タグ: 東京

2024年11月20日

生成AIを使ってみよう!ゼミ「演習ⅡB」でサイバーエージェントとのコラボ授業が行われました。 

10月1日に「演習ⅡB」(担当:人間社会学部人間社会学科 粟津 俊二教授)のゼミで、株式会社サイバーエージェントの川越寛之氏による特別授業が行われました。広告事業に生成AIの利用を積極的に取り入れている企業の方から、生成AIの使い方を学びます。学生たちは実際に動かしてみながら、仕組みや注意点を確認しました。

広告はAIで作る時代

サイバーエージェントは、100以上の関連子会社を持つ企業。
主にインターネット広告・メディア・ゲームの3つの事業を主にビジネスとしています。メディアやゲーム事業ではインターネットテレビ局「ABEMA」や人気ゲームが次々にヒット。
川越氏はもう1つの柱であるインターネット広告事業に携わっています。
「ゲームなどと比べあまり身近ではないかもしれませんが、広告代理店の仕事です。皆さんのSNSに流れているような広告などを作っている」と話しました。

サイバーエージェントでは広告事業部のなかに「AIクリエイティブ部門」があり、川越氏はその統括をされています。
「7、8年前からすべてAIで製作しています」と、デザインや映像製作にとどまらず、広告の効果の予測や、広告文の作成などに至るまでさまざまな場面でAIを活用していると話しました。

AIはこれからどんどん身近に

いまは「毎日AIのニュースが流れてくる」時代と川越氏。技術の進歩は特に目覚ましく、この前までできなかったことがどんどん出来るようになっています。
川越氏はサイバーエージェントのアルバイトの大学生の作った動画を紹介。「バイトをはじめて2ヶ月くらいの学生でも、AIを使って動画やアニメーションが作成できる」と話しました。
そして、今後スマートフォンなどに次々に搭載され「これから皆さんAIを知らない間に使うようになる」と、どんどん身近な存在になると語りました。

「ただ、AIは危険なんじゃないの?と考える人もいると思います」と、安易にAIを利用することの危険性にも言及。
著作権や肖像権の問題などは、あいまいだったり未解決な部分、規制が進んでいないことが理由のひとつ。
「AIは便利ですが、きれいなものだけで出来ているわけではない」と語りかけました。

AIを使って画像を作ろう

「‎Gemini」と「話して」みることに。
チャットスタイルで文字を打ち込むと、すぐに文章が返ってきました。
知りたいことやただの雑談、旅行計画の相談など、学生たちはそれぞれAIと会話をしていきます。「渋谷でおすすめのランチを教えて」と聞いた学生は、いくつかお店が出てきて役に立ったようですが、「お菓子が食べたい」と話しかけた学生は「甘いものを食べたいときの対処法」など少し見当違いな回答も。

まだ的確な回答をするのは難しい場合もありますが、コツとして、文章で条件を細かく指定していくことを教えてくださいました。数字を指定したり具体例を出してもらうようにしたりすると、より正確に出てくる確率が高まります。
「会話をしてだんだん慣れていくと、思い通りのものが出てくるようになります」と話しました。

次に「Image FX」を使って、画像を作ってみることに。
テーマは「昭和と令和を掛け合わせたおもちゃ」です。かわいいブリキ人形や、近未来的なコマなどユニークな画像が、10分ほどで生成されました。学生たちは互いに見せ合い、感想を言い合っていました。

AIとの付き合い方は?

半導体などの技術が進み、普段使っている自然な言語で、AIと会話できることを実感した学生たち。
「では、生成AIは考えることはできるんでしょうか」と川越氏は問いかけます。
答えは「今はできない」です。
生成AIは学習した大量のテキストデータをもとに予測をして、確率が高い返答をしています。
このため、AIは「嘘をつく」ことも。AIは絶対的な事実を聞くには向いていません。
間違った情報をもっともらしく生成してしまうことをハルシネーションと言い、「これはものすごくよく起きる。」と川越氏。
「ハルシネーションは当面はなくならない。気を付けて使うしかないんです」と語りました。

最後に川越氏はAIのメリットを話しました。
「AIを使う一番の良さはスピードです」と、読むのが大変な大量の資料を読み込ませて要約させる使い方や検索方法を紹介。
「AIは何度聞いても怒らないし疲れない。便利に使うことで努力のしどころが変わってくる」と語り、「ぜひたくさん使ってみて、慣れていってください」と講義を終えられました。
最初はAIを難しく考えていた学生たちも、実際に使うことで身近に感じられるようになる授業となりました。

担当教員よりメッセージ

生成AIは急速に普及し、その生成物を見聞きする機会も増えてきています。様々なデバイスやサービスに組み込まれて行っていますので、今は使ったことのない学生も、遠からず、どこかで使うことになるでしょう。今だからこそ、長所も短所も、問題点も将来性も、積極的に体験して欲しいと思っています。今回は川越様に、最先端の使い方の一端をご紹介頂けました。生成AIについて、知識だけでなく実際の使い方も知ることができ、貴重な学びの機会が得られたのではないかと思います。川越様には、この場を借りて、心より御礼申し上げます。

2024年11月15日

人気ゲームの企画立案!?セガサミーホールディングスと「文化の盗用」について学び、実践する特別コラボ授業が行われました。

10月29日に「海外の日本文学」(担当:国際学部国際学科 大塚 みさ教授)の授業でセガサミーホールディングス株式会社との特別コラボが始まりました。「文化の盗用」について知り、どう付き合っていくかを実地で学ぶこの授業。社会の最先端にいる企業に協力いただき、世界の広がりを感じることができる貴重な機会となりました。

ゲームで世界に感動を

はじめにセガサミー法務知的財産本部の寺原潤氏からセガサミーグループについて紹介がありました。
セガサミーグループはゲームを筆頭にしたエンターテインメントコンテンツ事業、パチンコの開発や販売をする遊技機事業、そしてリゾートの運営やカジノ機器の開発を行うゲーミング事業を軸に展開しています。「感動体験を創造し続ける」をミッションに、ありたい姿として「Be a Game Changer」を掲げています。
「この革新者たれ、という精神は、実践女子大学にも通じる考えとシンパシーを感じています」と寺原氏は語りました。

今回は数あるグループ会社の中でもゲーム開発を行う株式会社セガとのコラボです。
セガでは家庭用ゲームソフトの開発が主力。ゲームをする人は全世界に30億人を超えると言われ、大きな市場です。
「だからこそ、文化の盗用は問題になっています」と寺原氏。
今回の課題について触れながら説明をされました。

文化の盗用とは?

続いてセガの表現倫理ユニットに所属されている吉田一彦氏が登壇。
「ゲームなどのコンテンツ内の表現が倫理的に適切なものにするためのサポートをしています」と仕事内容を紹介されました。技術が進歩するにつれゲーム内でもリアルな表現ができるようになったことにより、表現一つひとつが、社会的に問題がないか確認する必要がでてきたのです。
そのひとつが「レーティング」。
定められた基準に照らし、対象年齢などの目安を提示するものです。暴力表現などが多いものなど、未成年からの保護が大きな目的です。

しかし「文化的な理由で年齢問わずNGにすることもある」と吉田氏は話しました。
地域の文化、宗教に合わない表現があった場合にストップをかけるのも大事な役目です。
法律や条例には違反していなくとも、文化や宗教の倫理的に侮辱や差別に該当しかねない表現をチェックするのです。「社会との価値観のズレがないように、さまざまな相談があります」と吉田氏。
例えば、2021年に行われた東京オリンピックのオフィシャル映像の初期設定では、神社の境内でサッカーやバスケットボールをするという構想があったと言います。しかしこれは神聖な場所にはふさわしくない行為ということでNGを出したと話されました。
「こういった倫理観は全世界、地域ごとで違っている。相談があるたび自分たちもそれぞれの国の文化や伝統を一から調べています」と語りました。

防ぐためにはどうする?

では「文化の盗用」は具体的にどのようなことでしょうか。
吉田氏は「自分の文化ではない文化や伝統から物事を流用、私物化する行為」と話します。部外者がよく知らずに外見だけ真似ることで、誤った模倣が広がってしまい、元々の伝統が守られなかったり差別につながってしまったりすることも。

吉田氏は実際に問題になった例を上げていきました。
そこには日本の文化である着物が盗用された例もありました。また日本家屋の屋内にハイヒールで立っている写真の例なども紹介。
「日本文化が何一つ尊重されていないと批判が殺到しました」と吉田氏。このほかにも、黒人文化のヘアスタイルやファッションを安易にまねた例や、インディアンやサーミ族など少数民族の伝統を盗用した例も。
そこには「世界的に有名なブランドも次々に批判されています」と吉田氏は語り、文化の盗用をしないことの難しさを語りました。

「こういった相談はこうしたらいいという正しい対処法がなかなかありません」と吉田氏。
しかし「他文化の要素を取り入れることはNGではないはずと信じたい」と言います。きちんと調べ尊重して正しく取り入れれば、その文化を伝えることもできると考えています。

文化の盗用に注意してゲームを企画しよう!

ここで学生たちの課題が寺原氏から発表されました。
セガ製作のゲーム「龍が如く」の新作の企画立案です。それぞれお題の国や地域が与えられ、リサーチとディスカッションにより文化の理解を深め、文化の盗用を避けるという点を重要視して作成することが求められます。
そのとき一目で「○○編」だと分かるようなキービジュアルを作ることも課題のひとつ。
単純な街並みだけでなく、ストーリーにもその地域らしさを盛り込みます。

担当の国・地域はくじ引きで決定。
アルゼンチンやトルコ、イギリス、ドイツ、ペルーなどさまざまな国が発表されました。
各チームは各国についてリサーチをして要素を探していきます。

最後に学生たちから質問の時間が取られました。
「批判されたら文化の盗用に当たると判断されるのでしょうか」という質問には吉田氏が「批判されたら、ということではないけれど、その文化の当事者が怒るというのは一つの基準です」と回答。
文化の盗用を防ぐには倫理観を正常に保つことが大切と言い、「みなさんもこの点に気を付けて頑張ってください」とエールを送りました。

担当教員よりメッセージ

この日を心待ちにしていた学生たちは、みな真剣なまなざしで話に聞き入っていました。当日のリアクションペーパーには、「文化の盗用」に対する深い理解とさまざまな観点から抱いた関心、そしてチーム課題に対する並々ならぬ意気込みが一人ひとりのことばで綴られていました。
100分間という短い時間でしたが、豊富な事例を用いた「文化の盗用」のレクチャー、そして学生たちを鼓舞する細やかな演出によって、大変有意義なコラボ授業を行うことができました。セガのみなさまに心から感謝申し上げます。
初回授業から重ねてきたチーム学習の成果を活かし、11月の中間発表、そして12月の最終発表に向けて、力を発揮できることを願っています。

2024年11月5日

企業格を考えよう!「グローバル・キャリアデザイン」の授業で元資生堂の山田氏による講義が行われました。 

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月18日に元株式会社資生堂の山田正人氏による講義が行われました。企業にも人格のような「格」がある、というお話のもと、さまざまな企業の企業格を調べてみるケーススタディを行いました。それぞれの企業の特徴をつかむヒントになる、就職活動にも応用できる実践的な授業となりました。

企業にも「格」がある

現在山田氏は、エフクリエイション株式会社に所属しています。
企業広告や商品パッケージやデザインなどをつくる広告制作会社です。エフクリエイションは、資生堂の創業家である福原グループのひとつ。
資生堂とはいまも深い縁があります。
今回は資生堂の現状や歴史や社風などを通して、「企業格」について考えていきます。
「私がしゃべるばかりでなく、皆さんがどう考えどう活かすかを大切にしていきたいです」と話され、講義は始まりました。

まず、前提となる人格とはなにか、というお話から。
人格とは「能力、性格、気質」からなるもの。性格と気質は似たような概念ですが、「性格は成長するにつれあとからできるもの、気質は遺伝的・先天的なもののことです」と山田氏。
この考えを企業にあてはめたのが、企業格です。企業でいう「能力」は、売上利益・ブランド・商品など。「性格」は理念。
また広告や社長の発言など、時代によって移り変わるものです。
そして「気質」は企業の歴史や社風。長年にわたって蓄積されてきた風土だと話しました。

資生堂の作り上げた企業格とは

ここで資生堂を例に企業格を見ていくことに。
資生堂は化粧品業界ではNo.1の業績です。
「能力という目に見える企業格では日本のトップです」と山田氏。
性格にあたる理念では、美を創る、提供することで世の中を良くするという「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を掲げています。
150周年のCMでは、世代を超えて自分らしく活躍する女性たちの姿を表現し、好評を得ました。

気質として、創業者の福原家のことを紹介しました。
資生堂は1872年日本初の洋風薬局として銀座に開業。化粧水や歯磨き粉がヒットし、大きくなっていきました。
2代目の時代に本物やデザインにこだわる「資生堂スタイル」が徐々に確立していきます。
特に資生堂を象徴するモチーフになった「花椿」は2代目自らが描いたスケッチを元にデザインされました。
「ブランドイメージという概念もなかった時代に作り上げていったんです」と、山田氏は2代目の持つ先見性とアートの精神を伝えました。同時期に試験室を開設し、最先端の技術を化粧品に応用することを目指していきます。
山田氏は「このアートとサイエンスの理念は今なお続いています」と話されました。

人に温かい社風はいまも

企業格の気質には社風も含まれます。
資生堂は、人に温かく、社員一人ひとりが互いを尊重し合う社風です。
「私も学生の際の企業面接のときに、エレベーターのボタンを社員の方が開けてくれ、いい会社だなと感じたことがあります。小さなことですが、人に温かいというのは資生堂の持っている気質で、それが周りの人を幸せにするのだなと思います」と山田氏。
社外や世間からのイメージも、信頼性が高く安心感がある、という評価を受けています。

最後に山田氏が資生堂の企業格をまとめられました。
能力は日本を代表する化粧品会社であること、性格は品質や安全性の高い製品を作り美で世界を豊かにすることを目指していること、気質は創造性を大事にしてチームワーク良く仕事に取り組んでいること、を表にして示されました。
「これを例にして、みなさんにも企業格を考えてもらいたいと思います」とケーススタディが始まりました。

身近な企業はどんな企業格?

ケーススタディで示されたのはアパレル企業のユニクロ、飲食業のスターバックスコーヒー、生活雑貨の無印良品、日清食品の4つ。
学生は10つの班に分かれ、それぞれ担当の企業について企業格を調べていきます。学生たちは協力し合いながら各企業について調べていきました。

20分ほどワークの時間が取られたあと、最後に各班から調べた企業格について発表がありました。
ユニクロについて調べた学生は、性格として企業理念のほか、「CMにさまざまな人種や年代の人を採用している」ことに着目。
山田氏も「ダイバーシティを推進している企業ということが分かりますね」と感心されました。
日清食品を調べた班からは企業サイトに合った文言から「ハッピーやユニークであることを重視している」という点を挙げました。
山田氏は日清食品の企業ミュージアムがあることを紹介し、「商品を使うだけでなくミュージアムで体験することでより企業を知ることにつながります」と話しました。

企業格を考え就活に役立てよう

最後に山田氏は「今日で実践女子大学の、真面目で熱心だという大学格が分かった気がします」とあいさつ。
「企業格を考えることは、その企業がどんな会社であってほしいかを考えることにつながります。就職活動のときにもぜひ考えてみてください」とアドバイスを送りました。
学生たちにとって就職活動の企業研究のヒントとなる授業となりました。

担当教員のメッセージ

本授業には、初めてお越しいただきました。
海外の事業所での経験を含めて、グローバルキャリアを築かれてこられた山田さんのお話しは、
大変興味深い内容でした。そして「会社の格」という視点での見方は、学生にとっても
私にとっても新鮮な切り口でありました。
時代とともに会社の姿は変化していきますが、やはり150年の歴史を刻む資生堂ならではの
語り継がれたミームは、永遠に変わらないと思います。
これから就職活動に臨む学生に対する企業研究の新たな視点は、大変参考になる示唆に富んだ
内容を構築いただきました。この場を借りて山田正人様には心から感謝申し上げます。

2024年10月30日

お化粧は心を満たすもの。「国文学マーケティングプロジェクト」の授業で資生堂企業資料館の貴重な資料を拝見する講義が行われました。 

10月3日に「国文学マーケティングプロジェクト」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社資生堂の企業資料館の大畑昌弘氏による特別講義が行われました。資料をたどることで、企業の歴史とともに日本の近代史を肌で感じることができる貴重な時間となりました。

貴重な資料を一か所に集約

資生堂の企業資料館は静岡県掛川市にあります。
1、2階が展示スペース、3、4階が保管庫になっています。資料館は1992年に開館。
きっかけは「創業100年に社史を創ろうとしたこと」と大畑氏。
創業当時からの資料を全国から収集したことでした。現在21万点収蔵され、現在も販売されている新商品を集め続けているため年々増えていると言います。

ここで大畑氏は「資生堂はどんな会社だと思っていますか」と学生たちに問い掛けました。
「一言で表すのは難しいですが、私たちは『変わらないために変わり続けてきた会社』だと考えています」と話しました。大切にしているこだわりを守り続けるために、時代に合わせてさまざまな変化をしてきた資生堂。
その歴史を資料とともに紹介してくださいました。

本物を志向し新しいものを生み出す

資生堂は1872年創業。
創業者は医者の家に生まれた福原有信です。
現在の東京大学医学部にあたる幕府医学所にて、当時最先端の西洋薬学に出会います。当時、日本で使われていた薬と言えば漢方でした。
福原は西洋薬学を浸透させたいと、民間では日本初となる西洋薬学の調剤薬局を始めました。
それが資生堂です。

資生堂の名は中国の古典である易経の一節、「万物資生」から採られました。全てのものは大地から生まれるという言葉です。
「ここから考察出来るのは、新しい価値を生み出していくというフロンティアスピリッツです」と大畑氏。
それまでなかった西洋薬学の薬局という新しいものを生み出した福原。
「この新しい価値を生み出すことで、より良い世界にしていくという考えは現在のミッションにもつながる」と話しました。

1888年には日本初の練り歯磨きを発売。
かなり高価でしたが大ヒットしました。陶器に入ったラグジュアリー感もあり、本物を志向する資生堂を象徴する商品となりました。
1897年発売の化粧水「オイデルミン」も、資生堂を代表するヒット商品。当時最先端の技術により作られましたが、現在も改良が重ねられ販売され続けています。

文化発信の役割も担った

資生堂の少し変わったビジネスに飲食業があります。
「資生堂パーラー」は資生堂が運営するレストラン。創業者の福原有信がアメリカのドラッグストアでソーダ水を販売していることをヒントに、ソーダ水製造機を輸入して店内にソーダファウンテンをつくったことから始まりました。
本物志向はしっかり受け継がれ、息子である福原信三が、ソーダファウンテンをレストラン「資生堂パーラー」に発展させ、オーケストラの演奏や銀食器の使用などにより、高級なレストランとして浸透しました。「ものごとはすべてリッチでなければならない」とは息子信三の哲学です。
「資生堂は高級なもの、間違いのないものを扱っているというブランドイメージを醸成した」と大畑氏は説明しました。

1934年のミス・シセイドウが美容部員の起源です。
採用された女性たちは、化粧品の知識やメイク方法などはもちろん、着付けやテーブルマナー、歩き方など教養やマナーをしっかりと叩き込まれました。資生堂を代表する一流の女性として育てたのです。
彼女たちはミスシセイドウとしてスター的な人気を得て、女性たちの憧れの存在になっていきました。

女性文化情報誌「花椿」の発刊もこの頃です。
商品の宣伝のほか、海外の映画情報や献立のレシピなども載せていました。生活の欧米化が進みつつもテレビもない時代、文化の発信も担いました。

化粧は生活に必要なもの

とはいえ、資生堂もすべてが順風満帆だったわけではありません。
1923年の関東大震災や戦争の時代は商品を作ることも売ることも難しいときも。

最近では、2011年の東日本大震災も大きなダメージがありました。
資生堂はすぐ支援のために動きます。物資の輸送はもちろん、社員が現地に赴き化粧品がなくてもできるお手入れ方法を伝える活動も行いました。
現地で被災者の方と交流を重ねる中で、化粧品とは何か、ということと向き合っていったと大畑氏は語ります。
当時の経験から大畑氏は、「化粧は心を満たすものです。化粧品は食料品などと違って、生きることに必要なものではないかもしれませんが、明日を信じることや、前向きになるために重要なものであると知りました」と話しました。

コロナ禍では、手肌が荒れにくいアルコール消毒液を開発。
医療関係者に無償提供しただけでなく、さまざまな企業で作れるよう処方も公開。利益だけを追うのではなく、世の中を良くするために行動し続けています。
「資生堂は今年で152年目を迎えます。これからも想像もつかないような変化がうまれていくことでしょう。それでも変わらないために、変わり続けていくのです」と大畑氏は話しました。

前向きになるために必要なもの

講演後には学生から「お化粧をする日としない日では気分が違う。お化粧をすると気分が上がるので、震災のときの話はとても共感しました」という感想が。
大畑氏は、「化粧品がほしいと思えることは、社会に出る、つながるという感覚がある。生活必需品ではないと思われがちですが、一番大事なものになることがあるんです」と熱意を込めて語られました。

授業の最後には、資料館から持ってきた貴重な資料を実際に鑑賞。
学生たちは美しい化粧水や香水、ヘアトニックの瓶などを真剣に見入っていました。

担当教員のメッセージ

国文学の学びと企業活動を結び付けて考えることをコンセプトにした本講座も5年目を迎えました。
本講座には、資生堂と叶匠寿庵の2社にご協力をいただいて授業が進行していきます。
まずは、資生堂企業資料館の大畑館長からの講話をいただきました。和魂洋才をベースにおく資生堂、
近代文学の中にも数多く登場する資生堂パーラーなど、国文学の学びが、企業の歴史の中に
散りばめられていることを改めて学びました。大畑館長には、この場を借りて心から感謝申し上げます。

2024年10月29日

人を巻き込む思考力を身に付ける!「キャリアプロジェクト演習」の授業で取り組みたい社会課題のプレゼンテーションが行われました。 

10月15日に行われた「キャリアプロジェクト演習」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、学生たちが企業の皆さまを前に発表を行いました。身近な社会課題の中から自分たちで取り上げたいテーマを選び、それを解決する策をプレゼンテーション。企業の方々のサポートを受けながら、この授業内での実現を目指し取り組んでいきます。

心強いメンターのサポートを受けられる

この日は緊張した空気が学生たちを包んでいました。
株式会社資生堂の渡部卓明氏、株式会社ベネッセi-キャリアの東山高久氏、株式会社オリエンタルランドの横山政司氏の3名がそろい、皆さんを前にプレゼンテーションを行うためです。
この授業では、企業側から課題をもらって受動的に取り組むのではありません。自分たちが取り上げたい社会課題を見つけるところからスタート。
そして解決案のプレゼンテーションで終わるのではなく、メンターの助力を得ながら、実際に解決策を実践するところまで目指していきます。

「メンター」とは取り組んでいる内容について指導・助言をしてくれる、信頼のおける相談相手のこと。内容を良い悪いと判断するのではなく、一緒になって良いものになるようサポートしてくれる役割です。
横山氏は「今日は、成長のために厳しいことを言われるかもしれません。
ただ、きっと今後の参考になる。自分の班だけではなく、他の班に言われたことも聞いておきましょう」とアドバイスをされました。

誰のための課題解決?

早速各班が取り組むテーマの発表です。
まずは3班から。
渋谷のオーバーツーリズムを取り上げました。渋谷のように観光場所が限られている場合、滞在時間は短く経済効果が少ないことや、一か所に人が集中することが課題と考えました。
そこでSNSを利用し観光客の流れを変えようと発想。
知られていない文化的な場所を発掘・紹介することで観光客の分散を図ります。

発表後はメンターからの講評をいただきました。
東山氏からは「誰のための解決策なのか明確に。困っているのは観光客なのか、地元住人なのか絞りましょう」と助言がありました。

次の4班はフードロスに着目。
身近なところで本学の食堂が使える時間が限られていることに、学生が不便を感じているのを聞きこみました。
そこで食堂の職員にアンケート調査を行い、食品の廃棄量や人員不足で長時間食堂を開けておけない実態を調査。
そこで食堂以外の場所でパンを販売し、稼働率を上げることで廃棄を減らす案を考えました。
渡部氏からは「なぜフードロスが起こるのか、パンを販売することでその根本的な問題解決につながるか調査が必要ですね」と話されました。

渋谷の過ごし方をよりよく

5班は本学のトイレにハンドドライヤーがないことを課題にあげました。
取り付けるには費用などハードルがありますが、学生たちの声として要望の強いハンドドライヤーを設置できないかを検討していきます。
東山氏からは「自分たちのやりたいことをやるだけでは人は協力してくれない。
設置することでどんな社会課題が解決に近づくか考えてみましょう」とアドバイスされました。

1班は渋谷がどこも混んでおり少しの時間つぶしも難しい点をあげ、過ごしやすい拠点づくりを提案。
学生向けに低価格で過ごせる場所を提供するため、企業や大学と連携していきたいと考えています。
発表後は「本当に渋谷にはそういう場所がないのでしょうか。同じような取り組みをしている場所がないか調査してみましょう」と渡部氏が助言されました。

当事者意識を持って取り組む

6班も渋谷での過ごし方に注目しました。
カフェの込み具合や待ち時間の分かるアプリを作成し、短い時間でも有効に過ごせる方法を提案。
リアルタイムで待ち時間を更新するにはお店側の負担となるため、客に入力してもらえるようなシステムを作りたいと考えています。

東山氏は「皆さんが過ごせる場所を探しているのはよく伝わりました。社会課題との関係性を明確にして、店側や協力者にもメリットになるか考えると良いと思います」と話しました。

最後の2班はこども食堂について。
子ども食堂という名前自体は知っていても、実際どこにあって何をしているのか知っている人は少ないことを課題として、必要な人に届くような工夫や補助金の案内を行いたいと考えました。
渡部氏からは「この活動を皆さんがやる意味は何かが大事。上辺でなく寄り添う活動を期待します」と応援の言葉も聞かれました。

人を巻き込む説得力を

全班の発表が終わった後は、もらった助言を踏まえてグループでディスカッション。
メンターの方々が各班を回り、どうすればさらに良くなるか、現在はなにが問題かを相談します。
社会にとってどんなメリットがあるのか、自分たちが取り組む意味は何か。どういう点を強調すれば協力者が見つかるのか。各班まだまだスタートに立ったばかりです。

来週から提案の実現に向け、メンターとの相談を通し、さらに企画を詰めていきます。
東山氏は「協力者となる企業が、学生たちとその企画をやろうと思えるような説得力が大切です。頑張っていきましょう」と声を掛けられました。
渡部氏は「社会に出たら実現できるかわからない話を聞いてくれる大人は少ない」と話します。「でも私たちは絶対に皆さんを見捨てません。相談しないと損です。ぜひたくさん聞いてきてください」と全面協力の気持ちを伝えてくださいました。
学校だけでなく企業、社会を巻き込んで動いていく他にはない授業スタイル。
12月の実現を目標に、学生たちは奮起しました。

担当教員のメッセージ

本科目は、文学部キャリア科目として、今年度から新しくスタートした講座です。
文学部の1年生を対象とした講座で、従来の社会連携から一つステップアップして、
「渋谷×社会課題」をテーマに、自ら課題をみつけ、課題解決に向けての実践までを
正課科目として行おうという試みです。一般社団法人フューチャースキルズプロジェクト研究会
(FSP)がオリジナルで企画した講座となっています。
コンセプトは、「主体性」と「人を巻き込む思考力」の2つを身につけることにあります。
年内までの授業については、3人の社会人メンターが伴走していきます。

2024年8月25日

自律的人材になるために!「実践キャリアプランニング」の授業でホリプロ取締役による特別講義が行われました。 

大学共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社ホリプロ・グループ・ホールディングス取締役である鈴木基之氏が特別講義を行いました。日本の芸能・エンタメ業界の最前線にいる鈴木氏から、華やかな世界の舞台裏の話がたくさん飛び出し学生たちは興味津々。世界で求められる人材になるヒントも多くいただきました。

エンタメを産業へ!

この日は7月12日。鈴木氏は「今日は何の日か知っていますか」と問いかけました。7月12日はマララデー。10年前に、16歳だったマララさんが国連で「すべての子どもたちに、すべての女性に教育を」と訴えた日です。鈴木氏は「まさに女子教育の先駆者である下田歌子先生が創設された実践女子大学で、今日、話が出来ることは運命だと思います」と語りました。そして「芸能エンターテイメント業界を生き抜く心の糧」と題し儒学者の言葉を引きながら、熱量高く話を始められました。

「皆さんにエンタメ業界に興味を持っていただきたい」と鈴木氏。
それは単に俳優などに興味を持つということではなく、「産業」として注目してもらいたいということ。
「IT業界や自動車業界などは産業と呼ばれますが、悲しいかなエンタメは産業と呼ばれていないんです」と話します。
しかし、鈴木氏はエンタメが単なる娯楽ではなく、強い産業として世界的に拡大していることを説明。国もようやくエンタメ・コンテンツを産業として伸ばすことを目指し始めています。
「日本経済をけん引する一つの成長分野として期待されている」と話しました。

芸能プロダクションの仕事とは?

ホリプロには現在約450名のタレントや俳優が所属しています。
文化人やスポーツ選手、音楽グループも多く在籍しています。
「ひとりのタレントが売れてくると、楽曲を制作する部署(音楽制作部)、コンサートをする部署が出来、コマーシャル、ドラマ、映画や舞台出演の依頼が増えて来るようになると、自らの所でCMやテレビ番組、映画制作をする部署(映像制作部)、そして舞台制作をする部署が・・・と様々な事業部が生まれてきました。これが基本的な芸能プロダクションの成り立ちです」と鈴木氏。
CMや映画、ドラマ製作部などは自社所属のタレント以外も多くキャスティングし、製作されています。
「自社のタレントを出すことが目的ではない。あくまでビジネスとして多くのお客さんに観てもらうことが大事」と芸能プロの方針を説明しました。

鈴木氏はホリプロに入って45年。ほとんどのエンタメ事業に関わって来られました。
入社当初はアイドルが苦手だったと言います。
しかし多くのファンレターを読み、考えが変わります。学校で友人関係に悩んでいたけれどアイドルの曲を聞いて頑張ろうと思った学生などを筆頭に、多くのエピソードがありました。
「アイドルが人の生き方まで変えることを知った」と言います。
音楽の力、タレントのすごさを身に染みて知ったと話しました。

先を見て長所を伸ばす

マネージャー時代には失敗もあったと語ったのは、タレントの方向性や戦略について。
「いまでは誰もが知る国民的女優も、最初から人気があったわけではないんです」と、当時目指していた方向性が間違っていたエピソードを披露くださいました。
「マネージャーは1年先、3年先を見据えて仕事を選んでいかなくてはなりません。さまざまな個性を持つタレントがいるなか、先を見据えてこの原石をどう磨いていくか」と長期的な目線を持つことが大事であると話されました。

鈴木氏は儒学者・佐藤一斎の「着眼高ければ則ち理を見て岐せず」の言葉を引きます。
先を見据えて戦略を立てる大切さを教える言葉です。
また「我は当に人の長所を視るべし」の言葉を引き、「ホリプロは長所を伸ばしていきます。欠点は自分でも分かっている。本人が見えていない長所を見て伸ばしてあげるのがマネージャーの役割」と隠れた、しかし重要な視点についても話されました。

人間力を鍛え自律的人材へ

ホリプロはグローバル戦略にも力を入れています。これからの芸能人に求められるものは、一芸だけではダメだと話します。
鈴木氏は「これまでは日本の中で売れていればよかったけれど、日本一になることがかっこいいことではなくなっている」と話しました。そしてそれは、芸能人に限りません。これからは「自律的人材が大事」だと語ります。

他の情報を信じすぎず、自分で信じること。指示がなくても自ら能動的に動き、問題解決に向かう力。
これは下田歌子が育てようと目指した人物像でもあると鈴木氏は言います。一人で行おうとせず、周りを巻き込む「人間力」を持つ人材です。「一人でも多くの人に下田歌子先生のようになってもらいたいと思っています」と講演を結びました。

熱量を持って作品を作る

授業の最後には学生からの質問を募集し、鈴木氏が回答くださる時間も。
「女性マネージャーに必要な力はなんですか」という質問には、
「幅広い知識を常に求め続けて、何にでも好奇心を持って取り組めること、そして、今はSNSをうまく扱えることが求められています。」と回答されました。
「映画化はどうやって決まるのでしょうか」という質問には
「プロデューサーの熱量が一番です。ホリプロには小説や漫画など、ホリプロでこの作品を作りたいという強い思いで入ってくる人が多い。映画化までいくつもの壁がありますがこだわりを持って作れる人間が、作品のファンからも受け入れられるものを作れる」と回答されました。

芸能界の裏側や経済効果など、知らなかった世界に触れることが出来、学生たちは多くの刺激を受けた講義となりました。

担当教員のメッセージ

昨年からご講演をいただいているホリプロ様からは、今年は役員であり、恵那市ともご縁の深い鈴木基之様にお越しいただきました。ホリプロ様の事業内容、そしてエンタメ業界のグローバル化の現状など、とても幅広い内容をお話しいただきました。
また、それぞれのお話しと本学創立者下田歌子先生の言葉を結び付けていただくなど、学生にとって、大変貴重な時間となりました。
この場を借りて鈴木様をはじめ、ホリプロの皆さまに心より感謝申し上げます。

2024年8月23日

1年生対象の企業連携講座「実践プロジェクトa」を実施しました!

1年生対象の企業連携講座「実践プロジェクトa」をキャリア教育科目として展開いたしました。本年は5回目の実施となり、近畿日本ツーリスト様とサントリーホールディングス様の2社にご協力いただき、今年は、過去最高の36名の1年生が履修致しました。本講座は、フューチャースキルズプロジェクト研究会(FSP研究会)が構築しているプログラムであり、全国約30大学で展開されている講座です。狙いは、「大学での学び方を学ぶこと」と「主体性を引き出し、身につけること」です。14コマに2つの企業様からお題をいただき、中間、最終と2回のプレゼンテーションを含めての議論が続きます。しかも、テーマは、実際に企業様が取り組んでいる課題てあり、1年生にとっては、極めて高いハードルです。

近畿日本ツーリスト様からの課題

近畿日本ツーリスト様からの課題は、

あなたは地域活性化・課題解決を担う旅行会社の社員として、地域の本質を見極めて、地域の課題をデザインの力で解決し、その土地に元気を与え、より豊かに暮らせるような価値を生み出すことに挑戦。
今回は、伊豆諸島の個性豊かな6島の“土地の力”を引き出して『東京諸島の未来』をデザイン!
「ぜひ島に行ってみたいなぁ」「わたしもこんな風を島で感じてみたいな」と、心が動かされるような新たな企画をプレゼンせよ!です。
日本のZ世代+海外インバウンドに向けて、日本語と英語で島のキャッチコピーや島のオリジナルロゴマークをデザインし、それを活用して企業・商品・サービスと島と連携させて効果的な地域プロモーション案を企画する課題が出されました。かなり難しい課題に、グループのみんなで力を結集し、各島の斬新なデザインや企画を発表してくれました。


サントリーホールディングス様からの課題

サントリーホールディングス様からの課題は、あなたはサントリーホールディングスの社員です。2024年6月、ピープル本部から「人材育成革新プロジェクト」のメンバーとして指名されました。具体的な課題は二つあります。
①会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人・社会人に求められるものは何なのか、結論を発表して下さい。
②それを踏まえ、これからサントリーに入社してくる社員に対する具体的な研修計画を提案してください。
今年のメンバーも、必死に取り組み、最後までやり遂げてくれました。

<学生のコメント>
◆実践に入学したら絶対に受けたいと思っていた授業でした。辛かったけれど、近畿日本ツーリスト様のお題を
いただいた頃とサントリーホールディングス様の提案を終えた今では、明らかに自分自身に変化がありました。
◆社会人と学生のギャップもかなり衝撃的なものがありました。これからの学びに変化をもたらせてくれました。

担当教員からのメッセージ

入学直後の1年生、自ら選択したとは言え、相当難しい課題に頭を悩ませながらも、真摯に前向きに諦めることなく取り組んでくれました。この授業を履修してくれた学生のその後の成長が著しいことは言うまでもありません。さらなる成長に向けてサポートを続けていきたいと思います。ご協力いただいた近畿日本ツーリスト様、サントリーホールディングス様にこの場を借りて御礼申し上げます。

2024年8月7日

高速道路で使用した横断幕をアップサイクルしよう!中日本高速道路株式会社とのコラボ授業が行われました。 

人間社会学部の「演習Ⅱ・Iクラス」(担当:ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)で中日本高速道路株式会社(以下、NEXCO中日本)とのコラボ授業が行われました。5月から準備を始め、様々な学びを通して、工事の情報を知らせる役割を果たしこれまでは廃棄されていた横断幕の別の利用を考える、アップサイクル案を検討しました。そして、7月3日に八王子支社の皆様の前で最終プレゼンテーションに臨みました。

高速道路の安全を守るNEXCO中日本

NEXCO中日本は、関東甲信から東海、北陸エリア(東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県)の高速道路の管理をおこなっています。

大切な仕事のひとつが高速道路の工事です。工事は渋滞などの原因にもなるためドライバーにとって大切な情報。電光掲示板に場所や期間などの情報が表示されますが、電光掲示版に載る情報は、事故や渋滞、天候状況などもあり、工事の情報だけを表示し続けることは難しいそうです。そのために用意されているのが横断幕です。本線を横断する跨道橋に横断幕を設置して、今後の工事の予定やこの先で工事があることなどを知らせます。

そこで学生に出された課題は「ターポリン樹脂の特性を活かした横断幕のアップサイクル案」を考えること。NEXCO中日本の事業内容を踏まえて、社会的課題の解決や地域貢献につながるアイデアにするようにという指示も担当教員から出ました。

当初はグループでアイデアを出して発表する予定になっていました。しかし、最初に個人でアイデア出しを始めたところ、面白いアイデアがいくつも出てきたことから、グループごとに意見を集約するのはやめて、最後まで個人で取り組むという方向転換をしました。

NEXCO中日本が使用している横断幕の素材は、ターポリンと反射ターポリンです。前者はポリエステル製の布を軟質の合成樹脂で挟んだビニール素材の生地で、防水性、耐久性に優れ、色褪せしにくいというという特徴があります。後者は、ターポリンの表面に反射材を加工しているのでやや厚みがあります。車のヘッドライトや街灯の光を反射するのが特徴で、夜間でもはっきりと文字が見えるため、照明が少ない中央道などで使用されています。

学生は、それぞれの特性を生かしたアイデアを検討しました。

防犯グッズにアップサイクル

この授業では、中間発表のときから挙手制を採っていて、準備ができた学生から次々に発表を行いました。

 

多くの学生から出たのは、ランドセルカバーにするアイデアです。

反射ターポリン特性をうまく使った案で、地域の交通安全啓発も行っているNEXCO中日本の活動と関連性があります。実際にターポリン樹脂を購入して自作してきたという学生もいました。すぐ作れるように型紙を持参し、交通安全教室などの中でワークショップをすることも提案しました。

自転車に関連するグッズのアイデアもたくさん出ました。

防水性に着目した学生は、自転車やバイクの保護カバーを提案しました。防犯用のかごカバーを提案した学生は新聞記事を示して、「自分の居住地域をはじめ、同じ日に複数の地域でひったくりが頻発しており、かごカバーは警察も推奨しています」と地域の防犯に貢献できる点を強調しました。そのほか、自転車の鍵につけるキーホルダーや、自転車の前後に貼れる反射シールを提案した学生もいました。シールは杖や帽子などにも貼れるため、夜道の安全につながると、汎用性の高さをアピールしました。

日常品として使えるものを

日常品として使えるものを提案した学生から出てきたアイデアは、パソコンカバーとブックケースです。「バッグやコインケースなどのアップサイクル品はすでに出ていますが、若者向けは少ない印象」、「雨の日に濡れて欲しくないものを守りたい」というのが考案理由でした。

ビニール傘が年間8000万本も捨てられていることを問題視し、世界に一つしかないものであるならば、みんなが大切にするのではと傘を提案した学生もいました。このアイデアは、丈夫で遮光性に優れたターポリン樹脂の特性を活用したものです。

幼稚園や小学校など砂場の雨除けにしたらどうかという地域貢献につながるアイデアも出ました。さらに、植木鉢の代わりになるプランターカバーやシートベルトカバーなどの制作を、SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)で行い、自分たちで作ることで、NEXCO中日本の取り組みを知ってもらうのはどうかという企画も出てきました。

ユニークな案では、ライブで使える「ファンサービスうちわ」がありました。

うちわに文字を貼り付け「推し」にアピールするもので、光に反射する特性を活かすことができます。この発表をした学生は、「NEXCO中日本がこれまで関わりの薄かったエンターテイメント業界とつながることで、新しい可能性が拓けるのでは」と提案しました。

 

これから実物化を検討!

他にも、レジャーシートやフリスビー、交通安全のお守り、避難所に使えるカーテン状の仕切りなど多くの案が出てきました。

全員の発表が終わると、八王子支社 総務企画部の高取部長と宮部課長から総評をいただきました。

高取様からは、これまで学生が積み重ねてきた準備への労いと多様なアイデアに対するお褒めの言葉をいただきました。これまで社内でも色々なアイデアを検討してきたが、ファンサービスのうちわのような発想はなかなかなく、大変面白いとのことでした。

宮部様からは、「色々な情報を調べて、検討してくれてありがとうございました。アップサイクルについてしっかり調べ、素材の特徴を活かしたものを考えてくれました。社員に社用のノートパソコンを貸与していますが、併せてパソコンカバーを作って配るのもいいかもと思いました」という感想をいただきました。「安全を何よりも優先するという、NEXCO中日本の理念を大事にしてくれて、交通安全に関連付けたものが多かったのも嬉しかったです」とも話されました。

発表中に学生は、①ターポリン樹脂の特性を生かしたアイデアか、②NEXCO中日本社の活動とアイデアにつながりがみえるか、③実現可能か、この3点についてお互いのアイデアを評価しており、最後にどのアイデアを実物化すると良いかの投票を行いました。学生から高評価を得たアイデアとNEXCO中日本の皆さんから好評だったアイデアが実物化される予定です。最後にNEXCO中日本の中村様から、NEXCO中日本の企画で進めているワークショップの案内があり、ぜひ遊びに来てくださいとお声がけをいただきました。

一つの役割を果たしたものに、新たな価値を与えることでまた社会に役立てていくという循環を、自分たちの手で実現していくという得難い機会に恵まれ、学生も担当教員も非常に多くのことを学ぶことができました。

NEXCO中日本八王子支社の皆さま、ありがとうございました。

なお、2024年9月8日(土)に本学日野キャンパスで開催予定の“JISSENマルシェ”の企業・自治体ブースにて、NEXCO中日本社によるワークショップがございます。上記学生のアイデアも製作する企画になっております。ぜひ、おいでください。

詳細はこちらをご覧ください。
https://www.jissen.ac.jp/125th/marche.html

2024年8月5日

人とのつながりを大事に。「女性とキャリア形成」の授業で日本マナー・プロトコール協会理事長が人生と企業の選択について講演を行いました。 

大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月20日に日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリアを持つ明石氏は、自身の経験を通して、人の繋がりや人生について幅広くお話されました。

企業をどう見極めるか

本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。司会の学生は「社会に出るとマナーが必要な場面が多いですが、マナーを学ぶ授業はあまりなく私自身もマナーに自信はありません」と話し、「今回の講演で何か一つでも就活や、社会人として役立つものを身に付けたいと思います」と、明石氏にマイクを渡しました。

明石氏も「私が学生のときは、キャリアやマナー教育はなかった」と話し、この授業が貴重な内容であることを強調され、これから就職活動が待っている学生たちに向けて、「就職は人生のターニングポイント」と話し始められました。
明石氏は45年前に日本航空株式会社(JAL)に新卒のCA(客室乗務員)として入社されました。しかしその少し前は「結婚したらCA職をやめなければならない時代もあったそうです」と話します。
また、明石氏が就活をした時は、第2次オイルショックで4年制大学卒の女性は就職活動に苦戦したそうです。最近ではコロナで就職が厳しかった時があったように、「就職活動は、世の中の経済状況に影響されることが多いんです」と明石氏。

今、社会は大きく変わっています。その上で、今後どのような企業が発展していくのかなどを見極めて、企業選びをしてほしいと話します。
また、学生の私たちにとっては知名度がなくても優良な企業があることや、女性活躍を推奨している企業などの調べ方なども紹介してくださいました。

自分はどんなキャリア志向だろう?

「今はいつでもキャリアチェンジできる時代です」と明石氏。転職のハードルは低くなったのは良いこととしつつも、「スタートはやっぱり大事」と強調されました。
明石氏自身も最初に就職した企業がJALで良かったと話しました。
「しっかり教育をする会社だったことが、きっと今につながっていると思います」と言います。

とはいえ「これからキャリアを考えると迷うことが多いですよね」と明石氏。
企業の数は多く、どういう会社が自分に合っているんだろう、と考えるとき、少しでも自分のことを知っているとある程度絞り込みやすいと話しました。
そのひとつとして、自分のキャリア志向を確認することが大事と紹介。
自分は、「チャレンジ志向型」なのか、人と人を結び付ける「プロデューサー型」か、一つのスキルを突き詰めてやっていきたい「専門職型」なのかなどなど。
「仕事も大事だけれど、家庭もしっかり大事にして働きたい人ももちろんいらっしゃるでしょう。自分の仕事に対する志向を知ったうえで、あなたにとっていい会社を見つけましょう」と話しました。

また、すぐにやりたい仕事ややりがいのある仕事ができるわけではないということも忠告。
つらい仕事や好きではない仕事をやらなくてはいけないこともありますが、「逃げない、折れない、継続することが大事」で、渡辺和子氏の「置かれた場所で咲きなさい」という本を紹介されて、まずは与えられた仕事をしっかりやってこそ自己成長に繋がると伝えました。

すべては人で決まる

「会社とは人の集団です」と明石氏は言い、人との関係を大切にすることを伝えました。
「チャンスをくれるのもあなたを評価するのも、相手や周囲の人」と話し、人から好かれ、人としての好感度を高めるポイントを話されました。
その秘訣は「明・元・素」。明るく、元気で、素直なことです。

また「主体的な思考をもつ」ことの大切さも伝えられました。
「なんでもマニュアルに基づいて答えを教えてもらいたいと思う人が多いようですが、正解は1つとは限りません」と言います。
そのためには、何が本質なのか、多角的に物事を見ることが大切だと語りました。
「マナーも時代とともに変わっています。しかしその本質は変わらないんですよ」と明石氏。
マナーの本質は、人と良い関係を築くためにどうしたらいいかを考えること。そのための配慮や心遣いがマナーです。
自分自身が大切にしていることは何なんだろうか、相手はどうして欲しいのだろうか、という判断の基準を持つことで惑わされないようになると話しました。

「みなさんは20歳前後で、結構生きてきた感じがしているかもしれないけれど、皆さんの人生はこれからです」と明石氏。
時間をどう過ごし、人とどう関わっていくかで、人生の輝きが決まると言い、「先が決まっていないという事は、未来は可能性に満ちて開けていると希望を持ってほしい」と講演を結びました。

目の前の仕事に一生懸命に

講演後は質疑応答の時間が設けられました。
学生から「時間の使い方で意識していることは?」という質問に対して、「集中すること。なにかに一生懸命になっていると時間が早く感じられるでしょう。そんな風に何事にも情熱を持って取り組んでみると良いと思います」と回答されました。
「明石氏はどんな基準で仕事をされていますか」という質問には
「一番大事にしているのは「信頼」。信頼を築くのは時間がかかるし大変。しかし頼られることは嬉しいし、信頼してもらえるかどうかが人として大切な基準になります」と答えました。

学生たちは「自分に合った企業をどう選ぶか」という、就職活動に向かう上で大きなヒントを得た講演になりました。

担当教員よりメッセージ

私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様に今年もご登壇いただきました。多くのご経験から導き出された明石さんからのメッセージの中に、チャンスをくれるのも評価してくれるのも周囲の人であり、そのためには、好感度プラス「明・元・素」、すなわち明るく、元気で、素直であるというお言葉が印象的でした。この場を借りて、明石様に心から感謝申し上げます。

2024年8月1日

渋谷にホテルを作るなら?「実践キャリアプランニング」で湘南レーベルとのコラボ授業を行われ学生たちがプレゼンテーションを体験しました。 

大学共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:髙橋裕樹特任教授)で、湘南レーベル株式会社との特別コラボが行われました。本学のある渋谷に新たにホテルを建てるならどんなところがいいのか。学生たちはそれぞれの顧客像を作成し、リサーチ。6月28日の授業では、最終プレゼンテーションに臨みました。

1週間が8日あったらホテルでどう過ごす?

湘南レーベルは、湘南のビーチカルチャーをベースにホテルやカフェ、シェアハウスなどを展開しています。
松山竜造氏は有名ホテルのレストラン勤務などを経て2020年に入社。現在はホテル事業部長として活躍されています。「8HOTEL CHIGASAKIの立ち上げに関わり、開業時は支配人も兼任されました。

8HOTELのコンセプトは、「1週間が8日あったとするならば、人はどのようなインスピレーションを抱くのだろう」というもの。湘南というビーチカルチャーと、ホテルで過ごす非日常を織り交ぜて作られています。
コンセプトに沿った体験価値として、8HOTELが提供しているもののうち特徴と言えるのがサウナとプール。サウナ好きの男性一人客にも多く利用されています。
また、毎週日曜にはヨガイベントも開催しており、プールでは水に浮かべたボードの上で行うサップヨガが若い女性やカップルから人気を集めています。

ペルソナに合ったサービスを考えよう!

コラボ授業は3週間にわたって行われました。
1回目では湘南レーベルのホテル事業について学び、どのようにホテル探しをしているかグループワーク。
2回目ではマーケティングのやり方を習い、最終課題に挑みます。
マーケティングでは商品やサービスを作る前に「ペルソナ」と呼ばれる理想の顧客像を立ち上げます。その顧客のニーズに合致したサービスなどを考え、企画を考えます。

松山氏から出された課題は「渋谷に8HOTELを作るなら?」。
「日帰り観光客」「ビジネス利用一人客」「記念日利用カップル客」の3つのターゲットが提示。その3組が楽しめる8HOTELを渋谷に作るなら、どんな体験価値を提供するかを考えます。
渋谷のどこに作る?どんな施設やサービスが必要?などディスカッションを通してグループで資料を作成。
3回目の授業で発表に臨みました。

渋谷のホテルでどんな体験価値を提供するか

学生は17グループに分かれ、発表を行いました。
それぞれのグループからさまざまな企画が発表されました。

場所は裏渋や代々木公園付近など、渋谷といえども静かで緑が多い地域が人気。
代官山や広尾などの高級住宅街の落ち着いた地域を提案するグループもありました。
また、本学のある六本木通り付近も「アクセスも良く静かなので良いと考えました」とするグループも。
逆に表参道やパルコ付近など渋谷ならではのアクセスと賑わいのある付近を選ぶグループもありました。

ほとんどのグループに共通していた施設はサウナです。
サウナは8HOTELも特徴のひとつでもあるため外せないと考えたグループが多かったようでした。
屋上にリラクゼーションスペースやプールを備え、非日常の空間を提供するとしたグループもありました。

ペルソナで違いが出たのは、日帰り観光客の設定です。
羽を伸ばしに来たバリキャリ女子、外国人男性、地方からプチ贅沢をしにきた女子大生、などなど。
それぞれのグループで想定されたターゲットに沿ってサービスもさまざまなものが提案されました。
例えば外国人向けに和室を完備。「渋谷で和室は珍しいのでは」と提案されました。
都心にいながら非日常が味わえるよう岩盤浴や足湯を提案したグループも。
また交通の良さを生かし、タクシーの手配やお迎えサービスを出したグループもありました。

イベントではヨガなど運動だけではなく、陶芸体験や和菓子作成体験なども。
近くのカフェなど飲食店と連携し無料券を付けるという案や、スマホをしまえるタイムロックボックスを完備しデジタルデトックスを促す案も。
これには松山氏も「なかなかない発想」と感嘆されました。

これからのホテルを考えてみよう

松山氏も「いろんな視点があっておもしろかったです。社内でもこういう考えはなかったという感想もたくさんありました」とコメントされました。「行きたいなと思えるホテルがいくつもありました」と話し、優秀グループを発表しました。

表彰されたのは、明治神宮外苑に隣接したエリアに作り、自然を感じられるホテルを提案したグループ。
屋上には芝生を敷いて自然との一体感を目指しました。
松山氏からは「課題解決感があり、プレゼンも分かりやすくまとまりがありました」と授賞理由が伝えられました。グループの学生からも「資料作りも工夫したので受賞出来て嬉しい」と喜びの声が聞かれました。

「これをきっかけにホテルというものを身近に感じてもらえたかなと思います」と授業の最後に松山氏は語り掛けました。
「ホテルも旅行でしか行かないものというイメージから、日常使いのできるものに変化しています。泊まるだけのホテルはこれから淘汰されていくと思っています。ホテルが何を残せるか、皆さんもホテルに遊びに来て考えてみてほしいと思います」と話し、「皆さんからいただくものが多い機会でした」と授業を締めくくられました。