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2025年7月31日

相手を思いやって「やさしい日本語」を使ってみよう!「日本語教育入門b」でJR東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別授業が行われました。 

6月24日(火)に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、JR東日本との「やさしい日本語」第2回特別コラボ授業が行われました。学生たちはマナーについてポスターや放送文案を作成し発表しました。また、ロールプレイングをとおして、相手を思いやって伝える姿勢について学びました。

音だけで伝えるのは難しい

前回に引き続き、我孫子乗務ユニットから車掌の皆さんが登壇されました。
平山秀人氏と伊藤暉氏に、車掌と取手駅で改札業務を兼務している山田直人氏が加わり、和気あいあいとテンポよく楽しい授業を行ってくださいました。

まずは前回の授業の振り返り。
電車の車内放送や改札で、外国人のお客さまに伝えるため、やさしい日本語を使う工夫を学んだ感想として学生からは「音(放送)だけで伝える難しさを感じた」「見た目で英語を使おうと判断しないこと」などが寄せられました。
伊藤氏は「人によって価値観が違うということに気付いてもらえた。今日は特にこのことを中心に進めていきます」と話し、授業が始まりました。

ピクトグラムを使って分かりやすく

さっそく、前回出された課題の発表から。
課題は「鉄道マナーを在留外国人にどう伝えるか?」ポスターと、車内放送文を考えるというものでした。
学生たちは5つの班に分かれ、約1か月の期間でスライドとポスターを作成し、それぞれの班が発表を行いました。

 最初の班は、荷物を前に抱えて乗るマナーについて。
ポスターはピクトグラムを使って分かりやすくしています。文も「混雑時」などの言葉は理解してもらえない可能性を考え、あえて省き「荷物は自分の前に!」と、シンプルに仕上げました。
平山氏からは「このまま車内に貼ってもいいくらいの完成度」と感嘆の声が。
伊藤氏も「外国人だけでなく日本人にも分かりやすいですね」と感心されました。

 2番目の班は、駅構内では右側通行のルールについて。
ポスターはこちらの班もピクトグラムを使った、一目で分かるデザインとし、英語でも注意を促します。放送文は「階段や廊下は右側を歩いて下さい」と一文で分かるものを目指しました。
山田氏は「ピクトグラムは外国人のお客さまに分かりやすい。参考にしたいと思います。」と話しました。

一目でマナーを伝えるには?

 3番目の班は、席に荷物を置いてしまうお客さま向けに注意を促すポスターを考案しました。
「かばんを座るところにおかないでください」と文章で示し、放送文では「席は一人ひとつです」と伝えます。
伊藤氏は「普通車でもグリーン車では空いている席をつい使ってしまう外国人のお客さまが多いので、ぜひ使いたいと思いました。」とコメントされました。

 4番目の班は、外国と日本で違うルールを一目で分かりやすく。
エスカレーターは左に立つ、走らないなどをイラストで表現しました。これらのマナーは実際に学生が「駅を利用している際に感じたことをもとに選んだ」と話しました。

 最後の班は、荷物のマナーについて。
マナー違反であるイラストを載せて、赤字で注意喚起しました。注意文には漢字を使わず、分かりやすく伝わることを意識しました。
平山氏も「漢字を使わないというのはとてもいい」と評価されました。

全部の発表が終わると、伊藤氏から総評をいただきました。
「すごいなと思ったのが、自分の経験が作品に反映されていること。私も秋葉原駅での改札業務がきっかけでやさしい日本語について考えるようになりました。今後も経験を大切にしながら社会に役立てていってほしい」と話されました。

相手に合わせてコミュニケーションを取ろう

続いて株式会社JR東日本サービスクリエーションの藤根美咲氏が登壇され、グリーン車での案内について話されました。
近年グリーン車は外国人も多く利用しており、やさしい日本語が必要な場面も多々あります。
そこで、学生たちはグリーン車で使われる案内をやさしい日本語に言い換えることができるか挑戦しました。

「お手持ちの特急券ではグリーン車はご利用いただけません」という文言を、ある班は「このチケットではこの電車に乗れません」と言い換えました。
藤根氏は「とても詳しくて分かりやすい。私たちが実際使っているものに近いです」とコメントされました。

グリーンアテンダントは直接お客さまと会話します。やさしい話し方のポイントは、分かりやすい説明や落ち着いた態度などです。
特に大事なのは、積極的な態度と相手に合わせた説明だといいます。
「外国人のお客さまは、熱心に自分に話されていることを重視します。思いやりをもってコミュニケーションを取れば、伝わりやすいですよ。」と話されました。

ロールプレイングで「やさしい日本語」にチャレンジ!

最後は「やさしい日本語ロールプレイング」。
平山氏たちが迷惑行為をしている乗客を演じ、それをやさしい日本語で注意してみるというものです。車掌用の手袋がプレゼントされ学生たちは歓声を上げました。帽子もお借りして車掌になりきります。

最初は車内で外国人のお客さまが大声で話しているシチュエーション。
学生が「車内では静かにしてください。」と話しかけても、「なんで?」と分からない様子。学生たちは試行錯誤しながら「周りの人が困っているので、静かに話してください」と言い直していました。
伊藤氏は「文化が違うとなぜ、静かにしないといけないのか分からない。理由も伝えることが大事ですね」と解説されました。

次の班は渋谷駅で乗り換えに迷っている外国人のお客さまを想定します。
どこに行きたいのか、乗り換えの改札はどこかなど伝えることが複雑で、学生たちは相談し合いながら頑張って伝えていました。
終了後、山田氏は「改札では複雑なことを聞かれることが多く非常に大変。翻訳アプリだけに頼らず、相手の様子を見ることも大事ですね」と解説されました。

平山氏は、最後に「やさしい日本語は伝えるためのひとつの手段です。」と話します。「皆さんが、授業で習っているとおり、やさしい日本語の使い方はとても上手。一方で、それだけでは難しいこともあります。やさしい日本語は選択肢のひとつとして、伝わる方法を工夫していってほしいと思います」と語り、和やかに授業は終了しました。

担当教員からのメッセージ

第1回に引き続き、第2回の連携授業も活気あふれる有意義な100分間となりました。

学生たちが発表した課題に対し、貴社の皆様から一つひとつ丁寧にフィードバックを賜り、誠にありがとうございました。実務の最前線でご活躍されている皆様からのご指導は、学生にとって大変貴重な学びの機会となり、教員一同、心より感謝しております。

特に、実際の現場を想定した臨場感あふれるロールプレイングでは、学生たちが協働しながら真剣に課題へ取り組む姿に、この1ヶ月間での著しい成長を感じることができました。

授業後、学生からは次のような感想が寄せられています。 「『やさしい日本語』で対応する際、相手を尊重しつつ自分の要望を伝えること、そして相手の『なぜ?』『どうやって?』という疑問を的確に汲み取ることの難しさと重要性を学びました。」 「貴社スタッフの方々の模範ロールプレイングを拝見し、相手の文化背景を理解した上で疑問に答えることが、多文化共生社会においていかに大切であるかを実感しました。」

この2回の連携授業を経て、学生たちの学ぶ姿勢にも顕著な変化が見られました。一人ひとりが深く思考して主体的に発言するようになり、仲間と協働してより良い答えを導き出す場面が増えました。実践的な体験型学習がもたらす教育効果の大きさを、改めて実感する貴重な機会となりました。

末筆ではございますが、本連携授業の実施にあたり多大なるご尽力を賜りました東日本旅客鉄道株式会社ならびにJR東日本サービスクリエーション 東京グリーンアテンダントセンターの皆様に、心より御礼申し上げます。

2025年7月22日

子どものスタートラインは同じじゃない?「女性とキャリア形成」の授業で認定NPO法人「カタリバ」代表の今村久美氏が特別講義を行いました。 

7月3日に女性とキャリア形成(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)「カタリバ」代表理事の今村久美氏による特別講義が行われました。今村氏は大学生のときに団体を設立しています。その後、なぜNPO法人という形を選んだのか、いま子どもたちにどんな支援が必要なのかを、ご自身の体験を交えて詳しく話してくださいました。

お互いに「語り合う」ことで自分を知る

まずはアイスブレイク。
今村氏は「この授業のクラスメイト同士について詳しく知っていますか?」と尋ねました。
どういう経緯でどんな選択をして本学に進学することを選んだのか、今後どんな人生を歩んでいきたいと思っているのか、3~5人のグループに分かれディスカッションを行いました。

いつも授業で顔を合わせていてもなかなか深い話はしないもの。改めてお互いを知る機会になりました。
「私のNPO法人の名前はカタリバと言います」と今村氏。
「学校生活って、教えられることはたくさんあるけどお互いのことを話すことは意外とない」と言い、「自分の現在地を知るためには、語り合うことが大事じゃないかと思って」、団体にこの名をつけたと語りました。

スタートラインの位置は公平じゃない?

今村氏は続いて学生たちの家庭環境について質問を投げました。
「自分の条件に当てはまる数を数えていってください」と8つの項目を伝えます。
離婚していない家庭である、携帯電話を止められる心配をしたことがない、家計を助けなくてはという心配をしたことがない、大学の学費の心配をしなくてもいい……。
6つ以上当てはまった人がクラスの多数を占めています。

ここで今村氏は、同じ質問を行ったアメリカの子どもたちの動画を見せました。条件に当てはまったら先に進めるルールで、どんどん進んでいく子も、一歩も進めない子もいます。
動画を見終わったあと、今村氏は「自分の回答も含め、この動画を見てどう思ったかをまたグループで話し合ってみてください」と再度ディスカッションを促しました。
ディスカッションのあと、学生たちからは「今の時代みんな学校に行けてスタートラインは同じように見えるけれど、家庭環境などでスタートラインが違うのだと実感した」「自分で選んだわけではなく、もともとその位置で決まっていたと知った」などの感想が出ました。

地元の閉塞感が設立のきっかけ

今村氏は岐阜県出身。
実家は飛騨高山で土産物屋を営んでおり、両親も親戚も大学に行ったことがない家庭だったといいます。
特に女性は高校を卒業したら就職し、結婚し子どもを産むことが良いとされ「女性が意見を持つなんていけないことのような雰囲気」があったと言います。今村氏はそんな環境に閉塞感を覚え、どうしても地元を出たいと大学進学を志します。

晴れて神奈川の私立大学に進学した今村氏は驚きました。
同級生はみんな良い服を着ています。車で通っている人も、海外留学をしたことがある人もたくさんいました。「自分が高校で常識だと思っていたことと、世の中はこんなにも違うのだと実感した」と言います。
充実した大学生活を過ごしていた今村氏は、成人式のために地元に戻ります。
すると、昔の友人にあったとたん同調圧力のようなものを感じ、大学生活が楽しいということを言えなくなってしまったのです。この差はなんなんだろう、と怒りや悔しさを感じた今村氏。
その後、大学の授業で少年法を学んだこともきっかけとなり、家庭環境などにより、スタートラインに立てない子どもの支援をしたいと「カタリバ」を設立することを決意したのです。

悩みごとは「発見のアンテナ」!

そもそもNPO法人とはなんでしょうか。学生からは「ボランティアのイメージ」との声が。
今村氏は頷いて、「寄付金を集めて、そのお金で行政の支援が届かない人たちを助ける活動を行っている」と話しました。
「ビジネスの領域や行政では解決できない、取り残された課題がNPO法人の領域です」と今村氏。
カタリバでは、シングルマザーの家庭の子たちなどに向けて、無料でご飯が食べられて勉強も見てもらえる拠点の運営などを行っています。行政と連携し、支援が必要な人に届くように活動を広げています。

「大学生活で感じたもの、地元から得たものがたくさんあります」と今村氏。地元から首都圏に出たことで、違いについて気付けたと話します。
そして「悩みごとは発見のアンテナ」と語りました。
「劣っているのではなくて、それは自分の強み。自信のある人には気付けないことに気付ける」と言い、「皆さんはこれからなんでもチャレンジしていける。これからの人生も頑張ってください」とエールを送りました。

小さな課題を「みんなの課題」にしていこう

講演後は学生たちからの質問タイム。
「NPOが取り組む課題で一番大変な問題はなんですか」という質問に、今村氏は「ニュースやテレビで報道されない課題。例えば子どもの貧困についても2016年頃からようやく取り上げられて表面化していった。それまでは家庭の問題と切り捨てられてしまう。メディアが取り上げることでみんなの課題になる」と話し、「皆さんもぜひ、皆さんの感性で捉えた小さな課題をSNSなどで知らせてください」と話しました。

最後にクラスを代表した学生がお礼の言葉を述べました。
「NPO法人の活動について初めて知りました。今後自分もどのような活動が出来るかと考える機会になりました」と感想を語り、新しい学びに繋がったことを自身の体験を交えて語りました。
学生たちにとって多くの気付きのあった授業でした。

担当教員からのメッセージ

女性とキャリア形成の最後のゲストに、カタリバの代表理事である今村久美様にお越しいただきました。
以前から存じ上げていた方ですが、直近では、東京2020オリンピックパラリンピック
競技大会組織委員会の文化教育委員会の委員としてご一緒させていただきました。
どんなことがあっても、こどもたちの居場所づくりを真っ先に考え、奔走されている姿には、
いつも感動していました。
今回、改めてご講演をお聞かせいただき、真の意味で将来の日本を考えておられる先導者であることを
改めて感じました。
大変ご多忙の中お越しいただいたことに心から感謝申し上げます。

2025年7月22日

SNSのトラブルから身を守るには?「情報セキュリティ」の授業でデジタルアーツとの特別コラボ授業が始まりました。 

「情報セキュリティ」(担当:人間社会学部社会デザイン学科 板倉文彦教授)の授業で、6月25日にデジタルアーツ株式会社による特別講義が行われました。SNSが当たり前の現代、情報とどう付き合っていくかは学生にとっても身近な問題です。情報セキュリティの大切さを改めて学びました。

有害サイトから子どもを守る

登壇されたのは関萌緑氏。関氏は本学の卒業生です。
「今日は、”セキュリティ女子会”をしようと思います」と明るく学生たちに話しかけ、ざっくばらんに意見を出してほしいと授業が始まりました。

デジタルアーツは今年設立30周年を迎える、インターネットセキュリティ製品を製造・販売する情報セキュリティメーカーです。
ウェブはもちろん、ファイルの送信、メールなどインターネットを介して行われる情報のやりとりを守る国産のセキュリティソフトを提供しています。主な取引先は企業や役所、学校です。
「i-FILTERという製品は、みんなも使ったことがあるかもしれません」と関氏。
子どもたちが学校教育のなかでインターネットを使う際に、犯罪やアダルトなどの有害な情報に触れないよう、それらのウェブサイトをブロックする設計です。その他、インターネットの安全利用のための活動や利用の実態調査など、幅広く情報セキュリティに関する活動を行われています。

SNSのトラブルはすぐそばにある

関氏はまず「SNSやウェブ上でのトラブルってどういうものが思い浮かびますか?」と問いかけました。
「有名人へ誹謗中傷」「覚えのないメールが来る」と学生たちが回答すると、関氏も頷いて「みなさんにとっても身近な問題ですよね」と話しました。

SNSのトラブルはさまざま。いわゆるバイトテロと言われるような不適切投稿、プライベート情報の漏洩、誹謗中傷、闇バイト……。
関氏はそれぞれを詳しく解説しながら「気軽な気持ちでやってしまうと人生が大きく変わってしまいます。一度インターネット上に書いたものは消しても残ります。匿名のアカウントも特定される。マイナスの書き込みはしないようにしましょう」と注意喚起。

関氏は現在問題になっている、いわゆる闇バイトにも言及。
運転だけ、荷物を運ぶだけなど簡単な仕事で求人し犯罪に巻き込みます。実際、学生が車の送迎のリゾートバイトと思って応募したところ、闇バイトだったという例も。
関氏は「SNSでうかつな投稿は被害者にも加害者にもなる。知らなかった、悪気がなかったでは済まされない。身を守るために知識や意識、対策が必要です」と話しました。

どんな年代にもセキュリティは必要!

ここからは事前に行っていたアンケート結果をみながら進みます。
「ネガティブなことをSNSに書いたことがある」という質問の回答は29%。愚痴などを言いたくなったら親や友人に聞いてもらう学生が多数でした。なかにはchatGPTなどに書き込む学生も。
関氏は「今時ですね」と驚きつつ、「SNSを健全に使っているなという印象です」と感心されました。

「偽メールや詐欺などを自分で選別できるか」という質問には36%が「はい」と回答。約1/3の学生が自分で偽物を選別できると思っているようす。
しかし関氏は「いまの偽サイトなどは本当に精巧。セキュリティのプロでも引っ掛かることも。それぐらいいろいろな手口があります」と注意を促しました。

関氏はインターネット利用するにあたって、年代別に必要なセキュリティについての一覧を示しました。
高校生までは親が管理したり、学校側で対策をしたりなど有害情報からこどもを守るような対策が取られています。
「しかし大学生以上は誰かが守ったりしてくれない」と関氏。「脅威が多様化、巧妙化しているなか、前年代にセキュリティは必要です」と話しました。
ではどうしたら大学生から高齢者まで、大人たちにセキュリティを使ってもらえるでしょうか。

どうしたら大人たちにセキュリティを使ってもらえる?

いよいよ学生たちへの課題が発表されました。
テーマは「大人にセキュリティを使ってもらうための仕掛けを考えよう」。学生たちは、それぞれ班に分かれテーマにあった施策を考えます。
大学生・社会人・高齢者の3パターンを班ごとに企画することが課題です。

まずは現状分析として、全ての大人にセキュリティを使ってもらえていない理由を整理していきます。
そもそもセキュリティは大人にも必要だと認識していない層が一定数いるという現状があります。
セキュリティは子どもを守るもの、という認識で自分は大丈夫だと思っているひとたちが多いというのです。
また子供時代にセキュリティを入れた携帯などを使っていた記憶から、セキュリティを入れると自由度が下がったり制限されたりすると思っている人たちもいます。
こういったマイナスイメージと向き合い、幅広く付き合ってもらえるようにするためにはどうするべきか考えるのです。

1か月後にプレゼンテーション!

学生たちはさっそく班ごとにグループディスカッションを開始。
どうするべきか、今の自分たちの認識について話し合いました。
大学生向けの班では「製品について詳しくないのでセキュリティ製品を選ぶハードルが高い」という意見が。「セキュリティ製品は高いので選べない」という意見もありました。

社会人向けの班では「スマートフォンを多く使う層とパソコンを使う層では違うので、ターゲットをしぼったほうがいいかも」という観点で話し合い。
高齢者向けの施策を考える班では「高齢者に新しい知識を受け入れてもらうのは難しいのでは」と懸念を話していました。

学生たちはグループワークを通し、企画を作成。1か月後に発表を行います。
話し合いの段階で、たくさんの良い視点が出ていることに関氏や企業の皆さんは感心。発表を楽しみにしていました。

担当教員からのメッセージ

「情報セキュリティ」は基本的に座学中心の授業形態ですが、学んだ知識・スキルを生かすこととその定着を目的として、授業後半にPBLが組み込まれています。
PBLでは企業から課題が与えられ、それに対して学生達がプレゼンテーションを行うことが予定されています。
企業からのリアルな課題にいきなり取り組むことは困難ですが、今回は企業の方がファシリテーターとして学生の輪に加わっていただけたことで学生からも活発な意見が出ていました。
学生達の真剣な取り組み姿勢を見て、今から発表が楽しみです。
学生の皆さんには、授業で学んだ基礎的な知識・スキルが、実際の製品・サービスに転用されていくプロセスを実感することを期待しています。

2025年7月11日

たくさん達成感を得て自信を付けよう!「女性とキャリア形成」の授業でJFEテクノス社長による特別講義が行われました。

「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で6月5日に、JFEテクノス株式会社の能登隆代表取締役社長をお招きしての特別講義が行われました。仕事との向き合い方や自信を持つことの大切さなど、実体験を交えてお話してくださった能登氏。上に立つものとしての心構えなども含め、なかなか聞くことのできない「社長業」について学生たちが触れる機会となりました。

仕事は金銭的に自立する手段?

JFEテクノスは一言で言えば「街のあらゆるインフラのメンテナンスを行う会社です」と能登氏。
「皆さんの就職希望先とは少し遠いかもしれませんが、一人の社会人のサンプルとして気軽に話を聞いてほしい」と講義を始められました。

学生時代は火を燃やす「燃焼」に関わる勉強をしていた能登氏。
いまでも星空の下で焚火をたいて、コーヒーを飲むのが癒しのひとときだと話します。ただ、「私はこだわりがないんです」と自己分析。
「信念というものがないよな、と言われたこともある」と告白されました。そのためこれといってやりたい仕事があったわけでもなく、仕事は「金銭的に自立するための手段と思っていた」と言います。
ただ、地図に残るような大きなものを作れる会社に行きたかったことと、専攻した燃焼に関する仕事をしたいと思い、現在のJFEの前身である日本鋼管へ入社されました。

偉くなるとやりたくない仕事も増える

社会人になって最初の1年は、大学のころと同じように燃焼の研究を行い「学生時代と近いことをしてお金ももらえるなんて嬉しいと思っていた」と話しました。
しかし年が経つにつれ、自分の仕事に責任がのしかかってくるようになり、徐々にストレスに。

特に、より高いポストに就くようになるとそれは顕著でした。
会社で偉くなるとは部下が増え、権限が増え、責任も増えるということ。
能登氏は「偉くなるとは、自分の知らない領域の仕事を担当することです。自分のやりたい仕事以外のことをやることになる」と語りました。ときには意見の合わない人と一緒に仕事をすることも。
能登氏にとって仕事とはだんだんと、ただ試練を乗り越えうまくやり遂げるものになっていったと言います。
「心に蓋をして、自分に厳しく、人にも厳しくなっていってしまったんです」。

天狗になっていた自分を猛省

仕事がうまくいくと達成感が得られます。
「仕事にはトラブルはつきもの。トラブルがあってもみんなで協力しあって乗り越えることで自信が生まれる。客に感謝され、上司や仲間からも褒められることは、仕事を続けるモチベーションになります」と話しました。

ただ、能登氏は「自信を持ちすぎて、天狗になってしまった」と語りました。
人の話を最後まで聞かずさえぎっては切り捨てる。人として傲慢な態度を取っていたと告白されました。だんだんと部下の力が融合せずうまくいかなくなっていったと言います。
そんなある日、信頼していた女性の部下から「上から目線で皆を見てますよね」ときつい一言が。
能登氏はそれまでコミュニケーションがうまく出来ていると思っており「自分の態度が人を傷つけているとは分からなかった」ため、その一言に大きなショックを受けます。
未熟さを猛省し、そこから話すときはゆっくりと、人の話をしっかり聞くように。徐々にまた空気が良くなり、多くの人たちに受け入れられ、仕事が上手になっていったと話しました。
「社長というのはあくまで社長業なんです。営業などと同じ、一つの仕事」とかみしめるように語りました。

仕事は自信を持たせてくれる手段!

能登氏は「たくさんの達成感を自分に与えましょう」と学生に語りかけました。
人から褒められる経験を増やすことで自信を付けることの大切さを伝えました。
ただ、自信を付けすぎると傲慢になる危険も。けれど「天狗になってもいいんです」と能登氏。
「周りや友人など、おかしいよと言ってくれる人がいるはず。そのときに軌道修正すればいい」と話し、周囲に耳を傾けることも伝えました。

いまの能登氏にとって仕事とは、金銭的に自立する手段だけでなく、自信をつける手段であり自分をポジティブにしてくれるものになったと話しました。
そして学生のうちに「異人コミュ力」を付けてほしいと伝えます。
「異人コミュ力とは私の造語で、自分と異なる考えの人と話す力。社会人になると本当にさまざまな人と仕事をする。自分の考えと違う人の話を聞くことに慣れておくといいでしょう」とアドバイスしました。

自分が変われば周りも変わる

講演後には質疑応答の時間が取られ、学生が次々と手を挙げました。

「部下から指摘されて改善したあと、部下や周りの反応に変化はありましたか?」という質問には「数か月後に同じ部下から、やればできますねと言われました」と笑いを交えて回答。
「徐々に周りからアイデアや企画も出てくるようになり、雰囲気が良くなっていきました。自分が変われば周りも変わることが分かった」と話されました。

最後に、司会進行をした班の学生が代表しお礼の言葉を述べました。
「当初は社長と聞いて、難しい話をされるかと思っていましたが、等身大の話をしてもらえ社会人に対しての解像度が上がりました」と話しました。
「就活に自信がなかったですが、仕事は自信をつけてくれる手段と聞き、自分の人生を豊かにしてくれるものなのだと気づきました」と話し、今回のお話が身になったと伝えました。

担当教員からのメッセージ

能登社長は、今年初めてお迎えいたしました。歴史ある企業のトップを務められる能登さんですが、語りがとてもソフトで、しかも、学生の視点を意識いただいた内容に、学生が真剣に聞き入る姿勢が印象的でした。様々な部下の方とのやりとりには驚くこともありましたが、それだけ社員一人ひとりとの絶対的な信頼関係を築かれている能登社長でなければあり得なかったエピソードも沢山聞かせていただきました。能登様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年7月10日

女性が社会で活躍するために。「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。 

共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、5月22日にSBI金融経済研究所株式会社の取締役理事長である政井貴子氏をお迎えしての、特別講演が行われました。女性が社会に出ていく前に知っておくべき心構えなど、実体験やデータに基づいた貴重なお話をお伺いしました。

なぜ女性が活躍することが重要なの?

この授業は進行も学生が行います。キューブと呼ばれる担当の班の学生が「つねに前向きに学びを深めながら、華麗な転身をしてこられた」と紹介し政井氏が登壇されました。
この授業に出演されるのは4年目です。「毎年気付きがあるのでそのたびにブラッシュアップしています」と話します。
「今回はそもそもなぜ『女性とキャリア形成』という授業があり、女性活躍推進が重要なのかしらという背景の共有をできればと思います」と講演を始められました。

まず政井氏は「男女雇用機会均等法」について説明。性別にとらわれずに自由に働けるための制度です。
逆に言うと、制度がないと女性は自由に生きていけなかった過去があります。
「皆さんは小学校の家庭科の授業は男子も一緒だったと思いますが、私のときは女子だけ。男子は技術という工作の授業を別々に受けていた」と話します。

第二次世界大戦を経て国連が成立した際、あらゆる差別を撤廃するべきだという動きが世界中で盛り上がりました。
そのなかには女性への差別も含まれ、1985年に女子差別撤廃条約に日本も批准。男女共同参画社会基本法を制定し、1999年に男女雇用機会均等法が制定されました。
「こういった流れのひとつとして、皆さんの雇用を後押しする一つとしてこの授業もある」と政井氏は話しました。

男性の意識はどうか

しかし、格差がまったくなくなったわけではありません。
世界のジェンダーギャップの解消には100年以上かかるという試算が。特に政治経済格差はなかなか縮まらないと言われており、それは日本も同様です。

では具体的にどういうことが課題となっているかと言えば、ひとつは家事の分担です。
政井氏は、家事を男女のどちらが担うべきか、男性に取ったアンケート結果を示しました。39歳以下の7-8割は、半々で負担するべきと回答。
しかし年齢が上がるにつれ割合は少なくなり、60歳以上になると半分以上の人がパートナーに任せたいと回答しています。
「女性は家庭に入るべきだと思っている人はまだまだいるということ。社会に出れば、年上とも仕事します。特に60歳くらいの人は偉いポジションも多い」と政井氏。
年上の男性と接する際は、口には出さずとも女性は家庭に入るべきという考えをもっている可能性も想定した方がいいと忠告されました。

ジェンダーギャップはこれからもある

政井氏は続けて「若い世代は大丈夫では、と思うかもしれませんがそうでしょうか」と次のアンケート結果を表示。
「営業職は男性の仕事だ、職場では女性は男性のサポートにまわるべきといった質問に、若い男性もそう思うと回答する人も2割ほどいる。10人いれば2人くらいは内心そう思っている人がいるんだと知っておくべきです」と語りました。
そして「皆さんは、そういうのも含めて会社を見て就活をしましょう」と話しました。
「出したデータは平均値なので業態や会社ごとにばらつきがあります。特定の業種や会社に偏っている可能性もある。受け入れ側の体制がどうなっているか、変わって行きそうかをみるのも大事ですよ」と語り掛けました。

また、賃金格差も依然としてあることを指摘。
政井氏は「私も役員をやってきましたが、世代的にも安く使われていると思います」と告白しました。
「昔は今よりも男女格差が大きかったので、役職に就けるだけで信頼されていると思っていた」と話します。
現在は男女差が出ないようポストに対して報酬制度が決まっているところもあります。「稼いでいくことが目的ではないですが、生涯賃金を考えるのも大事」と話されました。

女子校でリーダーシップを養われる!

「私が学生の頃はキャリアを考える授業もなく、自分もここまで長く仕事をするとは思っていなかった」と政井氏。
英語を使える仕事が良いと外資系金融業へ就職し、周囲は全員外国人のなか、人の数だけいろんな考えや価値観があることを知ったと言います。

日本の会社でも仕事したいと、現SBI新生銀行へ転職。
その後長年金融業界で働いた実務能力を買われ、日本銀行の審議委員へ就任されました。
「経済を学んだことのない私が専門家と混ざって意見交換する立場になるなんて」と話しましたが「20年もやっていると専門家として認めてもらえることもある」と誇らしげに語りました。

「女子校卒は不利ですか、と質問を受けることがあるのですが、そんなことはない」と本学の卒業生でもある政井氏は力強く話します。
「男性がいない中で女性がリーダーシップを取ることが求められる。人の前に立って行動することを経験できることはとても貴重です」と言います。
「皆さんの人生はまだまだ長い。振り返ってみて悔いの残らない充実した時間になると良いなと思います」と政井氏は講演を締められました。

キャリアを積み重ねるには

講演のあとは質疑応答の時間。学生から次々に手が上がりました。
「女子校でリーダーシップが養われることは実感がある」という学生からは、「男性のいる場で女性がリーダーシップを発揮できますか」という質問が。
政井氏は「なかなか自分にチャンスが回ってくることは少なかった」自身の経験を回答。
「一緒に仕事する人によって環境にばらつきがある世の中。自分に何が必要なのか考え、足らないことを実践してみる人がキャリアを積み重ねられると思います」と答えました。

さまざまな仕事をされている政井氏に「新しい仕事で環境が変わるとメンタルも影響出ると思いますが、どうやって前向きでいたのか」と質問した学生には「重要な視点ですね」と感心した様子も。
不安なときは友人に相談していたと話し、「大事なことを相談できる友達の存在が大切かも。そういう存在が学生のうちにできるといいですね」と回答。
「どうしても納得が出来なかったら辞めて、充電できたらまた仕切り直せばいい。手放すのも選択肢のひとつです」と伝えました。

学生たちにとってこの上ないロールモデルとして、貴重なお話を伺えるひとときとなりました。

担当教員からのメッセージ

政井様は、この授業には初回からご登壇いただいています。本学の卒業生ということもあり、学生の姿も真剣です。政井様のキャリアは特筆すべきものがあり、金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた価値は、なかなか存在しないと思われます。今までは比較的遠い存在であった金融のフィールドでしたが、今の学生が社会を牽引するこれからの世の中を考えた時、一人ひとりがみずから資産設計することが求められることになります。政井様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年6月30日

「やさしい日本語」を使って伝えよう。「日本語教育入門b」の授業で東日本旅客鉄道株式会社の特別講義が行われました。 

5月27日に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別コラボ授業が行われました。外国人にも分かってもらえる「やさしい日本語」について、楽しいトークで盛り上げながら実践的に教えてくださいました。

多くのひとが利用するJR東日本

最初に登壇されたのは平山秀人氏。2021年にJR東日本に入社されました。次に挨拶された伊藤暉氏は2015年入社です。
お二人とも、電車の車内放送やドアの開閉などを主に担当する車掌です。
JR東日本は、北は青森県から南は静岡県までの広い範囲の路線を担う、まさに日本の大動脈です。
昨今は、電車の輸送業務のほかIT部門、生活サービスの仕事も行っており、「街づくりや介護の仕事を行う部門もあるんですよ。」と平山氏が明るく説明されました。
お二人が所属している我孫子乗務ユニットは、常磐快速線の品川駅から茨城県の取手駅までなどが乗務範囲です。
「都会の高層ビルから、だんだんと田園風景が広がり癒されています。」と冗談交じりで話されました。

「まずはアイスブレイクをしましょう。」と伊藤氏が取り出したのはカードゲーム。学生たちは班に分かれ、先生方も参加してのゲームが始まりました。
出されたテーマに沿って、配られたカードの数字を表現するものを考えます。上手くいって喜んだり、外れて笑ったりと学生たちも楽しそうに参加していました。
ひとしきり盛り上がったところで、伊藤氏が「皆さん、どうでしたか。」と語り掛けました。
「同じ日本人でも世代や性別などによって感覚は違います。文化や言語が違う在留外国人のお客さまや海外からのお客さまに情報を伝えるのはさらに難しい。」と話し、今回のテーマである「やさしい日本語」について考える講義が始まりました。

どう言ったら伝わる?

ここからは、実際に電車で使われるアナウンスを使ってのグループワークです。
最初に出たお題は「列車非常停止ボタンが押されているため安全確認をしております。運転再開までお待ちください。これを皆さんでやさしい日本語の放送文に変えてみましょう。」と平山氏。
学生たちは「それいいね。」など相談しつつ文を作り上げました。
例えば「電車を止めるためのボタンが押されました。安全か見ています。動くまでお待ちください。」という案です。
平山氏は「すごく分かりやすくて、良いですね。」と感心した様子で拍手を送りました。

我孫子乗務ユニットでは、「SOSボタンが鳴っているため、チェックしています。電車が動くまで待ってください。」と伝えているとのこと。「SOS」や「チェック」などのカタカナ言葉を使うことで伝わりやすくなると話します。
ただ、「やさしい日本語には正解がありません。」と平山氏。
「皆さんが考えた文の方が伝わりやすいということもあると思います。大事なのは相手が本当に理解しているかです。相手を思いやり、どうしたら伝わるか考えることが大切です。」と語り、「私たちも大変勉強になりました。皆さんの案も今後取り入れていきます。」と話されました。

やさしい日本語を必要としている人はいる!

伊藤氏は我孫子ユニットの所属になる前は、秋葉原駅の改札で勤務していました。観光地として名高い土地柄のため、海外からのお客さまも多かったと言います。
特にアジアからの観光客は、英語も通じないことが多く苦労したそうです。
そんなとき、テレビでやさしい日本語を使ったニュース番組を偶然発見し「これは使えるのではと思った。」と話しました。
我孫子常務ユニットに異動になってから早速、上司などに提案してみるも「前例がない。」と難色を示されてしまいます。

「しかし、やさしい日本語を必要としている人がいるという確信がありました。」と伊藤氏。
社員たちで研修をし、車内放送にやさしい日本語を取り入れ、お客さまへポスターや車内アナウンスでお知らせし、理解を求めたところ、SNSなどで好意的に拡散され知れ渡ったと言います。
「実際に伝わるのか、さまざまな国から来ている留学生たちに協力してもらい意見交換を行い、毎月車掌たちで研修をしています」と話しました。

鉄道マナーを伝えるには?

次に登壇したのは、JR東日本サービスクリエーションの山田晃子氏。普通列車グリーン車のアテンダントです。
グリーン車では車内販売や乗り換え案内、チケットの確認など直接乗客と話す場面が多々あります。
「グリーン車には海外からのお客さまも多く、国籍や年齢もさまざまです。」と山田氏。
「今までは細かく決まった応対マニュアルに沿って対応していましたが、やさしい日本語を柔軟に使うことが増えています。」と話します。
やさしい日本語のガイドラインも作成し、JR東日本グループ全体として活動が広がっていると語って下さいました。

最後に平山氏が再度登壇。次回への課題を発表されました。
課題は「鉄道マナーを海外からのお客さまや在留外国人にどのように伝えるか?」。ポスター案と、車内放送文を考えるというものです。
平山氏は「駅を利用するとき、電車に乗るとき、さまざまなマナーがあります。その中からいくつか選び、やさしい日本語を用いてどのように伝えるか考えて下さい。皆さんの発表を楽しみにしています。」と期待を寄せました。

学生たちはグループワークを行い、1ヶ月後にプレゼンテーションに臨みます。

担当教員からのメッセージ

我孫子乗務ユニットの方々のユニークな自己紹介、そして大いに盛り上がったアイスブレイクのおかげで、学生たちの表情も緩み、テンポよく授業が進められました。いつも以上に活性化したグループワークでは、学生の視点から多様な意見が出されました。
東京グリーンアテンダントセンターの方からのグリーン車での取り組みのお話しには、大きくうなずきながらメモを取る学生の姿が見られました。
受講生からは、「日本人も外国人もみんなが安心して電車を利用するためには、誰もが理解できるように情報発信することが大切だとわかった」「在留外国人の方や外国人観光客の方が増加している今、もっとこの取り組みが広がることで、誰もが平等に情報を得られるようになることが望ましい」といった感想が届きました。
次回の発表会に向けて、各グループが協働してアイディアを練っています。
貴重な学びの場を与えてくださったみなさまに、心から感謝申し上げます。

2025年6月27日

自分らしく生きるヒントとは?「国際理解とキャリア形成」でフィジーの文化を学ぶ特別授業が行われました。

「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月3日に株式会社アールイーカンパニーとの特別コラボ講義が行われました。「フィジー留学カラーズ」の運営を手掛ける皆さんが南の島を舞台にしたディズニー映画をベースに、南太平洋の文化を解説。和気あいあいとしたムードのなか、異文化を知る機会となりました。

学生のうちに海外に行ってみよう

教室にはアールイーカンパニーの多田祐樹氏が登壇し、ビデオ通話もつないで授業が始まりました。
植林氏は大阪から、長瀬氏はフィジーからの参加です。
「私だけが話していてもつまらないので、皆さんにも参加してもらいながら話していきたいと思います」と多田氏。
リアルタイムの掲示版を使って、学生たちも随時感想を伝えながら進めていきます。

多田氏は貿易業を経て、2018年よりフィジー共和国にて、主に日本人を対象とした英語学校「カラーズ」を創業。現地で日本語学校も開講し、フィジーの人が日本で働ける機会を増やすプロジェクトも行っています。
多田氏はまず画面に「17%」という数字を示し「なんの数字でしょうか?」と問いかけました。これは日本人のパスポート保有率です。
ただし、18~22歳の大学生の年齢に限ると40%と高い数字です。
多田氏は「しかし、65歳までの労働人口で見る割合だと20%強と減ってしまう」と話し、学生のうちに海外含めさまざまなところに行ってほしいと伝えました。

フィジーの歴史や文化とは?

学生たちは事前準備として、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」を視聴してきています。
この映画の主人公モアナが南の島から船に乗り冒険をするという物語。この映画をベースに「南太平洋に息づく文化と”自分らしく生きる”ヒント」と題しての講義が始まりました。
多田氏はまず南太平洋の島々にすむ民族の歴史から説明。
約6000年前、オーストロネシア語族が大陸から海を渡ります。
優れた航海術で広大な領域に分布し、南太平洋の島々であるフィジーやサモア、トンガなどにも到達しました。

次に植林氏が3人の男性の写真を見せました。南太平洋には3種の族があり、外見も違います。
それがポリネシアン、メラネシアン、ミクロネシアンの3つ。
ポリネシアンはアジア人の肌色に近かったり、メラネシアンは髪の毛がアフロのようにきついカールがかかっていたり。
フィジーはメラネシアンとポリネシアンが混在する島です。ラグビーが強いことで有名ですが、それは遠い昔、厳しい航海を生き抜いた、強い体を持った先祖の血を受け継いでいるからとも言われています。

多田氏は「KAVA(カヴァ)」という伝統的な飲み物を紹介。
儀式や祝い事に欠かせない飲み物です。現在は観光客も飲むことが出来るものですが「私は大好きです」と多田氏。
「カヴァは歓迎してくれている証。海外の人に自分の国の文化を受け入れてもらうのは嬉しいですよね。私は現地で出されたものは全部食べるのがポリシー。皆さんもフィジーに行くことがあったら是非試してみてください」と語りました。

やりたいことを宣言しよう!

続いて長瀬氏が、映画のストーリーにベースに「主人公たちはどんな失敗や不安を抱えていたか考えてみましょう」と語り掛けました。
「皆さんも過去の失敗や不安を振り返ってみましょう。うまくいかなかったこと、恥ずかしかったことなど小さいことでもいいので教えてください」と長瀬氏が言うと、学生たちは掲示板に次々と書き込み始めます。「受験のときもっと勉強を頑張ればよかった」「留学が不安」などの意見が書き込まれました。

意見が集まったところで、長瀬氏は映画のある台詞を紹介。
それは「先のことは分からない。でもどんな自分になるかは決められる」というもの。
長瀬氏は「みなさんも、これからどんなことがやりたいか、どんな自分になりたいか、宣言してみましょう」と促します。学生たちはグループで話し合いながら宣言を書き込みました。
「フィリピンで短期留学をしたので今度は長期で行ってみたい」「去年留学をしなかったけれど今年こそ行く」など、たくさんの決意が集まりました。

衝動に従って人生が開かれる

最後に、多田氏から「偶発性と衝動性が人生を切り開く」という話がありました。
アールイーカンパニーも最初からやろうと思っていたわけではなく、たまたまだといいます。
「しかしたまたまのことを努力すると意味のあることに変わってくる」と話します。
「好きなことで生きていくことはすごく素晴らしい。しかしとても大変。好きなことをすることと、好き勝手することは違います。一人ではできません」と話し、「今やりたいことがなくとも大丈夫です。好きなことを一生懸命にやって行ってください」と話しました。
長瀬氏も「私も海外に行くことなんてないと思っていましたが、いまフィジーに住んで仕事している。次々にチャレンジしていくことで人生が開いていきます」と語られました。

学生たちは遠い島の異文化を知ると同時に、自身の人生を考える貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

国際理解とキャリア形成の授業のゲストとして、今年度初めてお迎えしたのが、カラーズ様です。
そして、ディズニー映画の「モアナと海の伝説」と結び付けて学ぼうという、全く新しい試みでした。
当日は、多田様、長瀬様、植林様のお三方が、教室と大阪、そして実際にフィジーからオンラインで
参加して下さいました。
メラネシアンおよびポリネシアン文化の歴史や、映画に登場するシーンのことなど、
フィジーという国の魅力を沢山伝えていただきました。
近い将来、フィジーへの留学に出かけてくれる学生さんも生まれることと思います。
とても楽しいプログラムを構築いただきました多田様、長瀬様、植林様に心から感謝申し上げます。

2025年6月6日

自身のキャリア志向を知ろう!「女性とキャリア形成」の授業で、日本マナー・プロトコール協会理事長による講演が行われました。

5月8日に行われた共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。明石氏は、積極的になることで人生が変わったと話し、ご自身のエピソードを交えて学生に前向きにキャリアを考える大切さを語りました。

チャレンジ精神を持ってキャリアを切り拓く

司会進行は「キューブ」と呼ばれる班ごとに学生が行います。
学生から紹介され明石氏が登壇されました。明石氏がこの授業で講演されるのは今年で3回目。
「毎年とても楽しみにしています。学生が主体的に運営していて質問も活発にあり、私自身モチベーションが上がります」と笑顔で仰いました。

「ただ、皆さん真面目で優秀なのに、チャレンジ精神がちょっと足りないなと思うことがある」といいます。質問に対して、分かっているのに手を上げないなど積極性に欠けると感じる場面があると話しました。
「キャリアを振り返ってみると、勇気を出したことで今の自分につながってきたなと思うことがたくさんあるんです」と話し、「キャリアも人生も自ら切り拓く」と題し、講演を始められました。

最初の就職先はよく検討して選択しよう

明石氏は大学卒業後、日本航空株式会社(JAL)に新卒のCA(客室乗務員)として入社。今では憧れの職業と言われるCAですが「なりたくて入ったわけではない」と言います。
明石氏が就活をしたのは、第2次オイルショックで4年制大学卒の女性は就職が難しかった頃。
大量採用していたJALになんとか入った、と話されました。

「現在は人手不足で売り手市場と言われている。ある意味、皆さんが企業選択の決定権をもっています」と明石氏。
転職も当たり前になっている現代ですが、「それでも最初の就職先はこれからの人生に大きく関わってくる」と話します。
「たくさん内定をもらっても、最初に入れる会社は1社しかない。だからこそ、入ったらしっかり頑張れるところを選んでほしいと思います」と、よく検討して選択するよう勧めました。

自分のキャリア志向とは?

就職活動をするにあたり、自分自身がどういうキャリア志向なのかを確認することが大事だと明石氏は話します。
例えば自分でやってみたい自立志向型や、人を動かすほうが向いているプロデュース型、まずは何かをやってみたいチャレンジ志向型など。「自分を知ることで、より迷わず、流されず、後悔しないキャリアにつながります」と伝えました。
また、「人生はキャリアだけではない」との言葉も。
「専業主婦だって素敵なことですし、地域活動に力を入れるのも素晴らしい。自分はどういう人生を歩みたいのか考えることが、有意義な企業選択に繋がる」と強調されました。

自分のやりたいことが分からない人には、『置かれた場所で咲きなさい』という元ノートルダム清心学園理事長の故・渡辺和子先生の言葉を紹介。
与えられた仕事を真摯に頑張ることの大切さを伝えました。「人生も仕事も必ず起伏がある。そのときにどうするかで、その人の真価が問われると思います」と話し、逃げずに継続する勇気を持つことが大事だと話します。
ご自身も離婚を経験されたとき、初めて劣等感や将来の不安を感じたと告白されました。
しかし子どものためにも自分が頑張らなくてはと一念発起し、当時まだベンチャー企業だったパソナに秘書として入社。
そこで経営を間近に見る機会を得、その後のコンサル業へとつながっていきます。
「大変なときこそ成長するチャンス。うまくいかなくてもチャレンジ精神をもって乗り越えてほしいと思います」と語りました。

人とのつながりを大事に

最後に強調されたのは、人とのつながりを大切にすること。
「チャンスをくれるのも評価をするのも、相手や周囲の人たちです」と明石氏。
日本マナー・プロトコール協会の立ち上げに加わったのも、会社を立ち上げてから人脈が広がったためだと話しました。
「それまでは一人で仕事をしていましたが、あまり社会貢献をしている気がしていなかった。マナーやプロトコール(国際儀礼)を普及させていくことは社会的に意義があることと思い、協会を立ち上げました」と言います。

そして、主体的な思考をすることを勧めました。
「誰かと同じほうが安心、と思う人もいるかも知れません。しかし正解はひとつではありません。自分で調べいろんな人の意見を聞き、自分なりの判断の基準を持つことが大事」と話し、「本質を見る目を、ぜひ若い時からはぐくんでほしいと思います」と伝えました。

チャンスで力を発揮するためには

講演後は質疑応答の時間が設けられ、たくさんの学生が手を挙げました。

「自分のキャリア志向が合っているか確認する方法は?」という質問には、「やってみないと分からない。ライフステージが変わったら志向も変わることがあります。自分にはこういう面があるなと気付いたらキャリアチェンジも考えていきましょう」と回答。

「いろんなキャリアを歩まれたと思いますが自分の軸はいつ見つけましたか」という質問も。
明石氏は「私自身若い頃はやりたいことが漠然としていたタイプでした。だからこそ『置かれた場所で咲きなさい』を実践し、そのときそのときで自分の力が発揮できるかやってみることを重視しました」と話し、「チャンスはいつ巡ってくるか分からない。いろんな出会いを大切にしてください」と伝えました。

担当教員からのメッセージ

今年も、日本マナー・プロトコル協会理事長の明石伸子様にお越しいただきました。
大変素晴らしいキャリアをお持ちの方ですが、一方、ご苦労の多かった経験もお話しいただきました。
いつも笑顔を絶やさないそのお姿が印象的であり、語りかけるようなお話しに、自然と学生が
引き込まれていく様子を強く感じました。

コロナ禍以降、人と人との触れ合いが減少したと言われています。
しかし、これからどんな時代が来ようとも、人と人とが出会い、直接語り合うことの大切さは
変わらないと思います。そのような大切なことを教えて下さいました。

この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年6月6日

「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲とのコラボがスタートしました。

企業から直接課題が出され課題解決に取り組む、学生たちに人気の社会連携授業。4月30日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)の授業で、猿田彦珈琲との特別コラボが始まりました。代表取締役の大塚朝之氏からコーヒー店を立ち上げた思いなどお話を伺いました。授業の最後には学生たちに課題が出され、後日グループでプレゼンテーションに挑みます。

じぶんごとに捉えて取り組もう

授業の冒頭には、篠﨑先生からこの授業にかける熱い思いが。猿田彦珈琲を知ろうとフィールドワークをするうち、どんどん好きになり広島の店舗まで回るほどのファンになったと告白されました。
自分の体験を踏まえた上で、学生たちに「今回の課題をぜひ『じぶんごと』として取り組んでください」と強調。ただの課題と思わず、自分に引きつけて考えることの大切さを伝えました。

そして猿田彦珈琲創設者の大塚氏が登壇。学生たちの手元にはコーヒーが配られ、リラックスした雰囲気で講義は始まります。
大塚氏は「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」をコンセプトに猿田彦珈琲を創設した経緯について話し始めました。

良いモノを作るためサスティナビリティを考える

猿田彦珈琲はスペシャルティコーヒーの専門店。2011年6月に恵比寿でオープンしたのが始まりです。
スペシャルティコーヒーとは、風味豊かで個性的な味わいのあるコーヒーのこと。検査で高得点を付けたコーヒーだけが名乗れるもので、全体の5%ほどしかないと言われています。
そしてもうひとつの基準はトレーサビリティがしっかりしているものであること。トレーサビリティとは「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」が明確なことです。コーヒー豆の栽培管理から収穫、選別などまで徹底して品質を管理された厳選されたものだけがスペシャルティコーヒーを名乗れるのです。
大塚氏は「サスティナビリティがあることも大事。生産者に安定してお金が入れば設備を整えより良い環境でコーヒー豆を生産できます。現在気候変動によりどんどんコーヒー農園がなくなっている。」と話しました。

大塚氏は学生たちに、配られたホットコーヒーを飲んでみるよう勧めました。
そして「苦いですか?すっぱいですか?」と問いかけます。
苦みよりもほのかな酸味を感じる学生が多数。
大塚氏は頷いて「このコーヒーはベリーのような酸味がありますよね。いいコーヒーであればあるほどコーヒー以外の様々フレーバーを感じるんです」と話しました。

コーヒーに救われた青年時代

大塚氏は若いころ俳優として活動されていました。毎日のようにオーディションに行くも、落とされたり受かっても次の仕事をすぐに探したりせねばならない日々。
「お金もなく本当につらかった」と言います。
ついにはふさぎ込み、人とのコミュニケーションをうまく取れなくなってしまいました。

コーヒーに出会ったのはそのころ。
たまたま寄った有名コーヒーチェーン店で、店員から気さくに話しかけられ、居心地よい空間にとても安心しリラックスできたと話します。
その後、俳優の道を諦める決心を固めた頃に友人からコーヒー豆店で働かないかと声をかけられ、コーヒーに魅了されていきます。美味しいコーヒーの淹れ方を実演販売することで売上を格段に伸ばし、自信も深めていきました。
コーヒー店に救われた経験から、自分でも美味しいコーヒーを提供したいという思いを実現するため独立し、猿田彦珈琲を立ち上げたのです。

やりたいことを言語化し周囲に伝えよう

恵比寿店をオープンしたあと、2014年には清涼飲料メーカーから声がかかり缶コーヒーの監修を手掛けます。商品は大ヒットし、現在もペットボトルコーヒーや美術展とのコラボなど幅広く事業を展開しています。
店員からはバリスタ大会のチャンピオンを輩出するなど、コーヒー専門店としてゆるぎない信頼を得るようになりました。

缶コーヒーを手掛けた際、業界からは批判もあったといいます。大塚氏も迷いがあったと告白されました。
しかし、手掛けたことで店は有名になり、融資を受けることにもつながります。
大塚氏は「やりたいことへの純粋さとお金のバランスを両立させることが大事」と話し、一生懸命やることの大切さと、それを周囲に伝えるために言語化することを伝えました。「自分が究極なにをやりたいのか、それを伝えて利他的に行動すれば周りは応援してくれます」と話しました。

猿田彦珈琲のファンになってもらうSNSの投稿とは?

授業の最後にいよいよ課題の発表です。課題は「猿田彦珈琲のSNSについて考えよう」。ターゲットは20代。
猿田彦珈琲との距離を縮め、長期的にファンになってもらえる投稿を提案します。良い発表案は実際に公式アカウントで採用される可能性も。
学生たちはそれぞれInstagramとXを担当する班に分かれ、グループワークを重ねて1か月後の発表に臨みます。

担当教員よりメッセージ

猿田彦珈琲“推し活”中の篠﨑です。
猿田彦珈琲の存在は以前から知っていましたが、私の生活圏に店舗がなかったこともあり、実際にお店に足を運んだのは、この連携授業を担当することになってからでした。

もともと珈琲に強いこだわりがあり、「美味しい珈琲を提供するカフェ」という印象を持っていたため、店舗でいただく珈琲の満足度は非常に高く、今では自宅で飲む珈琲も猿田彦珈琲社のものに変わりました。

私自身の例のように、「良いもの」が必ずしも選ばれるとは限りませんが、何かのきっかけで状況が一変することがあります。SNSは、その“きっかけ”になり得るのでしょうか。

当該授業の履修学生は、6チームに分かれてInstagramあるいはXを用いた投稿案の検討に取り組んでいます。現在は、猿田彦珈琲社がこれまでに行ってきたInstagramやXでの投稿内容やその手法について考察し、特徴を把握する段階まで進んでいます。今後は、猿田彦珈琲 道玄坂店でのフィールドワークを経て、中間発表に臨む予定です。女子大生ならではの視点と分析力に基づく提案が、大きなうねりとなって広がっていくことを、私自身とても楽しみにしています。

連携授業の初回には、大塚社長をはじめ、播田様(取締役 フード&ビバレッジ クリエイティブディレクター)、田岡様(マーケティングディレクター)、平岡様(広報)、上田様(マーケティンググループ)をお迎えしました。
 ご多忙の中、本学までお越しくださいまして、誠にありがとうございました。
 また、冷たいカフェラテと温かいエチオピアコーヒーをご提供いただき、重ねて御礼申し上げます。

2025年6月5日

スペインと日本のつながりの歴史とは?「国際理解とキャリア形成」の授業でスペインを知る特別講義が行われました。 

共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、5月13日にスペイン人留学生であるセルヒオ・マテオ・アランダ氏による特別講演が行われました。日本で長年住むなかで体験した、文化の違いで驚いたことや新しい発見などを楽しく語って下さいました。学生たちにとっても、国際的な目線から日本を客観的に知ることができる機会でした。

子どもの頃から親しんだ日本文化

セルヒオ氏は現在、埼玉大学の大学院の博士課程に在籍中で、日本語がとても流暢です。「スペイン人は明るいので冗談好き。面白かったら笑ってね」と、なごやかな雰囲気で講演が始まりました。彼はスペインのアンダルシア地方マラガ市の出身です。スペイン南部、地中海沿岸の温暖な地方に住んでいました。子どもの頃から両親の影響で、アジア文化に興味を持つようになりました。最初は三国志、そこから日本のアニメーションなどに触れるようになったと話してくれました。

小学生の時から授業を、スペイン語と英語で受けており「言語を学ぶことは楽しかった」と話してくれました。 マラガ大学在学中に、埼玉大学に一回目の留学を果たし、日本の観光についての論文を書きました。卒業当初は、エンジニアを目指していましたが、「言語を勉強することへの情熱が芽生え、まだ見ぬ自分を発見した」と語ってくれました。
そして一念発起し、アジアと日本の文化交流を調査するために、2023年から二回目の留学で、埼玉大学の大学院に在籍しています。

スペインと日本、文化の違い

次にセルヒオ氏はさまざまなスペインの写真を見せながら、学生たちにスペインのイメージについて話しました。 スペインは明るく晴れた日が多いので、レストランにはテラス席が多くあるけど、「日本では外のテーブルが少ないですね」 と話してくれました。この違いは、スペインの乾燥した気候と、日本の温暖湿潤の違いによるものです。
また、パエリアやトルティージャ、アヒージョなどスペイン名物の料理を紹介し、日本で同じ名前で食べられているものと、本場のものは少し違うと形状を比較し、その面白さについて語ってくれました。

「スペインはパン派でしょうか、米派でしょうか」という質問がありました。当然パンが多いのですが、パエリアをはじめお米の料理も多数あり、お米もよく食べる国民だと話してくれました。

また、スペインでは大晦日にマスカットを12粒食べると話してくれました。それは、翌年の12か月間が幸せに過ごせるようにとの願いが込められているそうです。「日本では年越し蕎麦を食べるが、スペインでも同じような伝統がある」と話しました。

セルヒオ氏が、最初に日本に来たのは2016年で、さまざまなカルチャーショックがあったと言います。些細なことで言えば、自転車通勤のサラリーマンのこと。スペインでは通勤と言えば自動車なので、自転車通勤の人が多いことにびっくりしたとか。また、困ったのはやはり漢字でした。「言葉はわかるけれど限界がある」と言い、市役所の手続きなどが大変だったと話してくれました。

古くからつながりのあった両国

セルヒオ氏は、フラメンコのダンサーが扇子を持った写真を見せてくれました。「日本でも扇子がありますね。遠い遠い国なのに、なぜ同じものがあるのでしょう」とセルヒオ氏が話しました。「不思議に思って調べてみると、私たちの国のつながりの歴史が分かりました」と語りました。

それは17世紀に、伊達政宗の臣下だった支倉常長が、バチカンに手紙を運ぶ使節団を結成し、その途中、地中海を通った彼らのうちの数十人がスペインに移住。その地で、日本の文化が定着したと話されました。

「南スペイン出身のスペイン人のなかには、苗字にJAPON (ハポン)と名乗っている人たちがいまも住んでいます。彼らの子孫ですね」と長い歴史のなかで、いまも繋がりがあることを話してくれました。

もうひとつ、スペインと日本で似ているものが「巡礼路」。スペインのサンティアゴ巡礼と日本の熊野古道の巡礼路は、どちらも世界遺産に認定されています。 どちらも長い歴史があり、巡礼路としての発祥時期が9世紀頃であったこと、また、殊に女性にとっての巡礼は子宝や安産祈願などが関わっていたことなどの共通点も。加えて、熊野古道の温泉郷(湯の峰温泉)やサンティアゴ近郊のオウレンセ市の露天温泉などの共通点もあり、「双方が温泉や観光にもいい場所ですよ」と紹介されました。

海外で生活するためには運も必要

講演の最後には、質疑応答の時間が設けられました。
「日本にきて驚いたことはなんですか」という質問には、セルヒオ氏は「自分より高齢者が元気なこと」と、笑いを交えながら回答されました。「異文化として、温泉にみんなが裸で入ること。ヨーロッパでは水着を着て入るので、 裸は恥ずかしかった」と話されました。

「話を聞いていて、日本でとても楽しそうに過ごしているなと感じました。モチベーションはなんですか」という質問もありました。セルヒオ氏は頷いて「確かに、日本の生活は楽しいです」と答えてくれました。

「ただ、海外で生活するには運もある。大変なこともありますが七転び八起きです。今は、日本で住み続けられるよう、翻訳家を目指して頑張っています」と目標を話されました。

日本に住む外国籍の方のお話を直接聞く機会はなかなかありません。学生たちにとって国際的な目線を得られる貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

元資生堂の片山様にお越しいただいて3年目を迎えます。片山さんに加え、杉山さんにも加わっていただき、今年は、スペイン人留学生のセルヒオさんも駆けつけて下さいました。日本に関心を持ち、現在も、日本の大学で留学生として学ぶセルヒオさんのお話しは、スペインから見た日本、スペイン人から見た日本人について、とても興味深いお話しをいだたきました。日本語も流暢で、かつ、とてもユーモアのある内容に、思わず聞き入ってしまう、大変興味深いご講演でした。次週は、片山さんと杉山さんからスペイン巡礼の道についてお話しいただきます。今年は2週にわたるスペインの旅です。セルヒオさんに心から感謝申し上げます。