を直接きいたという特別感も、覚えておいてもらえたらなと」と総括されました。

★オリンピックメダリスト元スピードスケート選手の岡崎朋美氏との対談が行われた授業の取材記事はこちら(https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/8695/)

担当教員のコメント

「東京2020」の開幕前からスポーツニッポン新聞社様にご支援をいただき、8年の歳月が流れたことになります。その間には、東京2020の延期と無観客開催から昨年のパリ五輪まで、オリンピック・パラリンピックに関しても様々な話題があり、と同時に課題も浮き彫りになっています。
今年は、初めて冬季五輪に視点を当て、日本女子スピードスケート界のレジェンド岡崎朋美選手にもお越しいただき、特に冬季のオリンピックパラリンピックの持続可能性について考えてきました。
スポーツニッポン新聞社の藤山さん、池田さん、佐藤さんには本当にお世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年8月13日

若者をファンにするSNSの投稿とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲との特別コラボが行われ学生たちがプレゼンテーションを行いました。

6月25日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)で、猿田彦珈琲との特別コラボ授業が行われました。この日は約2ヵ月にわたり取り組んできた課題の最終発表です。課題のテーマは「20代にファンになってもらえるSNSの投稿を考えよう」。企業の皆さんを前に、学生たちは緊張しながらも猿田彦珈琲のファンを増やすためのSNSの施策を発表しました。

中間発表から最終発表会に向けて

 5月末の中間発表以降今回の最終発表会までに、篠﨑先生は学生に2つのことを徹底するように伝えていました。ひとつは、猿田彦珈琲から出ている課題に回答するかたちでまとめること、もう一つは、ターゲットを絞ることです。猿田彦珈琲からいただいたテーマは、学生のみなさんの年代層(20代男女)のお客様に、「猿田彦珈琲に興味をもってもらうきっかけ」or「猿田彦珈琲に行ってみたい!」と思ってもらうための投稿案を提示するというものでした。加えて、instagramもしくはXの投稿案に入れて欲しい項目が提示されていました。項目は多岐にわたるため、必ずしも網羅的でなくても良いが、提示されている項目を入れて提案することを強調しました。ターゲットについては、「20代男女」とはどのような層なのか。例えば、どこに住んでいて、何に興味がある学生なのかなど、より具体的にする指示が出ていました。
 さて、では実際に発表がどのようであったのかを見てみましょう。

一目で情報が分かるように

トップバッターはAチーム。
ターゲットを女子大学生に定めました。学生のうちに猿田彦珈琲を知ることで、社会人になってから利用してもらい長期的なファンにするのが目標です。
若い世代はコーヒーを飲むとき、苦みが少ないカフェラテなどを好む傾向から、甘いスイーツドリンクの紹介に力を入れることに。抹茶ラテやフロートなどの写真に、説明文をつけて投稿します。
文も情報を書くだけではなく、共感を呼ぶような語り掛ける口調を意識。女子大生の検索が多いハッシュタグをつけて投稿します。
発表後は企業の皆さんからの質問タイム。
「写真に文字が入っている方が良いですか?」という質問に、学生は「一目で見て情報が分かる方が興味を引かれると思います」と実体験から回答していました。

次のCチームは2種類の投稿を考案。
毎日おすすめ商品の投稿と、定期的にフォロワー限定クーポンを配布するキャンペーンの投稿です。
毎日の投稿は、通勤通学の時間帯にその日の気候に合わせたおすすめ商品を投稿し、学校帰りなどに来てもらえるように訴求します。フォロワー限定クーポンは、公式アプリと連動して応募した人に、50円引きのクーポンを配布するというもの。投稿当日限定とすることで、限定好きな若い女性の興味をそそります。
「毎日のおすすめ商品は、例えばどんなものを考えていますか?」と質問が。
「雨の日はテイクアウトが少なくなると思うので、店内で食べられるスイーツとセットで紹介したり、晴れている日はフロートを紹介したりすることを考えています」と回答しました。

店内のおしゃれな雰囲気を伝えるには?

続いてはEチーム。
現状の投稿内容や課題を細かく分析。期間限定商品が分かりにくかったり、文章が長かったりと統一感がないことを指摘しました。
そこで投稿写真を同一のフィルターをかけ、商品にキャッチコピーを入れることを提案。また投稿の下にはロゴを挿入することで、ユーザーに一目で猿田彦珈琲であることを分かりやすくします。
投稿案では店内風景を撮った紹介動画を作成。雰囲気が統一されブランドイメージを伝えられるとしました。
質問では「統一感の話がありましたが、猿田彦珈琲っぽさとは何だと思いますか」と聞かれ、学生は「落ち着いた店舗の雰囲気がSNSでも伝われば良いと思いました」と回答。
企業の方も納得されていました。

Fチームは自分の時間を大事にするZ世代をターゲットに一人でも快適で、落ち着いて過ごせる猿田彦珈琲の特徴をアピールするSNSを提案しました。
行きたいなと思わせる構成にこだわった、店舗の紹介動画を作成。渋谷店では「都会のリズムからひとやすみ」をキャッチコピーに、渋谷という忙しい街との対比を強調して落ち着いた雰囲気を伝えます。
企業の方からは「全店舗ぶん考えたいなと思いました」と感嘆の声が聴かれました。

スイーツ推しで興味を引く!

Dチームは、おしゃれで落ち着いている猿田彦珈琲は大人な雰囲気があるとして、少し背伸びしたい女子大生をターゲットに投稿を考えました。
まず、自分たちのSNSを利用してアンケート調査を実施。フードを注文したときドリンクも頼むという結果から、フードペアリングを提案する投稿を考案しました。スイーツをとりあげ、それにあったドリンクを3種類提案するというものです。
発表後は「アンケートはすごく参考になりました」「簡潔で分かりやすく素晴らしかった」と感想をいただいた、完成度の高い発表でした。

最後はBチームです。
ターゲットは普段からよくカフェに行くスイーツにこだわりのある女子大生。投稿案は診断テスト風を考えました。
「今日はどんな気分?」と問いかけ、「リラックス」「リフレッシュ」など選択肢を用意。気分に合う方をタップするとおすすめの商品が表示される仕組みです。
「心理テストなどの診断は女子大生たちに人気なことから取り入れました」と話し、若者にも楽しみながら商品に触れてもらえる、遊び心ある提案を考えました。
「こういった診断方法は何を参考にしたのですか」と聞かれ、学生は「服のブランドなどの投稿を見て思いつきました」と回答していました。

すべての発表が終わり、代表取締役の大塚朝之氏から総評をいただきました。
「とても有意義で、学びばかりでした。自信になる部分も、参考になる部分もどちらもあった刺激的な時間でした」と感嘆した面持ちで話されました。
今回のSNS案の優秀賞は猿田彦珈琲の公式アカウントで実際に投稿される予定です。

担当教員からのメッセージ

 4月末から始まった猿田彦珈琲株式会社との連携授業が幕を閉じようしています。
 連携授業開始前の打ち合わせで、「猿田彦珈琲のSNSを活性化させるための提案」が課題となってからは、私自身も学生と進めているプロジェクトの情報をインスタグラムから投稿するなど、閲覧数が伸びる投稿について考える機会が増えました(写真は人間社会学部のインスタグラム。左側の真ん中が篠﨑による投稿)。

 今回学生が提案したアイデアをもとに猿田彦珈琲の広報担当の方がアレンジしたものが、間もなく猿田彦珈琲の公式インスタグラムやXから投稿されるということで、とても楽しみです。閲覧数はもとより、見た方の反応がこれまでの投稿と違ってくるのかどうか、ぜひ猿田彦珈琲のご担当者に検証結果を伺いたいです。
 
 最終回となった今回は、「蜂蜜ラテ」の差し入れをいただきました。
 猿田彦珈琲の上田様によると、自家製蜂蜜オレンジソースと芳醇なエスプレッソにミルクを合わせ、風味豊かなドリンクに仕上げた、猿田彦珈琲ならではの一杯だそうです。エスプレッソには、ふくよかなボディ感とキャラメルのような甘さ、さらにアプリコットやマーマレードの果実味を思わせる余韻が特徴の「TOKYO ’til Infinity」を使用しているそうです(味わいは2025年6月29日時点のものとなります)。蜂蜜の独特のクセを感じず、ほどよい甘みのラテでした。ご馳走様でした。
 大塚社長、平岡様、田岡様、上田様、播田様、そしてフィールドワークでお世話になった渋谷道玄坂通店の皆様、大変お世話になりました。また連携授業ができることを楽しみにしております。ありがとうございました。
 

2025年7月31日

相手を思いやって「やさしい日本語」を使ってみよう!「日本語教育入門b」でJR東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別授業が行われました。 

6月24日(火)に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、JR東日本との「やさしい日本語」第2回特別コラボ授業が行われました。学生たちはマナーについてポスターや放送文案を作成し発表しました。また、ロールプレイングをとおして、相手を思いやって伝える姿勢について学びました。

音だけで伝えるのは難しい

前回に引き続き、我孫子乗務ユニットから車掌の皆さんが登壇されました。
平山秀人氏と伊藤暉氏に、車掌と取手駅で改札業務を兼務している山田直人氏が加わり、和気あいあいとテンポよく楽しい授業を行ってくださいました。

まずは前回の授業の振り返り。
電車の車内放送や改札で、外国人のお客さまに伝えるため、やさしい日本語を使う工夫を学んだ感想として学生からは「音(放送)だけで伝える難しさを感じた」「見た目で英語を使おうと判断しないこと」などが寄せられました。
伊藤氏は「人によって価値観が違うということに気付いてもらえた。今日は特にこのことを中心に進めていきます」と話し、授業が始まりました。

ピクトグラムを使って分かりやすく

さっそく、前回出された課題の発表から。
課題は「鉄道マナーを在留外国人にどう伝えるか?」ポスターと、車内放送文を考えるというものでした。
学生たちは5つの班に分かれ、約1か月の期間でスライドとポスターを作成し、それぞれの班が発表を行いました。

 最初の班は、荷物を前に抱えて乗るマナーについて。
ポスターはピクトグラムを使って分かりやすくしています。文も「混雑時」などの言葉は理解してもらえない可能性を考え、あえて省き「荷物は自分の前に!」と、シンプルに仕上げました。
平山氏からは「このまま車内に貼ってもいいくらいの完成度」と感嘆の声が。
伊藤氏も「外国人だけでなく日本人にも分かりやすいですね」と感心されました。

 2番目の班は、駅構内では右側通行のルールについて。
ポスターはこちらの班もピクトグラムを使った、一目で分かるデザインとし、英語でも注意を促します。放送文は「階段や廊下は右側を歩いて下さい」と一文で分かるものを目指しました。
山田氏は「ピクトグラムは外国人のお客さまに分かりやすい。参考にしたいと思います。」と話しました。

一目でマナーを伝えるには?

 3番目の班は、席に荷物を置いてしまうお客さま向けに注意を促すポスターを考案しました。
「かばんを座るところにおかないでください」と文章で示し、放送文では「席は一人ひとつです」と伝えます。
伊藤氏は「普通車でもグリーン車では空いている席をつい使ってしまう外国人のお客さまが多いので、ぜひ使いたいと思いました。」とコメントされました。

 4番目の班は、外国と日本で違うルールを一目で分かりやすく。
エスカレーターは左に立つ、走らないなどをイラストで表現しました。これらのマナーは実際に学生が「駅を利用している際に感じたことをもとに選んだ」と話しました。

 最後の班は、荷物のマナーについて。
マナー違反であるイラストを載せて、赤字で注意喚起しました。注意文には漢字を使わず、分かりやすく伝わることを意識しました。
平山氏も「漢字を使わないというのはとてもいい」と評価されました。

全部の発表が終わると、伊藤氏から総評をいただきました。
「すごいなと思ったのが、自分の経験が作品に反映されていること。私も秋葉原駅での改札業務がきっかけでやさしい日本語について考えるようになりました。今後も経験を大切にしながら社会に役立てていってほしい」と話されました。

相手に合わせてコミュニケーションを取ろう

続いて株式会社JR東日本サービスクリエーションの藤根美咲氏が登壇され、グリーン車での案内について話されました。
近年グリーン車は外国人も多く利用しており、やさしい日本語が必要な場面も多々あります。
そこで、学生たちはグリーン車で使われる案内をやさしい日本語に言い換えることができるか挑戦しました。

「お手持ちの特急券ではグリーン車はご利用いただけません」という文言を、ある班は「このチケットではこの電車に乗れません」と言い換えました。
藤根氏は「とても詳しくて分かりやすい。私たちが実際使っているものに近いです」とコメントされました。

グリーンアテンダントは直接お客さまと会話します。やさしい話し方のポイントは、分かりやすい説明や落ち着いた態度などです。
特に大事なのは、積極的な態度と相手に合わせた説明だといいます。
「外国人のお客さまは、熱心に自分に話されていることを重視します。思いやりをもってコミュニケーションを取れば、伝わりやすいですよ。」と話されました。

ロールプレイングで「やさしい日本語」にチャレンジ!

最後は「やさしい日本語ロールプレイング」。
平山氏たちが迷惑行為をしている乗客を演じ、それをやさしい日本語で注意してみるというものです。車掌用の手袋がプレゼントされ学生たちは歓声を上げました。帽子もお借りして車掌になりきります。

最初は車内で外国人のお客さまが大声で話しているシチュエーション。
学生が「車内では静かにしてください。」と話しかけても、「なんで?」と分からない様子。学生たちは試行錯誤しながら「周りの人が困っているので、静かに話してください」と言い直していました。
伊藤氏は「文化が違うとなぜ、静かにしないといけないのか分からない。理由も伝えることが大事ですね」と解説されました。

次の班は渋谷駅で乗り換えに迷っている外国人のお客さまを想定します。
どこに行きたいのか、乗り換えの改札はどこかなど伝えることが複雑で、学生たちは相談し合いながら頑張って伝えていました。
終了後、山田氏は「改札では複雑なことを聞かれることが多く非常に大変。翻訳アプリだけに頼らず、相手の様子を見ることも大事ですね」と解説されました。

平山氏は、最後に「やさしい日本語は伝えるためのひとつの手段です。」と話します。「皆さんが、授業で習っているとおり、やさしい日本語の使い方はとても上手。一方で、それだけでは難しいこともあります。やさしい日本語は選択肢のひとつとして、伝わる方法を工夫していってほしいと思います」と語り、和やかに授業は終了しました。

担当教員からのメッセージ

第1回に引き続き、第2回の連携授業も活気あふれる有意義な100分間となりました。

学生たちが発表した課題に対し、貴社の皆様から一つひとつ丁寧にフィードバックを賜り、誠にありがとうございました。実務の最前線でご活躍されている皆様からのご指導は、学生にとって大変貴重な学びの機会となり、教員一同、心より感謝しております。

特に、実際の現場を想定した臨場感あふれるロールプレイングでは、学生たちが協働しながら真剣に課題へ取り組む姿に、この1ヶ月間での著しい成長を感じることができました。

授業後、学生からは次のような感想が寄せられています。 「『やさしい日本語』で対応する際、相手を尊重しつつ自分の要望を伝えること、そして相手の『なぜ?』『どうやって?』という疑問を的確に汲み取ることの難しさと重要性を学びました。」 「貴社スタッフの方々の模範ロールプレイングを拝見し、相手の文化背景を理解した上で疑問に答えることが、多文化共生社会においていかに大切であるかを実感しました。」

この2回の連携授業を経て、学生たちの学ぶ姿勢にも顕著な変化が見られました。一人ひとりが深く思考して主体的に発言するようになり、仲間と協働してより良い答えを導き出す場面が増えました。実践的な体験型学習がもたらす教育効果の大きさを、改めて実感する貴重な機会となりました。

末筆ではございますが、本連携授業の実施にあたり多大なるご尽力を賜りました東日本旅客鉄道株式会社ならびにJR東日本サービスクリエーション 東京グリーンアテンダントセンターの皆様に、心より御礼申し上げます。

2025年6月30日

「やさしい日本語」を使って伝えよう。「日本語教育入門b」の授業で東日本旅客鉄道株式会社の特別講義が行われました。 

5月27日に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別コラボ授業が行われました。外国人にも分かってもらえる「やさしい日本語」について、楽しいトークで盛り上げながら実践的に教えてくださいました。

多くのひとが利用するJR東日本

最初に登壇されたのは平山秀人氏。2021年にJR東日本に入社されました。次に挨拶された伊藤暉氏は2015年入社です。
お二人とも、電車の車内放送やドアの開閉などを主に担当する車掌です。
JR東日本は、北は青森県から南は静岡県までの広い範囲の路線を担う、まさに日本の大動脈です。
昨今は、電車の輸送業務のほかIT部門、生活サービスの仕事も行っており、「街づくりや介護の仕事を行う部門もあるんですよ。」と平山氏が明るく説明されました。
お二人が所属している我孫子乗務ユニットは、常磐快速線の品川駅から茨城県の取手駅までなどが乗務範囲です。
「都会の高層ビルから、だんだんと田園風景が広がり癒されています。」と冗談交じりで話されました。

「まずはアイスブレイクをしましょう。」と伊藤氏が取り出したのはカードゲーム。学生たちは班に分かれ、先生方も参加してのゲームが始まりました。
出されたテーマに沿って、配られたカードの数字を表現するものを考えます。上手くいって喜んだり、外れて笑ったりと学生たちも楽しそうに参加していました。
ひとしきり盛り上がったところで、伊藤氏が「皆さん、どうでしたか。」と語り掛けました。
「同じ日本人でも世代や性別などによって感覚は違います。文化や言語が違う在留外国人のお客さまや海外からのお客さまに情報を伝えるのはさらに難しい。」と話し、今回のテーマである「やさしい日本語」について考える講義が始まりました。

どう言ったら伝わる?

ここからは、実際に電車で使われるアナウンスを使ってのグループワークです。
最初に出たお題は「列車非常停止ボタンが押されているため安全確認をしております。運転再開までお待ちください。これを皆さんでやさしい日本語の放送文に変えてみましょう。」と平山氏。
学生たちは「それいいね。」など相談しつつ文を作り上げました。
例えば「電車を止めるためのボタンが押されました。安全か見ています。動くまでお待ちください。」という案です。
平山氏は「すごく分かりやすくて、良いですね。」と感心した様子で拍手を送りました。

我孫子乗務ユニットでは、「SOSボタンが鳴っているため、チェックしています。電車が動くまで待ってください。」と伝えているとのこと。「SOS」や「チェック」などのカタカナ言葉を使うことで伝わりやすくなると話します。
ただ、「やさしい日本語には正解がありません。」と平山氏。
「皆さんが考えた文の方が伝わりやすいということもあると思います。大事なのは相手が本当に理解しているかです。相手を思いやり、どうしたら伝わるか考えることが大切です。」と語り、「私たちも大変勉強になりました。皆さんの案も今後取り入れていきます。」と話されました。

やさしい日本語を必要としている人はいる!

伊藤氏は我孫子ユニットの所属になる前は、秋葉原駅の改札で勤務していました。観光地として名高い土地柄のため、海外からのお客さまも多かったと言います。
特にアジアからの観光客は、英語も通じないことが多く苦労したそうです。
そんなとき、テレビでやさしい日本語を使ったニュース番組を偶然発見し「これは使えるのではと思った。」と話しました。
我孫子常務ユニットに異動になってから早速、上司などに提案してみるも「前例がない。」と難色を示されてしまいます。

「しかし、やさしい日本語を必要としている人がいるという確信がありました。」と伊藤氏。
社員たちで研修をし、車内放送にやさしい日本語を取り入れ、お客さまへポスターや車内アナウンスでお知らせし、理解を求めたところ、SNSなどで好意的に拡散され知れ渡ったと言います。
「実際に伝わるのか、さまざまな国から来ている留学生たちに協力してもらい意見交換を行い、毎月車掌たちで研修をしています」と話しました。

鉄道マナーを伝えるには?

次に登壇したのは、JR東日本サービスクリエーションの山田晃子氏。普通列車グリーン車のアテンダントです。
グリーン車では車内販売や乗り換え案内、チケットの確認など直接乗客と話す場面が多々あります。
「グリーン車には海外からのお客さまも多く、国籍や年齢もさまざまです。」と山田氏。
「今までは細かく決まった応対マニュアルに沿って対応していましたが、やさしい日本語を柔軟に使うことが増えています。」と話します。
やさしい日本語のガイドラインも作成し、JR東日本グループ全体として活動が広がっていると語って下さいました。

最後に平山氏が再度登壇。次回への課題を発表されました。
課題は「鉄道マナーを海外からのお客さまや在留外国人にどのように伝えるか?」。ポスター案と、車内放送文を考えるというものです。
平山氏は「駅を利用するとき、電車に乗るとき、さまざまなマナーがあります。その中からいくつか選び、やさしい日本語を用いてどのように伝えるか考えて下さい。皆さんの発表を楽しみにしています。」と期待を寄せました。

学生たちはグループワークを行い、1ヶ月後にプレゼンテーションに臨みます。

担当教員からのメッセージ

我孫子乗務ユニットの方々のユニークな自己紹介、そして大いに盛り上がったアイスブレイクのおかげで、学生たちの表情も緩み、テンポよく授業が進められました。いつも以上に活性化したグループワークでは、学生の視点から多様な意見が出されました。
東京グリーンアテンダントセンターの方からのグリーン車での取り組みのお話しには、大きくうなずきながらメモを取る学生の姿が見られました。
受講生からは、「日本人も外国人もみんなが安心して電車を利用するためには、誰もが理解できるように情報発信することが大切だとわかった」「在留外国人の方や外国人観光客の方が増加している今、もっとこの取り組みが広がることで、誰もが平等に情報を得られるようになることが望ましい」といった感想が届きました。
次回の発表会に向けて、各グループが協働してアイディアを練っています。
貴重な学びの場を与えてくださったみなさまに、心から感謝申し上げます。

2025年6月27日

自分らしく生きるヒントとは?「国際理解とキャリア形成」でフィジーの文化を学ぶ特別授業が行われました。

「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月3日に株式会社アールイーカンパニーとの特別コラボ講義が行われました。「フィジー留学カラーズ」の運営を手掛ける皆さんが南の島を舞台にしたディズニー映画をベースに、南太平洋の文化を解説。和気あいあいとしたムードのなか、異文化を知る機会となりました。

学生のうちに海外に行ってみよう

教室にはアールイーカンパニーの多田祐樹氏が登壇し、ビデオ通話もつないで授業が始まりました。
植林氏は大阪から、長瀬氏はフィジーからの参加です。
「私だけが話していてもつまらないので、皆さんにも参加してもらいながら話していきたいと思います」と多田氏。
リアルタイムの掲示版を使って、学生たちも随時感想を伝えながら進めていきます。

多田氏は貿易業を経て、2018年よりフィジー共和国にて、主に日本人を対象とした英語学校「カラーズ」を創業。現地で日本語学校も開講し、フィジーの人が日本で働ける機会を増やすプロジェクトも行っています。
多田氏はまず画面に「17%」という数字を示し「なんの数字でしょうか?」と問いかけました。これは日本人のパスポート保有率です。
ただし、18~22歳の大学生の年齢に限ると40%と高い数字です。
多田氏は「しかし、65歳までの労働人口で見る割合だと20%強と減ってしまう」と話し、学生のうちに海外含めさまざまなところに行ってほしいと伝えました。

フィジーの歴史や文化とは?

学生たちは事前準備として、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」を視聴してきています。
この映画の主人公モアナが南の島から船に乗り冒険をするという物語。この映画をベースに「南太平洋に息づく文化と”自分らしく生きる”ヒント」と題しての講義が始まりました。
多田氏はまず南太平洋の島々にすむ民族の歴史から説明。
約6000年前、オーストロネシア語族が大陸から海を渡ります。
優れた航海術で広大な領域に分布し、南太平洋の島々であるフィジーやサモア、トンガなどにも到達しました。

次に植林氏が3人の男性の写真を見せました。南太平洋には3種の族があり、外見も違います。
それがポリネシアン、メラネシアン、ミクロネシアンの3つ。
ポリネシアンはアジア人の肌色に近かったり、メラネシアンは髪の毛がアフロのようにきついカールがかかっていたり。
フィジーはメラネシアンとポリネシアンが混在する島です。ラグビーが強いことで有名ですが、それは遠い昔、厳しい航海を生き抜いた、強い体を持った先祖の血を受け継いでいるからとも言われています。

多田氏は「KAVA(カヴァ)」という伝統的な飲み物を紹介。
儀式や祝い事に欠かせない飲み物です。現在は観光客も飲むことが出来るものですが「私は大好きです」と多田氏。
「カヴァは歓迎してくれている証。海外の人に自分の国の文化を受け入れてもらうのは嬉しいですよね。私は現地で出されたものは全部食べるのがポリシー。皆さんもフィジーに行くことがあったら是非試してみてください」と語りました。

やりたいことを宣言しよう!

続いて長瀬氏が、映画のストーリーにベースに「主人公たちはどんな失敗や不安を抱えていたか考えてみましょう」と語り掛けました。
「皆さんも過去の失敗や不安を振り返ってみましょう。うまくいかなかったこと、恥ずかしかったことなど小さいことでもいいので教えてください」と長瀬氏が言うと、学生たちは掲示板に次々と書き込み始めます。「受験のときもっと勉強を頑張ればよかった」「留学が不安」などの意見が書き込まれました。

意見が集まったところで、長瀬氏は映画のある台詞を紹介。
それは「先のことは分からない。でもどんな自分になるかは決められる」というもの。
長瀬氏は「みなさんも、これからどんなことがやりたいか、どんな自分になりたいか、宣言してみましょう」と促します。学生たちはグループで話し合いながら宣言を書き込みました。
「フィリピンで短期留学をしたので今度は長期で行ってみたい」「去年留学をしなかったけれど今年こそ行く」など、たくさんの決意が集まりました。

衝動に従って人生が開かれる

最後に、多田氏から「偶発性と衝動性が人生を切り開く」という話がありました。
アールイーカンパニーも最初からやろうと思っていたわけではなく、たまたまだといいます。
「しかしたまたまのことを努力すると意味のあることに変わってくる」と話します。
「好きなことで生きていくことはすごく素晴らしい。しかしとても大変。好きなことをすることと、好き勝手することは違います。一人ではできません」と話し、「今やりたいことがなくとも大丈夫です。好きなことを一生懸命にやって行ってください」と話しました。
長瀬氏も「私も海外に行くことなんてないと思っていましたが、いまフィジーに住んで仕事している。次々にチャレンジしていくことで人生が開いていきます」と語られました。

学生たちは遠い島の異文化を知ると同時に、自身の人生を考える貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

国際理解とキャリア形成の授業のゲストとして、今年度初めてお迎えしたのが、カラーズ様です。
そして、ディズニー映画の「モアナと海の伝説」と結び付けて学ぼうという、全く新しい試みでした。
当日は、多田様、長瀬様、植林様のお三方が、教室と大阪、そして実際にフィジーからオンラインで
参加して下さいました。
メラネシアンおよびポリネシアン文化の歴史や、映画に登場するシーンのことなど、
フィジーという国の魅力を沢山伝えていただきました。
近い将来、フィジーへの留学に出かけてくれる学生さんも生まれることと思います。
とても楽しいプログラムを構築いただきました多田様、長瀬様、植林様に心から感謝申し上げます。