タグ: 渋谷区

2023年11月24日

大学生の今、考えよう!「グローバルキャリアデザイン」の授業でマイナビ顧問による「なぜ働くのか」を問う講演が行われました。

共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月13日に株式会社マイナビ(以下、マイナビ)顧問の浜田憲尚氏による講演が行われました。就職活動で利用必須のサービスを提供している企業の方のお話に学生たちも興味津々です。就職活動を前にした学生たちは改めて「働くとは何か」「なぜ働くのか」を考えるきっかけとなりました。

「働く」を考えるには今しかない!

浜田氏による講演はこの授業でも恒例となってきつつありますが「学生の皆さんの前で話すことはめったにないので、毎回緊張します」と、前置きをして話し始められました。
コロナ禍も終息しつつある現在、企業の採用意欲は急激に回復しつつあります。それは新卒に限らず、中途採用やアルバイトなどすべての雇用形態に言えること。どの業界も人手不足です。
そんな中、まさに就活を目の前にした学生たちに改めて考え直してもらいたいのが「なぜ働くのか」ということ。今働かなくてはならないのか、どこで、どんな仕事をするのか。
浜田氏は「それらについて深く考えるタイミングとしては今がとてもよい」と話し、「そのタイミングを活かさない手はない」と言います。
なぜなら日本は依然として新卒一括採用が主流のため、たくさんの企業が情報を提供し就活生たちを受け入れようとしているから。改めて働くとは何かを考える講演が始まりました。

企業と人をつなぐ仕事

マイナビは1973年創業。今年で50周年を迎える人材系の広告企業です。
主にインターネットなどのメディアを通して人と企業を繋ぐ事業をメインに行なっています。就活生はもちろん、アルバイトや転職、アスリートなどさまざまな人材と企業とのマッチングを行なっています。
マイナビの企業理念は「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」。ユーザーの人生に寄り添い、日常生活のあらゆる場面で使ってもらい、それによって前向きに人生が進んでいけるように支援することが目的です。

現在は海外展開事業のサポートを行なっている浜田氏ですが、なんと就職活動をせずにマイナビに入社したと言います。
面接の時間を間違えて行った会場で、当時の人事部長に声を掛けられ、とんとん拍子で最終面接まで進みそのまま入社されたそうです。そのため最初は「アルバイト感覚だった」と話します。
ただ「会社は楽しく、仕事も向いていると感じ打ち込めた」ため、こんなに長く勤められたと言います。この経験から、浜田氏は「深刻に考えすぎないこと」をアドバイスしました。
「一生懸命就活しても、一生勤められる企業かは分かりません。入ってからが勝負です。自分に合わないと感じたら、あるいはさらに新しいビジネスに挑戦したいと思ったら転職も考えていい」。
希望する企業が見つからないからと言って悩みすぎないようにと語りました。

たくさんの情報から何を目的に働くかを考える

就職活動を目前にした学生たちは不安も多いもの。ただ、ここで浜田氏はひとつのアンケート結果を見せました。
2023年8月に現4年生に行った「就職活動を漢字一文字で表すと?」の結果は、1位が「楽」。夢や将来が広がると前向きにとらえている学生も多いのです。
ただ2位は「苦」。「苦労したからこそ頑張れるという面もあります」と浜田氏。
「就職先を見つけることが目的になってはいけない。親や周りに言われたからと流されてしまわずに、自分の判断で見つけることも大事です」とアドバイスしました。

ではベストな就職とは何か。
何がベストなのかは人によって異なります。その答えを見つけるために働く目的を考えることが重要です。
「働く目的は人それぞれでいいと思います」、しかし仕事は糧(かて)を得るための手段であることは、誰にとっても共通しています。その「糧」を得る上で自分にとって何が重要か、自分の価値観や何にやりがいを感じるかを掘り下げ、それを企業が持つ理念やビジョンと照らし合わせる中で共感できる部分があるかどうかを確かめることが就職活動の第一歩として重要だと浜田氏はお話されました。

学生にとってベスト就職を実現するために、マイナビでは自己分析をサポートする機能や、インターンシップ情報、そして求人情報を質量の面から充実させています。できるだけ多くの選択肢からベストな1社を選んで頂くために、掲載企業数やその情報の質にこだわってサービス提供をしています。
浜田氏は「マイナビをフルに活用してぜひ悔いのない就職活動就活をしてください」と講義を締めくくりました。

OGからも貴重なアドバイス

実はこの授業を受講したことがきっかけで、2名の本学卒業生がマイナビに入社しています。
この日はOGである中嶋さんと渡辺さんも駆けつけてくれました。

授業の最後には質疑応答の時間が設けられ、浜田氏や先輩たちへたくさんの質問が飛び交いました。
「長く働き続けられたのは何が要因?」という質問に、浜田氏は「自分の成長と会社の成長を重ね合わせられたのが良かった。頑張ったらきちんと報われたのも大きい」と話しました。

先輩たちにも「就職活動前の今、やるべきことを教えてください」という質問が。
渡辺さんは「普段生活の中で目にする会社は本当にほんの一部。セミナーやインターンにたくさん参加してください。私も色んな会社を見たからこそ、いろんな会社に関われるマイナビに入社しました」と回答。
「就活の軸を決めたきっかけは?」という問いには、中嶋さんは「男女差のない仕事をしてしっかり稼ぎたいと思ったので、営業職を選びました。将来は転職することも視野に入れて自分の市場価値がさらに高まる会社を見つけていこうと思った、だからこそ、今の仕事に注力したい」と回答されました。

これから就職活動を行う学生たちにとってより就職活動について身近に、深く考えられるきっかけとなる授業でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代に、採用業務を全面的にサポートいただいたマイナビ様、その時に浜田様と出会ってもう20年の歳月が流れます。こうして毎年、ゲストしてお招き出来ていることに、とても大切なご縁を感じています。

就職活動、採用活動も時代とともに様々な変化があることは肌で感じています。しかしながら、毎年、この時期に浜田様のお話しをお聞きして感じること、それは、「人と人とのご縁」だと思います。一期一会を大切にすることで、きっと素晴らしい会社が見つかり、長く長くお付き合いできる方との出会いが生まれると思います。学生たちの就職活動での健闘を祈り、改めて浜田様に心から感謝申し上げたいと思います。

2023年11月21日

社会がより良くなるためには?「グローバルキャリアデザイン」の授業でILEC理事長による講演が行われました。

10月20日に、3年生対象の共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、公益社団法人教育文化協会(ILEC)理事長の相原康伸氏による講演が行われました。雇用や教育の問題、女性活躍について、日本と世界との関係など幅広い内容について語られました。理想を語ること、対話することの大切さについて学生たちは改めて学ぶ機会となりました。

労働と健康

相原氏はまず、コロナ禍が世の中を変容させたことについて触れました。
「健康について嫌というほど意識する日々でした」と話し、世界保健機構(WHO)が出した健康についての定義を紹介しました。
1つは病気にかからないことだけが健康ではない、ということ。身体だけでなく精神も健康であることは大事なことです。
もう1つは社会的にも健康であること。「社会にも健康があるということは、私も大変新鮮な感覚でした」と相原氏。
では、社会が健康であるとはどういうことかについて考える上で、たくさんのヒントになることを相原氏は話していきました。

相原氏は日本労働組合総連合会(連合)の前事務局長。
連合とは日本の労働組合の中央組織で、政府や各経済団体に対し労働法制や労働環境の改善を訴求する役割を担っています。
企業側は労働組合から協議の申し出があった時は受けなければならないと法律で決まっています。

ただし、組合側の求めが全て達成されるわけではありませんが、徹底した話し合いで、企業・労働組合双方が納得し得る内容で決定していく必要があります。法律から変えなくてはならない内容の場合は、労働者の代表として政府に提言も行う大きな役割をされておりました。

貧困の連鎖を止めるには

現在は国際的な労働や教育に対して様々な国で活動されている相原氏は「皆さんがこれから社会に出る上で必ず素養として身に付けておかなくてはいけないのが、異文化に対する普遍的な敬愛です」と言います。
多様な文化を受け入れ仲間として活動する意識を持っておくべきだと語りました。

ネパールやスリランカなど発展途上国は貧困問題が深刻です。
相原氏は子どもたちが教育とスキルを身に付けることで、その貧困から脱する手助けをされています。
「重要なのは身に付けるだけではなく、雇用されるところまでサポートすること」と相原氏。
雇用されれば税や保険料を払い社会を支える立場になります。貧困の連鎖を止めるには雇用が重要ということ。
「これは日本も無関係ではありません」と、話は日本社会について移っていきました。

女性が社会で活躍するために

現在の日本は人口が減少しています。
高齢化は欧米諸国の4倍速で進み、若い世代は経済的不安から子どもが持てないというのが現状です。
また、ひとり親家庭の貧困率や進学率は、一般家庭と大きな格差があります。特に女性と男性の賃金格差は顕著で、母子家庭と父子家庭の年収は倍近く違いがあります。この男女の格差はどこから出るのでしょうか。
役職や仕事内容、評価だけでは説明できない差が存在してしまっています。「少し格好つけた言い方ですが、私たちの役目は、一人ひとりの可能性を拓くこと」と相原氏は語ります。
こういった問題に対する対策を果断に進め「経済的な困難を取り除くことで可能性を拓くことにもつながる」と話しました。

社会では共働きがメジャーになってきています。
ただ、日本では女性が社会進出することで出生率が下がる、という考えがまだ根深く、女性の権利が向上し労働環境が良くなることに対して誤解があると相原氏は話します。
この誤解を正すには、まず集団のトップは男性であるという思い込みをなくさなくてはなりません。
ここで相原氏は学生たちに中学校の生徒会長の男女比について質問を投げかけました。
7:3の比率で手を挙げる学生が多い中、正解は8:2。「このバイアス(偏見)は難敵です」と、自分たちがこの偏見を変えるという意識を持つことの大切さを話しました。
「どんなライフステージでも当たり前にキャリアを積み上げて行ける社会をつくるために、実践女子大学で学んだ知見は大いに役立つはず。皆さんには大いに期待しています」と力強く仰いました。

今の世界と日本

今、世界ではロシアとウクライナの情勢やパレスチナ紛争などが起こり、国際的に困難な状況にあります。
世の中の秩序が安定してこそ経済を伸ばしていける状況になりますが、今のままでは相当な困難が伴います。「逆を言えば、だからこそ日本の社会が変革し、現実を理想に近づけていく必要がある」と話します。
「青臭い議論、大いに結構」と、理想を語る大切さを伝えました。

そのために大切なのは当事者だけでなく他の人はどうだろうかと考え、よりよい社会に向けた「ソーシャルダイアログ(社会対話)」が重要であると話しました。
相手に意志を伝え相手のことを分かろうとすること。
そのことで喜びが広がり社会につながっていく。「相手の幸せが自分の幸せのように感じられる社会に、というのが私の理想です」と、相原氏は講演を締めくくられました。

理想を持ち行動しよう

授業の最後には学生から質問がありました。
「理想を言うことが大切だという話がありましたが、理想を言うのは難しいことです。理想を発言する方法は?」という問いに、相原氏は「まずは、自分の中に理想があるかどうか。その理想を自分の仕事に落とし込んで、自分に近づけること」と回答されました。学生たちも理想を掲げ、対話することの重要性を再度考える機会となった講演でした。

担当教員からのメッセージ

毎年、高い視座、広い視野の大切さを、シャープな語り口で学生に届けて下さる相原様、今年は、例年に増して広く世界を見つめることの大切さを説いて下さいました。そして、社会が変わらないと嘆くばかりでなく、まずは投票行動など、身近で、誰もが出来るところから行動することの大切さもお話しして下さいました。
「Think Global Act Local」常に世界を意識しつつ行動する事、これからの21世紀を生き抜くためには、その重要度が増していることを強く感じるお話しでした。
毎年貴重なお話しをありがとうございます。心から感謝申し上げます。

2023年10月27日

「国文学マーケティングプロジェクト」の授業で資生堂企業資料館の館長による「本物」の美意識を知る講演が行われました。

9月28日に国文学科「国文学マーケティングプロジェクト」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、資生堂企業資料館の館長・大木敏行氏による特別講義が行われました。講義後には登場した戦前の化粧品現物を見る貴重な機会も。学生たちは株式会社資生堂(以下、資生堂)の歴史を通じ、本物へのこだわりや誠実さ、変革力と自立などの精神を学びました。

歴史にはそれを動かしてきた人のドラマがあります

館長の大木氏は1980年に資生堂に入社されました。深澤教授と同期です。
主に医薬品・ヘルスケア事業部で勤務し、2013年から資生堂企業資料館に携わっています。

資料館は静岡県掛川市にあります。この日も新幹線で久しぶりに上京されての講義となりました。
資料館は1992年に開設。今年創業151年を迎える資生堂の長い歴史の中で生み出された、貴重な商品や宣伝製作物などを一元的に収集・保存し、その一部を一般公開しています。

大木氏は、資生堂を一言で表すならば
「変わらないために変わり続けてきた会社」だと言います。
いつの時代も本物をお客様に届けたいという想いを持ち、変化を恐れず挑戦を続けてきました。
「歴史にはそれを動かしてきた人のドラマがあります。自分自身に置き換えて思いを巡らせながら聞いてください」と大木氏は話を始められました。

今も受け継がれる「本物」へのこだわり

資生堂は1872年に薬局として誕生しました。
1888年には日本初の練り歯磨きを発売。それまで流通していた粉歯磨きの10倍近い価格と非常に高価なものでしたが、大ヒットしました。その当時の最先端の科学に加え、陶器に入った高級感、原料の厳選など、本物志向が人々に受け入れられたのです。品質、パッケージともに最新の技術や材料、美的感覚全てにわたり最高なものを作り上げること。
この「本物」へのこだわりが資生堂のエッセンスとなりました。

初代社長は「ものごとはすべてリッチでなければならない」という哲学を持っていました。リッチなものは心を豊かにする、という美意識に基づき、資生堂は次々と商品を開発します。
1897年発売の化粧水「オイデルミン」は「資生堂の赤い水」と今も親しまれていました。1917年には当時おしろいと言えば白が主流の時代に七色のおしろいを発売。
また香水を芸術品まで高めることを目標に、日本的な美意識の詰まった香水も発売しました。目指したのは「美しい生活文化の創造」です。
「美」でこの世界をよりよくしたい、という想いは今も「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」というミッションとして掲げられています。

世界で活躍する女性像へ

大木氏は1960年代から表れた「反資生堂スタイル」について説明されました。
それまでの資生堂のポスターなどは繊細で優美なイメージの女性が多く採用されていました。そこに1966年キャンペーンディレクターとなった石岡瑛子氏は違和感を覚えます。その時発表したのが太陽のもと小麦色に焼けた肌で健康美を訴求した女性のポスター。従来の静かにたたずむ女性とは真逆な、画期的なデザインでした。

ポスターはたちまち話題となり大人気に。これは単に伝統と反対のことをしたのではなく、時代に応える最善を尽くし自分の感覚を信じ、もがいた結果だと大木氏は言います。
「大切なのはいつの時代も伝統の上に挑戦と革新をしていくこと」、「データに基づく発想はもちろん重要ですが、世の中の動きを正確にキャッチし自分の直観力を合わせることが新たなイノベーションを生み出すことにつながる」と話しました。

さらに資生堂を代表する女性として永嶋久子氏が紹介されました。
1962年から、美容部員として世界各国で活躍した人物です。

ハワイのパイナップル畑で働く女性に美容講習会を行い、生まれて初めて肌をお手入れしてもらった現地女性は感動し「あなたから買いたかった」とすぐに商品を買いに来た話など、さまざまなエピソードが紹介されました。
日本人に対し今よりも偏見や差別が大きかった時代に、「肌に触れ、心に触れる」を信条に国や文化の違いを越えてお客様に向き合い続けた姿勢は、まさに資生堂の美意識を体現された人でした。

目の前のことを自分事として真摯に対応する

「資生堂は、変わらないために、時代や社会に合わせ様々な変化に挑んできた歴史があります」と大木氏。「そしてそれは皆さんにも言えることです」と語りました。
いつも真摯に行動し、現状に満足することなく失敗を恐れずチャレンジする精神。
「大事なことはやりっぱなしにせず、責任を持ち自分事として捉えることです」と話しました。

講演の終わりには、資料館からお持ちいただいた貴重な品々を間近で見る機会があり、ガラス瓶や陶器の繊細なデザインに、学生たちも見入っていました。

授業の最後に学生たちが一人ずつ感想を述べました。
「七色のおしろいが印象的で、当時から個人の悩みに向き合っていたんだなと感じました」と商品へのこだわりを感じた学生や、「企業として利益だけでなく社会に寄り添う理念に触れ、自分もそのような信念を持って働きたいと思った」と美意識に共感した学生も。

特に永嶋氏のエピソードは多くの学生の印象に残ったようでした。
「永嶋さんの目の前の人に真剣に向き合う姿に感動しました」というものや
「今より外国で女性が働くことが難しい時代の、貴重なお話を聞けてよかった」といった感想がありました。
資生堂のカウンターで化粧品を買ったことのある学生は「いつも美容部員さんの対応が気持ち良く、その根本が分かった」と話しました。

大木氏も「永嶋さんの話に伝わるものがあったようで良かった。最後は人間力が社会を変えるんです」と話され、
最後は学生たちとともに笑顔で写真撮影に臨まれました。

担当教員からのメッセージ

資生堂の大木さんには、この授業が始まって以来、毎年、ご講演をいただいています。大木さんとは、会社時代の同期であり、大変ありがたいご縁をいただいています。その間、資生堂は150周年を迎えましたが、大木さんはまさに生き字引と言える社員であり、毎年、素晴らしいお話しをいただいています。日本文化や、言葉など、一つ一つにこだわりを持つ資生堂ならではのエピソードも沢山ご披露いただきました。この場を借りて心から感謝申し上げます。

2023年10月24日

問いを立てる力を養おう!高校生を対象にした探究学習サポートイベント「ナレッジ・スクランブル」が開催されました。

8月9日に高校生向け探究学習サポートイベント「ナレッジ・スクランブル」が開催されました。株式会社トモノカイ(以下、トモノカイ)のサポートを得て大学での学び方のヒントを伝えるワークショップや、講義形式の学部セッションが行われました。さらには日本航空株式会社(JAL)による特別コラボセッションも。高校生たちは学びの先に自分のやりたいことや関心ごとを結び付け、「問いを立てる」主体的な学習法を体験しました。

「どこ」に着目して「どのように」見る?

最初はトモノカイによるスタートワークショップから。「高校までの学びは答えのあるものでしたが、大学からは問いを作ることが重要になってくる。今回は問いを作る練習をしてみましょう」と始まりました。高校生たちは数人のグループに分かれ緊張した面持ち。本学学生も各グループに2名ほどが付き、サポートします。

大学の学部は自分が関心をもっている事柄の中の問題に対して「どこ」に着目して「どのように」見るかが大きな違いです。例えばゴミ問題を例にしてもゴミそのもの、収集する人、収集車のCO2排出など、何に着目するかで変わります。また、それを科学的に見る、文学的に研究するなどどのように分析するかで全く違った切り口での見方になります。自分なりにどういう見方をしたいかを知ることが、学部を選ぶときのヒントです。高校生たちは、さっそく問いを広げる練習ワークに挑戦しました。

国際学部セッション:AIを活用し英語学習を深めよう

ここからは希望の学部ごとに分かれ、それぞれ学部と企業の講義を体験します。

来年新設される国際学部からは三田薫教授が登壇し、英語学習にAIを取り入れることを提案しました。話題の文章生成AIであるChatGPTを実際に利用しながら講義は行われました。受験勉強としても必須である英語学習ですが「翻訳なら機械のほうが優秀な時代です」と三田教授。それでも英語を学ぶ理由はなにか、と問いかけました。必要なのは専門的な内容を話せて交渉できる英語力だと話します。学習にはインプットが重要と、リーディング量を大幅に増やすことが大切だと伝えました。

そこで活用できるのが生成AIです。自分の興味のあるテーマを打ち込めば、関連する文章を作成してくれ専門用語や知識も同時に身に付く質の高い教材が出来上がると紹介されました。専門用語だらけで難しいと感じた際は、易しい英文に直すことも可能。一語を切り取ってより詳しく深堀することもできます。

おすすめのテーマはSDGs。世界中の関心事のため、国内外どこでも話せる話題になります。今回は「航空燃料」を例に取って実際に三田教授が生成AIを使っていきました。自分専用のリーディング教材を作成し、音読することで、英語学習の幅や深さがレベルアップすると勧めました。

国際学部の企業セッション:航空会社の環境への取組とは

次はJALによる企業セッションです。JAL産学連携部人材開発グループの塩崎雅子氏による、JALのSDGsへの取組についての紹介がありました。最初に地球温暖化についての説明から。現在地球はCO2をはじめとする温室効果ガスにより、大気から熱が逃げにくい状態になり猛暑日の多発や台風、森林火災など多くの異常気象が起こっています。この問題に航空業界も真剣に取り組んでいるのです。

航空機のCO2排出量は全世界の2%を占めます。JALでは、燃費の良い高性能の機材に更新したり、エンジンの洗浄を定期的にして燃焼効率を高めたり、水の積載量を調節して機体重量を軽くしたりと様々な取り組みを行っています。
そのなかで特に重要なのが「SAF」の活用です。SAFとは持続可能な航空燃料のことで、原料は都市ごみや使用済の食用油、木材、海藻など。従来の燃料では、採掘する際にもCO2を出してしまいます。地上にある原料を使うSAFを活用することでCO2排出の総量を減らすことが目的です。しかしSAFはまだまだ供給量が少なく高価。国産で安定的にSAFを供給できるような体制をつくることを目指しています。2030年までに全体の10%をSAFに置き換える目標をかかげ、ライバル社である全日本空輸株式会社(ANA)とも協力し、共同で研究しています。

「周りを海に囲まれている日本にとって、飛行機は世界を身近に感じるためになくてはならない乗り物です。これからは未来の燃料を使い、人にも環境にも優しい旅の実現を目指します」と塩崎氏は講義を締めくくりました。

人間社会学部セッション:時間軸・空間軸で地域を見て課題を考えよう

人間社会学部からは原田謙教授が登壇し、社会学の視点から考える探究のコツを伝授しました。社会学とは地域をはじめとする社会の変化や課題を探究する学問です。社会を見るための方法の一つ目は時間軸で同じ地域や社会を考えるやり方です。今現在の東京と、50年前の課題は当然違います。もう一つは空間軸で考えること。都心エリアと郊外ではどう違うかを見ます。

ここで原田教授は高校生たちにQRコードを利用したアンケートを実施。「今の東京における地域の課題とはなんでしょうか?」学生たちはゴミのポイ捨て、ホームレス、満員電車、治安、猛暑などさまざまな課題を次々に挙げていきました。

原田教授は現在の課題のひとつとして都心の人口増加を上げました。しかし50年前は地方から来た人に対する住宅不足が問題でした。そのため1970年代には多摩地域など郊外のニュータウン開発が盛んになり、いったん都心人口は減りますが1990年代から再度人口が増え始めました。「この現象をジェントリフィケーション(都心回帰)と言います」と原田教授。時間軸で考えることで都心が常に人口増加しているわけではないことが分かります。

社会学の研究は「自分自身で社会を観察、アンケートやインタビューで調査して一次データを取ることが強み」と原田教授。統計を見る量的調査だけでなく、フィールドワークを通しデータを集める質的調査を行うことで、より自身が探究したい課題に取り組めると話しました。高校生たちは社会学のエッセンスを感じられる講義となりました。

人間社会学部企業セッション:航空会社が行う地域活性化の取組って?

続いてJAL産学連携部人材開発グループの田中優子氏が登壇され、地域活性化のためにJALが行っている取組についてお話しされました。JALは航空運送業で、各地に空港や支店、グループ会社があるため、日本中にネットワークがあります。それらを活かして、なにかJALも地域活性化に貢献できないか、と取組を行っているのです。なぜJALが地域活性化に取り組むかと言えば、背景に「ESG経営」があります。現在企業経営の在り方として重要視されている考えで「皆さんはまだ高校生ですが、今後、就活をされる際、企業の考え方を知るのに役立つと思います」と田中氏は解説しました。

JALグループの取組のひとつに「JALふるさとプロジェクト」があります。その一環として、地域産業を支援し特産物の商品開発やプロモーションを行っています。商品はふるさと納税やJALグループのネットワークを通じて販売し、販路・物流の活性化も促しています。CAが地域に移住し、より地域の課題に寄り添えるJALふるさとアンバサダーという制度も。他にも多くの取組が紹介されました。「地域との交流は以前からありました。繋がりの大切さを感じるプロジェクトです」と田中氏は講演を締めくくりました。

問いを立てることはやりたい仕事の選択につながる

2つのセッションを終えた高校生たちは再度一番最初のグループへ戻り、それぞれの学部や企業のセッションで学んだ視点を、自分が関心のある社会問題に組み合わせて問いを立ててみることを試みました。「どこ」を「どのように」扱うかを考えるということは、自分が何を目指すのか、なぜそう思うのかを考えることにつながり大学での学びや、ひいては企業や仕事の選択にもつながります。

最後にグループ内で発表し合い、それぞれの考えを聞いていた高校生たちは真剣ながらも笑顔を見せつつ、体験学習を楽しんでいました。

2023年9月5日

新しいミュージアムグッズを考えよう!「実践キャリアプランニング」の印刷博物館とのコラボ授業で学生たちが課題発表を行いました。

共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月7日に印刷博物館とのコラボセッションが行われました。新しいミュージアムグッズを考えるという課題の後半6グループの発表です。プレゼンの時間は7分。印刷博物館から石橋氏、式氏、前原氏が見守る中、さまざまな視点から考案したグッズの発表を行いました。

若者向けにカプセルトイを

後半戦のトップバッターはグループ10。
若者をターゲットにカプセルトイで販売するアクリルキーホルダーを提案しました。アクリルアイテムは推し活の影響で需要が高まっているグッズです。
カプセルトイの需要も高いことをデータで示し、1回で1000円以上使う若者も多いと話しました。昔の広告や浮世絵などレトロなデザインの商品は若者にも人気で、外国人も購入するのではと考えました。聖書の細かい意匠を再現できれば印刷博物館の技術の高さも示せて話題性につながると提案しました。

発表後の講評では、
式氏から「プレゼン資料だけでは分からない熱意が伝わり印象的でした」
と感想がありました。

次のグループ3は、グッズから印刷博物館に興味を持ってもらえる商品を考えました。
1つ目は企画展の図録の豆本です。
企画展の図録は一番人気ですが、若者にとって手軽に買える値段ではありません。カプセルトイにして販売することで若者も手軽に購入できるとしました。

2つ目は日傘で、光があたるとホログラムが浮かび上がる技術を使うことを提案しました。企画展のポスターから図柄を採ることで実際に使用されることが宣伝につながるものを考えました。

式氏は
「実現性は少ないかもしれないが、それくらい突飛なアイデアが出てくることを期待していたのでとても面白かったです」
とコメントされました。

自分たちがほしいグッズはどんなもの?

グループ9もカプセルトイで勝負。
学生たちが印刷博物館に行ったとき、手持ちの小さなバッグでも持ち帰れて手頃な金額のお土産がなかったことを指摘し、カプセルトイであれば条件をクリアしているとしました。
プロローグに展示されている「印刷する人」をフィギュアにすることを提案。フィギュアはコレクションとして集めやすく、「何より自分たちが欲しい」と訴えました。

もう1案は運気が上がる活字を活版印刷した「活字守り」で、財布にも入れておけるものを考えました。

前原氏からは
「フィギュアは自分たちでは見慣れてしまっていましたが、売れるのかもと思いました。活字守りはおみくじなどもいいかも」
と、提案に広がりを感じた感想がありました。

グループ5は推し活で使えるステッカーを提案。
うちわサイズとスマホサイズで、自分が使用したいフォントを選べるものを考えました。印刷博物館で推し活に使えるものがあれば話題性があり若者に知ってもらえると話しました。印刷博物館は立地として東京ドームが近いためイベントのある時に使えると宣伝し、スマホケースに入れたりうちわに貼ってライブに使えたりするようにします。

石橋氏は
「推し活を前面に出したというのが面白い視点」
と感想を話しました。

式氏からは
「プレゼン資料だけでは分かりづらかったので、話の内容をサポートするような資料をもう少し作りこんでもらえていたら良かった」
とアドバイスがありました。

プレゼントにもしやすいグッズ

グループ11は買って帰りたいと思ってもらえる商品として、クッキーを提案。
印刷博物館の外見のパッケージのものと印刷機を模したものを考えました。

また印刷博物館でしか買えないものとして、フィギュア型スタンプの案を出しました。手のひらサイズの印刷機などのミニチュアの底がスタンプ式で、インテリアとしても使えるものを例にあげました。どちらもプレゼントしやすく、お土産でもらうことで認知度アップにつながるとしました。

発表後は式氏から
「クッキーはオーソドックスなものだったので、自分たちも当たり前すぎて発想していなかったと気付かされました」
と、

前原氏からも
「スタンプは印刷と親和性があるがオリジナルのものはなかったなと思いました」
と気付きがあった提案と評価されました。

プレゼントにもしやすいグッズ

最後のグループ12は、ビーズアクセサリー&ストラップを考えました。
駿河版銅活字をモチーフにした文字を選べるもので、自分や恋人、推しのイニシャルなどを付けられるとしました。
オンラインでも販売しやすく、一年中身に付けられるため自分用の推し活や、プレゼントにも向いていると伝えました。

前原氏からは
「実際にアクセサリーにするには駿河版銅活字は合うのかなと思いましたが、提案は素敵でした」
と話されました。

社会に出てからも生かせる力を学べるプレゼン

授業の最後には優秀賞の発表があり、印刷博物館賞はグループ9が受賞しました。

石橋氏からは
「今回は全グループのプレゼン能力が高く非常に点数も競っていましたが、グループ9はプレゼンや資料作りも一つ一つ丁寧でした」
と評価されました。

グループ9の学生は「フィギュアができたら買うのでぜひ商品化してください」と嬉しそうにコメントしました。

最後に印刷博物館の皆様から総評をいただきました。

式氏からは
「チームで力を合わせてやり遂げたということで自分たちをねぎらってほしいと思います。また他人のプレゼンテーションを見ることも学びがあるなと自分も勉強になりました。皆さんも他のチームの良かったところも吸収してほしいと思います。いただいた提案は、館内で共有して次に繋げていきたいと思います」
と話されました。

担当教員からのメッセージ

包括連携協定を結ばせていただいたご縁からコラボ講座を実施させていただき今年が2回目となります。一見すると商品開発は比較的取り組みやすいテーマに見えますが、実は大変奥深いものがあります。とりわけ今回はアイデア勝負になることなく、徹底的に「なぜ」を考えて欲しいという印刷博物館様からのご指示もあり、現状分析や、印刷博物館らしさをどう盛り込むかなど、学生たちの白熱した議論が続いていたという印象を受けました。限られた時間の中で、考え抜いて提案するプロセスは、「プロジェクトマネジメント」を学ぶ一歩、学生たちにとっては貴重な経験をさせていただいたと振り返っております。昨年に引き続き、多大なるご支援をいただいた印刷博物館の皆さまに心から感謝申し上げます。

2023年9月5日

新人研修でどんな力を身に付ける?「実践プロジェクトa」でサントリーの新人研修企画を発表するプレゼンテーションが行われました。

1年生対象の「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で、サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)とのコラボ授業が行われました。会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人・社会人に求められるものは何かを考えます。またそれを踏まえ、サントリーの新入社員に対する具体的な研修計画を提案します。中間発表では、ピープル&カルチャー本部の斎藤氏と長政氏、下間氏から厳しい意見もいただきました。各班は議論を深め内容をさらに練り直し、7月14日に最終提案に臨みました。

中間プレゼンでは厳しいフィードバックも

6月末の中間発表では、グローバル力を身に付けるために英語でのプレゼンテーションやスポーツ大会、コミュニケーション能力を養うため商品企画やチームプレゼンなどが提案されていました。その際、斎藤氏から総評として「皆さんがサントリーという企業に接するのは商品と広告だけだと思います。そのため商品企画やプレゼンが案に盛り込まれていたように思います。しかしそれはあらゆる仕事の中のほんの一部です」と話されました。

「企画」を担当する人がいるわけではなく、すべての仕事に「企画」があり、業務改善のフレームワークである「PDCAサイクル」を回す必要があることを語りました。「皆さんの両親や先輩などはどんな仕事をしているのか、身の回りの生の情報を活かしてほしい。頑張ってください」と伝え、最終提案に期待をかけられました。
学生たちはそれぞれいただいたフィードバックを元にさらに検討し、内容を見直していました。

人材育成にはなにが大切?

トップバッターは4班。
中間発表では「スキルではなく個性」としていた内容をさらに深めました。PDCAのフレームワークをシートで導入し、毎日課題を設定。達成できているか、何に取り組むべきかを明確にします。

企画は講座式とフィールドワーク式の2種類を考え、講義形式で社会人としての基礎知識としてのマナーを学びます。フィールドワーク形式では、飲料水を得るための方法を考案するプレゼンテーションを最終地点とし、目標をやり遂げる経験をすることで、社会人に必要な総合的な能力を身に付けられるとしました。

発表後の講評では、下間氏は
「中間プレゼンからブラッシュアップされ、新人は何を身に付けるといいかがよく練られていた」
と評価されました。

人材育成にはなにが大切?

続いての5班は中間発表で
「Wantsからneedsを引き出す力」が大事と発表し、さらに深堀しました。
主体性、想像力、創造力、柔軟性を身に付けることで会社を取り巻く環境に対応できる人材になるとしました。

企画は、サントリーの企業理念を伝える「水育」を中心に考えました。国内・国外での水を育む森の大切さを伝える活動を通し、グローバルな視点を持つ人材を育成するとしました。また、国連によって定められたWorldWaterDay(3月22日)のイベントの企画を考える企画案を提案しました。

下間氏は
「会社に必要な能力が整理されていました。その分なぜその能力を紐づけたのか理由があればさらに良かったです」
と感想を述べられました。

斎藤氏も
「Wantsからneedsを引き出す力に注目したことが良かったですが、これは他の力の総合力でもありますね」
とコメントされました。

新人が身に付けるべきものとは

6班は
中間発表で出したサントリーの理念「グローカル」を深めた研修を考えました。

グローカルとは、地球規模の広い視点と地域規模の深い視点を両立すること。今社会人に求められるのはグローカルな人材として研修を計画しました。期間は2か月半と設定し、はじめはマナー講座を行います。日本にとどまらず世界のマナーを学ぶことで、世界で恥ずかしくない人材に。その後、中国やヨーロッパなど海外のグループ会社へ研修に行き、日本とは異なる環境の中で仕事に取組み、やりぬく力を身に付けます。

発表後は斎藤氏から
「グローカルに注目したのは素晴らしい。ただ、海外に行って具体的に何をして何が身に付くのかをもっと絞り込んでいたら良い発表になったと思います」
と感想をいただきました。

次の3班は
中間発表で指摘されていた「会社愛」の項目は思い切って削除。
AIやIoTを活用できる能力や、コミュニケーション能力が必要と結論づけました。

コミュニケーション能力の中でも対人調和力、意思伝達能力が大切とし、聞く力と伝える力を養う研修を考えました。課題を設定しプレゼンテーションを行うことで、個人で積極的に動きチーム力を高めることにもつながるとしました。それぞれの課題ごとにPDCAサイクルを回し、考えることで自分が何をすべきか、何ができるかを考える主体性を育てるとしました。

斎藤氏からは
「中間発表からかなり考えられていました」
と感嘆の言葉が。

下間氏も
「コミュニケーション能力が深堀して考えられているのが素晴らしかったです。その後の業務につながる研修内容で良かったと思います」
と話されました。

グローバルな人材とは?コミュニケーション能力とは?

2班はコミュニケーション能力を中心に企画。
中間発表で若者が身に付けたい力とした「営業で通用する力」をさらに深堀しました。社会人ではコミュニケーション能力に関係調整力が追加されるとし、リーダーシップが必要と提案。目標を設定しその目標を成し遂げるために行動できる人材が必要としました。

企画は「SUNSUNプロジェクト研修」と名付け、SUNSUNガーデンで花や野菜を育てたり地域住民を来場してもらい社会貢献を学んだりします。
研修を通し、リーダーシップや必要な柔軟性を身に付けるとしました。

下間氏からは
「前回の発表からコミュニケーション能力について深堀されていて良かったです」
と評価がありました。

斎藤氏は
「研修はイベントにせず、地味で地道でいいのでは」
とアイデア先行にならないよう視点をしっかりと持って欲しいとアドバイスされました。

最後の1班は
「グローバルな人材とは」を、中間発表からさらに考えて企画しました。
グローバルな人材とは視野を広く持ち、多様性に対応できる能力がある人と定義付けました。研修で育てたい力を主体性、実行力、多様性を受け入れる力として、自分の目標を立てる大切さを伝える研修を目指します。さらにサントリーが求める人材として、環境に配慮できるということも重視。

「私たちができる社会貢献とは」をテーマにグループでプレゼンテーションをし、社会貢献活動中心の企画を提案しました。

下間氏は
「社会貢献はサントリーも大事にしていることなのでフォーカスされていたのは良かったです」とコメント。その上で「研修から何が身に付くのかが見えづらかった」と指摘されました。

斎藤氏は
「何が必要なのかが中間プレゼン以降、しっかり議論されたことが良く伝わってきました」
と話されました。

時間ぎりぎりまで細かいフィードバックがあり、学生たちにとって社会人に必要なものを考える、特別な授業となりました。

授業の最後には社員の皆様からアイスクリーム券のプレゼントが。
難解な課題の取組をねぎらわれた学生たちからは歓声があがっていました。

担当教員からのメッセージ

実践プロジェクトaは今年で4年目、コロナ禍の2020年を除き、サントリーホールディングス様には毎年ご支援いただいています。大学生なったばかりの1年生が、社会人に求められているものを調べあげ、サントリーホールディングス様の新人研修を考えるというのはかなりハードルの高い課題ではありますが、このお題を提示いただいている大きな理由は、この講座が「1年生に対して大学での学び方を学ぶ」という目的があるからです。言い換えれば、この授業で考え、調べ抜いた社会人に求められることを理解し、これからの大学生活を送ることが、素晴らしいキャリア形成に繋がるからです。今のレベルと社会人に求められるレベルとのギャップを埋めていく事が大学での真の学びなのです。毎年、ご支援いただいているサントリーホールディングス様に心から感謝申し上げます。

2023年8月9日

印刷博物館の魅力を伝えるグッズとは?「実践キャリアプランニング」の印刷博物館とのコラボ授業で学生たちが課題発表を行いました。

共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月30日に印刷博物館とのコラボセッションが行われました。印刷の歴史を伝え、新しい顧客獲得のための新しいミュージアムグッズを考えるという課題に対する提案です。印刷博物館から石橋氏、式氏、前原氏が発表を見届けます。プレゼンの時間は7分です。全12グループ中、この日は前半の6グループがさまざまな視点から考案したグッズの発表を行いました。

若い女性が手に取りやすいものは?

最初の発表はグループ8。
若い女性をターゲットにオタクの間で流行っているグッズであるネームプレートを提案しました。色を選べることで推し活の一つに取り入れやすいことが特徴です。
東京ドームなどの施設に近い立地から、イベントまでの時間つぶしにも利用してもらうことを想定しました。
印刷博物館ならではのデザインやフォントを選べるようにして話題性を持たせました。
発表後の講評では、石橋氏からは「書体を選べるのがいい」と感想があり、式氏は「ネームプレートがどれくらい流行っているのかデータがあればさらに説得力が増した」とアドバイスされました。

続いてのグループ2は、現在販売している商品はお土産としての単価が高く感じると問題点を指摘。
手軽に手に取れる商品として、ステッカー、ハンコケース、お菓子を提案しました。
ハンコケースは、ハンムラビ法典の形がハンコケースに似ているところから発想し、ハンコは印刷にも親和性があるとアピールしました。名入れもできることで、話題性も担保しました。
式氏は「単価の高さや種類の少なさについて分析がしっかりされているんだなと聞いていて分かったので、その点を資料にももっと詳しく載せてもらえたらよかったです。ニッチなものに目を付けたのも面白く感じました」と評されました。

印刷博物館に来ない層にどうアピールする?

グループ1は来場者の中で10代の割合が少ないことに着目。
特に小中学生は電子機器から情報を集めることが当たり前で印刷技術に興味がないと考えました。
そこで若い世代に印刷技術を広められる、夏休みの自由研究キットを提案。
プロローグにあるジオラマを模した立体パズルです。組み立てることで印刷技術も理解でき、研究物として提出できるという商品です。
前原氏は「自由研究は需要がある。夏休みには多くの小学生が来るので着眼点が良いと思いました」と感想を述べました。石橋氏は「10代の中で、中高生に来てもらう需要はあるかもう少し深堀りがあってもよかった」と指摘されました。

グループ7は、来館者に女性が多いことからイニシャルアクセサリーを考案。
聖書で使われている飾り文字をモチーフにして、自分でパーツを選べるネックレスやイヤリングを提案しました。
印刷博物館にはまだアクセサリー商品はないので需要はあるとしました。
また、鍵付き聖書のデザインを模した手帳型スマホケースや、ページごとに異なる紙を使用した紙図鑑を提案。
オンラインでも販売しやすく実用的なものをメインに考えました。
石橋氏は「商品はどういうものなのか画像やイラストで伝えてもらい、分かりやすかったです。なぜこの商品がいいのかという裏付けがあるとさらに良かった」と感想を述べました。

具体的にどう販売すると効果的?

グループ4はガチャガチャで販売するエコバッグを提案。
現在印刷博物館でもエコバッグは販売していますが、少々高価です。
デザインも若者が惹かれるものがないと指摘しました。ターゲットは若者や外国人とし、実用的で安価なものであれば若者も購入しやすいと、ガチャガチャ式で販売することを提案しました。
講評では式氏からは「選んだ柄の理由を知りたかったなと思いましたが、価格設定やデザイン図などが細かく詰められ、具体的なイメージが湧くプレゼンで完成度が高かったです」と感嘆の言葉がありました。

最後のグループ6はZ世代に行ったアンケートで、ステッカーをスマホケースに挟む人が8割という結果をもとに、「活版いんさステッカー」を考案。
話題作りとして人気コンテンツや企業とコラボすることを提案しました。
例えばディズニーや有名映画など、限定のデザインのものを販売し、裏に印刷博物館の説明を記載します。ただデメリットとして、売れたとしても一過性になる可能性があることにも言及。
しかし販売後の展望としてSNSで拡散され印刷博物館の認知度アップになると結論付けました。
石橋氏は「商品名が具体的。デメリットも見せてくれ、販売後の展望も見せてくれたのは他のグループにはなかった視点でした」と感嘆されました。前原氏も「資料が可愛らしく、細かいところまで気が配られていました」と話しました。

分析力、プレゼン力にも優れたチームは?

一週目の最優秀賞はグループ6が受賞。
印刷博物館の皆様から記念品が贈呈されました。
学生たちは「みんなで考えて作ったものを評価してもらえて嬉しいです」と感想を話しました。

最後に式氏が「評価項目は分析力、提案、印刷博物館としてのミッション達成度、スライド、プレゼン力の5つでした。グループ4もかなり拮抗して悩んだのですが、持ち時間いっぱい使いきりアピールしてくれたグループ6を最優秀としました」と授賞理由を話されました。

来週は残りのグループが発表をします。
資料はすでに提出済みですが、今回のプレゼンでいろいろな提案や視点があることに気付いた他のグループの学生たちは、さらに良いものへブラッシュアップして発表に臨みます。

担当教員からのメッセージ

印刷博物館さまにご支援いただくのは昨年に続いて2回目となります。昨年は、来場者を増やすための集客方法が課題でしたが、今年は、具体的なミュージアムグッズの企画というお題をいただきました。しかも、印刷博物館様からは、単なるアイデアフラッシュでは要件を満たさない、なぜなのかをしっかりと分析して欲しいというリクエストがあり、この部分について、学生たちは最も頭を悩ませていました。本日は、前半の6グループの提案でしたが、限られた時間の中て、その「なぜ」について議論したことが伝わってきました。来週も期待したいと思います。

2023年8月8日

ディズニーに若者がたくさん行くには?「キャリアデザイン」の授業で学生たちが東京ディズニーランドのスペシャルイベントをプレゼンしました。

3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月4日に株式会社オリエンタルランドの横山政司氏をお迎えし、コラボセッションが行われました。この日は閑散期(冬季・春季)の東京ディズニーランドへ若者たちに来場してもらえる有効なイベントを考える課題のプレゼンテーション。各グループ1ヵ月かけて考えた、想いのこもった提案が発表されました。

冬は温かみを感じられるイベントを

発表はグループ4から始まりました。
冬季は冬の舞踏会をイメージし、若い女性に人気が高いプリンセスキャラクターをモチーフにティアラや王冠のついたカチューシャも販売。春季は来場者も体を動かせるダンスイベントを企画し、梅雨の時期は雨の日限定イベントを提案しました。
横山氏からは「プレゼン資料の作り方や見せ方が上手」と評価がありました。

次のグループ6は寒い冬季に愛情や温かみを感じさせる晩餐会をテーマに、レストラン内でプロジェクションマッピングやキャラクターと会える体験型イベントを企画しました。
春季は写真映えや自然に興味がある若者をターゲットに、キャラクターがフラワートピアリーになるものを考えました。

グループ7は、若者は経済的に余裕がないと、パークに行かない理由を分析し、価値に見合った満足度や新規性が大切と主張しました。
そこで冬季は音楽フェスをモチーフに、ダンサーやキャラクターと一緒に盛り上がれるイベントを考案。派手なキャッスルショーを行い、サイリウムやタオルなどのフェスならではのグッズも販売します。春季は桜まつりで日本の春を押し出しました。
「冒頭の現状分析が良かった」と横山氏も評価されました。

春は出会いの季節!多様性?コスプレも?

グループ5は冬季にバレンタインとホワイトデーをモチーフに、プリンセス&プリンスたちによるイベントを企画しました。
期間中は割引のペアチケットを販売したり、昼と夜でパレードを2部構成としたり、ストーリー性のある内容を提案しました。春季は、2026年にはよりグローバル化が進むことから多様性をテーマにしました。

グループ8は冬季に期間限定で、キャラクターとのグリーティングイベントを提案。春季は映画「スターウォーズ」シリーズをモチーフに男性をターゲットにしたイベントを考えました。
春は出会いの季節。映画の名台詞をもじり「新たな出会いに幸運を」をコンセプトとしました。人型ロボットを導入したリアルショーを行うことも提案しました。
横山氏も「春の季節と映画のコンセプトを結び付けた切り口は面白い」と感想を仰っていました。

次のグループ2は、冬季は初雪のお祝いをテーマに、過去イベントの人気キャラクターの復活を提案。
春季には、参加型の体験にお金を使う若者をターゲットに、秋で人気なコスプレを導入することを提案しました。コスプレできるキャラを限定し、秋季イベントとの差別化を図ります。
横山氏は「若者がパークに戻ってこない一番の理由が分かりにくいので、このイベントで本当に来てくれるかの考察がもう少し欲しかったです」と講評されました。

どうしたら若者が東京ディズニーランドに来たくなる?

次のグループ1は、若者は東京ディズニーランドよりも大人の雰囲気が味わえる東京ディズニーシーを好むという分析から、冬季に悪役たちを中心にした大人向けイベントを考えました。
春季はプリンセスキャラクターたちによるキャッスルショーを開催し、温かみのあるものを提案しました。

グループ9のキーワードは「なつかしさ」と「お一人さま」。
ヤングアダルト層は懐かしいものに「エモさ」を感じるという観点から、冬季は以前あったアトラクション「シンデレラ城のミステリーツアー」をモチーフにしたイベントを開催。春季は祝祭をテーマに一人でもパーク内をゆっくり回って楽しめるイベントを提案しました。また、冬季と春季のイベントはストーリーとしてつながっていて、どちらのイベントにも来ることで満足感の高いものになるものを提案しました。
「終了したアトラクションをモチーフにする着眼点や、仮説の置き方が面白い」と横山氏も感想を述べられました。

最後のグループ3は、冬季は猫や犬のディズニーキャラクターを集めたイベントを提案。
若者に人気の高い動物カフェから発想しました。春季は運動会をテーマに、応援合戦で一体感を味わえるイベントを考えました。お弁当箱型のフードの提供やハチマキのグッズも考案。コロナ禍があけた2026年には体を動かす需要が高まると考えての提案です。

「木を見て森を見ず」にならずに全体を見よう

すべての発表が終わり、最後に横山氏の総評がありました。
「皆さんにお願いしたことは、我々が考えても頭を悩ませる本当に難しいこと」と学生たちをねぎらいました。
ただ、今回の提案の多くが、アンケート分析と提案がうまく結びついていないことを指摘。
「一個一個の分析や提案は良いが、全体を見ることが出来ていなかった」とアンケート結果から分析、提案まで全部が一本でつながっていることを確認する大事さを伝えました。
その上で「良い気付きがたくさんありました」と学生たちのアイデアを褒め、「もしかしたらこれからのイベントに皆さんの案が使われるかも」と話されました。

最優秀賞は「なつかしさ」と「お一人さま」をキーワードにしたグループ9、優秀賞はグループ5が選ばれました。
受賞したグループには東京ディズニーランドのグッズが贈呈され、学生たちから歓声も上がり、和やかに写真撮影が行われました。

担当教員からのメッセージ

オリエンタルランドの横山様は、毎年、様々な切り口から、学生の関心が高いと思われるテーマをお題として提示いただいています。今回は、シーズンイベントの企画提案という壮大なテーマで、日頃から東京ディズニーリゾートをよく訪れている学生たちにとっては、身近でありながら、とても難しいテーマであったと振り返っています。アイデアは沢山浮かぶものの、オリエンタルランドの横山様が求められていることは、背景や環境などのしっかりとした分析であり、実際の仕事でも最も大切な「問いに対する理解度」を求めておられました。
授業時間では、事前の提案に対して、1グループ毎にフィードバックをいただけるなど、横山様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年8月8日

生き方を輝かせる考え方とは?「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員がポジティブ思考の大切さを話されました。

共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月6日に株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された関根近子氏をお迎えし講演が行われました。進行は担当グループの学生たちが行います。関根氏は自身の経験とともにポジティブシンキングの大切さを伝えられました。

美しさは見た目だけじゃない

進行担当の学生から紹介を受け、笑顔で「本日は大変楽しみにしてまいりました」とあいさつをされた関根氏。
背筋を伸ばし、ピンヒールを履いて話す姿は学生たちの目にも、美しく感じられたようです。姿勢や見た目の美しさを保つことも関根氏の信念と話します。
「いつか関根さんのようになりたいと思われるように、このような信念も大事だと思います」と講演を始められました。

関根氏が入社した当時から、資生堂は女性社員の比率が高い会社でしたが「バリバリの男性社会だった」と言います。
少ない男性たちが会社の方針を決めていたのです。関根氏が大阪の販売会社の支店長になった際には「女には務まらない」と言われ、役員になった時も女性の数はたった2人でした。
ただ、女性が多い会社だったためにその後役員登用の道が開けたとも言います。
現在は政府も女性役員3割以上とするよう後押しをしており、だんだんと女性の意見は通りやすくなっています。
「一つの基準としてその会社の女性役員の比率を見ておくといい」とアドバイスされました。

自分の強みを生かしたことで仕事に喜びを見出した

関根氏は学生時代、教師になりたいと大学進学を考えていた矢先、家族が事故に遭い就職を選択せざるを得ない状況になりました。生活のために仕事を探し、運よく入社したのが資生堂だったと言います。
最初は美容部員として接客する仕事でしたが、ある日プロモーションチームに配置換えに。仕事内容は、ノルマを与えられ推奨品を売ること。
ノルマはきつく、高い商品を売りつけるだけの仕事に気持ちがなえてしまった関根氏は、先輩に辞めたいと相談に行きました。

そこで言われたのは「あなたの強みは何?」でした。
「お客様の持っていないあなたの強みを、お客様にお届けするのが役目」と言われ、関根氏は一念発起。
美容知識を駆使して、一人ひとりに合わせたアプローチ方法に変更しました。すると、後日お客様が来店して関根氏を指名してくれたり、友人を連れてきてくれたりするように。さらにはお客様に「ありがとう」と言われるようになりました。
関根氏は「今までは商品を買ってくれたお客様に言う言葉だと思っていたのが、お客様から言われたことで、仕事に喜びを見出しました」と語ります。
そのときに「日本一の美容部員になる」というキャリアビジョンを、初めて描いたと言います。
環境は変わらずとも、考え方が変わったことでやりがいを見出すことができた経験だと語りました。

仕事もプライベートも輝くためのウェルビーイング

輝くための必要な生き方として、関根氏は「ウェルビーイング」を紹介しました。
身体的にも精神的にも良好な状態であることを示すウェルビーイング。ハピネスも幸せですが、ウェルビーイングは多面的な幸せを指します。

ウェルビーイングになるためにはポジティブなマインドがベースになります。
ただ、「ネガティブは否定しません」と関根氏。
「ネガティブだからこそ、ポジティブな考え方が必要なんです」と話します。そして「皆さん、自分を好きですか?」と問いかけました。
自分が一生離れられないのは、自分です。「自分のことを嫌いではとてもつらい。自分を好きになることで心底他人のことを愛せるし、喜びを感じることができます」と語りました。

自分の長所を言えますか?

ポジティブマインドのコツとして、関根氏は「毎日少しずつラッキーなこと、喜ぶことを見つけること」だと言います。
楽天家になれということではなく、「なにか問題が起こっても希望や解決策を探そうとする思考が本当のポジティブ思考」と話しました。

さらに関根氏は「自分の長所を10個書けますか」と問いかけます。
日本人は長所を言うことを傲慢だと思う傾向がありますが、「国際社会では負けますよ」と関根氏は断言。
自分を堂々とアピールすることが、国際社会では当たり前です。自分の意見を持ち発言する大切さを伝えました。
「私も役員になったとき、美容部員あがりと言われた。でも私は美容部員の経験は強みと思っています」と話し、誰かと比べるのではなく自分の経験を積み重ねることの大切さを伝えました。

ポジティブ思考でいこう

講演後、学生たちはグループごとに話し合い、質疑応答の時間に移りました。
「忙しい中どのように優先順位や時間を作っていますか」という質問には、「自分のなかで軸を作り、重要度や優先度を決めること。緩めるときは緩めることで、緊張感のある時間もできる。メリハリのある環境に身を置くことが大事です」と回答されました。
「海外で戦える人材として必要なマインドはなんですか」という問いには、「英語ができることが第一ではありません。自分の意見を考え、はっきり言えることが大事です」と回答されました。

最後に進行担当の学生から「これから社会に出て生きていく上で指針になる講演でした。まずはチャレンジし、失敗してもそこから学び成長し続けることが大切だと感じました」とお礼の言葉を述べました。
学生たちにとって、仕事もプライベートも輝いて生きるためのヒントを与えられた講演でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代から色々とご指導いただいた関根さん、いつお会いしても凛とされた佇まいには、憧れを感じています。企業時代には、お互いに厳しかった思い出も沢山あります。しかし、関根さんとお会いすると、どんな時も、決して後ろを向かず、ポジティブに前に進むことの大切さを思い出します。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年8月8日

これからのオリンピックの形は?「国際理解とキャリア形成」の授業でオリンピックの将来についてのプレゼンテーションが行われました。

共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で7月11日にスポーツニッポン新聞社とのコラボ授業が行われました。「実践女子大生が考えるこれからのオリンピックの形」について学生たちがプレゼンテーションを行いました。授業の様子は7月12日のスポニチに記事として掲載され、貴重な発信の機会となりました。

メタバースも使って全員参加

最初の発表はグループ3から。
日本では開会式は視聴率がとても高い反面、各競技に対する視聴率は低く、関心がないことに着目。改善に向け、学生を対象にオリンピック関連の授業を実施することを提案しました。歴史や選手の講演を行ったりユニファイドスポーツを知ってもらうきっかけを増やしたりすることを考えました。また、ジェンダー面の解決策として、ユニフォームのデザイン案を選手自身に投票してもらうなども考案しました。

発表後には藤山氏から講評をいただきました。
「全員で参加するという姿勢を感じました。なぜ若者は競技を見ないのか、もう少し深堀してもらえたら更に良かったです」と話されました。

次のグループ1は「全世界に臨場感を届けたい!」をテーマに、メタバース空間を利用した観客参加を提案しました。VR技術を活用し、実際に競技を体験・参加できる場を作ります。エキシビションとして実際にゲームのようにメタバース空間で対戦できることで、親近感がわくシステムを考えました。

藤山氏からも「これからの時代メタバースなどの技術革新は避けては通れないでしょう」と同意のコメントをいただきました。ただ「IOCには厳しい肖像権がある。IOCも時代に合わせ変わって行かなくてはならない」と問題提起も重ねられました。

若者の意見を取り入れるには?

グループ6はオリンピックを現代だけでなく後世に伝えるために「若者に身近であり続ける」ことを目標としました。組織委員会の高齢化を問題点とし、もっと若者の意見を入りやすくするべきと指摘しました。また、スポーツ観戦は時間がかかりタイムパフォーマンスが悪いと若者から嫌煙されている点にも注目。オンラインチケットの販売で、アーカイブ配信をする方法などを提案しました。

藤山氏も「取材していても高齢化は感じていた。オリンピックの組織自体も若返らないと。また、スポーツが生き返るためにも時間の問題は大切だと感じました」と感想を述べられました。

グループ2は多様性に注目。
ユニフォームに自由度がないことを課題に挙げました。ジェンダーや宗教性の違いに配慮するため、それぞれの選手が着たい形状を選択できるようにしたり、選手の意見を取り入れたデザインにしたりすることを提案。また、水泳などの競技では盗撮等の問題があることも挙げ、安心して競技に集中できるユニフォームなどの採用の必要性を伝えました。開会式も競技別の選手入場とするなど、選手が伸び伸びとできる環境へ変わることの大切さを訴えました。

「多様性とスポーツとしての統一性をどう保つかの問題は難しい」と藤山氏。「盗撮の問題も水泳だけでなく深刻。取り上げてもらって良かった」と着眼点の良さを褒められました。

サスティナブルなオリンピックの形

グループ4は「全人類参加型のオリンピック」を掲げました。
ジェンダーに関係ない競技の採用を提案しました。例えばダンスやチアリーディング、アカペラなど、表現力を競うものをあげました。「オリンピックに合わないと思われるかもしれませんが、これくらい大胆に体格差や性別に関係ないものを入れるべき」と主張。その他にもSNSの活用や映画館等でのライブビューイングの活用などを提案しました。

藤山氏は「見出しが良いですね」と感嘆。「全員が納得する条件は難しい。男女の区別がない競技は必要」と共感されました。

最後のグループ5は「持続可能なオリンピック」をテーマにしました。
施設建設時の違法伐採や、終了後の施設の廃墟化、グッズの大量在庫の問題に焦点を当てました。これらの解決策として分散開催を提案しました。アジア・ヨーロッパなどエリア開催や、メタバースを活用することを提案し、地域振興や環境保全と、経済の両立を目指します。

「これからのオリンピックでは分散開催は確実に行われます」と藤山氏。「いままで一つの都市でしか開催できなかったのですが、2019年に改訂されました。少しずつですがオリンピックも変わっています」と話されました。

若者の視点でオリンピックを考える

最後に藤山氏から総評をいただきました。
「ひとつのテーマにも、いろんな切り口がありどれも内容が濃くてびっくりしました。このままオリンピックの委員会に持っていって、若者の意見として伝えても通じるものでした。メタバースやSNSなどはこれからの時代、確実に使われるものだと感じ、オリンピックやオリンピック委員会も変わらないといけないと改めて気付きました」と学生たちの頑張りをねぎらいました。

この授業の模様は、翌日のスポニチに実際に記事として掲載されました。
学生たちにとって貴重な発信の機会となりました。

担当教員からのメッセージ

「東京2020」の開幕前からスポーツニッポン新聞社様にご支援をいただき、6年の歳月が流れたことになります。その間には、開催の延期、無観客開催、そして大会後の様々な問題など、日本社会を大きく揺るがすイベントになりました。一方、実践女子大学では、10,000人を超える学生が、様々な形で東京2020に関わり、きっと彼女たち一人ひとりの心の中には、様々な感情とともに深く刻まれたことと思います。早いもので、来年はパリ五輪が開催されます。平和の祭典として歴史が続くことを祈りたいと思います。この間、様々な形でご支援いただいたスポーツニッポン新聞社の皆様に、改めて感謝申し上げます。