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2022年9月28日

スポーツニッポン新聞社との社会連携でこれからのオリンピック・パラリンピックの在り方を学生たちがプレゼンする授業が行われました。

2021年に行われた東京オリンピック・パラリンピック2020大会から一年。これからのオリンピックはどうなるかを考える授業が7月19日(火)に渋谷キャンパスにて行われました。ひと月前には有森裕子氏の講演を聞き、改めてオリンピックのレガシーについて考えました。この日は全6班が「オリンピックの明日」についてプレゼンします。開催規模や時期、参加国やジェンダー問題など、これからのオリンピックはどうあるべきかを発表しました。こちらは共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の、スポーツニッポン新聞社との社会連携授業です。この授業の様子は7月27日付のスポーツニッポン本紙にも掲載されました。

ジェンダー平等を実現するには?

1班目のテーマは「スポーツにおける男女平等」です。現在のオリンピックは男女にこだわりすぎているのではないかと指摘。東京大会では競泳や卓球など男女混合種目が増えました。ただ、サッカーなど混合が難しい競技もあることを問題点として挙げました。また女性のスポーツは先進国しか進んでいないことも懸念点として着目。宗教や国の経済事情など女性選手がうまれにくい環境も多くあります。そこで、 IOCが各国を指導することを提案。政治的な思惑とは外れたIOCであれば、男女平等の理念を広められるのではと期待をかけました。

発表の終わりにはスポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員からの講評がありました。藤山氏は、東京大会で混合種目が増えた点に着目したことに感心されていました。唯一男女の区別がない競技として馬術を紹介し、「これから混合種目はさらに増えるだろう」と述べました。IOCが今後様々な種目にプッシュしていくべきだという考えにも賛成していました。

開催時期はスポーツの秋に!

次の班は開催時期や規模、開催地の決定の仕方について提案。時期は気候が良くスポーツがしやすい秋に据えます。開催地は、一般投票をするシステムをプラスすることを提案しました。各国のプレゼンのあとに、全世界の人がネット投票できる仕組みです。決定から参加することでさらに興味を持ってもらえる効果を狙います。参加国は、貧困地域も含めすべての国から参加できるように働きかけます。2016年から導入された難民選手団の人数や出場種目を拡大するなどを提案しました。

藤山氏は「具体的な例が出てきて面白かった」と感想を伝えました。その上で、秋開催の難しさには現在のオリンピックの問題があることを教えてくれました。現在のオリンピックの最大のスポンサーはアメリカのメディアです。視聴率を取るために、他にスポーツの大会のない夏に行うことが、オリンピック憲章にも記載されているのです。スポーツそのものより利権が重視されている大きな問題です。ただ、全世界的に気温が高くなっている昨今「改善していかなくてはいけない」と藤山氏は語りました。

国対抗の意識を減らしてより自由なオリンピックに

3班目は、有森裕子氏の講演を聞き学んだ「オリンピックは国対抗ではなく個人戦である」という点にフォーカスしました。入場を国ごとではなく競技ごとにしたり、国旗や国歌の使い方を改めたりするなどの案が出ました。また、現在の報道は自国選手のメダルの数や国旗を背負った写真など、観客が国対抗だと思ってしまう在り方であるという点を指摘。「ガンバレニッポン」など国を背負わせるメディアの伝え方を改め、選手個人の戦いにフォーカスしたものにすることを提案しました。そうすることで選手のプレッシャーを減らし、LGBTQなども公表しやすくなる効果があると繋げました。

藤山氏も「おっしゃる通り変えていかないといけない」と大きく頷きました。IOCはむしろ国ごとで競わせようとする風潮があるため、それに流されないよう「メディアに携わるものとして、叱られた気分です」と笑いを交えながら述べました。

SNSで選手もみんなも発信しよう!

4班目は、大会が終わった後の振り返りが少ないのではないかという問題点に着目。解決方法として、大会後もSNSを利用し選手や著名人などに積極的に投稿してもらうことを提案しました。2つ目の問題として、特に日本人選手の自己肯定感が低いことを挙げました。選手に国を背負わせるような報道を改め、選手自身も楽しみ良心を感じてもらえる発信をすることが大事だと述べました。さらに、オリンピックの初心である「五輪休戦決議」を思い出し、競技以外のところでも国や選手同士が交流を深めることを提案。争いの多い現代だからこそ、異文化理解やジェンダーなど多様性を受け入れるきっかけになる大会にすることを目指すことを提案しました。

藤山氏からは「SNSでの発信は今後盛り上がっていくと思います」との同意の意見が。これまで選手個人の発信はあまり望ましく思われていませんでしたが、これからはどんどん選手も発信していくべきだと語りました。「そのためには、選手の意識を変えなくてはいけない、オリンピックは個人の戦いなのだということを選手にも共有していく必要がある」と述べました。

もっと多くの人が参加できるオリンピックへ

5班は、オリンピックのモットーに注目。「より速く、より高く、より強く」は男性寄りの考えではないか?と問題提起しました。現代に合わせて「より美しく、共に感動を」と加えることで、女性や後進国も参加することの意味を与えると提案。一人ひとりが目に見えない壁をなくす意識付けが大事であると述べました。性別で試技の場を分けることを廃止し、ホルモン測定値で出場可能とすることで、トランスジェンダーの選手も葛藤なく参加できるようにします。また、オリンピックとパラリンピックは同時開催を提案。別々だとパラリンピックの時期に薄れてしまう関心を集めたままにします。さらに開催地の負担を減らすため、複数国で同時開催という案も出しました。競技ごとに適した場所で行えるため、選手の負担も減るとプレゼンしました。

藤山氏も「男性中心の時代のモットーだったので、変更は良い案ですね」と感想を述べました。オリパラの同時開催や、開催国を分けることもとても具体的で面白かったと語りました。また、経済的にも環境的にも、近い将来複数国での開催は実現するのではないかとも述べました。

一点集中をやめて地方も活性化

6班目は開催地の問題に注目し、一都市で開催することの問題点を取り上げました。全世界から人が集まることで街は混雑し交通は混乱します。そこで開催を国全体で行うことを提案。競技ごとに分散することで、人の集中を防ぎ混乱を防ぎます。また、地方でも競技を行うことで、地方住民も親近感を持って楽しむことができ、観光客も増えるため地域活性化につなげることができます。会場は新設せず、すでにある施設をオリンピック用に改修し利用。費用を抑えられるだけでなく、地方の会場のバリアフリー化を進め、老朽化の防止にもなると提案しました。

藤山氏からは「中身があってとても良い案」と感心の言葉が。東京大会で利用された国立競技場は、1600億円かけ新設され、維持費に年間24億円かかると言われています。現状は大きな赤字であるためどう運営していくかが注目されています。このような事態を避けるため、2030年に誘致中の冬季オリンピック札幌大会は、札幌だけでなく北海道全域で行われる予定であることを教えてくれました。

今回をきっかけにもっとオリンピックについて知ってほしい

6組の班のプレゼンを終えて、藤山氏からの総評をいただきました。「すべての班を聞いて、皆さんの関心はジェンダーの公平性のことなのだなと感じました」と感想を述べました。そして、オリンピック憲章に個人の戦いであると記載されていることが学生たちにとって衝撃であったように、この事実をもっと広めるべきだと語りました。「そのためには、まず選手の意識改革も大事。選手がまだオリンピックを国対抗と思っている」と問題点も述べました。こういった考えを広めるためにも「みなさんがSNSで発信してもらえればいいと思います」と伝えました。そして「せっかくオリンピックについてここまで考えたのだから、より深く知るきっかけにしてください」と語りました。

また、プレゼンの様子を撮影してくれていた亀山氏にもコメントをいただきました。亀山氏はスポーツが大好きで、スポーツニッポン新聞社へ入社。しかし大学卒業からコロナ禍が始まり、コロナ禍ではスポーツは不要不急と言われ苦しい思いをしたと言います。「皆が好きな娯楽についても、今後どういった付き合い方をしていくかという観点を持つのも面白いと思います」とメッセージを伝えました。また、就活にあたり自分の意見を持ち、周りの人たちの意見を取り入れる柔軟性を持つようエールを送りました。

東京大会の残した<レガシー>とは

最後に深澤教授の総括がありました。深澤教授は東京大会の準備・運営を行う組織委員会の「文化・教育委員」の一員でした。前回の東京大会は、戦後の復興の象徴として、建物などハード面を強化した大会でした。今回の東京2020大会は、未来を担う若者たちの心に残るソフト面を重視した大会を目指していました。そのため全国810の大学・短大と連携協定を締結し、オリンピック・パラリンピック教育の推進や醸成に取り組みました。しかし、大会後に組織委員会に報告書を提出したのは実践女子大学を入れてわずか数校。「開催の延期や無観客開催など、各大学で盛り上げることが難しかったことが窺われます。」と深澤教授は語ります。東京2020大会が終わってから1年。新型コロナウイルスという思いもよらない感染症の影響を受けた異例の大会でしたが、次の世代に何をつなぐか、何が残ったのか考えることが大事だと述べました。なぜなら、「きっとまた東京でオリンピックは行われます」。今回の大会について授業を行ったことや、大学で取り組んだことをレガシーとして受け継ぎ、その時に改めて考えるきっかけにしてほしいと語り授業は終了しました。

2021年10月13日

「キャリア開発実践論」が6年目を迎えました!120人が講座を巣立ちました(9/11~13)

社会の各界各層で活躍するリーダーを養成する共通教育科目「キャリア開発実践論」が、今年度で6年目を迎えました。企業の管理者向けリーダー養成プログラムを大学の正規科目にアレンジしたユニークな講座は、本学キャリア教育の看板授業として、すっかり定着。同講座を履修して本学を巣立った卒業生は、120人にのぼります。

コロナ禍で「完全」オンライン

学生の熱意はオンラインからも

6年目となる今年度の授業は、コロナ禍のため、残念ながら9月11日から13日の全期間中、すべてがオンライン開催となりました。同じくコロナ禍に見舞われた昨年は、初日こそ教室で対面授業が実現しましたが、2~3日目はオンライン。宿泊施設を借りて2泊3日で行う恒例の集中合宿スタイルは、2年続けて見送らざるを得ませんでした。

 東京都内でコロナ禍4度目の緊急事態宣言(7月12日~9月30日)の発令下にもかかわらず、コロナ感染者数が、8月13日に過去最大の5,773人(2020年8月13日は206人)まで急拡大しては仕方がありません。リーダーシップコンサルティング代表で岩田松雄氏(元スターバックスコーヒージャパンCEO)、同社共同代表の鷲見健司氏の講師陣2人にとっても、自宅からのZOOM講義は6年間で初めての経験となりました。

 ただ、そんな悪条件の中でも、授業で講師と真剣に向き合う学生の姿勢は、不変でした。同講座は、開講以来一貫して「私たちは何のために働くのか」がテーマであり、学生それぞれが自らのミッション(働く目的や天職)を授業のなかで探ります。初日の「個人ミッション」作成に始まり、2日目の「リーダーシップ」や「ファシリテーション」、「ダイバーシティ」へと続く名物講義。最終3日目に行う学生の決意表明「アクション宣言」は、自宅からの参加はいえ、例年に劣らず熱を帯びたものとなりました。

交流セッションは本音トーク

例年と変わらないものには、初日と2日目の夜の部、後輩のためにと交流セッションに駆け付けた先輩の存在もありました。

(学生)「就活で営業職を考えているが、自分に新規開拓ができるか自信がない…」
(OG)「私は新規開拓が得意。先月は1人で130万円の利益を上げた。この額って実は(私の会社の中では)すごいんだよ」
(学生)「(瞠目して)どうしたら、そんなふうになれるんですか?」
(OG)「まずは若い女性で販売職だと珍しがられるから。1か月に1回は相手を訪問すること。そうすれば相手の印象も、○○(会社名)の人から、○○の△△さん(姓名)に変わり、顔も覚えてもらえる」
「相手には明るく接する。そして、とにかくめげずに通うこと。特に古株の人ほど(こちらの努力を)をよく見てくれている」

恒例の先輩との交流セッション

今年度も、初日の土曜日夜と2日目の日曜日夜、延べ26人の履修生OGが交流セッションに参加しました。例えば、2日目の夜に行われたZOOMのブレイクアウトルームの一つを覗いてみると、就活で営業職を希望しようかを悩む後輩に対して、親身の悩み相談が行われていました。年齢が近いということもあるのでしょう。すべてが本音ベースです。

 他のブレイクアウトルームでも、遠慮のない先輩と後輩の交流が行われたことは想像に難くありません。後日集計された先輩の参加アンケートからも、それがうかがえます。

▼「就活を長くやっていると色んなことを考え、就活自体が辛くなり、妥協することがあるかもしれない。でも、実際は働いてからの人生の方がとても長い。この会社で自分はやって行けそうか、理想通りの働き方ができるか、という視点を見つけ、働きたいと思える会社に出会えるよう頑張って欲しい」(2019年卒、RAさん)
▼「『自分の人生でやりたいこと』と聞かれても、答えるのは難しい。コロナ禍で制限された困難を乗り越えるには、日頃からOJT(実際の職務現場で業務を通して行う教育訓練)は始まっているという意識が大切だと思う。その考えがいずれ経験値となり、皆さんを支えてくれます」(2018年卒、ENさん)

 こうした先輩の声は、いずれもコロナ禍と就活で不安な日常を送る後輩を気遣うものばかりです。

 他方、交流セッションは先輩の赤裸々な社会体験やビジネス体験が聞ける稀有の機会であり、学生の刺激にもなっています。そのアドバイスは、学生のこれからの選択肢にも少なからず影響。最終日の「アクション宣言」にも、その一部が投影されました。

▼「先輩との交流セッションで『やりたいことを大学生のうちに見つけている人の方が、就職活動とか、働くことに対して、うまくいっている印象がある』と言われた」(Mさん)
▼「OGの方とのフリートークで『結局は自分との戦いだ』という言葉をもらった。その言葉を信じて頑張りたい」(KEさん)

 もはや、OG抜きに本講座は考えられないことが分かります。

履修者の6割は「活字離れ」を自覚?

その「アクション宣言」ですが、これは2泊3日の授業を締め括る、いわば本講座のフィナーレです。そして、学生それぞれが最終日午後にどんな決意表明をするかは、この講座最大のクライマックスと言えるでしょう。今年度も22人の履修生全員が各2分間、講義を踏まえて今後自ら取り組む「アクション」3項目を厳選し、決意表明をしました。

【学生】「私のアクションは、大きく分けて、ミッションに関するアクション、人と関わることに対してのアクション、自分の内面に関わるアクションの3つです。

 このうち、1つ目のミッションに対するアクションですが、私のミッションは『地元が好き、でも華やかな東京の暮らしも大好き、だから地元を豊かにしたい』というもの。地元を豊かにするのは地方創生。そのためには勉強して県庁等に入らないと話にならないので、今の勉強時間に1時間プラスアルファ、勉強時間を増やすことをアクションにしたいと考えました。

 2つ目のアクションは、『人と会話をする際にお互いに前提を明確化する』です。例えば、リーダーとリーダーシップの意味の混同など、会話の際に前提の違いが原因でお互いの会話に齟齬(そご)を生じてしまうからです。

 最後3つ目の自分の内面に対するアクションですが、それは『自分の好きなものを見つけてみる』です。具体的には、自分の内面を豊かにするために2週間に1度は美術館に行き、自分の知性や文化的なものを深めたいと思います」

 こうしたアクション宣言の内容を、22人について振り返ると、目前の就活対策、自己に足りないものの克服、将来の夢の実現に向けて…など実に多種多様でした。ただ、総じて本や新聞、テレビのニュースを通じた情報収集が多かった気がします。

▼「語彙力を高めたい」(STさん、RYさん)
▼「政治や経済の知識不足を本講座で思い知らされた」(KEさん)

 こうした理由から、履修生22人のうち約6割の13人が、本や新聞による情報収集、ニュースや記事の閲覧をアクションの一つに挙げています。裏返せば、若者のSNS依存が進み、これらメディアへのアプローチを「アクションに高めなければ」と自覚するほど、大学生の活字離れが進んでいるということでしょうか。

有為の人材120人が講座を巣立つ

「キャリア開発実践論」がスタートしたのは、今を遡る6年前。全学部学科の3~4年生を対象とした共通教育科目として発足しました。本講座を担当する文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)によると、スタートに際して「2泊3日の宿泊学習を行うことを含め、同講座の開催スタイルに対して学内での異論も多かった」と振り返ります。

 しかし、この間、たびたびメディアにも取材され、学内や学外を問わず講座の認知度が向上。本学キャリア教育の看板授業としてのステイタスを高めていきます。そして6年目の今年度は、累計履修生120人を達成、初の3桁超えとなりました。

▼「(交流セッションへの参加が)自分の気が引き締まり、改めて業務に邁進したいと思うきっかけになりました」(2017年卒、EIさん)。
▼「自分の生きたいキャリアを見つける手がかりを、キャリア開発実践論で見い出してください。私は進路の方向性はこの授業から見つけました」(2019年卒、 SKさん)。
▼「自分なりの信念、ミッションを大切にしてください。(講座で学んだ)自分の軸があることで、社会人となった今も、ぶれずに進むことができています」(2021年卒、AIさん)

 履修生OGそれぞれは、本講座で会得した自分の軸を武器に、厳しいビジネスの荒波を乗り越えるとともに、年2回、毎年9月と3月にある「キャリア開発実践論」「深ゼミ」に参加することで、初心を忘れないように心掛けています。社会に巣立った履修生OGが自身の体験を学生に伝え、学生が先輩を手本に有為の人材として社会に巣立つ。こんな先輩と後輩のスパイラルが、同講座の確かなレーゾンデートル(存在理由)として、リーダー養成の好循環を広げているのではないでしょうか。

6年間を振り返って

深澤教授もZOOM越し指導

深澤晶久教授の話

2016年に始まったこの授業のコンセプトは、「超一流の講師の下、超一流の環境で学ぶことで、実践女子大学の卒業生として、社会の先導者として活躍してくれる学生を育てること」を狙いにスタートしました。岩田さん、鷲見さんというお二人の講師から学べたことの幸せを噛みしめながら卒業した学生たちの多くが、大学時代を振り返った時、この講座が転機になったと語るほどのインパクトになっていることは事実です。無限の可能性を秘めた学生が、この講座をきっかけに大きく成長し、実践女子大学の卒業生としての矜持を胸に、さらなる活躍を心から期待したいと思います。そして、厳しくも愛情に溢れるご指導をいただいている岩田松雄様と鷲見健司様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

岩田松雄氏の話

通常この授業の内容は大企業の部長さんクラスを想定したものでした。
もちろん学生さん向けに色々工夫はしているものの最初難しいかなと思っていました。
しかしながら皆さん正面から課題に取り組み、想定以上の成果が上がっていると思います。
特にこれから就職活動を迎える3年生には、自分の人生の使命、何のために働くのかなどを考える良いきっかけになり、またファシリテーション、リーダーシップなどのスキルも身につき、就職活動の面接はもちろん企業選びにも役に立っているようです。
また若い人が入社して3年以内にすぐ辞めてしまうという問題に対しても、その会社の知名度や給料など待遇面だけで選んだわけではないので、退職する方も少ないようです。
また多くのOGの方も研修に参加して、後輩たちにとても有意義なアドバイスを送ってくれています。この研修を受けたというだけで何か仲間意識のようなものが広がっているようです。今後ともさらにより良い研修にしていきたいと思っています。

岩田講師も自宅から参加
鷲見講師のファシリテーション実践指導

鷲見健司氏の話

大学3、4年という大切な時期に、当講座の以下のような特徴が、受講生にとって今後の人生を深く考えるきっかけや転機になっていれば嬉しく思います。
・岩田講師から個人ミッション作成法の指導を直接受け、自分理解を深めるプロセスを通じてミッションを作り、語ることで自己認識を強化することができる
・当講座を受講し社会人として活躍する先輩方から、企業や仕事、就活等についてリアルな体験談を直接じっくり聞くことができる
・岩田講師と直接対話を繰り返しながらリーダーシップについて本質から理解を深めることができる。受講者自身が自らの中にあるリーダーシップを見出し、より積極的に発揮するきかっけとなる
・志を共有する受講生同士が、ファシリテーションの実践演習をしながらジェンダーギャップ等に関するグループワークやプレゼンテーション等を次々と乗り越えていく過程で、3日間、お互いを理解し合い、温かく支え合い、切磋琢磨し合うことを通じて、素晴らしいチーム形成の経験や、生涯の財産となる得難い同期(同じ釜の飯を食った盟友)を得ることができる

2021年8月2日

コロナ禍でも「自分の思い」消さないで!五輪メダリストの有森さんが本学で特別講義を行いました(7/6)

東京2020オリンピック競技大会開幕を18日後に控えた7月6日(火)、五輪女子マラソンメダリストの有森裕子さんが、本学渋谷キャンパスを訪れ、特別講義を行いました。

有森さんは、新型コロナウイルスの感染者急拡大で大会開催に批判が高まるなか、「オリンピアンとしては、オリンピックそのものが悪いとは全然思っていない。社会との関わりの中で存在するオリンピックの存在意義を考えてみて欲しい」と強調。また、コロナ禍で不安な大学生活を強いられる学生たちに「自分の思いと自分のプラスを消さないこと。それさえあれば、できないことはない」と呼び掛けました。

 授業は、2~3年生が対象のキャリア教育科目「国際理解とキャリア形成」の中で行われ、スポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員と有森裕子さんの対談が実現しました。指導教授は文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育)です。今年度は学生26人が履修。コロナ禍でオンライン講義を余儀なくされた昨年と違い、今年度は教室で行われました。

未熟な?オリンピック

 対談は冒頭、コロナ禍で異例ずくめの東京オリンピックに関する話題でスタートしました。感染者が急拡大するなか、開催それ自体にも批判がある今回の大会をどう評価するか。有森さんは「藤山さん、こんなに想像つかないオリンピックは今までありましたか?」と藤山氏に水を向け、同氏も「これまでのオリンピックの中で、初めてです」などと、応じました。

 その上で、有森さんは学生たちにも問い掛けます。「(今回のオリンピックの)イメージが悪いのは、どこが悪いのかを皆さんに聞きたい。オリンピックそのものが本当に悪いのか。今起こっているコロナ禍の現実がおかしいのか」。有森さんは「私は、オリンピックそのものが悪いとは全然思っていない」と強調した上で、「そこは本当に一番間違えてほしくない」と訴えました。

 ただ、組織委員会などを含む大会主催サイドが、これまで通りのスタンスのままでいいのかというと、そうとも言い切れないようです。というのも、今回のオリンピック開催に従来のような一般の圧倒的支持がないのも事実だからです。

 この結果、有森さんは「非常に毎日、悩ましい日々を過ごしている」と胸中を明かしました。けだし、「社会との関わりの中で存在するオリンピック開催であれば、すべてに優先されるというのは、自分たちの勘違いではないか」と自問自答していると言い、「(そういうことを)今まで考えてこなかったところに、やはり『オリンピックが未熟だった』と凄く感じている」「本当の意味で、社会の中で論ずべき自分たちの存在意義を考えてこなかったことが、今露呈している」などと強調しました。

対談する有森さんと藤山編集委員

オリンピアンはエリートばかりか?

藤山編集委員

 他方、藤山氏も有森さんとは別の角度から、東京オリンピックの課題を探ります。藤山氏は自らの取材体験を通して、「オリンピックに無関心、反対と言う人たちは若い人が多い」と語り、若者たちの声に耳を傾けたのです。

 「どうして無関心なのか、若い人にいろいろ聞いてみると、『オリンピックに出場するような選手たちは、小さい頃からエリートで、特別に育てられてきたような人とばっかり。自分たちと全く住む世界が違う人なので、オリンピックは勝手にやってくださいよ』みたいな人が、とても多かったんです」と藤山氏。

 オリンピックに出場するアスリートは、本当に絵に描いたようなエリート選手ばかりなのでしょうか。藤山氏は対談を通じて検証を試みます。そのアンチテーゼともいえるのが有森さんの競技人生といえるからです。対談では有森さん曰く、「エリート街道とは無縁の、変な街道」の競技人生を振り返りました。

無名の存在から、一躍五輪の銀メダリストに

 翻って、有森さんが陸上競技の表舞台に登場したのは、1990年の大阪国際女子マラソンからです。初マラソンで2時間32分51秒の初マラソン日本最高記録をたたき出し、6位に入賞。2年連続で出場した翌年の大阪国際女子マラソンも、2時間28分1秒の日本最高記録で2位に入り、トップランナーの座を不動のものとしました。翌1991年夏、東京開催の世界陸上は4位。そして1992年夏のバルセロナ五輪女子マラソンで銀メダル獲得と、一気に世界の最高峰へ駆け上がるのです。

 この間、わずかに2年半。ところが、それ以前は本当に無名で、後の五輪銀メダリストが陸上競技界で注目を浴びたことは、ほとんどありませんでした。故障がちで、そもそも満足に走れなかったせいもあります。それ以前の有森さんは、どこで、何をしていたのでしょうか?

競技人生の始まりは「門前払い」から

 有森さんが陸上競技を始めたのは、岡山市の私立就実高校に入学してからでした。市内の公立中学校時代はバスケットボール部。ただ、有森さんは持久力に優れ、その特性を活かして校内運動会の800m走で3年連続優勝したと言います。それがきっかけで、バスケットボールから陸上に目を向け、「バスケの下手な自分より、走ってゴールテープを切れる自分の方がいい」と考え、陸上競技転向を決意したと振り返りました。

 しかし、高校生となった有森さんは、陸上部に入部を希望するも、同部の顧問から「素人はいらない」とあっさり門前払いされてしまいます。就実学園は中学・高校・大学の一貫校で、同高校の運動部は全国優勝したバレー部に代表されるようなスポーツ強豪校。中等部から内部進学した逸材がゴロゴロしていました。他校から入学した素人同然の有森さんは相手にしてもらえなかったのです。ただ、そこは後にマラソンで驚異の「粘り」を発揮する有森さんです。1か月かけて陸上部顧問の先生のもとに通い詰め、とうとう根負けした陸上部顧問から仮入部を勝ち取りました。

 そうまでして陸上をやりたい気持ちが強かった理由は何だったのでしょうか。有森さんは「頑張ったら人から評価され、自分の自信にもなったものが、運動会で走ったことが初めてだったんです。陸上がしたいというより、唯一走ることで得られた自信を手放せなかったんです」と話してくれました。

有森さんは、2年続けて登壇

トライアスロン転向を目論むも、あっさり頓挫

五輪メダリストの実話に学生は興味津々

 ただ、有森さんによると、高校時代は全くの鳴かず飛ばず。実績はゼロでした。国民体育大会やインターハイとはまるで無縁で、陸上部顧問の恩師の推薦で日本体育大学を受験した際は、面接官から「有森さんはどうしてこの大学に入れたんですかね?」と不思議がられる始末でした。大学入学後も、1年時に関東学生選手権大会で3000m2位に入賞し周囲を驚かせたことはあっても、またもや足を故障。やがて名門・日体大陸上部の中で、その存在を忘れられていきます。

 この間、有森さんは密かにトライアスロンへの転向を目論見ます。当時、トライアスロンにはまだ女子の第一人者がいなかったからと言いますが、要は「現実逃避」です。親からの仕送り10万円の大枚を全てはたいて、高額なトライアスロン用自転車を購入。転向計画の準備は着々と進展するかに見えたのですが、早晩、計画はあっさり頓挫してしまいました。「肝心の自転車が盗まれてしまい、いきなり目の前から消えてしまいました」。有森さんは、はっと我に返ります。その時の心境を、高額な自転車を盗まれた悔しさよりも、「自分は何をしているのか。何のために大学に進学したのか。走るためだろう」と振り返りました。

未来切り拓いた、小出監督との出会い

 卒業後は体育の教師になるつもりでした。高校と大学を通じて実績ゼロの自分に、実業団から声が掛かることは有り得なかったからです。そう頭では分かっていても、これまでの陸上競技人生に「不完全燃焼感」は拭えませんでした。そんな時に岡山市内の自宅に掛かってきたのが、リクルートの小出義雄監督からの一本の電話でした。後に有森さんが「小出監督の勘違いだった」と分かった監督からの電話が、有森さんの未来を切り拓きます。

 小出義雄監督は、女子選手育成に卓越した手腕を発揮する名伯楽として当時から知られていました。2019年4月に80歳で亡くなりますが、有森さんのほか、2000年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さん、1997年世界陸上アテネ大会女子マラソン優勝の鈴木博美さん、2003年世界陸上パリ大会女子マラソン3位の千葉真子さんなどを育て、幾多のトップランナーを世に送り出しました。

 有森さんは、友人の紹介を頼りに手紙を通じて実業団のリクルートにアプローチ。小出監督は同社陸上部のマネージャーから入部希望の有森さんの存在を知らされたようです。電話での2人の会話は、小出監督が過去に有森さんと面会したことがないのに会ったものと勘違いしていたせいで、どうにもチグハグなものでした。結局、「多分、僕ね。物忘れがひどいから、思い出すかもしれないから、会ってみよう」ということになり、有森さんは翌日、千葉のリクルート合宿所の小出監督のもとに嬉々として向かいます。

小出監督との出会いが、飛躍のきっかけ

熱意を監督に認めてもらう

初対面で、小出監督が困り果てる?

 有森さんによると、1時間ほどの面談は「逃げ出したくなるような面談」だったそうです。小出監督は「有森さん、国体は何位?」「インターハイは?」などと質問を重ねますが、いかんせん、有森さんは高校や大学で実績ゼロ。ひたすら「入部したい」「これから実業団で頑張りたい」と熱意を強調して直訴するしかありませんでした。小出監督もようやく事情を呑み込めたようで、最後の方は困り果てていたと有森さんは述懐します。

 有森さんは「(僕の)勘違いだった。あまり情報がなかったから呼んでしまったが、ちょっと無理だよ」と小出監督が言ってくれれば、入部は諦めていたと言います。しかし、小出監督から返ってきた答えは意外なものでした。

 「有森さん、今うちね、いい選手が5人いる。高校チャンピオンや日本記録保持者、インターハイ・国体チャンピオン…。そうそうたるメンバー。素質や実績、肩書き…すべてパーフェクト。ただね、有森さん。人間は、どんなに素晴らしい素質や肩書き、実績を過去に山ほど持っていても、『これからどうしたい』『夢や目標を持っているか』ということが、本当に大事なんだ。それをね、有森さんは見事に持っている。僕もびっくり。これほど持っている人を目の前で初めて見た。もっとびっくりなのは、これだけ何も実績を持ってない人が、よくぞここにやってきたということ。その根拠のないやる気、とっても興味がある。僕はあなたの根拠のないやる気を形にしてみたい」。

 千葉での面談から2日後、岡山市の実家に帰っていた有森さんにリクルート社人事部から電話で採用の連絡が届きました。1989年、有森さんは日体大を卒業と同時に、晴れてリクルート社に入社しました。

悔しさバネに、マラソン転向

 入部後の有森さんは、1年目の秋にマラソンに転向します。当初は国体種目の1万メートルを目標に練習していましたが、岡山県の最終予選で優勝するも、陸上部が選手登録をしていなかったミスで失格。岡山県代表の夢は儚く消えました。しかし、陸上部から謝ってもらえるどころか、小出監督からは「お前に実績がないから、そういうことになるんだ」と突き放される始末。悔しさの余り、涙ながらに寮の自室の壁を足で蹴りながら、「今に結果を出してやる。今に見てろ。絶対忘れられない選手になってやる」と誓ったうえでのマラソン転向でした。

一日40キロの猛練習で才能開花

 転向後のマラソン練習は、1か月間で1200キロ、一日平均で40キロに達するハードなものでした。成人女性の一日平均摂取カロリーは1400~2000カロリーと言われますが、有森さんは「4000カロリーは普通に摂っていた。そうでないと痩せてしまう」と述懐します。

 また、バネがなくてスピードが出ない有森さんに、小出監督がタイムを要求することはなかったと言います。代わって小出監督が要求したのは、他人の倍以上のメニューの消化でした。小出監督から「お前な。42.195kmを全力で走らなきゃいけないから、その距離(40キロ)が普通にならなきゃいけない」と言い含められ、有森さんは「はあ?そうなんですね」と、さしたる疑問も抱かずに、毎日の猛練習に耐えていたそうです。

今年は教室で対面講義が実現

コンタクト片方で駆けたバルセロナ五輪

「銀メダルの実感は?」と対談で

 こうして転向後2年で迎えたスペインのバルセロナ五輪。結果は周知の通り、有森さんは銀メダルに輝きました。日本女子選手で64年ぶりのメダルです。対談では、当日の朝にホテルでコンタクトレンズの片方を失くし、片目だけでレースを走ったこと。また、沿道のスペイン語による「アニーモ」という声援を、自分のニックネームである「アリモ」と聞き違え、大いに気をよくしてコースを駆けたことが、エピソードとして紹介されました。有森さんは、藤山氏の「銀メダルを実感した時はいつ?」という質問に対し、「表彰式後にホテルに戻り、メダルを掛けたまま鏡に映る自分の姿を見た時」と語りました。

足の故障など、心身ともにどん底を経験

 しかし、バルセロナ後は栄光の競技人生が暗転。周囲との軋轢から心身のバランスを崩し、足のケガも重なって、スランプで走れなくなってしまいました。

 有森さんによると、バルセロナ直後は「優勝したエゴロワ選手の安定した走りに刺激をもらい、『私もあんなフォームを身に付けるんだ』『もっと筋力をつけるんだ』と、本人はモチベーションを失っていなかった」と言います。

 ところが、周囲の反応は全く違ったものでした。「これで引退できるね」「これからは指導者だね」などと、メダル獲得を花道に競技人生の引退を勧めるかのような接し方だったと言います。それが有森さんには疑問であり、不満でした。「自分はメダル獲得を契機にさらなる高みを目指すつもりなのになぜ?」。そうした周囲の接し方が我慢ならない有森さんでしたが、反発すると逆に誹謗中傷を受ける始末。タイミングが悪いことに、バルセロナ後は疲れから体はガタガタ、足の痛みも悪化し、記録は落ちる一方でした。もちろん、そんな「過去の人」の言葉に重みはありません。「これでは誰も私の話など聞いてくれない」と焦って走ると、さらに記録は落ち、ますます袋小路に陥ってしまいました。

 転機は足底筋膜炎の手術でした。手術は成功。再び走る意欲を取り戻し、翌1995年夏にアトランタ五輪の選考レースを兼ねた北海道マラソンに出場。大方の予想を覆して優勝し、アトランタ五輪への切符を手にしました。

 ただ、アトランタ五輪出場に賭ける気持ちは、無心で臨んだバルセロナ五輪とはまるで違いました。心身ともにどん底を経験した有森さんのみが知る固い決意を秘めていたのです。「何色でもいいから、何が何でもメダルを獲らなければならない」。それは「オリンピックは手段。決してゴールではない」という、自らの信念の正しさを証明するため必要なメダル獲得でした。自分の言葉に耳を傾けてもらうには「過去の実績ではなく、今の明確な実績が必要だった」と信じて疑わなかったのです。

「自分をほめたい」は、納得感から出た言葉

 そして迎えた1996年7月のアトランタ五輪。有森さんは再び女子マラソンのスタートラインに帰ってきました。4年間の紆余曲折を経て、たどり着いたスタートラインは「すごく気持ちのいい、変な緊張など何もない」という非常に落ち着いていたものだったそうです。結果は銅メダル。ゴール直後に、この年の流行語大賞にもなったあの言葉が生まれます。「自分で自分をほめたい」-。

 それは「単に銅メダル獲得という結果に対して出た言葉ではない」と有森さんは強調します。「オリンピックは、あくまで手段であり、ゴールではない」という、自らの信念を証明するため、どうしても必要な2度目のメダル獲得でした。対談では、あの感動の言葉がゴール直後に口をついて出たゴール直後の心境を「全てにおいて自分しか知り得ない内容を、求めるもの全てをクリア出来たという納得感から出た言葉だった」と明かしてくれました。

あの流行語大賞は、納得感から生まれた

「どんな状況でも、自分の思い大事に」

 対談の最後に有森さんは、学生の質問に応じます。その際、有森さんが語ったのは、「マラソンを走った経験がある?」と学生に尋ねた上で「(マラソンは)誰でも出来る。絶対に42.195キロを走れる。なぜなら、歩こうが止まろうが、前にさえ進めば、いつか42キロ先のゴールに絶対にたどり着けるからだ」というシンプルな事実でした。そして学生に訴えます。「できない唯一の条件があるとしたら、それはあなたができないと思っているか、思っていないかなのでは?」。

 学生たちとの質疑応答ののち、有森さんはコロナ禍で不安な日常を送る学生らにエールを贈ります。「人生も(マラソンと)一緒」と強調。続けて、「自分が自分の思いと、自分のプラスを消さないこと。それさえあれば、できないことはない」「どんな状況であっても常に、自分が自分という姿や思いを、ちゃんとあるかどうかを大事にしてほしい。そうすれば、いつでも、どんな状況でも、誰かがそれに気付いてくれるから、出来ないことはないと私は思っている」などと語りました。

学生の質問に答える有森さん
有森さん、藤山編集委員を囲んで
担当の深澤教授

深澤晶久教授の話

 藤山編集委員のお心遣いから生まれた有森裕子さんの特別講座、昨年は残念ながらオンラインとなりましたが、今年は教室で直接お話しをお聞き出来ることになりました。学生のアンケートからも、様々な有森さんのお言葉が響いたことを実感しましたが、なかでも「どんなに苦しくても諦めないことの大切さ」「自分の信念、いわば軸をしっかり持ち続けることの大切さ」そして、思うようにいかない場面では「せっかく」という言葉を頭につけることでどんなネガティブなこともポジティブなことに置き換わる「魔法のフレーズ」が特に印象的でした。貴重なお話しをありがとうございました。

2021年7月29日

コロナ禍時代の新コスメ製品を学生が提案!資生堂ジャパンと社会連携授業で最終プレゼンを行いました(6/18、6/25)

ニューノーマル時代にふさわしい資生堂の新製品を学生が考えるPBL(課題解決型)授業の最終プレゼンテーションが、資生堂ジャパン株式会社(東京都港区)と本学の社会連携授業として開催されました。同社プレミアムブランド事業本部の渡部卓明氏を特別講師に招聘(しょうへい)。12チームの学生がコスメ新製品のアイデアを競い、新型コロナウイルス感染拡大(コロナ禍)を契機に化粧品業界が直面する窮状の課題解決を目指しました。

 資生堂ジャパンとの社会連携授業は、大学2年生が対象の共通科目「実践キャリアプランニング」のなかで実現しました。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が指導教授です。今年度は62人が履修しています。
 最終プレゼンは、6月18日と同25日の2回に分けて実施、6チームずつ発表しました。最終プレゼンに先立ち、各チームは渡部氏から「ニューノーマル時代のメーキャップ商品を開発し、その販売促進計画を考えなさい」という課題を与えられており、1チームが5~6人が約6分間、コロナ禍時代のコスメ課題解決に向けた提案を行いました。

資生堂ジャパンの渡部さん

コロナが生んだ「ニューノーマル時代」とは?-「マスクの時代」、なぜか「ジェンダーレス?」

 ただ、プレゼンを終えても、学生がホッとする暇(いとま)はありませんでした。渡部氏との質疑応答が引き続き行われ、資生堂の現役ビジネスパーソンが学生のプレゼンの弱点や矛盾点を鋭く質したからです。答えに窮した学生が立ち往生する場面も、一度や二度ではありませんでした。

【10グループ】

 そんな質疑応答の真剣勝負は、12チームのトップを切り発表した10グループのプレゼンでスタートしました。10グループは、ニューノーマル時代をマスクの時代と捉え、マスクによるメイク崩れを防ぐティントタイプのリップ「餅紅」を提案しました。学生との質疑応答の中で、渡部氏の関心は学生が考えるニューノーマル時代の定義に向けられます。

(渡部)「ニューノーマル時代を、マスクの時代と決めたのはなぜ?」
(学生)「コロナ禍になり、外に出るのにマスクが手放せないようになり、それで外出の機会が少なくなったのが、ニューノーマル時代だから」
(渡部)「今、国の政策もあり、どんどんマスクが普及している。感染が抑えられて、マスクがいらなくなったら、どうするの?」
(学生)「もちろん、マスクのある時代にも対応できると思うし、マスクのない時代にも落ちにくいリップは需要があると思う」
(渡部)「最後の質問です。マスクをしているのに、なぜ口紅を付けないといけないの?リップを付けないといけないの?しかも色付きで?」
(学生)「マスクをしていても外す瞬間はある。例えば、食事の時間。やはり、せっかく化粧をしたのに、ご飯で外した時に、すごく(化粧が)べろべろになっていたら、みんな嫌だと思う。そんなマスクを外した時も、きれいな顔になっていたいという意味です」

10班

 渡部氏は、10グループのプレゼンを「非常にシンプルに論理が組み立てられている」「楽しい提案」などと評価しつつも、改めて提案の意義を問い直します。それは「この新製品のリップを使うことをお客さんは何を喜んでくれるの。化粧が落ちないことや、ずれないことが、本当に嬉しい事なの。それって、いつも夏になると必ず言われることじゃない?」。その上で、学生が考えるニューノーマル時代の意義についても、「新しい時代や生活習慣が生まれて来ることをどう捉えるか。これからのビジネスチャンスとして、みんなが気付かないところにも、もう少し考察というか、観察を集中させると、もっと違うアイデアが出て来たような気がする」と論評しました。

【9グループ】

 10グループだけではありません。各チームが提案の土台とした「ニューノーマル時代」の捉え方は、質疑応答の中でも、とりわけ重きが置かれ、丁寧な検証が加えられました。このうち、ニューノーマル時代を「ジェンダーレスの時代」と定義して異彩を放ったのが9グループです。彼女らのプレゼンは、提案内容に加えて、ジェンダーレスの内容も議論されました。

 具体的には、9グループの提案は、ニューノーマル時代を「コロナとの共生」や「ジェンダーレス」な時代と定義したところに、他グループとの大きな違いがありました。加えて、その具体化に向け、9グループはアイシャドウとチーク、リップが一体化した3ウェイのマルチユースコスメを提案しています。衛生面や大きさの使いやすさに加えて、価格帯、男女関係なく手に取ってもらえるような配慮することで、「ニューノーマル時代にマッチしたメーキャップ製品を目指した」と説明しました。

 その際ですが、学生らはニューノーマル時代をジェンダーレスと規定した理由を「男性がコスメに手を伸ばす製品を考えたかった。そこで男性のメイクは今後減ることはなく、むしろ増えるはずと考え、ニューノーマル時代をジェンダーレスと考えた」と問題提起しています。

9班

 これに対し、渡部氏は学生のニューノーマル時代に対する捉え方を「コロナ流行のパンデミックがもたらした生活環境、生活習慣の変化と単純に捉えるべきではない」と論評しました。併せて、「『新たな常識が発生する時代がこれからやってくるよ』『その中の一つに、ジェンダーレスもあるよ』みたいな流れをつくり、説明すべきだったのでは?」と指摘。その上で、「これからのメーキャップの流行の中で、お客さんに受け入れてもらうとか、しかも男性も使っていくようなニューノーマル時代が、本当にトレンドになるのか。もう少し考えてみることが、皆さんのアイデアを深めていくことになる」と続けました。

カオスな提案内容をバッサリ!-「不思議ちゃん?」や「一体どっち?」

 プレゼンの提案内容についても、容赦ない渡部氏のチェックが入ります。内容がテンコ盛りすぎて相反する要素が混在するプレゼンのほか、メーキャップ製品なのかスキンケア製品か途中で分からなくなった提案、いつしかマスク販売に傾いたメーキャップ製品…。いずれも渡部氏により、カオスな提案の整理・検証が行われました。

【2グループ】

 このうち、内容にトレードオフな要素を盛り込みすぎ、「不思議ちゃん」と称されたのは、2グループでした。2グループは、時短メイクとして「塗って剥がせるアイシャドウ」を提案しています。お湯で流せてメイク落とし不要、細く書きやすいペン型の採用などの時短テクニックを提唱しました。

2班

 翻って、渡部氏から「不思議ちゃん」と指摘された部分は、顧客ターゲットや販促計画、ユニセックスのパッケージに関する説明でした。というのも、ターゲットを大学生から若い社会人とするならば、現実は「大学生活と社会人生活は、明らかな変化がある」からです。また、販促計画も「ECサイト中心としながら、ドラッグストアやバラエティーショップの売り場が大事」などと強調。加えて、パッケージも「男性も手に取りやすいものにする」と強調したことが、「『女性にとって化粧とは』を全体のトーンとしていたはずなのに、そこにいきなり男性モードが入ってきちゃう不思議さ」と指摘されてしまいました。

 渡部氏によると、同グループのプレゼンの不思議さは「相反する要素がいくつか、ぐしゃと、一つの中に入っているため、あれ?って思ってしまう」ことが原因とか。このため、「(相反する要素を)どっちか一つに決め、決めた方に必要なことだけをまとめて、もう一回プレゼンテーションをまとめ直した方がいい」と助言を受けました。そうすれば「本当に塗って剥がすアイシャドーが必要なのかどうかという本質が、もう少しクリアになると思う」とアドバイスを受けています。

【11グループ】

 また、「提案したのは、メーキャップ製品かスキンケア製品かどちらなの?」と問われたのは、11グループでした。11グループは、マスクによる肌荒れを防ぐ保湿効果のある製品として、スティックタイプとチューブタイプの2種類の製品展開を提案していました。これが「メーキャップ製品の開発が課題のはずが、結論として出てきたのはスキンケア製品ではないか」と受け止められ、説明を求められました。

 学生の答えは、「どちらも兼ね備えているが、保湿をメインとしているのでスキンケア製品と捉えて欲しい」というものでした。渡部氏は、そうであるなら「どこかで『これからのメーキャップのあり様はこのように変わる』という説明を入れないと、論理破綻を起こす」と指摘しています。

 加えて、プレゼンで製品計画のスライド中にあった「沢山の声」についても、渡部氏は「これは誰の声?」と質問。「私たちグループの中の声です」という学生の返答に「周りの人とか、友達に聞いてみなかったの?」と畳み掛けました。渡部氏が言いたかったのは、「(製品企画で)一番大切な、お客様が何を求めているのかというところが、自分たちの欲しいものを列挙しただけで終わっている」という趣旨のようです。

11班

【12グループ】

 同様に、12グループにも二者選択な質問が向けられました。「提案の中にメーキャップとマスクの2つの製品が出てくるが、この企画でどちらが今より売れるようになると思う?」。12グループはアイシャドウとマスクを一体的に扱い、「襲色目(おしいろめ)」で個性を出すメーキャップ製品を提案していました。渡部氏が教室の学生に挙手で意見を求めたところ、「メイクでなくマスク」という声が大勢。渡部氏は「マスク用品屋さんが喜ぶ提案だとは思うが、メーキャップが売れる理由がちょっと見つからない」と論評しました。

12班

 内実を明かせば、学生たちは「他のグループとの違いを、どうしても出したかった」のだとか。「『マスクも一緒に』というアイデアが出た途端、飛びついてしまった」と言います。渡部氏は「着眼点は面白いが…」としながらも、「結果が、私が期待していたものとマッチしていなかった」と残念がりました。

プロの創造力も大いに刺激!-「サボリーノ」の再来?自分受けメイク?

 もちろん、渡部氏のようなプロの感性や創造力をいたく刺激したプレゼンもありました。時短メイクの金字塔「サボリーノ」の再来を彷彿させる製品の提唱や、コロナ禍時代だからこその「自分受けメイク」の提案などです。

【6グループ】

 それによると、渡部氏をして「右側の脳みそを刺激してくれた」と評価された提案は、6グループの時短メイク「ペーストアイシャドウ」です。6グループは「タトゥーシールみたいにサッと貼れるアイメイクがあればいい」と考え、同製品を考案。渡部氏から「時短コスメのサボリーノのようになる可能性がある」と高評価を受けました。

 サボリーノは、「サボってもキレイでいられる」を実現する時短コスメブランドです。例えば、2015年に誕生した朝用マスク「目ざまシート」は、寝起き肌に60秒貼るだけで「洗顔+スキンケア+保湿下地」を完了することができます。

 このため、ペーストアイシャドウも「テレワークとかオンライン会話の前にペタッと貼り、完璧でなくても化粧している印象を、画面を通じて相手に与えられるなら、この製品のアイデアが活きる余地がある」と渡部氏から評価されました。実際、学生のアイデアがヒントとなり、「サボリーノは朝にマスクをぺたって顔に貼るだけ。これと同じぐらいインパクトのあるものができないか」という自身の創造力を駆りたてられたと明かしました。

6班

【8グループ】

 他方、8グループは、「良い思い出にいいティントを」をテーマに「自分受けメイク」を楽しむティントの新製品を提案しました。コロナ禍で化粧品全体の売上高が大きく落ち込むなか、それでも8割がマスク着用時もリップを付けているというデータに着目。外出自粛要請時もリップを付ける理由のトップが「自分が楽しむため」である事実を重視したといいます。

8班

 ただ、プレゼンの内容は、第三者に理解してもらうには、いささか難解すぎたようです。渡部氏は「『良い思い出』と『ティント』、『自分受けメイク』を楽しむお客さんの意識の繋がりが理解できない」と繰り返し尋ね、学生と質疑を重ねました。ようやく「何となく想像できる世界で言うと」と断りながら指摘したのは、「とりあえず自分が楽しんでメイクをするみたいな世界があるのは、何となく想像できた。(だとすれば)そこに徹底的にこだわる気持ちがあるのであれば、それはそれで一つのビジネスチャンスだ」という見解でした。

 「やはり、いい思い出を目指すのか、あるいは自分受けの何か新しいメーキャップを徹底的に考えるのか、その切り口の曖昧さがプレゼンで露呈した」と渡部氏は語りました。その結果、8グループのプレゼンを「見た目には非常に斬新だけれども、よくよく考えてみると、今一つビジネスとして成立するかどうか、ちょっと考えなくちゃいけない、危険なにおいのするプレゼンテーションでした」と論評しました。

「SNSは本当に万能?」-販促計画の効果を検証!企業コラボにも盲点あり

 新製品コスメの提案ばかりではありません。各チームとも、新製品の販売促進計画にも工夫を凝らしています。コロナ禍で実店舗販売が思うにまかせないなか、いずれのチームもSNSやECショップなどオンライン手段をフルに動員したのが特徴です。

 ただ、今回は販促手段として各チームが当然視するSNS活用について、その在り方が議論されました。実際、12グループのうち11グループが販売宣伝手段にSNS活用を盛り込んでいました。渡部氏は、今どきの学生の「常識」にも懐疑の目を向け、「みんなツイッターを使えば必ず情報は拡散できるみたいなことを言うが、本当にそうなの?すべて無視されてしまうツイッターもあるのではないか?」などと問い掛けました。

【5グループ】

 例えば、5グループです。5グループはZOOM映えを意識したマルチパレットやリップの製品化を提唱していました。しかし、改めて「通信販売、ネット販売をする理由は何か?」と問い直されました。

 学生らが、知恵を絞った答えは次のようなものでした。「現在、実店舗での売り上げが減っている。なぜ実店舗での売り上げが減っているかを考えたら、あまり人と接触したくないからだと思う。接触せずに購入してもらえるのが、ネット販売と考えた」。いささか無難な返答に、渡部氏もすかさず畳み掛けます。「皆さんは、化粧品を購入する時に試さずに買えるの?」。思わぬ問い返しに、学生らは顔を突き合わせて、しばらく鳩首会談。「今はテスターなどが使えないところが増えてきているので、製品などをインターネットで買うことが多い」などと、何とか切り返しました。

5班の2人
5班の3人

 渡部氏は、課題提示に際して「頭がちぎれるくらい考えなければいけない」と学生に呼び掛けていました。渡部氏は、このような質疑を経て「何となくみんなが考えたアイデアの奥底にあるストーリーが、ようやく浮かび出てきた」などと説明。「そういうところの互換関係みたいなことがきちんと整理されていないと、なぜこの方法を採るべきなのかということが、伝わってこない」などとアドバイスしました。

【4グループ】

 販売促進計画の企業コラボも、渡部氏の厳しいチェックを受けました。。その対象の一つが、4グループが提案する、まつ毛の超カールキープ製品「ラッシュアップJJ」の販促計画です。同グループは、製品のターゲット層に定めた10代~20代に対する販促の一環として、テーマパーク「サンリオピューロランド」(東京都多摩市)とコラボレーションを計画していました。

 サンリオコラボの是非を学生と検討するに当たり、渡部氏は自らのサンリオ体験を学生に紹介。それによると、サンリオピューロランドのファン層は、「ラッシュアップJJが顧客層として想定する10代~20代ではない」。その上で「キティちゃんのファンを総称してキティナーというが、調べると40代~50代が多い。皆さんがターゲットとする10代~20代とは少し違うのでは?」と続けます。渡部氏によると、「単純にこうしたコラボで強いのは、ゲームとのコラボが断トツ」なのだとか。「そこを、あえてサンリオとコラボするというところに何か意味があるなら、そこをもっと狙いとして深掘りしていかないと販促計画としては滑ってしまう」と注文しました。

4班

【7グループ】

 一方、販促計画の内容で評価が高かったのは、7グループの計画です。7グループは「フレッシュ、プロテクトタイプ」と銘打ち、ミストで化粧仕上げを行う新製品を提案しました。販売促進計画も、販売前と販売後分け、販売前に行うインスタグラムやLINE、ツイッター。販売後もインフルエンサー活用のほか、LINE広告や公式インスタグラム・ツイッターなどのSNSを使った抽選プレゼントを行うとアピールしています。

7班

 翻って、7グループのプレゼンは、販売促進計画の説明にスライド6枚を使うほど、力を入れているのが特徴です。ただ、渡部氏は同グループのプレゼンを「一個一個のピースというか、要素がうまく組み立てられている」と評価しつつも、SNS活用に限れば「皆さんは、インスタグラムとかLINEで宣伝するというが、見たくなるインスタ、見たいと思わないインスタとかあるのではないの?」と問題提起。その上で、「普通にスルーされちゃうインスタと、そうでないインスタとの違いを少し研究してみてはどうか」と注文しました。

 また、7グループの販促計画は、インスタグラムやLINE、ツイッターなどをフル活用するSNSの種類の多彩さも特徴です。渡部氏はSNSの数の多さについても触れ、「やはり、特性の違いを意識した活用をすべきではないか。そういう視点を持って考えれば、もう一段か二段、いいアイデアが盛り込まれたプレゼンになる」とアドバイスしました。

「エッセンスが存在」「メイクの新たな意味が感じられた」-最優秀の資生堂賞

 最優秀の資生堂賞は、こうした白熱した議論を経て、18日のプレゼン前半は1グループ、25日の後半は3グループに贈られました。渡部氏によると、1グループは、そのプレゼンが「普通に聞くと、ちょっとつまんない提案ではあった」。しかしながら、「その中に何かエッセンスが存在していて、そこを資料の中に盛り込んでいた」と言い、評価できると語りました。
 これに対し、3グループのプレゼンは「提案としてしっかりしていた」点が、高評価につながりました。加えて、「全般を通して、これからの新しい時代をどう想定しているかが感じられ、コロナ禍のなか、メーキャップをする新たな意味に何かしら手を入れようとする行動が感じられた」などのプラス評価も考慮されました。

【1グループ】

 このうち、1グループはマスカラやリップティント、メイクキープミストを提案しています。それぞれ▼マスカラは、フィルムタイプでカールキープされるがお湯で落ちる▼リップティントは、保湿成分配合でマスクをしていても落ちず、付かない▼メイクキープミストは、マスクによる崩れ防止や乾燥・肌荒れ防止-などが特徴です。

 渡部氏は、1グループの提案に「皆さんのプレゼンには、気付いているかどうか分からないが、新しい問題の発生と、それに対してビジネスチャンスがあるということに、ちゃんと触れている」と他グループにはない評価を与えました。というのも、「コロナ禍でメーキャップをしなくなれば、それを放置すれば、化粧品業界は潰れてしまう」と強調。「やはり別の形でメーキャップをするためのモチベーションとか意味を、お客さんに与えていく必要がある」と続けました。

 また、渡部氏が提案に対して「新しいモチベーションを作り出すトライを感じた」ことも、学生には幸いしたようです。学生は、今回の評価に「おうちの中やリモートでは、メイクが濃くても画面上だと相手には分からない。そういうところで出来るメイクを楽しんでもらいたいと提案した」と振り返ります。余談ながら、これは8グループが提案した「自分受けを楽しむメーキャップ」と、どこか相通じるアイデアともいえます。

1班

【3グループ】

 一方、3グループが提案したのが、男性向け化粧品の展開です。例えば資生堂の調査などによると、メンズメイク未経験者の約9割が「してみたい」(20~50代男性)と考えており、女性も約9割が「メンズメイクに抵抗なし」と回答しています。同チームの提案は、こうしたメンズメイクに関する最近の男女の意識の変化に注目。それをベースに提案を組み立てたといえます。

3班

 それによると、質疑応答の際に議論されたのが、男性がメイクをする意味でした。例えば、渡部氏は「なぜ男性がメーキャップ製品に興味を持ち、(女性からみても)使わないといけないと思うか」などと学生に問い掛けています。学生が「メイクの意味は、人との関係性の中で存在する自分の自己表現だから」と返答すると、すかさず渡部氏も「メーキャップは、人と人との関係の中で存在していることに意味がある」などと語り、学生の意見に同意。「おそらくニューノーマル時代は、人間関係が変化する中で、自分がどう表現すればいいかを模索しなければならない時代だ」などと自説を展開しました。

 続けて、渡部氏はプレゼンの構成の変更を学生に提案します。即ち、「メイクによる効果を列挙したスライドを、メンズメイク未経験者の9割がメイクをしたいとする円グラフのスライドの直後に持ってきてはどうか」。その上で、「(入れ替えた後で)すべてのストーリーを考えてごらん」と提案しました。それで、どんな効果が期待できるのか。渡部氏は「具体的に、どういう製品にしなければならないか、すべてが変わってくる」などと語り、「もっと皆さんのアイデアに張りが出てきたり、思わぬ考えや新しい発見が出てきたり。そんな違ったアピールができそうな感じがした」と強調しました。

集合写真①
集合写真②

資生堂・渡部卓明氏の話

 皆さんが、これから社会に出てマーケッティングとか、そういった仕事をする素晴らしさは、何か一人のアイデアが、組織の中の隣に座っている人とか、同じグループで働いている人たちを動かし始めることにあります。そして、グループの意思が部門の意思となり、それがやがて事業本部だとか、会社の意思になり、だんだん世の中に広まっていく。最終的には、たった一人が考えたことが、数十万、数百万の生活者とか影響を与えていく仕事に、これから皆さんは携わるチャンスがあるわけです。これは素晴らしい機会だと思います。是非、これから学ぶ時間が数年間あると思いますが、大学の時間を使っていただいて、社会でまた楽しい経験ができるように頑張っていただきたいと思います。

深澤晶久教授の話

例年、本授業の後半では、企業にご尽力いただき、PBL型のワークショップを実施しています。今年は、例年に比べ、学生の授業への取り組み意欲の高さを感じたことから、よりリアルなテーマに挑んでもらいました。結果としては、私の期待を上回るアウトプットがあり、充実した授業となりました。対面でスタートし、途中オンラインに切り替わり、そして終盤、再び対面と、目まぐるしく環境は変わりましたが、学生達は、その期待に見事に応えてくれたと振り返っています。そして、何より、資生堂渡部氏の鋭いフィードバックもあり、学生が対応に苦慮する場面もありましたが、渡部氏が、学生ではなく、資生堂の社員のように応対してくれたことに感謝するコメントも多く、授業のためのPBLではなく、いわばインターンシップレベルの内容で実施出来たと思います。資生堂の渡部様に、心から感謝いたします。

深澤先生も対面授業で熱がこもる

2021年6月18日

<学生記者レポート>日本相撲協会とのコラボグッズ販売を再開しました!新商品も登場(6/18追記)

※2021年6月18日追記
2021年6月16日 日本経済新聞 掲載
キャンパス発この一品「相撲グッズ — 実践女子大」

本学と日本相撲協会との産学連携の取り組みが、日本経済新聞の朝刊で紹介されました。
取材には、生活環境学科 塚原肇教授とゼミ生4名が参加し、相撲グッズの取り組みについて説明しました。

取材応対する塚原肇教授
相撲グッズを説明する学生
最後に皆で集合写真

2021年1月19日掲載

販売コーナー前で記念撮影
お客さんを丁寧にご案内

 本学と日本相撲協会が、新型コロナウイルスの感染拡大(コロナ禍)で中断していたコラボ商品の販売を、大相撲11月場所から再開しました。ハンドクリームが新商品に加わり、商品ラインナップがさらに充実。販売スタッフに駆け付けた本学学生の頑張りもあり、11月場所でのグッズ販売は驚きの売り上げを記録しました。本学は政府の緊急事態宣言の再発令を受け、大相撲初場所への学生ボランティアの派遣は中止しましたが、コラボ商品は親方・協会担当者の手により初場所も国技館内売店で販売が継続されています。

 大相撲令和2年11月場所は、11月8日から22日まで両国国技館(東京都墨田区)で行われました。コロナ禍のため本来の福岡国際センター(福岡市)に代えての開催です。本学の学生は15日間の場所期間中、28人が販売スタッフのボランティアとして参加。売り上げ増や相撲のイメージアップに一役買いました。

「祖父母に自慢?」「つながりが欲しくて」

 人間社会学科3年の君島ほのかさん、国文学科1年の関口千夏さんは、そんな相撲大好き実践ガールズの2人です。2人とも今回が初めての参加で、開催期間中、君島さんは2日間、関口さんは5日間、それぞれグッズ販売を手伝いました。2人が今回参加を決めたのは、君島さんは「(国技館での見聞を)相撲ファンの祖父母に自慢できるかも知れないと思って」、関口さんは「オンライン授業ばかりで渋谷キャンパスに来たのは入試と健康診断の2回だけ。同級生や上級生とつながりがほしくて」という理由からだったそうです。

 年6回の本場所開催中のグッズ販売は、令和2年1月の初場所以来となります。この間、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3月の春場所は無観客で開催。5月の夏場所は4月緊急事態宣言で中止に追い込まれました。7月の名古屋場所以降は観客制限を設けながらの実施となり、11月場所も上限5千人の観客制限が設けられていました。

コロナ禍がきっかけの関口さん

延べ76人が参加、驚きの売れ行き

 販売は午後1時から午後5時まで4時間の真剣勝負。本学からは連日、平日は平均3~4人、週末は同7~8人と場所期間中15日間で延べ76人の学生が販売の応援に駆け付けました。その甲斐もあったからでしょうか。当初、観客制限で危惧された売り上げは、蓋を開けてみれば予想外の売れ行き。関口さんによると、「初日や日曜日は本当にすごかった。売り場には10人以上の行列が出来ました。女性や男性を問わず、若い人がたくさん買ってくれました」と当時の売れ行きの凄さを振り返ります。

 販売したコラボグッズは、「豆しぼり手ぬぐい」(税込み1,200円)、「メガネふき」と「リップクリーム」、「はんどくりいむ」(以上税込み500円)の4種類です。わけても、人気はハンドクリームやリップクリームで、場所期間中、ハンドクリームは2,000個、リップクリームは1,300個と驚きの売り上げを達成しました。ハンドクリームとリップクリームをセットで買うとポーチが無料で付いてくるサービスもあったからか、君島さんによると、「日によっては、最後の方はポーチがなくなった日もあった」ほどです。

スタッフ体験を語る君島さん

かわいいデザイン、香りが魅力

 このうち、新商品のハンドクリームは、リップクリームと同じピンク色で、例えば、君島さんはデザインが魅力と推奨します。「商品のデザインがかわいい。相撲好きの女性も増えており、そういう女性にも手に取ってもらえるような商品。男性が奥さんや娘さんにお土産に買って帰るのもいいと思った」からだそうです。

 他方、関口さんが挙げる魅力は香りで、「リップクリームとハンドクリームの香りがお相撲さんの髷と同じ瓶付油の香り。初めてかいだ香りだが、お相撲さんぽくっていいと思った」と話してくれました。

 本学と日本相撲協会は2017年12月、包括的連携協定を締結しました。これを受け、生活環境学科の学生を中心に「実践すもうガールズ」を結成、公式グッズの開発などに取り組んできました。これまでコンパクトミラーや扇子、メガネ拭き、リップクリーム、手ぬぐいの商品化にこぎつけています。

国技館内のグッズ販売コーナー
親方と学生がグッズ販売

コロナ禍で初場所の学生派遣を中止

 11月場所でようやく再開したコラボグッズ販売でしたが、初場所で再び暗転します。というのも、場所前に力士ら協会員878人を対象に行ったPCR検査で力士5人の陽性が判明したからです。感染判明や濃厚接触の疑いで、横綱白鵬を含む力士65人が初日から全休に追い込まれました。全力士665人の約1割に当たり、腰痛の横綱鶴竜含めると戦後最多となる関取16人が初日から休む異常事態です。

 本学も1月7日の政府の緊急事態宣言の再発令を受け、初場所へ販売ボランティアの学生派遣を中止しました。しかし、国技館内の売店は親方や相撲協会の担当職員の手で営業を続けており、コラボ商品の購入は可能です。また公式オンラインショップ「すもうストア」も初場所から開設しており、コロナ禍を避け、コラボ商品を含むお目当ての商品がネットで買えるようになりました。

取材メモ

 相撲協会とのボランティア活動は、社会との関わりはもちろんですが、オンライン授業が続くなか、学生同士が交流する貴重な機会となりました。とりわけ喜んだのは、コロナ禍でキャンパスに足を運ぶ機会がなかった1年生ではないでしょうか。「今回初めて同じ大学の友人が出来た」などと笑顔で語ってくれました。感染者は増加の一途をたどり、いつまたキャンパスに通えるようになるかは分かりません。同じ大学の学生が学年を超えて知り合える機会は見逃さないよう、学生たちもアンテナを張っておくといいですね。

英文学科4年 松村桐杏
2021年5月20日

生活環境学科環境デザイン研究室の4年生が日野キャンパスに新たな「学生の居場所」を作りました

生活環境学科環境デザイン研究室(槙 究教授)の4年生が、「ゼミナール等による学術的な活動活性化」の一環として学内助成を利用し、日野キャンパスの屋内外に新たな「学生の休憩スペース」を作りました。

コロナ禍でも、学生が安心してくつろげる「学生の居場所」を作りたい

「屋外の休憩スペース」として、日野キャンパスグラウンド横「パーゴラ」を、また「屋内の休憩スペース」として図書館内ブラウジングコーナーを、学生が考えたコンセプトのもと、学生たち自らが施工しました。

 現在は緊急事態宣言により対面授業が制限され、オンライン授業も多いことからキャンパス内に学生たちの姿はまばらです。リノベーションを終えた各休憩スペースは、安心してくつろげる「学生の居場所」として、対面授業が全面的に再開され多くの学生に利用される時を待っています。学生の皆さん、是非ご利用ください。

[パーゴラリノベーション]参加学生からのコメント

コロナが落ち着いて登校が再開されたら、もっと多くの学生に充実したキャンパスライフを送って欲しいという思いから、今回のプロジェクトを立ち上げました。授業以外にも、ごはんを食べる、空き時間を過ごす、作業をする、打ち合わせをするなど、様々な行動があり、みんな違ったキャンパスライフを送っています。そこで、勉強をメインとした教室以外にも、いつでも安心してくつろげる、学生の居場所を作りたいと考えました。屋外ではそういった空間は少ないため、学内の使われていない場所を探し、女子大生目線で設計しました。

 今回の計画は「slow down terrace 〜学校に作る安らぎ空間〜 」をコンセプトに、屋外でもゆったりとした時間を過ごすことができる空間を考えました。対象の場所は、グラウンド横に設置されたパーゴラです。以前までは、花壇が高く景色を楽しめない、パーゴラまでの道が芝生で歩きにくい、夜は暗く不気味といった理由から誰にも使用されていない場所でした。そこで改善案として、目線をあげ、雰囲気を柔らかくする木調のウッドデッキの設置、ヒールでも歩けるレンガの小道とフットライトを設置しました。今回は、テーブル席の上に照明と日よけのタープをつけることはできませんでしたが、今後行っていきたいです。また+αとして、季節によって木々の変化に合わせた空間にアレンジしたり、学科や団体ごとのギャラリー、1日カフェなど、ちょっとしたイベントスペースとしても楽しんで頂きたいです。

構想したプロジェクトを実際に形にできると知り、とても嬉しかったです。しかし予算を考えた材料の選定や施工工程など、提案する段階では考えていなかった課題が次々に見つかり、初めてのことだらけで試行錯誤しました。現場に何度も行き、改めて何を作りたいか考え、必要なものや起こりうることを想定しても仕切れない状況に頭を抱えましたが、こうして形になったものを見てとても達成感を感じました。

パーゴラリノベーションを行った環境デザイン研究室の4年生

<プロジェクトコンセプト>
「大学って、なにするために行ってた?」
コロナ禍でキャンパスへ行く機会がなくなり、ふと疑問に思いました。勉強している時間も内容も今までと変わりなく、本来の学ぶ目的は達成されているはずなのに、自宅で独り学ぶ状況がこんなにも物足りないのはどうしてだろうと思いました。自覚はなかったのですが、私たちが学校に求めていたコトって勉強だけではなかったみたいです。授業はオンラインでできても多くの学生と無意識に交わる空間は、オフラインにしかない魅力だと思います。そこで見たり聞いたりする情報は、私たちにとっては良くも悪くも刺激でした。大学のもつ同年代パワーに、いつも触れていたのです。

パーゴラでの作業の様子
作業は3月のまだ肌寒い頃に始まりました
芝生をはがしてタイルを敷きヒールでも歩きやすくしました

[図書館ブラウジングコーナーリノベーション]参加学生からのコメント

図書館リノベーションチームは、大学内で足を伸ばして休憩できる場所を作りたいと思い、様々な案を考えました。その中でも、静かな図書館で、利用者が少ないブラウジングコーナーの一角を使用させて頂くことにしました。動線の予測や、図書館の規則がある中、計画をしていくのはとても大変でした。しかし、毎日利用する学生がいるところを見て、目的を達成でき、とても嬉しいです。期間限定のスペースになりますが、皆さんに利用して、くつろいで頂けたら幸いです。

【日野】ブラウジングコーナーが『Calm Lounge』にリニューアル !![図書館サイト]

看板を制作している様子
図書館リノベーションチームの集合写真

槙 究教授の話

「キャンパス閉鎖が解けて学校に来てみて、学校って勉強する為だけの場所じゃないんだなと感じた。」その一言からこのプロジェクトは始まリました。自分達が欲しい休憩スペースを、自分達だからこその感性で作る。でも、そこで終わりではありません。これから実際に使われると、更に居心地良いスペースとするにはどうしたらいいかが見えてくるでしょう。デザイン思考で、改善していって貰えればと思います。

2021年4月26日

大学発!地方創生「新たな観光資源の魅力を磨き上げ、地方創生の礎に」近畿日本ツーリスト首都圏との今年度の社会連携授業がスタート!(4/23)

「観光」の力で観光需要の回復・地域経済の活性化を。Withコロナ時代で観光産業が多大な影響を受けているなか、今後、失われた観光需要を回復していくためには、地域に眠る観光資源を磨き上げ、より一層地域の魅力を高める必要があります。2020年度からスタートした「1年生を対象とした主体性講座」は、昨年のワーケーションに続き、地方創生をテーマに4月23日(金)開始されました。学生たちは、アイデアを出し合いながら近畿日本ツーリスト首都圏(東京都新宿区)へ5月21日の最終プレゼンテーションを行います。

教室の真剣な日常が戻ってきました!

今年度授業のキックオフに当たり、「『観光』の力で、神奈川県・埼玉県・千葉県の市町村を選び、観光需要の回復・地域経済の活性化を解決せよ!」という課題が提示されました。観光事業者と、交通、漁業、農業、地場産業などの多様な事業者が連携して、非日常の体験や特別感のあるツアーのプランを造成し、観光庁の公募事業への提案を目指して取り組みます。

橘次長からミッションが提示されました

講師で、地域交流事業を担当する近畿日本ツーリスト首都圏の橘清志次長は、この日の授業でミッションの趣旨、事業プランやツアープランの立て方などを説明。新たな旅のスタイルを普及・定着させていくことが注目されるなか、「皆さんの力で社会を良くしていくことが出来る。新たな出会いと感動を創造し、笑顔あふれる社会の実現に一緒にチャレンジしていきましょう」と学生に呼び掛けました。

授業は、本学文学部国文学科の深澤晶久教授(全学キャリア教育担当)が指導する前期カリキュラム「実践プロジェクトa」で実現しました。新入生を対象に昨年度新設された科目で、今年度は1年生17人が履修。1グループ4~5人の4グループに分かれて、グループ単位でミッションに取り組みます。

近畿日本ツーリスト首都圏との社会連携授業は、今年度で2年目になりました。「一般社団法人フューチャースキルズプロジェト(FSP)研究会」が監修する初年次教育プログラム「主体性講座」をベースにしており、「学生の主体性を引き出し、これからの大学での学び方を学ぶ」授業プログラムとして本学のキャリア教育に定着しています。

グループの議論が始まりました

深澤晶久教授の話

「企業が、日頃課題としていることをテーマに行うリアリティ溢れる産学連携PBL授業であり、今年も積極性に溢れる1年生17名が集いました。まず前半は、昨年に引き続き近畿日本ツーリスト首都圏様にご協力いただいています。この日の授業では、お題として提示されたテーマのハードルの高さに驚きつつ、学生たちは、早速チームに分かれてディスカッションが行われました。修羅場体験から引き出される大いなる成長に期待したいと思います」

2021年4月14日

スポーツニッポン新聞社と今年度の社会連携授業スタート!お題は「オリパラ開幕日の一面紙面」(4/13)

スポニチの一面模擬紙面を学生が考える本学キャリア教育恒例の社会連携授業が4月13日(火)、2021年度の検討をスタートさせました。7月13日の最終プレゼンテーションに向け、学生が5チームに分かれ、渾身のアイデアを競います。

検討のキックオフに伴い、講師でスポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員から、今年度のテーマ「2021年7月23日のスポニチの1面を考えてください」が与えられました。新型コロナウイルスの感染拡大(コロナ禍)で1年延期された「2020東京オリンピック・パラリンピック」開幕日に焦点を当てたお題です。藤山編集委員は、テーマ出しに際して「コロナウイルスで大変な世の中ですが、皆さんの力で明るい紙面を作っていただけることを期待します」と学生に呼び掛けました。

スポニチ紙面を使い講義する藤山講師

授業は、渋谷キャンパス704教室で行われました。藤山編集委員にとり2年ぶりの対面授業です。昨年度と違いZOOM画面に向かってではなく、教室のホワイトボードを背に学生らに向かって教壇に着席。履修する学生26人に対し、マスク越しに紙面作成に必要な東京オリンピック・パラリンピックの予備知識を講義しました。

社会連携授業を説明するスポニチの藤山編集委員

本学とスポーツニッポン新聞社の社会連携授業は、今年度で4年連続となりました。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が担当する「国際理解とキャリア形成」のなかで実施しています。大学2~3年生が対象のキャリア教育共通科目です。

 5チームは、1チームが5~6人。履修者に関心のある国をアンケート集計した結果をベースに学部・学科の垣根を越えてチーム分けされています。今年度は「アジア・オセアニア」「アメリカⅠ」「アメリカⅡ」「ヨーロッパⅠ」「ヨーロッパⅡ」の5チームでミッションに取り組みます。

深澤晶久教授の話

毎年、学生の関心の高い科目で、今年も定員の3倍の希望者の中から選抜されました。この授業は、スポーツニッポン新聞社様とのコラボで進行する「オリンピック・パラリンピック連携講座」と、“机上の世界一周旅行”と称してレクチャーやゲスト講演で組み立てられる「国際情勢をまなぶ講座」の2つの柱で構築されています。
 新型コロナウイルスの影響で、グローバル化も「東京2020」も大きな影響を受けました。そのような時代の変化も見据えつつ、学生の主体性を磨き上げるというゴールに向かって動き出しました。毎年感じる学生の成長の姿を、今年はリアルにみられることがとても楽しみです。

2年ぶりに教室にリアルが戻ってきました

スポニチ Sponichi Annexにも掲載されました